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ランブリング!!

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【RB1】
  【RB第二話】

 クラス組発表の投影ディスプレイの前に群がる新入生達――パイロット科、整備科、設計科と分けられてはいるが人数の多さにクルスは嫌気が差した。


「群がりすぎだろ……。まるでバーゲンセールのババア軍団じゃねえか」

「仕方ないよ兄さん。やっぱりクラス分けは気になりますからね。……では兄さん、二人で見に行きましょうか」


 二人でという所を強調する由加、視線をアリスに向けると小さく膨れていた。


「く、クルスはどの科を受けたの!?」

「あん? 受けたのは――」

「私達はパイロット科ですが何か?」


 クルスが答えるより早く由加が答えた――クスッと笑みを浮かべ、わざと兄にくっついて見せる。

 だがクルスからは鬱陶しいとしか思われてないため直ぐ払われた。


「兄さんの意地悪……」

「けっ、暑苦しいからそれ止めろ。てか彼氏作ってそっちにくっ付け」


 兄から出た言葉――彼氏なんて、私には必要ない――邪険に扱われても由加はクルスが好きだった。

 最初こそ印象は最悪だった、こんな人が兄になるなんてと運命を嘆いたぐらいだ。

 だけど――それから暫くして道に迷って泣いていた私を泥だらけになりながらも探してくれたのは兄だった。


『何こんな所で泣いてんだよ。帰るぞ』

『ひっく、ひっく……。み、みち……わからないんだもん……えっく……』

『あ? ほら、帰るぞ……由加。俺が連れ帰ってやるから、お前は俺の新しく出来た大事な家族だ。んで、俺は兄だからな……』

『…………』


 その時の私は何も答えられなかった、ただ一人――兄として認めてすらいなかった私を彼は大事な家族だと言ってくれた。

 目付きも悪く、言葉使いも悪い――だけど、大事な家族だと言った時の笑顔を見た私はその時から兄に恋した。


「兄さん、私は彼氏は作りません。兄さんが心配だもん」

「ちっ……」


 舌打ちするクルスに、クスッと笑う由加――そんな二人を取り巻く空気がアリスに危機感を抱かせる。

 義理の兄妹という事は結婚が可能という事――転校したその後から疎遠になった私より遥かに優位に立つ彼女。


「く、クルス! あ、あたしも……受けたのRBパイロット科《ライダーズ》なんだ!」

「……お前がか?」


 疑うような眼差しを向けるクルスに、胸を張るアリス。


「うん。やっぱRBの花形はパイロットじゃない? そりゃ、男の子の方が志望率高いけど、女の子がいない訳じゃないし」


 実際にGⅢクラスやフリーのランブリングバトルにも女性操縦者は居る、GⅢクラスともなればスポンサーもついているので名が通る。

 無論それが見目麗しい女性なら尚更だ。

 だからかここ最近では設計科《デザイナーズ》を目指す子と同じくらい志望する子も多いのだ。


「ふぅん。俺はてっきりデザイナーズ専門かと思ってたが、お前もRBパイロット科《ライダーズ》だったんだな」

「う、うん」

「…………」


 由加の突き刺さる視線、邪魔者が居なくなると思っていたらまさかのライダーズ志望――ここまで来ると由加の不安は更に大きくなる。

 ディスプレイに表示されたクラス分け――A組を見ると直ぐに兄と自分の名前を見つけた。


「兄さん。私と一緒のクラスですよ」

「……何で学校でも由加と一緒なんだよ」

「えへへ。兄さんとは赤い糸で固く結ばれてますからね」


 頬を赤く染めてそう言う由加だが一方の来栖は物凄く怪訝な表情を浮かべた。


「何が赤い糸だ。恥ずかしい……チッ、初っぱなからヤル気無くしちまうな」

「兄さんったら……照れて可愛いんだから」

「うぜぇ……」


 二人のやり取りは端から見ても仲良さそうな男女関係に見える。

 挫けてたまるかとアリスは思う一方、自分もクルスと同じクラスだと願いをこめ、じっと名前が書かれたディスプレイを見ていく。

 A組――有川来栖、有川由加、飯島匠、遠藤薫、《加川有栖》――。


「あ……クルス!」

「なんだよ」

「あ、あたしもクルスと一緒のクラス!」

「……おいおい、妹だけじゃなくお前まで一緒かよ」


 呆れたように呟くクルス、その一方で悪い予感が的中した由加の瞳から光が消えていく。

 アリスは邪険にされるが、クルスが本心で言ってる訳じゃないとポジティブに考え、嬉しさに花開く笑顔を見せた。


「うわっ、あの子超可愛いじゃん!」

「海、見てみろよあの子」

「……見てるよ、てか天使じゃん! あの子と同じクラスになりてぇ!」


 等と一部男子から声が上がっているがアリスは気付きもしなかった。


「チッ……まあいい。見終わったし入学式は――」

「兄さん、ちゃんと出ないとダメです」

「けっ……。やっぱ保護者気取りだな、由加」

「ふふっ。兄さんを放っておいたら何をするかわかりませんからね」


 片目を閉じ、人差し指を唇に当てる由加の姿に――。


「あ、あの子もレベルたけぇ! てか、ロリ顔ヤベェ!!」

「チックショー! 隣のあの目付きの悪い男、やっぱ彼氏なのかな」

「くっそー、せめて睨んでやる!」


 そう言って睨もうとした男子だが――。


「……あっ?」


 視線に敏感なクルスが見る――その目付きは凶悪で、睨んでいた男子生徒は本能で横に振り向いた。


「チッ、うぜぇ……」


 一方の由加は彼氏なのかな発言に気を良くしていた。


「……さっさと入学式いくぞ」


 気だるそうに二人にそう言ったクルス。


「あっ、待ってよクルスー」

「お、置いていかないでくださいっ」


 アリス、由加と二人してクルスの後を追った。


「畠山君、彼氏持ちっぽいっすね」

「……あ、あんな天使が。あんな邪悪な目付きの男に手込めにされてるだと!? ゆ、許さん!」

「海! まだそう決まった訳じゃねぇだろ! それよりもあの子、ライダーズ志望らしいしここからデートに誘えば」

「そ、そうだな。 ……てかあの子の名前、何だっけ?」


 ズコーッと二人は盛大に転けた一方、真ん中に居る畠山海(はたけやまかい)と呼ばれた男はどうやってデートに誘おうか模索し、脳内で勝手にデートシミュレーションを開始していた。 
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