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ランブリング!!

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【RB1】
  【RB第一話】

 
前書き
ランブリング一話

てか四年ぶりに書いたなφ(..) 

 
 揺れる電車内、窓から流れる景色――その一望に広がるのは海とカモメの群れと漁をしてる漁船。

 電車内には真新しい制服に袖を通した新入生がちらほらと見受けられる。


「でねでね! この間行ったお店がさー」

「えー? そんな酷いことされたのー?」

「昨日のRBバトル最高じゃなかった!? 俺、スッゲー興奮した!」


 車内の喧騒に怪訝そうな表情を浮かべたのは有川来栖――。


「……うるせーな、電車内で騒ぐんじゃねぇよ……」

「に、兄さんってば……」


 聞こえないように呟く来栖だが誰が聞いてるかわからない由加は焦る。

 幸いにも聞かれてはいなかった様で車内の喧騒は続いていた。

 小さく舌打ちをする来栖に、由加も困った表情を浮かべたが――。


「あっ、兄さん。見えてきたよ?」

「あん?」


 柄の悪いチンピラの様な受け答えだが、それでも妹に反応して窓から外を眺めた。

 見えてきたのは巨大な人工島――一番に見えたのは巨大なドームだった。

 その手前にあるRB養成学校、専門科にRBパイロット科、整備科、設計科とRBの為の専門教育機関となっている。

 また、校庭は人工島の向こう側まで続く滑走路にもなっていて、その滑走路の横にはRB倉庫やスクラップ置き場などが散見して見えた。


「うわぁ……これから彼処で勉強するんだね、私達」

「……んなわかりきった事言ってんじゃねぇよ」

「えへへ、それもそうだね。あ、あれって寮かな?」


 そう言って指差す先に見えた建物――ちらほらと学生らしき姿が見えた。


「……とりあえず由加、落ち着け。このまま乗ってりゃ、直に着くしな」

「はぁい。……兄さんは新生活、不安じゃない?」

「あっ? ……別に不安なんかねぇよ。てか入学式が面倒だからこのままフケたいぐらいだ」

「もう、ちゃんと出ないとダメなんだからね? やっぱり兄さんには私がついていないと……」

「けっ、誰も頼んでねぇよ。保護者気取りかよ」

「ひっどーい! 兄さんの意地悪」


 悪態をつく来栖――車内の喧騒も少し落ち着きを見せた頃、学園駅に電車が到着した。

 一斉に下りる新入生、二人も下りてそのまま駅構内を歩き、外に出る。

 目の前に広がる並木道には咲き誇る桜の樹が新入生達を出迎えていて、風が吹く度桜の花弁が舞う。


「わあっ! 兄さん兄さん! 桜がスッゴく綺麗です!」

「チッ……んな事ではしゃぎやがって……」


 花びら舞う桜並木道を歩く二人、暫く歩くと学園正門が見えてきた。

 ここを抜ければ二人の新生活が始まる――そんな矢先。


「あっ……く、来栖? 来栖じゃないっ!?」

「あん?」


 不意に呼ばれた来栖が振り向いた先に居たのは髪を後ろで纏め、ポニーテールにした栗色の髪の美少女だった。

 殆どの男子なら確実に見惚れる程だった、スタイルも悪くなく出るところは出て引っ込む所は引っ込んでいる。


「ほ、ほら、あたしよあたし!! 覚えてるでしょっ?」


 屈託のない笑顔で来栖を覗き込む少女を見た由加は警鐘を鳴らしていた。

 だが来栖は気にする事なく目の前の少女を見た。


「……誰だ?」


 本当は来栖本人はわかっていた――小学校三年の時に転校していった幼なじみ、加川有栖(かがわありす)だということに。

 だが彼自身に芽生えた悪戯心でそう言うと、覚えていない事に僅かに涙目になる有栖。


「そ、そんな……お、思い出せない? ほ、ほら、小学校三年の時に転校したじゃない」

「……ん~? 居たか、そんな奴?」

「……え、えっと……ひ、ひっく……」


 今にも泣き出しそうな有栖――まさか【幼なじみ】を忘れてるなんて予想してなかった。

 風の噂で有川来栖がRB養成学校に入学すると聞き、彼に会えるという思いだけで遠い土地から一人戻ってきたというのに――。

 既に瞳に涙を浮かべ始めていた有栖を見て気だるそうに喋った。


「けっ! 相変わらず泣き虫だな、アリス」

「え……? な、泣き虫じゃないもんっ! ……うぇぇぇーん! クルスーッ!! 逢いたかった! 逢いたかったよーッ!!」


 涙を堪えきれず、アリスは涙を流しながらクルスに抱き着いた。


「な!? ば、バカ! 離れろって!」


 突然アリスに抱きつかれて狼狽するクルス、人前という事もあったからだろう。

 正門前での出来事に、新入生も立ち止まってその様子を見ている一方で由加は。


(お、幼なじみ……。に、兄さんに幼なじみが居たなんて……。しかも、明らかに兄さんに好意を抱いてるとしか見えない)


 兄に付きまとう悪い虫――そう判断した由加だが。


「おい、暑苦しいから離れろってアリス!」

「ひっく、ご、ごめんね……クルス……」


 涙を拭うアリスはクルスから離れる、大胆な事をしたと気付いた時には頬が朱色に変化していた。


「……ったく、別に俺に会わなくても問題ねぇだろ」

「そ、そんな事ないよ! く、クルス……昔苛められてたあたしを助けてくれたじゃん」

「……そういや、そんな事もあったな」


 一人に対して多数で苛める奴なんかカスでしかない、クルス自身はそう思っていたし、何よりも幼なじみが苛められていたというのも許せなかった。

 勿論クルスはそんな事は告げない――言う気等更々なく。


「カスがバカな事をしてたから懲らしめただけだ。お前を救うのはもののついでってだけだ」

「それでも……クルスはあたしを助けてくれた。あたしはそれが嬉しいんだ……」


 にこっと笑顔を見せたアリスに、小さく舌打ちするクルス――視線を逸らし、頭を掻いていると。


「……兄さん」

「な、なんだよ由加」


 そんな二人のやり取りを見たアリスは――。


「あ、あれ?クルスって妹居た?」

「あ? ……ああそうか、ちょうどお前と入れ違いだったな。お前が転校した後の四年になった時だな。俺のクソ親父と由加の母親が再婚してな」

「そ、そうだったんだ」


 全然知らなかったと小さく呟くアリス、無理もない……転校してから完全に疎遠になっていたのだから。

 改めてアリスは隣の由加を見ると。


「初めまして。兄さんの義妹、有川由加って言います」


 折り目正しく頭を下げる由加に、アリスは。


「は、初めまして。加川有栖です。よろしくね?」

「はい。ですが……兄は渡しませんので」

「え……?」


 互いに握手を交わし、何やら小さな声で喋る由加。

 クルスは呑気に欠伸をしていたが――。


「な、何でクルスを渡さないって――」

「言葉通りの意味です。兄に近付く悪い虫は、私が排除しますので」

「わ、悪い虫って――」

「ええ。兄には私がついていますので悪い虫は必要ないのです」


 そんなやり取りの中、アリスは直感した。

 この子はクルスとあたしの間に立ち塞がる障害だと――。


「では兄さん。そろそろ行きましょう、彼方でクラス表が貼られてる筈ですから」

「だな。アリス、もう泣くんじゃねぇぞ」


 するりと自然にクルスの腕を取る由加、クルスは歩きにくくて仕方なかったのだが――。


「あ、あたしも行くっ! てか良いでしょクルス?」

「……好きにしな」

「へへっ、じゃああたしも!」


 そう言って空いたクルスの腕を取ったアリス。

 二人に挟まれたクルスは――。


「離せ。歩きにくい」

「良いじゃん。久しぶりに会った幼なじみと一緒に歩けるんだよ?」

「兄さん。可愛い義妹がこうして歩くなんて事は貴重ですよ?」


 二人はそう言うが、本当に鬱陶しいと感じているクルスは傷付けないように振り払う。


「けっ、さっさと行くぞ。あんなんじゃ歩きにくいしな」


 ずかずかと先に歩くクルス、二人は置いていかれないように後を追った。 
 

 
後書き
次回更新はいつになるやら 
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