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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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281部分:第二十三話 楓、思い出すのことその十二


第二十三話 楓、思い出すのことその十二

「貴女でないのなら」
「私が宮中からいなくなって得をする誰か」
「宮中きっての知恵者と言われた貴女がいなくなってそのうえで」
「得をする誰かよ。それ十常侍だったら拉致して送るなんてことは」
「しないわね」 
 甄姫もこのことはすぐに言った。
「間違いなく暗殺してるわね」
「毒なり刺客なり使ってね」
「そうするわね。あの連中なら」
「けれど拉致されたわ。それに私は確かに宦官達を好きではなかったけれど」
「対立はしていなかった」
「派閥争いは好きではなかったから」
 これは彼女の性格から来るものであった。それで宮中では中立の立場でいたのである。
「だからね」
「つまり宦官達に貴女を害する理由はない」
「彼女達も私のことは嫌っていたけれど」
 このことははっきり自覚していた。嫌えば嫌われるである。
「けれど。それでも対立はしていなかったから」
「無闇に害を及ぼすこともない」
「そういうことになるわよね。つまり宦官達ではないわ」
「では一体全体本当に誰が」
「私が宮中からいなくなってから」
 蔡文姫の言葉がここで強いものになった。
「誰が宮中に出て来て頭角を現したか」
「ええと。それは」
「その誰かだけれど」
「誰だと思うの?貴女は」
「それが私にも」
 ここでは首を傾げてしまった蔡文姫だった。
「わからないのよ。私は中立派だったし」
「まだ大将軍の陣営にいたらね」
「ええ。司馬慰殿かも、と思うけれど」
「大将軍の懐刀にして参謀の」
「彼女が来てから大将軍は常に御傍に置いているそうね」
「らしいわね。絶大な信頼を得ているとか」
 このことは河北でもよく知られていることだった。
「頭が切れるうえに名門司馬家の嫡女で」
「そう、私よりも頭は切れるわ」
 そして家柄もであった。
「聞いた話によるとね」
「そこまでなのね」
「私は本から得ているものよ。けれど彼女はそれだけじゃなくて」
「元々頭が冴えているのね」
「かなりね。我が陣営の水華や恋花よりも上ね」
「そして曹操殿のところの桂花さんよりも」
「間違いなく上よ、かなりのものよ」
 そこまでの頭脳の持ち主だというのだ。蔡文姫は彼女をこうも評した。
「伏竜、鳳雛にも比肩する、恐ろしい才の持ち主よ」
「恐ろしい人物ね」
「しかもその名門の嫡女」
 このことも重要なのだった。
「麗羽様や曹操殿にとっては間違いなく疎ましい存在よ」
「ええ、確かにね」 
 甄姫はこのことは実によくわかっていた。嫌になる程にだ。
「御二人にとってはね」
「だからね」
 袁紹は妾の子、そして曹操は宦官の家の出である。二人はそうした意味でその立場は弱いのだ。家柄はあってもそれは清流ではないからだ。
「御二人は間違いなく司馬慰殿を嫌っておられるわ」
「かなりね。まだ御会いされていないけれど」
「けれど嫌っておられるわ」
 これは間違いないというのだった。
「注意しておかないとね」
「そうね。御二人共繊細なところがあるから」
 意外なことに袁紹もそうなのである。彼女は実は繊細な部分が多いのだ。
「注意しておかないとね」
「それにしても。司馬慰殿は」
 蔡文姫はあらためて彼女のことを考えてた。
「どうされるのかしらね」
「大将軍の御傍において」
「それが問題ね。どういった方かわかっていないし」
「その通りね。よからぬ方ならばいいけれど」
 二人はこのことを危惧していた。しかしであった。
 
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