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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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151部分:第十三話 曹操、袁紹と官渡で会うのことその十三


第十三話 曹操、袁紹と官渡で会うのことその十三

「妾の子ってことを意識してそれであそこまでなれるだけ頑張ったけれど」
「おかしな奴にもなったのだ?」
「何かバランスの悪い人だけれどな」
「そういうことだね。曹操ってのもそうじゃないかしら」
「そうだな。曹操殿もな」
 今度は関羽が言った。
「あらゆる方面に才能を発揮しておられるが」
「それでもなのね」
「妙に危ういところのある方だ」
 舞にも答える。
「肩肘を張っている部分もある。やはりそれも宦官の家だからか」
「そういう人って注意した方がいいわよ」
 舞は曹操についてだけでなく袁紹についても話していた。
「本人に能力があっても出自を気にする人はね。私一人知ってるから」
「ああ、あの男か」
「そうですね、あの人は」
 キングと香澄はすぐにそれが誰かわかったのだった。
「そうだったな。ああなるな」
「そうした意味では同じですね」
「んっ?誰だよそれ」
 馬超は三人の言葉に気付いて尋ねた。
「あんた達の知り合いか?」
「ギース=ハワードって言ってね。まあその曹操さんや袁紹さんと同じ様な立場でね」
 こう馬超達にも話すのだった。
「桁外れに強くて本人もかなりの能力があったんだけれど」
「腹違いの弟は能力と立場だけでなくて家柄もあってね」
「ウォルフガング=クラウザーって人ですけれど」
 キングと香澄はクラウザーについて話した。
「そいつをかなり意識していてね」
「そこからおかしくなったのよ」
「では曹操殿や袁紹殿の前にそうした人物が出れば」
「まずいことになるか」
 関羽と趙雲はすぐにそうなった場合のことを考えた。
「そういえは袁家の嫡流は袁術殿だったか?」
「あの方だったな」
「はい、ですがあの人はまだ幼いですし」
 孔明がその袁術について話した。
「それに素質はありようですけれど何分気まぐれなところの多い方でして」
「二人のライバルにはならない」
「そういうことか」
「はい。ですが最近どうやら」
 孔明の話は続く。
「御二人を両腕と頼んでいる何進大将軍の側近に司馬仲達という人が入ったそうです」
「司馬仲達!?」
 馬超がその名前を聞いて声をあげた。
「司馬氏っていったら代々高官出してる家だけれどな」
「その家の方です」
「で、嫡流ってか」
「はい。しかもかなりの切れ者だとか」
 家柄も血筋も能力もあるのだという。
「曹操さんと袁紹さんは血筋でかなり苦しんでおられますがその方は、です」
「しかし何進大将軍は確か肉屋の出でだ」
 関羽は何進二ついて話した。
「それで出自により重く見られていなかった曹操殿と袁紹殿を重用されているのではなかったのか」
「ですが袁術さんも重用されてますし。それを考えますと」
「結局能力があればそれでいいというのか」
「敵の多い方ですし。人材は御一人でも多くだと思います」
 孔明は関羽だけでなく他の面々にも話していた。
「そういうことかと」
「そうか。そういうことか」
「おそらく曹操さんと袁紹さんはその司馬仲達さんをかなり警戒しておられます」 
 孔明はこのことも話した。
「それがよからぬ方向に進まなければいいのですが」
「そうか」
「家柄では曹家も袁家も司馬家には負けてないんだけれどな」
 馬超はこのことを指摘はした。
「それはな」
「しかしそれでもってことだね」
「出自も問題になる訳だから、この時代は」
 キングと舞がこのことをまた指摘する。
「ややこしい話だけれどね」
「能力があるだけじゃ駄目なこともあるのね」
「牙神さんもそうでしたし」
 ナコルルもある人物の名前を出した。
「あの人も。それでああなってしまってますし」
「色々な人間がいるものだがな」
 趙雲はふと達観したように述べた。
「劣等感で伸びることもあればそれによりおかしな方向にいってしまうこともある」
「曹操殿も袁紹殿はそうした意味で危ういか」
「少し離れて見ておいた方がいいかも知れませんね」
 関羽と孔明はここでこう言った。
「御二人共、特に曹操殿は仕官するのもいいのだが」
「その司馬仲達さんのことも気になりますから」
 だからそれはしないというのだ。そして孔明はここでこうも言うのだった。
「そして南、正確には南西の揚州ですけれど」
「江南なのだ?」
「はい、そこは今孫氏が牧として治めておられます」
 こう張飛に話す。
「孫策さんが御母上の孫堅さんの跡を継がれて」
「江南の小覇王だな」
 趙雲が彼女について述べた。
「戦に強いだけでなく人材を見るのも確かで気さくな人柄で民からも慕われているという」
「へえ、そういう人なのかよ」
「そうだ。かなりの傑物だと聞く」
 馬超に対しても話す。
「一度揚州に行ってみるのも悪くはないな」
「そうですね。それじゃあ官渡を一度見てから揚州に向かいましょう」
 孔明がここで言った。
「長江を見るのもいい経験ですしね」
「河かあ。あたし河はあまり見てないんだよな」
 馬超は何かまだ見ていないものを見に行くような言葉を出した。
「長江って黄河よりもまだ凄い河なんだよな」
「そうですね。あの地でその西楚の覇王項羽が生まれましたし」
「その孫策殿の通り名の元にもなっただな」
 関羽も項羽について言う時は言葉が少し緊張していた。項羽の武勇はこの時代においても伝説となって残っている。敗れはしたが史記においても屈指の英傑の名前は残っているのである。
 その項羽の話も出てだ。皆緊張しながら言い合う。
「よし、それでは」
「行きましょう、江南に」
「そうしましょう」
 こうして彼女達は官渡の次の行く先も決めたのだった。そうしてそのうえで官渡に進むのだった。そこで珍妙な騒動に巻き込まれるとも知らずに。


第十三話   完


              2010・5・16
 
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