星河の覇皇
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第六十三部第二章 円卓その十一
「有り得ないまでのな」
「そしてその結果ですね」
「ああした事態になった」
「当時の教皇インノケンティウス三世は有能でしたがその倫理観は怪しいものでしたし」
「法皇というよりは政治家でした」
それが中世の法皇だった、神に仕える以前の第一級の政治家だったのだ。それはこの法皇だけではなかった。
「他にもアルビジョワ十字軍も起こしています」
「この十字軍も酷いものでした」
「何しろ夢葉な殺戮をしています」
「南フランスにおいても」
「異端もいたがカトリックの者もいた」
ギルフォードは軽侮を込めて言った、それもこれ以上はないまでの軽侮で。
「その者達は本来は殺す必要はなかった」
「そうですね、全く」
「あくまで今の視点ですが」
「彼等は殺す必要はありませんでした」
「彼等については」
「しかし教会は殺した」
自分達の信者であるカトリックの者達もだ。
「殺せ、殺せと言ってな」
「異端とカトリック信者の選別をわずらわしがり」
「その為に」
彼等が混在している為にその選別が難しかったと言われている、しかしそれでも彼等は自分達の信者を殺させたのだ。
「そしてでしたね」
「神があの世で見分けられると言って」
「そのうえで殺しましたね」
「そうしたこともあった時代だ」
同じインノケンティウス三世が法皇であった時代の十字軍である。
「だからその十字軍もな」
「当然として起こりですね」
「あの都を攻めましたね」
「本来ならあの都は陥落しなかった」
コンスタンティノープルはというのだ。
「あの堅固さだからな」
「しかし中に裏切り者が出て」
「そして、でしたね」
「あの都は陥落しました」
「難攻不落でしたが」
「そうなった、だから裏切り者がいないことはだ」
今のエウロパにである。
「幸いだ」
「それだけで、ですね」
「幸いですね」
「間違っても連合に内通しない」
エウロパの者はというのだ。
「特に貴族はな」
「我々はですね」
「それだけは」
「だからその分はやりやすい」
「我々はですね」
「エウロパは」
「もっとも裏切り者がいればだ」
その時はとだ、ギルフォードはその目を強く光らせて言った。
「消す」
「即座にですね」
「そうした輩は」
「そうだ、容赦せずにな」
まさに一切、というのだ。
「消す、だが苦しませることはしない」
「例え裏切り者であろうとも」
「それでもですね」
「我々エウロパは死を楽しまない」
もっと言えば処刑をだ。
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