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二人の騎空士

作者:高村
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The fate episode
一人目の騎空士
  進行度 2/3

 
前書き
突撃! 団の騎空艇
攻撃隊長はシルヴァ、防衛隊長はレ・フィーエです。 

 
 五分もしないうちに報酬金を貰い受けた私が家を出てくると、バザラガとベアトリクスがまだ家の前にいた。ベアトリクスは鳩尾を抑えてバザラガにより掛かるように立っていて、対してバザラガは仁王立ちだ。
「早かったな」
 バザラガが口を開く。表情が見えない相手というのは真意がわかりづらい。
「貴方達とやりあったせいで怖気づいちゃってましてね、すぐに払ってくれましたよ」
 股間を尿で濡らした男性と事態を飲み込めない女性のやり取りは見ていて不快だったがまあ金を回収できたので言うことはない。
「そうか。勘違いと言えど、斬りかかって悪かったな」
「いえいえ」
 形だけの謝罪なんて要らないと言いかけたが、なんとか我慢が効いた。彼らからすれば依頼を受けそれを遂行していたのだから何ら問題はなかろうに。
「それだけですか?」
「いや、名前を聞きたいんだ」
「……何故ですか」
「俺達はある騎空団に所属している。またそれとは別の組織にも席を置いている。どちらも名うてが多いが、それでも尚お前程腕の立つ者はそういない。お前ほどの技量を持つ人間が無名であるというのも考えられない。一人二人は知り合いがいると思うんだ」
 私は少しばかり悩んでから、質問する。
「私なんて腕はまだまだですが、そうですね、例えば誰が貴方の団にいますか?」
「そうだな……剣士で有名ならば、剣聖と名高いアレーティア、リュミエール聖騎士団団長のシャルロッテ等がいるが」
 その返答に安心する。彼女は、いないようだ。
「どちらも会ったことはありませんよ。私の名前はグランです。ただのしがない――」
 ――二人で、騎空士になるんだよ。
「ならず者です」
 彼女との約束は、今や遥か過去にある。私は……グランは、騎空士になれなかったんだ。
「お前、騎空団に入るつもりはないか」
 僅かに息が止まる。またなんてことを言ってくるのだろうか。名前を聞きたかったのは敵対的な人間かの確認か。
「俺の一存では決められんが、剣の腕を見るに仲間でも何ら問題はなかろう。無論精神的な部分での問題はあるだろうが、今そこまでは分からないからな。そちらにやる気があるかどうか、という点が今は重要なんだ」
 あの日、掴めなかった夢が追いかけてきたのか。……彼女たちはまだ、生きているのだろうか。彼女達はまだ、空を飛んでいるだろうか。それを調べるのに、騎空士になるのは一番いい手立てだろう。けど、だからと言って。私は、彼女以外の団に入るつもりはない。
「今ここで入るか否かを決められないのは此方も同じです。ですから、私からあなた達の団に依頼したい。私を別の島まで送り届けて欲しい。移動中に話もできましょう」
「決まりだな。さて、早速と言ってはなんだがこいつを騎空艇まで運ぶのを手伝ってくれないか」
 こいつことベアトリクスは未だに真っ青な顔で鳩尾を抑えている。強く打ちすぎたか?
「別にいいですが、先にお腹に触っても構わないですか?」
「ん? 構わんが」
 バザラガの返答を受けて、私は容赦なくベアトリクスの服に手を入れて鳩尾に手を触れる」
「お、おい」
 弱々しくも抵抗するベアトリクスを無視して魔術を使い付近の臓器を調べる。膵臓も胃も破損なし。更に付近の臓器も破裂なし。表層は内出血が著しいので軽く止血を行えばいい。後は神経の動作を軽く鈍らせれば気分はある程度回復するだろう。
「内蔵に損傷はありません。体が大事なら数日は安静にしておくことです。無理に体を動かせば内出血の跡が残りますよ」
「あなた、さっきの戦いもそうだったけど魔術使えるんだね」
「はい、少しばかり」
 本当に少しばかりだ。上には上がいることくらいわかりきってる。
「魔術の心得もあるのか。恐れ入るな。それで、ベアトリクスを担ぎたいのだが手伝ってくれ」
「大丈夫、バザラガ。歩ける。それにあんた、大きすぎて背負えないからって担がれるとしんどいのよ」
 そう言って歩き出そうとしたベアトリクスは、すぐに倒れ込み、慌ててバザラガが抱き起こした。
「どうってことないから。大丈夫」
「嘘をつくな。グラン、悪いがこいつをおぶれるか?」
「彼女が良ければ」
 そう返せば、ベアトリクスは死んだような顔で私とバザラガを眺めて、致し方ないというふうに顔を縦に振った。


 二人が所属する団の騎空艇は歩いて三十分程の港に接岸されていた。とりあえずと中に案内される間、見知った顔とすれ違うことはなかった。もともと人付き合いのいい方でもなかったし、当たり前か。
 食堂と思われる部屋にまで私を案内すると、バザラガは付近の女性団員に声をかけた。
「ソフィア、ベアトリクスが負傷したんだ。治療願えるか?」
「負傷はどのようなものですか?」
「腹部に強い衝撃。胃、膵臓、及び付近の臓腑に破裂や自然治癒が困難な損傷なし。皮膚はある程度抑えましたがまだ内出血はあります。意識レベルに問題はありません」
 軽く症状を答えると、ソフィアと呼ばれた女性は此方を見て少しばかり悩む。
「情報ありがとうございます。貴方は、えーと」
「まだ団員じゃない。今日依頼先で見つけて誘ったんだ。今、団長たちは」
 バザラガが代わりに説明してくれたので、私はその間に背負った状態のベアトリクスの足を地面につけさせ、肩を貸して立たせる。
「物資の買い付けに行っています」
「弱ったな。攻撃隊長か防衛隊長は」
「シルヴァさんなら部屋に。フィーエさんは買い物の方へ」
「分かった。ではベアトリクスをよろしく頼む」
「承りました」と言って、私の代わりにベアトリクスに肩を貸すと二人は食堂から出ていった。
「シルヴァの元へ向かうから付いてきてくれ」
 そうってバザラガが先に立ち、私はおとなしくそれに連なった。
「まず初めにだが、これから向かう居住区画では武器を生身、もしくはすぐに抜刀できる状態にしてはいけないんだ」
 そう言ってバザラガは食堂入口に置かれていた紐を私に手渡すと、傍に置かれていた大きな鞘を自身の大鎌に着け、それが簡単に外れないように紐で固定した。
「本当は騎空艇に戻ってすぐにやったほうがいいんだが、今回は説明という事だな」
 本当は、私が何か変な動きをしないか警戒していた、だろう。
 私はおとなしく、渡された紐で鞘と柄を固く縛り固定した。
 バザラガに続いて暫く歩くと、ある部屋の前でバザラガは立ち止まり三度扉を叩いた。ここがシルヴァとやらの部屋か。
「シルヴァ、今いいか」
「いま出る」
 そう言って扉を開けて出てきたのは妙齢の女性だった。
「いい人材を見つけて誘ったんだが、今は団長達がいなくてな。取り敢えずということで見てもらおうかと」
 シルヴァはバザラガから視線を移し、私を眺めた。非常に鋭い目だ。弓兵か狙撃兵だろうか。
「バザラガがスカウト、とは珍しい」
「ベアトリクスもだ」
「そういえば今日の依頼は二人だったか。となると組織の人間か」
「いいや、違う」
 シルヴァは今度は此方の剣の鞘をよく眺めた。なんで武器を見るのだろうか。
「独特な反りがあるが見た目は普通の剣だな。となると余程腕が立つと見える。どの団から引っこ抜いたんだ」
「何処のってことはない。取り敢えずは話をこいつとして欲しい」
 バザラガの言葉にシルヴァは僅かに表情を歪ませる。
「いま作業中なんだが、それでも良ければ」
「宜しく頼む」
 そう言ってバザラガは去っていく。結構強引な人だな、あの人も。
「しょうがない、入ってくれ。名は」
「グランと言います」
「私はシルヴァだ。それでそこのが」
 通された部屋には他に一人の少女が居た。少女は床に敷かれた布の上に広がる銃の部品を一つ一つ磨いている。
「ククルだ」
 名前を呼ばれたから、此方を見たククルとやらは顔を上げて此方見る。服を含め至るところに機械油が付いているが、彼女はそれを気にする様子はない。
「宜しくね」
「はい、よろしくお願いします」
 明るく挨拶をしてくれる彼女に返答を返して、私も床に座る。目の前で分解されているのは長銃だ。私が人生で見てきた中でもかなり大きい部類に入る。
「立派な銃です。分隊で運用を?」
「違うよ。シルヴァ姐さんが一人で運用してる」
 ククルが答えてくれるが、その内容に驚きを隠せない。バレル長だけでも一米を遥かに越している。組み立てれば一米半以上には確実になる。傍に置かれた弾薬もかなり大きい。
「冗談でしょう。長さ一米半以上、有効射程は一粁を超える品物でしょう」
「ほう、銃の心得もあると見える」
 後ろでシルヴァが感心するが、弾薬を見れば素人でもその程度の事はわかるだろう。
「いいえ、殆どありませんよ。それより、バザラガさんに突然ここまで連れて来られたのですが、何をすればよろしいのでしょうか」
「まあまずは話を聞かせてくれ」
 そう言って、シルヴァは分解された銃に手を付けた。 
 

 
後書き
Q,この人選の理由は?
A,適当。強いていばぐらぶるっ! で面白かったキャラですかね。隊長二人は騎士団団長や他の団から来た人間を除いて有能そうな二人。フィーエが防衛隊長として守ってるのは恐らく財布の紐でしょう。
Q,口調おかしいキャラ多くない?
A,持ってないキャラも多いので許してください。グランに限っては一年間一人旅のせいでです。
Q,シルヴァの銃にこんな設定あった?
A,バレットM99の設定引っ張ってきただけです。 
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