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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第三章 X《クロス》
  戦闘



ドォウドォウドォウ!!

「当たれッ!!」

ゴ・・・・・・・スゥ、ドォン!!!



森林内


桜の花びら舞う中で、ブロッサムアンデットが観鈴に向かって砲撃をいくつも撃ち放っていた。


その砲撃一発は、聖人タイプ―――つまりは治癒に特化した観鈴であるならば一撃直撃したらそれだけでダウンをとれるという威力だ。
観鈴だって翼人である以上、ある程度の防御力を持っているにも関わらず、である。

実際観鈴はなのはのディバインバスターやWのトリガーエクスプロージョンを防ぐことはわけないぐらいの実力は持っている。


それを優に凌ぐ砲撃を放つブロッサムアンデット。
しかし、いまだにブロッサムアンデットは観鈴を仕留められてはいなかった。



「すごい砲撃・・・せっかくの桜がみんな散っちゃうね」

「む・・・・・」



荒れ狂う爆発による暴風でかき上げられる髪を手で押さえながら、見当違いの方向へと飛んで行った砲撃を見やって観鈴が呟いた。


当然なことながら、ブロッサムアンデットの放った砲撃はどれもが正確に観鈴を捉えていた。
何もなければ必ず相手に直撃していたし、直撃すれば先にも言ったように観鈴はそれだけでダウンだ。



しかし、ようは「当たったら」の話。


「衝撃波・・・・それをうまく扱って砲撃の軌道を滑らかに逸らしたか・・・・!!」

「すごいでしょ?観鈴ちんイエィ!」


ぶいっ、とピースする観鈴に、ハッ、とあきれたように息を漏らすブロッサムアンデット。


衝撃波、と聞いてもあまり大きな力には聞こえないかもしれない。
昨今のキャラクターたちの能力としては、もう新鮮味がないからかもしれない。

もはやそれは表現や描写においてのみ使われるようなそれだが、思えばこれほど厄介なものもないだろう。



よく聞く、ということはつまり、どんな攻撃においてもそれは存在し、すべてに共通する万能の道具なのだから。




この場合もそうである。

彼女は衝撃波の膜を作り、そっ、とブロッサムアンデットのはなる砲撃の先端に当てて砲撃の行く先をリード、変更させていたのだ。



「あなたの砲撃はすごいよ。でも、当たらないんだったら、怖くない」


そう言って衝撃波を小さな弾丸にし、さらに針のようにとがらせて回転、加速させて打ち出していく観鈴。


それはブロッサムアンデットの硬い樹皮に命中して抉り、その表皮の下からアンデット特有の緑色の血液を流しださせた。




が、五、六発受けたところでブロッサムアンデットが腕を振ってその弾丸を撃ち払い始めると、再び観鈴に向かって砲撃を放ち続ける。

それを誘導して回避する観鈴。



「見事な誘導だ!!しかしだな、そのような精密なコントロール、いつまでも続くものか!!」

「・・・・・・」



砲撃を撃ち、観鈴からも打ち出されてきた衝撃波の砲撃を回避、薙ぎ払っていくブロッサムアンデットが指摘する。

このような精密作業をしなからの攻撃。
それは確かに観鈴の体力と神経を確実に削っている。


それに気づかれ、観鈴の頬を小さな汗が垂れた。



「体力では流石に私の方が上とみた。このまま体力切れを待ち、勝負を決めさせてもらうぞ!!」

「ッ・・・・やってみるといいよ・・・・その前に終わらせるから!!」


激しい砲撃による猛攻と、それに見合った高度な防衛、反撃。




純白と桜色の嵐が吹き荒れる。





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洞窟内



漆黒に包まれた天然のトンネルを、北郷一刀はエレクトリックエェルアンデットの首を押さえつけて疾空していた。


時折ガン、ゴン、と壁にぶつかるが、前に飛んでいるためにそのダメージはすべてエレクトリックエェルアンデットが受けてくれている。
当然曲がり角などはあるがそこは翼人、空気の流れで洞窟のある程度の輪郭は掴んでいるために壁に衝突、ということはしない。



「こ・・・いつ・・・・放さんかッ!!!(バチィッ!!)」

「おぅわっ!!」



その漆黒の闇が詰め込まれた洞窟の中で、一瞬だけスパークが上がって二人の姿が見えた。


どうやらエレクトリックエェルアンデットが電撃を放って一刀から離れようとしたらしい。



いま二人はかなりの速度で飛んでおり、エレクトリックエェルアンデットにとってはきつい状態であった。

正直呼吸もそれなりに苦しく、十分な電量は生み出せない。


しかし、それでも何とか脱出するだけの電力は出したし、それを見舞ってやった。
これでこの状況からは脱せられる。エレクトリックエェルアンデットはそう思っていた。



だが、その一刀の右手は一切の力を緩めることなく、エレクトリックエェルアンデットの首元を掴んでいた。



(・・・・!?こいつ・・・手を離さない!?否、そもそも電気が通って・・・・)

「残念な。今この右手に電気は通らないぜ」

「な・・・・ッ!?」

「とりあえず、あいつの代わりに・・・一発!!」


ガゴォッッッ!!!!





エレクトリックエェルアンデットの気持ちを察したかのように一刀がそう呟いた直後、壁に激突してエレクトリックエェルアンデットの体が岩盤に叩きつけられた。

叩きつけられた衝撃と、衝突音が洞窟内で反響した振動とで脳ミソがグワグワと揺れる。



「こ・・・・のヤロ・・・」

「視界の効かないこの暗闇。お前に俺を捉えることはできるか?」

「!!!」



エレクトリックエェルアンデットが立ち上がって周囲を見渡した瞬間、どこからかその声が聞こえてきて瞬時に身構える。


暗黒漆黒、なんでもいい。
とにかく真っ暗だ。


一切の光が差し込まぬ洞窟内で、一刀は確実にエレクトリックエェルアンデットを追いこんでいた。



「俺には見えるぞ、エレクトリックエェルアンデット。ここで一気に終わらせてもらう」




この暗闇の中、エレクトリックエェルアンデットにだって相手を察知するすべがないわけではない。


まず一つに、電気を発すればいい。
そうすれば先ほどのスパークのように周囲が明るくなって、見えやすくなる。

しかし、それをしてしまえばこの暗闇の中自分の居場所を教えてしまうようなもの。
そんなことはできない。



それに対し、一刀には相手の姿がしっかりと見えていた。


翼人の力という物は、かなり互換性が高い。

基本的な肉体強化や各人の持つ能力に使うのもありだが、様々な世界の様々な力にも変換可能だ。


有名どころでは「魔力」や「気力」はもちろんのこと、言ってしまえば「瘴気」だって(その力のことをしっかりと知っていれば)変換可能だ。



そして今回一刀が用いたのはその有名どころである「魔力」

その魔力を目に回すことで、この暗闇でも相手の姿がはっきりと見えていたのだ。




「時間をかけている場合じゃないんだ」

「・・・・クソ!」

「さっさと終わらせてもらう!!」



一刀がそう叫んで翼から無数の剣を出し、それを携えてエレクトリックエェルアンデットに向かって突っ込んでいった。



突進して、まず一撃。
エレクトリックエェルアンデットの寸前でUターンするように体を返して、翼でその体を切り裂く。



鮮血が散り、エレクトリックエェルアンデットの呻く声が聞こえてきた。
そしてそのまま回転し、腰に携えた「流星剣」を構え、居合の形にかまえて一気に切り裂こうと呼吸を止めて――――――



「そこにいるのか」

「!?」

「カァッ!!!」


バンッッッ!!!!



身体の痛み、そして足音。
今までは反響していたために、音から居場所を掴むことはできなかった。

しかし、この直接攻撃。そして間近での足音。
目の前に一刀がいるのは解っていた。



だからエレクトリックエェルアンデットはこのタイミングでありったけの力を使ってスパークし、一刀の目の前で強烈なフラッシュと焚いたのだ。



「グああああああああアアアアアアア!!!!!」

「今まで暗闇にいて、しかもその状況でよく見えるようにまで視力を上げていたんだ。もう今は何も見えまい?」

「ッ、オオっ!!!」



両目を押さえて呻く一刀だが、即座に流星剣を手にエレクトリックエェルアンデットに向かって切り掛かって行った。

が、相手はそれをヒョイヒョイと避けてしまい、一刀は逆に重い拳の一撃を腹部に食らってしまう形になる。



「ゲホッ・・・・」

「この状況でもまだ俺の位置を捉え、正確に斬りつけてくるのはさすがだが・・・・・む」



ブシュっ



そういって相手を称賛するエレクトリックエェルアンデットだが、直後一刀を殴った拳が裂け、そこから血がしたたり落ちてきた。
あの中で、一刀はさらに拳のガードまでしていたのだ。

そしてそれを剣で行ったために、こうしてこいつの拳が切れた、ということだ。


「この程度は・・・・ハンデだ」


目をしょぼしょぼさせながら、一刀がガラリと立ち上がった。

その手には多くの仲間たちの武器。




「こっちにはまだお前の居場所がわかるぞ。翼人を舐めるんじゃない」

「ほう・・・・・視力を奪われ、まだやる気か?行くぞ!!」



エレクトリックエェルアンデットが走り出す。
猛然と走り、向かい、そして



「とか言いながらどこ行こうとしてんだお前はァ!!!」



ドゴゴゴゴン!!!!



その行く先に、行かせはしないと剣が突き刺さった。


「・・・・・・・・」

「解ってんだよ。そーゆーことするってことぐらいは」


いまだ目は開いていない。

視力は奪われたままだ。


だが、一刀はそれでも確実にこの場にいる相手を認識していた。



「お前・・・・そこまで邪魔して・・・・」

「悪いね。だけど・・・・オレを相手にするんなら、「EARTH」全員相手にする気で来てもらわないと」

「地獄行きにすんぞ!!」

「俺の翼は絆の翼。みんなと繋がっている以上、俺に負けはない!!」




洞窟内の戦い。



漆黒の中で、蒼青の輝きと電光が散ってゆく。







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《ATTACK RIDE―――BLAST!》

『「トリガーフルバースト!!」』


「あっははははぁ!!寄っといでーよ弾丸ちゃーん!!!」



コックローチアンデットと交戦していたW、ディエンド、ハクオロは目の前の光景が信じられなかった。

すでにハクオロはウィツァルネミテアの姿に替わっていたし、素早い相手に対抗してWはルナトリガーにチェンジもしていた。



だが、いまだこいつに当たった攻撃は一発もない。


「鈍い遅いトロい!!!その程度のスピードかい君たちはァ!!」

「オォッ!!」



素早い相手に対し、ハクオロの体が縮み(それでも二メートルとまだ巨体だが)、コックローチアンデットのスピードにかろうじてついていっていた。

流石は神として謳われていたものである。
おそらくはこのスピードに対抗するために行った急激な形態変化なのだろう。



しかし、コックローチアンデットはWのトリガーフルバースト、ディエンドのブラストの弾丸すべてをこともあろうか、ハクオロとの肉弾戦をしながら回避していた。


「馬鹿・・・な!!!」



コックローチアンデットの撃ち出す拳を両腕で受け止めて後退させられたハクオロ。
そこにWが弾丸を放ってゆくのだが、それはすべて弾かれてしまい、全く効果があげられない。



《ATTACK RIDE―――SLASH!》



と、その直後ディエンドがコックローチアンデットの懐に現れた。

おそらくはインビジブルのカードで姿を消していたのだろう。
そして、ここでカードをさらに装填、銃口から伸びた青いエネルギーで形成された刃で、コックローチアンデットの胴を思いっきり薙いだ。


「ゴォッ!?」

「よし!!」

コックローチアンデットの腹からはうっすらと血が滴り、そこを押さえてコックローチアンデットが片膝をつく。
そこに畳み掛けるかのように、その体を焼き尽くそうとハクオロが火炎を口から放射した。



さすがにこれだけの炎には弱いのか、コックローチアンデットがバッ、とその場を飛び退くが、背後に迫っていた新たな脅威に気付いていなかった。



《メタル!!マキシマムドライブ!!!》


「!?」

『「メタルブランディング!!!」』





超々加速のできるという油断、余裕、驕り。
それがこうして、今まで回避できていた攻撃を食らってしまうという結果に結びついた。

こいつの弱点は、そこだったのかもしれない。
そして




ドゴォウッッ!!!!




「(スタッ)やったか!?」

『手ごたえは確かにあったね』


「・・・・・」



地面に叩きつけられ、土煙に紛れて姿の見えないコックローチアンデット。
そこに視線をやって、ディエンドがとりあえずラウズガードを投げた。









ビッ!!という音とともにカードはコマ切れにされ、直後彼ら三人は地面に叩きつけられる結果となった。



「がっ」

「グワァ!」

「ウォッ!?」



「さっきのはやばかったぞ。炎に重圧とか・・・・オレを本気で叩き潰す気かよ」



倒れる三人の前に、いきなり現れるコックローチアンデット。

速い。
まったく攻撃の動作が見えない。



「もう出し惜しみなどせんぞ。最初からこのスピードでいかせてもらう」

「遠慮・・・したいね」

「すぐキレるあたり・・・っと、単細胞の害虫野郎ってわかるよなぁ」

『出来れば僕もこいつのことは検索したくない』



そういって立ち上がる三人。しかし、この状況では戦闘に持っていくことすら困難かもしれない。



「ハクオロさんはほかの何人かを連れてきてください」

「なに?」

「この中でほかの集団戦闘に入って戦力になるのは君。だからその代わり、あっちから誰かを呼んできてもらいたいんだ」

「・・・・・わかった」



メンバーの入れ替え。


これ自体は最初から想定していたことだ。

集団戦闘をしているのは中級アンデットばかり。

そちらの戦闘は相手がそれほど強くないため、それなりに楽な現場だ。
ただ数があまりにも多いので、どれだけ戦えばいいのかわからないというのが不安なところだが。


コックローチアンデットの相手をずっとできるような人間などそうはいない。

翼人相手でも手こずるのだ。
メンバー三人そろったところで勝つのは至難の業。

だったらローテ―ションしてこいつと戦い、翼人が来るまでの時間を稼げばいい。


幸いにして、瞬風の中には結構な医療班がいる。
もしダメージを負いすぎたら、そっちで回復すればいい。


だからこうしてメンバーが入れ替わるのは別にかまわない。
最初からそのつもりだったから。


想定外だったのは



(こちらの消耗が早すぎる・・・・強い・・・!!!)




コックローチアンデットの異常な強さだった。
この状況で、こいつはまだまだ速く、そして攻撃は重くなる。


この状況で、翼人が来るまでの時間稼ぎをするなどということは・・・・・



「悪夢にしてはきつすぎるぞ・・・・・!!!」



皆が戦う現場に向かって、ハクオロが呟く。


この戦い、戦力差はこちらの方が最悪低い。
せめて上級アンデットと翼人の数さえ合えば・・・・・



ふと、一人の姿が頭に浮かぶが、すぐに頭を振ってそれを掻き消す。

ないものねだりをしている場合じゃない。
今のこの状況を、確実に乗りきらねばならないのだ。




勝利のために、一国の王が森を走る。




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「オオオッッ!!」


ドンッ!ドドドドンッ!!!



桜の森を抜け、離れた荒野。
そこで五つの爆発と共に、アンデットが吹き飛んでいた。


その中心にいるのは、クラウド・ストライフ。

その様子を、大きな岩の上に立ってドーベルマンアンデットが眺めていた。



「一薙ぎで中級アンデット五体を一掃。さすがですねぇ(ドンドン!)」


そう言いながらも、クラウドへと発砲を続けるドーベルマンアンデット。
それをも弾くクラウドだが、服はすすけており、頬にもうっすらと切り傷が出来ていた。


さっきからこいつはそうだった。
下手な戦闘は行わず、どこから出てきたのか分からないが中級アンデットを呼び出してそれをクラウドにぶつけていたのだ。



「オレァまだまだ未熟者よ。ですからこうして入念にいかっせてもらいまっせェ!!」

「こいつ・・・・」

「イケイケイケぇ!!!」



ガァァァアアアアアアアアアアアアアあああ!!!!



一歩引き、無茶はせず


自分の力量を見て、前面衝突は避けるこのアンデット。
絶対に周囲からアンデットが離れない。




「かかって・・・・こい!!」

「俺は翼人ほど強くないんだ。賢く狡猾に、行かせてもらうましょうな!!」

「・・・・・ふん」



クラウドが剣を握り、ドーベルマンアンデットへと斬りかかる。
それを遮る有象無象のアンデット。



相手は強敵。
どれも一筋縄ではいきはしまい。





to be continued
 
 

 
後書き

各場所での戦闘でした!!


理樹はどこ行ったかって?
彼は・・・・・ほら、海中に行っちゃったからカメラが大変なんだよ!!だからさ!!


蒔風
「何言ってんだあんた」


状況としては


観鈴はジリジリと削られ。
一刀は暗闇の洞窟で目が見えず。
クラウドは取り巻くアンデットに邪魔されていますね


蒔風
「コックローチアンデットにはどんどんローテで戦うみたいだけどな」


メンバーが持つかどうかだよなぁ・・・・・



と、いうわけで次はとりあえず理樹の戦いでいきますかね!!

ではまた次回

 
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