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提督はBarにいる。

作者:ごません
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実録!ブルネイ鎮守府24時・その1

 
前書き
 今回は趣向を変えて、提督の鎮守府の一日を秘書艦目線で追ったお話となっています。最初は日常系の話になっておりますが、『いつもの』もちゃんと出てくる予定です。 

 
06:00 【秘書艦と総務課長の打ち合わせです!】

 おはようございます、陽炎型4番艦・親潮です。今日は私が一日秘書艦を務めますので、執務室に向かっています。

「……あら、親潮さん。お早うございます」

「お早うございます、大淀さん。早いですね」

「いつもこの位の時間ですよ、私は」

 執務室前で出会したのはこの鎮守府の総務を取り仕切っている大淀さん。いつも忙しそうに動き回っていて、いつ寝ているのか解らないとまで言われてます。

「さて、親潮さんの訓練課程も今日の秘書艦業務を終えれば全課程終了です。今日も一日油断せずにお仕事をしましょうね?」

「ハイッ、心得ております!」

 私が敬礼をしてみせると、大淀さんはニコリと微笑んだ。この鎮守府の業務形態はかなり変わっている。殆どの鎮守府では秘書艦を固定して仕事をするのに、この鎮守府では秘書艦は日替わり。ベテランも新人も分け隔てなく、秘書艦業務を行う。勿論、大淀さんのサポートがありつつやっていくのでそんなに難しい事はない。私もこの鎮守府に着任して様々な訓練をしてきたが、今日の一日秘書艦をやり遂げれば、晴れてこの鎮守府の一員という事です。頑張らなくては!

「お~、相変わらず早いなお前ら」

 執務室のドアの前で話し込んでいたら、中からノッソリと熊……じゃなくて熊みたいに大きな人影が出てきた。

「あ、お早うございます提督」

「お早うございます!」

「ん、あぁお早うさん……つっても今から俺は寝るんだけどな!」

 ガッハッハと豪快に笑うこの男性こそ、この鎮守府のトップである提督です。ウチの提督は少し……いえ、かなりの変わり者です。階級は大将とかなり偉いのに偉ぶったりしないし、凄く気さくな方です。それに毎晩艦娘達にお酒や料理を振る舞って労う……とても素晴らしい方だと思います、ちょっとお顔が怖いですけど。

「んじゃ、いつも通り昼まで寝るから任せたぜ。あばよ」

 くぁ~……と欠伸をしながら立ち去る提督。6時までお店を開けている提督は、12:00まで睡眠を取られます。緊急事態でも起きない限りは起こす事はせず、その間午前中の業務は全て艦娘に委ねられます。責任重大です!

「さてと、私達も打ち合わせを始めましょうか」

「はいっ!」

 執務室に入った私と大淀さんは、昨夜の内に届けられた書類などをチェックしつつ、今日の仕事内容を確認します。

「08:00から各班の班長とのミーティングですから、その前に朝食を済ませてしまいましょう」

「了解です」

 さて、今から食堂に移動してご飯です!




07:00 【朝食は活力の源です!】

 腹が減っては戦は出来ぬ、大淀さんと一緒に食堂へ移動して朝食です。まだ7時だというのに、食堂は凄い賑わいです。……まぁ、これは毎朝の事なんですが。

「あら、お早うございます親潮さん♪」

「お早うございます、間宮さん」

 甘味処の店主にして、食堂の管理人でもある間宮さん。いつもニコニコしながら美味しい料理を作ってくれます。

「今日は秘書艦ですか、大変だと思いますけど頑張ってくださいね」

「ハイ、ありがとうございます」

 そんな会話を交わして、定食のお盆を受けとります。今日の朝定食のメニューは鯵の開きに納豆、冷奴とお新香に小松菜の煮浸し。ご飯とお味噌汁はセルフサービスでお代わり自由です。

「あら、お早う親潮。今日は早いのね」

「おや、初風でしたか。今日は秘書艦業務なので……」

「あぁ、そういう事。これから先輩方とミーティングってワケね、御愁傷様」

 話しかけて来たのは妹の初風でした。彼女の持つお盆の上には大盛りの牛丼が乗っています。朝からヘビー過ぎると思うのは私だけでしょうか……?

「あぁこれ?これから他の鎮守府まで出張って演習なのよ。しっかり食べておかないと、旗艦の五十鈴さんにどやされちゃうから」

 そう言って初風は牛丼の上に生卵を落とし、七味をたっぷりかけて食べ始めます。私の所属するこの鎮守府は、ブルネイ泊地に所属する鎮守府の纏め役も担っており、艦娘の数も質も頭一つ飛び抜けています。その為、他の鎮守府に要請されて演習に向かう事もしばしば。

「今日は相手が潜水艦隊らしくてね。思いっきり爆雷叩き込んでやるわ」

「あはは……頑張ってきてください」

 鼻息荒くそう語る初風に、私は苦笑いしか出てきません。初風は妹ですが、着任は私よりも先。言ってみれば先輩なのですが、後輩の私を姉として敬ってくれます。

「親潮、アンタも朝ごはん急いだ方が良いわよ?」

「え?……あっ!」

 時計を見るともう07:40。ミーティングは08:00からですから、急がないと間に合いません!




08:00【ミーティングは緊張します……】

 どうにかミーティングに間に合った私は、大淀さんからある物を手渡されます。

「大淀さん……これは?」

「今日のスケジュール等のデータが詰まったタブレットです。これを使って親潮さんには皆さんに予定の説明をお願いします」

 えええええええ!?わわわ、私タブレットなんて使った事ないですよ!でもでも、今更使えないなんて言えないし、あぁもうどうしよう!なんて考えてる内に班長の皆さんが続々集まって来ていて今にも会議が始まりそうです。

「え~、皆さんお早うございます。早速ですが毎朝恒例のミーティングを始めたいと思います。親潮さん、今日の予定を皆さんにお伝えして下さい……親潮さん?」

 あぁ、どうしよう……頭真っ白でどうしたらいいか解んないよもぉ。

「ヘイ、親潮!」

「ひゃっ!?」

 いきなり大声で名前を呼ばれて変な声が出てしまいました……。声の主は金剛さん、この鎮守府で一番錬度が高い艦娘であり、提督の奥様でもあります。何か不手際でもあったでしょうか?ツカツカと近付いてきた金剛さんは、ぐいっと顔を寄せてきて

「だいぶ緊張してるネー?Don't worryデース!初めてやるのに失敗して怒るような娘はウチには居ないですから」

 そうやってニッコリ笑って頭をポンポンされた。何だか恥ずかしいやら嬉しいやら、複雑な気分です。他の班長さん達も微笑ましい物を見るような眼差しでこっちを見ている。

「親潮さん、タブレットの使い方が解らなければ教えますから。焦らずに、落ち着いて」

「は、はいぃ……」

 タブレットが使えないの、バレてました。


「えぇと……今日は新たな海域攻略の予定はありません。護衛任務は幾つか入っていますが、既に出発済みです」

 その後は大淀さんに教わりながら、タブレットで今日の予定を確認していきます。

「警備班は午後から提督に会談の予定が入っていますので、確認をお願いします」

「ほいほーい」

 気の抜けた返事は警備班長の川内さん。夜はあんなに怖いのに、朝が弱いのは本当なんですね……。

「装備開発班は、陸軍に頼まれていた装備の改修は終わってますか?」

「終わってるよ~」

「では、お昼頃に本土から受け取りの貨物船が入港予定ですので搬出をお願いします」

「了解、了解」

 開発班のトップは明石さんなのですが、今手が離せないとの事で代理の夕張さんが出席してます。その他経理や主計課等の予定も確認し終わって、どうにかミーティングは終わりました。

「では皆さん、今日も一日頑張って業務に励みましょう」

 大淀さんの掛け声で、班長の皆さんが一斉に敬礼します。一糸乱れぬその動き、惚れ惚れする程かっこいいです。私もこうなれるように頑張らないと! 
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