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巫女のホグワーツ入学記

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決闘? バカが数人いたわね

 
 翌日から、私は一人で行動した。
 ドラコは一緒に来ないかと誘ってくれたんだけど、彼の隣のパンジーが物凄い睨みつけてきたので、断った。一人の方が行動しやすいし。
 教室は何処にあるのかが分からなかったが、動く肖像画やゴーストに聞けば丁寧に教えてくれた。特にスリザリンのゴーストである「血みどろ男爵」は、文字通り血みどろで不気味ではあるが、いざ話すとユニークな奴だった。

 授業は大して難しいモノではなかった。
 魔法の原理、使い方、実践、知識ーーたくさんの事を有する学校だったが、幻想郷で鍛え上げた私の巫女としての力は、魔法界でも通用した。
 杖を扱う魔法は初めてだったが、特に失敗する事もなく難なく使える。

「『ウィンガーディアム・レヴィオーサ 浮遊せよ』」

 呪文学の授業では、「浮遊呪文」をした。私は一回で羽を浮かばす事が出来たが、皆中々苦戦しているようだった。
 別にそんなに難しくない。私の他にこの呪文で成功したのは、グリフィンドールのハーマイオニー・グレンジャーだけだ。
 もしかして彼女が、もう一人のハリーの親友となる人物だろうか。

 ロンは私を見るとキッと睨みつけ、顔を背けてしまった。
 何か怒っているようだったが、私は何かをした記憶はない。

 ハリーは有名人のようだったが、スネイプの魔法薬学の授業では、それが裏目に出ていた。

「あぁハリー・ポッター、我らが新しいスターだね」

 冷たい地下牢教室の中、先生はそれに負けないくらい冷たく、嫌味たらしく言う。
 スリザリン生は笑い、ハリーは羞恥心に耐えていた。

 その後もスネイプはハリーに魔法薬の材料に関する質問をいくつか投げかけたが、彼は答える事ができず、結局何故か私が答える羽目になってしまった。
 お前のせいだぞポッター。

 教科書は一応読んでいたので、正しい答えを言う事ができた。
 故に、スリザリンには5点が加算。
 その後も、ネビル・ロングボトムの鍋が爆発したのはハリーのせいだと減点したり、ハリーを目の敵にしたりしていた。スネイプはスリザリン贔屓だと聞いていたが、まさか此処までとは思わなかった。

 私はこの一週間の間、空いた時間があれば図書館へと足を向けた。
 それは決闘のための予備知識を持っておくためでもあるし、ただ単に知識を増幅するためでもある。
 元々本が好きというわけではないが、この世界においては重要な存在だ。時間のある時に読んでおいて損はないだろう。
 本当は寝ていたいけど。

 大した事件は起こらなかったが、「飛行訓練」の時間にドラコに挑発されたハリーが箒に乗り、退学ギリギリになったけれど、その代わりにグリフィンドールクィディッチチームのシーカーになったーーみたいな事件があったと思う。
 別に箒なんて、空を飛ぶ程度の能力を持っている私にとって不要なモノだ。
 そして、案外早く一週間は終わった。昼休みになると、私はパンジーとその取り巻きに連れられ、湖のほとりまできた。そこにはドラコ達も含め、多くのスリザリン生が待機していた。
 9月中旬の風はもう冷たくなっていたが、湖の水は生温かった。聞いた話だと、湖には大イカや水中人(マーピープル)がいるらしい。

「さぁ、始めましょうかパンジー」
「気安くファーストネームで呼ばないで。…そうね、始めようか」

 この頃幻想郷で「異変」が起きなかったので、もしかすると体が鈍っているかもしれない。
 私は大幣を取り出し、小さく息をついた。大幣を見たパンジーは私を嘲笑う。

「一体、そんな紙切れで何をするっていうのよ」
「残念。これ紙切れじゃないのよ」

 大幣は、巫女の持つ道具の一つ。人はこれで自らの汚れを落とすとされている。私は基本、弾幕を大幣から出している。故にこれ自体にも強い霊力が宿っているのだ。私は、自分の杖と大幣を重ねて構えた。これで、霊力と魔法力が重なり、より強力な魔法が使える。既に実践済みだ。

「ドラコぉ〜、合図をしてくれなぁ〜い?」
「ハイハイ…」

 パンジーも私と同じく杖を構えた。ドラコはパンジーに呆れを抱きつつも、とりあえず審判を始める。

「ハーイ、じゃあ始めるよー」
「何でそんなやる気なさげなのよ…」
「杖を構えて…3、にーー」
「『ペトリフィカス・トタルス 石化せよ』!」

 パンジーはドラコの言葉を聞いていなかったが、数字を完全に無視して呪文を打ってきた。しかしだまし討ちは想定内なので、私は小さくため息をついてそれを避ける。周りにとっては一瞬で出来事だろうが、私はただ横に動いただけだ。

「…それだけ?」
「ッ…」
「結構強気だったから、期待したんだけどー…」
「『デンソージオ 歯呪い』!」
「ん?」

 パンジーを隙をついたつもりだったのだろうか。私に向かって呪いを放ってきた。しかし杖の一振りでそれを防ぎ、おまけに跳ね返してパンジーにかかった。彼女の前歯はみるみるうちに伸びていって、やがては喉まで届いてしまった。醜い姿をドラコに見せたくないようで、杖を取り落として自分の歯を隠した。

「ドラコ、決闘はどうやったら勝ちなのかしら?」
「えっ…相手をノックアウトさせたりとか?」
「あっそう。『ステューピーファイ 失神せよ』」

 私が放った魔法はパンジーに激突し、失神させると同時に、彼女を湖の方へと投げ飛ばしてしまった。皆あまりに一瞬の出来事で固まってしまった。パンジーの立っていた芝生の上には、彼女の杖だけが虚しく転がっていた。

「げッ…」

 私は湖の淵まで走って行って、混乱し慌てて湖の中を探しているスリザリン生を尻目に呪文を唱えた。

「『アクシオ パンジーよ、来い』」

 すると、何処からかずぶ濡れのパンジーが打ち上げられ、土に激突した。そこに何名ものスリザリン生が集まり、パンジーに声に向かって叫んだ。

「死なないでパンジー様!」「大変! やはくマダム・ポンフリーを呼ばないと!!」「連れて行くわよ!!」

 パンジーの取り巻きか何かは、彼女を抱えて城の方へ走って行ってしまった。私は失神状態を回復させる呪文をかけようとしたが、「人殺し! 近寄るな!」と言われてしまったので、まぁ手を出さないでも良いだろう。見物に来ていたスリザリン生の何人かは彼女の身を案じてついていったが、彼女はスリザリン内でもあまり好かれていたわけではないようだった。

「…ドラコ、私は知らないわよ。仕掛けてきたのはあっちだからね」
「分かってるが、巫女の力っていうのは凄いな。『失神呪文』はただ相手を気絶させるだけだと思ったけど」
「私の霊力が混ざっただけよ」
「霊力…?」

 私は大幣と杖を仕舞った。私はいかなる相手でも手加減はせず、容赦しない。前も言ったような気がするけど…
 一度、誰かと弾幕を使うくらい本気ややり合いたい。戦闘が好きというわけではないが、ずっと魔法の勉強をしていても、体が鈍るだけだ。一度、ホグワーツの周りを箒ではわくのも悪くないかもしれない。

 それからも、とりあえず何の出来事も起こらずに時を刻んだ。何故だかスリザリン内で「猫巫女霊夢」というあだ名がついていた。何やら頭につけているリボンが猫の耳のようだからだとか。あれからパンジーの姿をあまり見かけなくなった。私を避けているようだったが、ドラコにも馴れ馴れしい態度は見せなくなった。そして決闘の要因となった一つであるドラコは、何故だかいつも私についてくる。私は一人でも良いのに。

 そして、ホグワーツでは「ハロウィーン」という行事が行われた。何やら、収穫祭やら仮装やらカボチャやらと、中々楽しいモノだと聞いたが、別にいつもと変わる事のない日となるだろう。
 しかし、そんな私の考えは予想しない形で裏返った。
 賑やかないつもよりも豪華な即時の並んだ、夜闇のホグワーツの大広間。ヒステリックな声と同時に、紫色のターバンを纏った人間が大広間へと飛び込んできたのだ。

「トロールがァア!! 地下室にぃィ! キエェエエエ〜…」

 奇声を上げると、彼はニンニクの匂いを漂わせながら、その場で倒れこんだ。ニンニクの匂いはあの気色悪いターバンからしてくるが、それは昔アルバニアの森で「吸血鬼」に遭遇したからだという。ホグワーツは魔法界で一番安全だと言われているのに、そこに乗り込んでくる吸血鬼って…いや、レミリアやフランならできるか。咲夜とか時間止めればすぐだし。
 生徒達はトロールと聞いて慌てふためいたが、ダンブルドアの鶴の一声ですぐに静まった。

「監督生は、下級生を連れてすぐに寮に戻るのじゃ…先生方は…」

 生徒の雪崩に巻き込まれそうになったが、私はすぐさま魔法で姿を消し、トロールを探し始める。この世界の生物の力を見てみたかったからだ。先生方よりも先に見つけなければならないので、私は目を閉じて気配を感じ取る。一番近くのトイレの方から、何やら人ではない空気が感じられた。私は若干能力で飛びつつ、そのトイレを目指した。
 トイレの中から、数名の叫び声と低い唸り声が聞こえてきた。先に遭遇した生徒がいたのか。
 私は否応なしにトイレの扉を蹴飛ばして、中に飛び込んだ。中では、醜い顔のデカブツがハリー・ポッターやロン・ウィーズリーと戦っていた。戦いといっても、気を逸らしたりしているだけだった。
 ふとトイレの個室の方の目をやると、ハーマイオニー・グレンジャーが腰を抜かして倒れている。

「霊夢! 助けてくれ!!」

 ロンの悲痛の叫びが私の耳の中で木霊した。そんな事をしなくても、元よりやるつもりだ。

「ちょっと隠れてて」

 私がそう言うと、彼等は素直にトイレの個室の中に隠れた。私は大幣と杖を取り出し、トロールに向けつつ色とりどりの弾幕をその怪物にぶつけ続ける。トロールは狂おしげに暴れまわろうとしたが、私の弾幕の威力は凄まじく、一瞬でトロールは灰となり散った。

「あ、あれ…手応えがない…」

 威力を上げすぎたかもしれないけど、私には「敵に手加減する暇があったら寝ろ」という座右の銘らしき何ちゃらがある。トロールは中々強いと聞いたが、弾幕の前では障害にもならないのかもしれない。これは本に嘘をつかれた。
 私が灰を蹴飛ばすと、個室から出てきたハリーはお礼を言ってきた。

「あ、ありがとう霊夢。助けてくれて…」
「別に。私がこいつを倒してみたかっただけ。弱かったけど」

 ロンは自分の赤毛とは対照的に顔を真っ青にし、トロールがいない事を確認するとヘナヘナとその場に倒れこんだ。

「ひえぇ〜おったまげた」

 栗毛のグレンジャーも出てきて、私に丁寧に頭を下げた。

「ありがとう霊夢。おかげで助かったわ。私、ハーマイオニー・グレンジャーよ」
「知ってる。アンタ…目が腫れてるけど、一体何していたの? もしかして、便所で告白して振られた? うーん、場所を間違えたわね…」

 私が苦笑を浮かべながら言うと、ハーマイオニーは苦々しく口を開こうとする。

「違うの霊夢…えっと…」
「別に噂を拡散しようって気はないから、安心しなさい」

 射命丸みたいにスキャンダルに飢えているというわけでもないしね。

「そういえば、何で私の名前を?」
「霊夢は有名よ。最強『猫巫女霊夢』ってね。あと誰も告白なんてしてないから」
「そのあだ名つけた奴誰だ…!!」
「何だっけ…そうそう! マグルの方で大量殺人を犯したって聞いたけど!」
「やってないわ」

 ロンは笑顔で言うが、そんな物騒な事私はしていない。
 咲夜あたりならレミリア等のために人間狩りに出かけるかもしれないが、私は基本妖怪や向かってきた相手以外に危害は加えない。
 少しすると、息を切らした先生方が駆けつけてきた。皆私の後ろ姿と足の下の灰を見て、頭の上に疑問符を浮かべた。マクゴナガルは口元をヒクヒクさせて、私にそっと話しかける。

「み、ミス・ハクレイ? この灰は一体…」
「あぁマクゴナガル先生。私がやりましたけど…んー、地下室にいたらしいけど何故か女子トイレにいる変態弱小トロールの成れの果てです。魔法生物にまで下心があるとは…この世界怖いッ」
「いや絶対違うから。そんなのないから」

 幻想郷にも、人の着替え見たりロリコンだったり鼻血出したりetc…の変態は大勢いるが、魔法界にも潜んでいるとは…魔理沙、来なくて良かったわね。これもこれで、パチュリーの魔理沙への報復のつもりだったのかもしれない。幻想郷の魔法使い…弱いけど、知恵だけは働くものね。

「トロールを灰にするとは…一体どんな魔法を使ったのだ?」

 スネイプは、タイル床に盛り上がって置いてある灰を手に取った。指の隙間から刹那と流れ落ちる灰色の死骸は、今は命なきしてキラキラと輝いていた。
 彼の問いの答えに、弾幕…とも言えず。ふとスネイプの足を見ると、何やら血が流れているようだった。

「先生、怪我していますね」
「気のせいだろう。我輩は…ッ。さ、さぁ答えろ博麗」
「『インセンディオ』でバン」
「もう少し多く」
「変態トロールが私の方へ向かってきたので、私はパパパンと杖をヒョキッとし、ぐにゃんぐにゃん動かして『インセンディオ』でバン」
「もっと分からん…もう良い!」

 説明は苦手だ。どうしても擬音語を使ってしまう〜云々は嘘なのだが、スネイプは私では話が分からないと判断し、ハリー達を睨みつけた。

「あぁあまり彼等は責めないであげてください。青春の1ページを、先ほどまで刻んでいたのだから」
「だから違うよ霊夢…」
「さて、何故この場所にいたのですか? 貴方達は寮に戻っているはずでしょう?」

 マクゴナガルは厳しい口調で聞いた。紫ターバンのクィレルがその時に入ってきたが、トロール生の哀しき集大成を見た瞬間、心臓発作を起こしてその場に倒れこんだ。先生方は気にする様子もなく、ただ私達に視線を向ける。
 すると、ハーマイオニーが叫んだ。

「わ、私! トロールの事を本で読んで、倒せると思ったんです。ハリーやロンや、霊夢がきてくれていなければ死んでたと思います」
「ミス・グレンジャー…貴女には失望しました。ポッター達も、もしかすると死んでいたかもしれない。グリフィンドールから10点減点です」

 あ、あれ、私忘れられてる…?

「ただし、その勇気は讃えましょう。グリフィンドールに15点」

 結果、グリフィンドールは5点だけ稼いだわけだが、当の私はスルーだった。別に減点も加点もいらないので構わないけど。
 すると、再びマクゴナガルは私を見ながら口を開いた。

「彼女は私の管轄ではありませんセブルス。煮るなり、焼くなり、罰を与えるなり、減点するなり、加点するなりは、貴方の判断です」
「ふむ…」

 スネイプは腕を組みながら唸った。

「スリザリンに、20点だ」
「分かりました」
「博麗、もうこのような事がないように」
「あれ、人助けはいけない事なのでしょうか?」
「別寮である事を踏まえると、君は彼等を助けにきたのではあるまい? 君ももしや…グレンジャーと同じようにトロールを倒せると自負していたのでは?」
「まさか、ね」

 私は嘲笑うと、スネイプと目を合わせた。途端に何かが心の中に土足で踏み込んでくるような気配がしたが、私は心の中でスペルカードを使うイメージをして、その気配を取り払った。するとスネイプは邪険な表情をより一層深めた。

「生徒達の噂になっているぞ。何やら紙切れのついた魔法具でパーキソンを叩きのめしたらしいな」
「仕掛けてきたのはあっちですので、私に非はないです」
「それは承知だが…あまり自分の力を過信しすぎるなと言っているだけだ。さぁ、早く寮へ戻れ」

 スネイプに色々言われてしまったが、特に気にする事もない。加点してもらえただけまだマシ…というか、流石スリザリン贔屓だ。
 私はハリー達と一緒に外に出た。スリザリン寮とグリフィンドール寮の分かれ道に差し掛かると、今までずっと黙っていたロンが口を開いた。

「霊夢、何で君はスリザリンなんかに入ったんだい?」
「今更な質問ね。組み分け帽子が私をスリザリンに入れただけ」
「でも、トロールを灰にする勇気があるなら、グリフィンドールの方が向いている。霊夢は野望なんてないだろ?」
「当たり前よ。特に魔法界でしたい事もないし…」

 強いて言えば、今だけでも楽しもうという心持ちだけだが。組み分け帽子には「意欲がない」と言われてしまった身だが、別に意欲があった所で結果が変わるかと言われれば、そうではない。ただスピードが上がるだけだ。
 組み分け帽子は、寮で切磋琢磨しあう事が大事だと言っていたが、別段仲良しこよしではないので、そんな事もない。確かにグリフィンドールでも良かったかな。

「あと、霊夢、入学してからずっと邪険になっていてごめん」
「私、そんな風にされた記憶はないけど…」
「違う。ずっと避けてたんだ。君だって気がついただろ? 家族、なのに…」
「別に避けられている記憶もないけど、うーん、家族ね…私に家族はいない」

 家族なんて知らない。要らない。分からない。
 私は一人でも生きていける。幻想郷では、「異変」を解決して、好かれて、ワイワイ騒いで神社で宴会をしてーーそんなループの繰り返しだ。ただそれだけ。魔理沙も霖之助もレミリアも咲夜もさとりも紫も妖夢も幽々子も諏訪子もーー私に懐いている皆は、本当に私にとって必要なのだろうか。
 私の言葉を聞いたロンは、悲しい表情を浮かべ、その後言葉を口にする事なく別れた。

 翌朝、私がドラコ達とご朝食を食べていると、彼は機嫌が良いようでこんな事を話し始めた。

「今晩、ポッター達と決闘をする約束をした」
「今のホグワーツは決闘ブームなの?」

 私がパーキソンをぼっこぼっこのぼこの助にしてから、何故だかホグワーツでは決闘が流行り始めたそうな。休み時間になると湖近くや中庭に行き、自分の知る限りの呪文を使って相手をノックダウンさせるのが楽しいとの事だ。図書館は攻撃系魔法の本が全て貸し出されているので、独学するしかない。弾幕をどうにか魔法のようにしてみたいが、何処か誰にも邪魔されない良い場所はないだろうか。

「それで、由緒正しき家系の息子は、夜ホグワーツを出歩くという校則違反を犯すのー?」
「いや。そんな事するわけがない。見す見すポッターとの約束を守ると思うかい?」
「ないわね。相変わらず嫌な奴」
「あいつ等に言うのかい?」
「残念ながら、私はそこまでの善人じゃないわ。面倒くさいし。昼寝している方が有意義ね」

 私は欠伸混じりに言う。隣のクラッブとゴイルはいつも甘いものばかり食べているけど、健康に大丈夫なのかしらね。私も神社ではお茶とお茶菓子ばかり飲んでいたから、人の事は言えないけどね。
 いつも彼等は話さない。否、話を振っても唸るだけ。喋る事ができるのは確かなのに、何故だろうか。マルフォイは確かに由緒ある家系だが、彼の前では言葉を口にしてはいけないという決まりでもあるのだろうか。
 試しにこんな話を振ってみる。

「そうだわ、今度魔法でお菓子でも作ってみようと思うのだけど、クラッブとゴイルは何が好きなのかしら?」
「僕には聞かないのかい?」
「アンタは雑食でしょ。適当な詰め合わせでも作ってあげるわ。私はそれよりも、いつもアンタのパシリになってる2人に作るわよ」
「別にパシリには…してるか。ごめん2人共。もうパシリにはしないから霊夢、僕にもお菓子を作ってくれよ」
「随分と必死ね。冗談よ。アンタにも作るわ。…テキトウニ」
「最後に何か言っただろ…」

 ドラコは諦めの表情を浮かべ、トーストに赤いジャムを塗りたくり、かじりついた。あ、そのジャムはーー

「辛っ!!」
「あードラコそれ塗っちゃったー激辛ペッパー塗っちゃったーアホだバカだ、わー」
「み、みず! 水ゥウ!!」

 ドラコは自作の激辛ペッパージャムを塗ってしまい、口から火を吹いている。暇だったから、私が適当な分量の胡椒やら唐辛子やらその他諸々を入れて鍋で煮込んで1日放置した大傑作だ。是非残さず食べてもらいたい。

「み、水?」
「水…ふぉい」

 クラッブとゴイルは暴れるドラコを見て首を傾げ、近くにあった水差しを取り、彼の口に流し込んだ。軽い水攻め状態だが、辛いよりはまだマシだろう。何故か「シュワァア」という効果音が聞こえたような気がしたが、きっと気のせい。うん気のせい。
 この日からドラコは、死ぬまでジャムは食べないと心に決めたらしい。残念。ちなみに、メイドイン霊夢さんの激辛料理パート2の、「わさび大量塩増量★激ウマwwメロンww」は教職員テーブルに潜ませておいた。この時期にメロンを食べる人間はいないかもしれないが、きっと好きな先生はいるはずだ。このメロンには、1日効果が続く呪いをかけておいた。さぁ、誰が食べるかな。

 この日、「闇の魔術に対する防衛術」は休講になった。
 
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