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レーヴァティン

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第二話 異世界その九

「それは」
「いや、こっちの話です」
 神父がわからないと見てここは口を濁した。
「俺達の世界の」
「そうですか」
「はい、ですから」
「それで、ですか」
「気にしないで下さい」
「では」
「はい、それじゃあすぐにです」
 久志は村の出口の方に足を向けてだ、神父に言った。
「神殿に向かいます」
「そうされますか」
「俺もだ」
 英雄も言った、彼も足を向けた。
「すぐに行く」
「貴方もですか」
「思い立ったらだ」
 それこそという口調での言葉だった。
「そうした考えだからな」
「ではお二人で」
「俺は群れることはしないが」
 ここでも久志を見て言った。
「しかし旅で一緒になるのならだ」
「いいっていうんだな」
「それなら構わない」 
 こう久志に応えた。
「たまたまだ」
「やれやれだな」
 久志はその彼に笑って言う、そして二人は共に神父に別れを告げてそうして共に村を出た。そうしてからだった。
 久志は隣にいる英雄にだ、共に歩きつつ言った。
「なあ、いいか?」
「何だ」
「御前は一人でもいいっていうんだな」
「俺としてはだ」
 返事は変わらなかった。
「別に構わない」
「やっぱりそう言うんだな」
「御前は違うのか」
「御前みたいにいつも一人でいたいとかじゃないさ」
「そうか」
「ああ、というか御前本当に素っ気ないな」
「飾るつもりがないだけだ」
 英雄は実際に何の素っ気もなく言葉を返した。
「俺はな」
「そう言うのかよ」
「何度も言うが俺は群れる趣味はない」 
 また言ったのだった。
「誰ともな、剣道は好きだが」
「同じ部員ともそうなのかよ」
「そうだ、群れる趣味はない」
 言葉の調子は変わらなかった。
「誰ともと言ったな」
「それでかよ」
「何度も言うが意地の悪いことをすることもしない」
「暴力もだな」
「下衆な真似は嫌いだ」
「それはいいにしても友達作らないのかよ」
「いや、いる」 
 前を見つつ言う、正面には森がありその間に道がある。細い山道は上が森の木々に覆われてそれが雨除けになっている。
「俺にもな」
「ああ、馴れ合わないってことか」
「そういうことだ、べたべたとな」
「そういうことか」
「そうだ、そして御前はだ」
「友達じゃないか」
「そもそも自分で友達と思っていても相手はどう思っている」
 久志に横目で鋭い視線を浴びせて問うた。
「どうだ、それは」
「そう言われるとな」
「わからないな」
「ああ、相手の本音なんてとてもな」
「そういうものだ、友達の関係はわかりにくい」
 友情論、それを語った言葉だった。 
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