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王様の道楽

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第一章

                 王様の道楽
 昔々ある国にとても食いしん坊の王様がいました。王様はいつもはとても優しく民のことを考えているいい王様でした。
 ですが王様はとても食いしん坊でいつもこう皆に言っていました。
「美味しいものを食べたいぞ」
 とにかく何でも食べます、食べられるものならそれこそ椅子や飛行機や船、人間以外なら何でも食べたがります。この日はこんなものを食べていました。
「今日は海藻のサラダと平目のお刺身とお吸いもの、海老と鱚の天麩羅ですが」
「美味しいぞ」
 お箸を上手に使って食べて言うのでした。
「日本のお料理も美味しいな」
「左様ですか」
「昨日の中華料理も美味しかった」
 昨日食べたもののお話もします。
「そして今日の和食もだ」
「美味しいのですね」
「そうだ、こんな美味いものは余だけが食べてはいけない」
 王様は白い御飯をおかずにしつつお刺身を食べて言います。
「だから皆も食べられる様にしよう」
「皆と言いますと」
「国民の皆だ」
 王様の治める国のというのです。
「国民の皆が食べられる様にしよう」
「お刺身も天麩羅もですか」
「サラダもだ」
 こちらもというのです、サラダは和食ではないですが王様は海藻がたっぷり入っているそれも楽しんでいます。
「この海藻も食べられる様にしよう」
「具体的には」
「お魚や海老、海藻を養殖するんだ」
 そうしてというのです。
「そして皆が食べられる様にしよう」
「ですが王様」
 ここで大臣の一人が王様に言いました。
「我が国には山があり」
「そこにはかい?」
「はい、生ものは送れませんが」
「そうなのかい?」
「ですから国民の誰もがお刺身を食べられないですが」
 海から離れた場所はというのです。
「残念ですが」
「いや、それならだよ」
「それなら?」
「何かいい方法を考えよう」
 王様はあくまで皆が美味しいお刺身を食べられる様にしようというのでした。こんな美味しいものは皆で食べるべきだと思ったので。
「ここは」
「と、いいましても」 
 大臣は王様に怪訝なお顔で尋ねました。
「具体的には」
「どうするかだな」
「はい、それは」
「これから考える、例えばだ」
「例えば?」
「漁港から山の方の街や村までだ」
 お魚の漁れる漁港からというのです。
「道を整備する」
「人が通りやすい様にですか」
「そうすれば漁港から山まで速く行けるな」
「はい、確かに」
「そして確か」
 王様は美味しいものを食べるその中で得た知識から言いました。 
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