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顔はいいけれど

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第四章

 そのうえで極秘に、実際にそうしてジョーイの取材というか調査をはじめた。だが、だった。
 彼は仕事先にいつも急に、だが予定時間にはマネージャーと一緒に来る。移動の車の前にも何時の間にか出て来ていたのだ。
 車の前までの移動の経緯すらだ。全く掴めないのだった。
「煙みたいだね」
「そうですね。急に出てきましたね」
 梨本も記者もジョーイ、急に出て来たので驚いていた。
「本当に煙みたいですよ」
「君、ジョーイ見た!」
「いえ、全然」
 本当にだ。今はじめて見たというのだ。
「本当に急に今そこにですよね」
「ううん。エスパーとか」
「いや、流石にそれはないから」
 梨本は記者のその仮設を否定した。
「幾ら何でもね」
「まあそうですけれどね」
「魔術師かも知れないけれど」
「それはもっとないですよ」
 エスパー以上に有り得ないとだ。今度は記者が梨本に突っ込みを入れた。
「そんな。魔法だなんて」
「それもそうだけれどね」
「というかですね。本当に急に出て来て」
「ううん、人ごみの中から急にね」
「で、車に乗り込みましたね」
「うん」
 実際にそうしていた。ジョーイはマネージャーが運転するその車に乗って移動に入った。梨本はそれを見て自分のメモ帳を開いてこう言った。
「今日はこれから新曲の収録だね」
「それでスタジオにですか」
「行くから。僕達は追おう」
「わかりました」
 こう話してだ。二人はすぐにタクシーを捕まえてジョーイが収録に使うそのスタジオに向かった。そうしてだった。
 この日はジョーイの調査に徹した。だが、だった。
 楽屋にも入られずしかもだった。トイレもだ。
「トイレ。行ってないですよね」
「うん、行ってないね」
 梨本は記者の言葉に頷く。二人は今そのトイレ、ジョーイが来ているテレビスタジオのトイレで小さい方の用を足している。そうしながら話していた。
「全然ね」
「そうですね。そんなことって」
「便秘なのかな。それとも」
「それとも?」
「いや、変装でもしてね」
 ふとだ。梨本はこう言ったのだった。
「それでトイレに入ってるのかな」
「それ有り得ますね。ジョーイのメイクって」
「自分でやってすぐに終わることで有名ですからね」
 これもジョーイの特徴の一つだ。ジョーイはとにかくメイクが早く的確なのだ。
「ですから」
「それも有り得るね」
「何か二十面相かルパンみたいですね」
「そう言うと格好いいけれどね」
「素顔がわからないところは同じですし」
 特に二十面相はだった。
「じゃあその可能性もありますね」
「そう思うね。まあとにかくね」
「これで諦めたらいけませんね」
「うん、じゃあね」
 こう言ってだ。二人は手をちゃんと洗ってからだ。
 またジョーイへの極秘追跡取材を再開した。だが、だった。
 証拠は全く手に入らない。見事なまでに。塵一つとしてだ。
 それでだった。夜になりこっそりと買って来たコンビニのお握りを食べるその中で梨本は困った顔になってアンパンを食べる記者に言った。
「もうすぐジョーイの今日のスケジュールは終わりだよ」
「はい、終わりですね」
「遂に今まで証拠は手に入らなかったね」
「何一つとして」
「いや、ガードが固いっていうか」
「尻尾を掴ませませんね」
「狐みたいだよ」
 梨本は困った顔で言った。お握りは彼の好物の梅だが今はその味も感じない。 
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