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顔はいいけれど

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第三章

 だからだ。こうジョーイに問うのだった。
「東京に住んでるんだよね」
「ええ、そうよ」
 このことは間違いなかった。
「この街にね」
「しかし君は何処に住んでいるのか」
 マネージャーも知らなかった。
「マンションか家なのか」
「プライベートのことは内緒って言ってるわよね」
「それはそうだが」
 だがそれでもだとだ。マネージャーは言う。
「しかし君は高校は」
「出てるわよ」
「そうだな。それは間違いないな」
「高卒よ」
 大学は出ていないらしいのだ。
「ただ。どの高校を出たのかもね」
「言えないのか」
「言わないの。出身地もね」
 挙句には生年月日もだ。
「ジョーイはジョーイのことは何も言わないから」
「全ては謎か」
「そう。そういうことでお願いね」
 ジョーイは思わせぶりに笑ってこう言うだけだった。本当にマネージャーも知らなかった。
 時折ゴシップ誌やネットでジョーイのプライベート写真と言われて男だったり女だったリが出て来た。しかしどれも結局は赤の他人、普通の仕事をしている人間か学生だとわかった。
 ジョーイの生まれも不明だった。日本らしいことはわかっても。
「本当に誰なんだろうな」
「男か女か」
「スキャンダルの話もないし」
「若しかしてニューハーフ?」
「その可能性もあるしね」
 遂にはジョーイはそうした人ではないのかという説も出た。
「ううん、本当に一体」
「男なんだろうか」
「女かしら」
「本当にどっちなんだ」
「性別どころか経歴まで不明だから」
 とにかく誰もわからなくなっていた。ジョーイのことは。
 芸能界で屈指の謎になっていた。だがそれに対してだ。
 ベテラン芸能レポーターである梨本克がだ。親しい記者にそっと囁いたのだった。
「僕ね、やってみるよ」
「ジョーイの性別を暴くんですか」
「うん、男か女かをね」
 まさに問題になっているだ。そのことをだというのだ。
「暴くよ。公表するかどうかは別にしてね」
「あれだけ秘密主義ですと本当に何かありそうですからね」
「ひょっとしてね。ジョーイはね」
 何かとだ。梨本は腕を組んで考える顔で記者に述べた。
「何か公にできない秘密が一杯あってね」
「立場的にそれができない」
「そういう人かも知れないからね」
「そうですね。その可能性がありますよね」
「そう思うだろ。だから公にしたら」
 どうなるか。梨本はここでは暗い顔になって言った。今二人は喫茶店でこっそり話をしている。この時点でかなり物々しいことになっている。
「僕の命がとかね」
「危うくなりますか」
「そんな気もするからね。それにジョーイの事務所は大手だからね」
「報道自粛を言ってきたりとかありますからね」
「この世界は持ちつ持たれつだからね」
 まさにその世界で長い間生きているだけにだ。梨本はわかっていた。
「だからそれができるかどうかわからないけれど」
「それでもですか」
「うん、事実は知っておきたいからね」
「じゃあ。ジョーイを極秘にですね」
「追跡取材をしよう。それでいこう」
「わかりました。じゃあ僕も一緒に」
「頼むよ」
 こうした話をだ。梨本は記者と喫茶店の片隅でこっそりと話した。 
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