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英雄

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第二章

「僕医者にはなれないね」
「ああ、御前理系は駄目だからな」
「そちらはね」
「うん、そうなんだよね」
 十六の時に家で両親に話した、このことを。
「どうも」
「文系は出来てスポーツも出来るのにな」
「数学とか理科は駄目ね」
「勉強はしてるんだろ」
「それでもよね」
「うん、かなり勉強してるけれど」
 数学や理科の系統の科目もとだ、マルコは両親に難しい顔で話した。
「そちらはね」
「それはもうあれだな」 
 ジュゼッペはマルコに難しい顔で述べた。
「適性だな」
「向き不向きだね」
「御前は理系に適性がないんだ」
 要するにというのだ。
「それもかなりな」
「そうなんだね」
「それだとね」
 ピラールも息子に言った、眉を曇らせたうえで。
「あんたお医者さんになりたいって言ってるけれど」
「あっちは理系も必要だからね」
「それじゃあね」
「医学部の試験に受からないし」
「若し受かってもよ」
「理系が駄目なお医者さんなんてね」
「どうにもならないから」
 それでというのだ。
「そちらはね」
「無理なんだね、つまりは」
 マルコも眉を曇らせて言った。
「僕はお医者さんにはなれないね」
「ああ、もうな」
「諦めるしかないのね」
「シュバイツァー博士になれないんだね」 
 こうもだ、ジュゼッペは言った。
「それじゃあ」
「ああ、あの人にはな」
「そうしたお医者さんにはね」
「そうだね、困ったな」
「いや、まだ諦めるな」
「それには早いわ」
 肩を落とそうとした息子にだ、両親はすぐに言った。
「お医者さんだけじゃないって言ったな」
「他にも人を助けられるお仕事があるって」
「だからな」
「そちらになればいいのよ」
「そうなんだ、じゃああらためて考えるよ」
 マルコは両親の言葉を受けて言った。
「どういったお仕事で人を助けられるか」
「そうしろ、まだ時間はある」
「進路を決められるだけの時間がね」
「そしてそれからな」
「人の為に働くのよ」
「そうするよ、大学受験まで」
 まさにその時までというのだ。
「じっくり考えるよ」
「そういうことでな」
「そちらも頑張ってね」 
 両親はこう二人に言った、そしてだった。  
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