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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第二章 Lost Heros
  銀白VS空我Ⅱ



「う・・・ぐぅぅうううう・・・・・・・・・・・・!!!!」


蒔風が腕が千切れた跡を抑え、痛みにうめいて蹲る。
その耳にはズシャリズシャリと自分に向かって歩いてくる二つの足音。


《ワールド!!!》



蒔風がメモリを取りだし、幸運なことにまだ残っていた右掌にそれを突き刺した。
すると、千切れた左腕がズシュリと再生して蛇のように生えてきたではないか。


しかし腕が戻ったとはいってもその息は荒いし、その腕はまだ力なく震えてる。


(芦原さん倒しといてよかった・・・・なんて思えるとはな。腕一本瞬時に再生させたギルスなら何とかなると思ったが・・・・)



「どうやら・・・・現実はそう甘くはなかったらしい・・・・」




そう、腕は再生したが状況は何一つ好転していない。




クウガが二体。大変な脅威だ。

もしも普通のフォームであるならば、ここまで苦戦はしなかった。
搦め手、卑怯。何が何でも押しのけるだけの力は自負している。

だが、アルティメットフォームはそうも言っていられない。
一体でもなかなか厄介なのが、二体なのだ。



正直、手も足も出ないというのが素直な感想。




(一気に吹き飛ばそうにも獄炎は意味がない。圧水じゃ押し切れない。土惺じゃぶち抜かれるだろうし、絶光は外した時のリスクがでかすぎる。雷旺なんてもってのほか・・・・)



「これは詰んだか・・・・ッッ!!!」




と、そこに片方のクウガが駆けてきて、蒔風のいる場所に向かって飛びかかってきた。

それを転がって避ける蒔風。今までいた場所がクウガのパンチでクレーターに変わった。



と、転がった先にはもう一方のクウガ。
そのクウガに腕を掴み引かれ、頭突きを食らって蒔風の意識が薄れる。


「お?ぐ・・・あ?」


脳を揺らされ、朦朧としている蒔風の足をまた別のクウガがつかみ、逆さまに片手で掴んだままもう一方の手で腹を殴り、地面にたたきつけた。

足が千切れ、蒔風の体がブッ飛んでボトリと落ちた。



その足はすぐにまた再生するのだが、それによる体力の消費はあまりにも激しい。


だからと言って再生しなければ回避の取りようがなくなって・・・・



「はは。これは死ぬのかな?」

「気楽・・・・ですね」

「ん?ああ・・・・・死ぬことは別段どうとも思ってねえよ」



声からして五代だろう。
蒔風の足を千切った方とは別のクウガが、蒔風を視界から外しながら聞いた。

だが、そう言っている間にもユウスケであるほうのクウガは悠然と蒔風に歩み寄り、近づくにつれて雄叫びをあげながら突進していった。



そのタックルに、蒔風の体が掻っ攫われる。
その衝撃だけにはなんとか耐え、身体の上と下がおさらばするような状態にはならずに済んだ蒔風だが、首だけを回して後ろを見てギョッとした。


そこには巨大な岩がある。
このまま突っ込めばあの岩は砕け、自分もどうなってしまうのかわからない。


しかもこうしている間にも自分を捕まえている腕はメキメキと締め上げる力を上げつつあるのだ。



「チョ・・・タンマ・・・・!!」

「・・・・・・ォアッ!!!!」




ドゴォァ!!!





そうして、まるで牡牛のように岩に突っ込みそれを粉砕させたクウガが、蒔風を手放して勢いを止めた。
すると当然、蒔風の体は慣性の法則に従ってしばらく地面と水平に飛び、ほどなくして地面を削りながら滑って転がる。



「い・・・ガぁ・・・・・」




痛みに呻く蒔風。
その腹部はグルリと真っ赤に染まっており、再生したばかりだった左腕は折れているのだろうか、おかしな方向に曲がっている。
さらに全身はクウガの肩の棘から発生した斬撃波でズタズタにされて血でベトベトだ。


その骨もすぐに再生しまっすぐになったが、その痛みはいまだ消えない。
ダメージは体に染みつく。


(こ・・・このままでは・・・・いや・・・死ぬのは別段いいんだが・・・それでは意味がない!!)



「俺には・・・・やらねばならないことがある・・・・・!!!」



そう言って何とかして傷を再生で治し、メモリを抜き出す蒔風。


その行為にどうしたのかとクウガが動きを止めたが、いまさら恐れることなどない。
このまま叩き潰してさえやればいい。



そうだ・・・・



必ず




目の前の男を




物言わぬ肉の塊に変えてやるのだ・・・・・・!!!





「小野寺君!!!」


その攻撃をやめようとしないユウスケに、五代が叫んで声をかけた。


「あまり攻撃的になると・・・君自身が危険だ!!」

「・・・んです・・・」

「え?」

「いいんです。気にしないでください。俺は決めてるんです」



そうして、クウガが蒔風を改めて見、その言葉の先を言った。


「みんなの笑顔を守るためなら・・・・究極の闇にもなる・・・・!!」

「小野寺君!!!」





《ワールド!!!》





「おおおおおおおおおおおお!!!」




蒔風が飛びかかり、その体を締めあげようとする。
無論、その程度で身体も足も揺るがぬクウガは、そのまま蒔風の頭を掴んで強引に引き放そうと腕に力を込めた。


頭蓋骨がメキメキと音を上げ、その握力に目が充血して更には血涙まで出てきたが、それでも蒔風はメモリで借り受けた力を以ってその邪気を払い続けた。




「う・・・・が・・・・・あぁああああ!?」




と、そうしているとクウガの装甲から黒い意思が払われるかのように煙が上がり、その姿がアメイジングマイティにまで退行されていくではないか。


「くっ・・・このぉ・・・・」

「どんなパワーだよ・・・こんだけひっついてもこの程度か・・・・!!!」



蒔風が全身から発しているのは泉戸裕理の持つ「八衢・退魔の波長」
その力を以って、ユウスケを蝕み始めた黒い意識を祓っていったのだ。

その効果か、ユウスケはアルティメットからアメイジングマイティにまで下げられてしまった。



「お前・・・・!!」

「がむしゃらに攻め、相手を倒すことしか眼中にないお前に、アルティメットは御しきれんよ」


が、このフォームをしてもまだ強い。
それを表すかのように、蒔風を自らの身体から引き剥がし投げ飛ばす。

その力に蒔風が軽々と投げ飛ばされ、地面を転がっていくが、今度はしっかりと足を付けてその勢いに踏ん張って見せた。



「か・・・は・・・・ど、どうしたユウスケ・・・出力が落ちているぞ・・・・」


「チ・・・・ダァァりゃぁァアアア!!!」



自分の手を見て、フォームを下げられたユウスケがそれに対して苛立ちを露わにしながら蒔風にキックを放ってくる。

が、蒔風にとって今脅威なのはそちらよりももう一方のクウガだ。



そのキックに向かって走り、すれすれで頭を下げてそれを回避する。
背中が焼けるかの様な熱を感じたが、それをそのまま無視、いまだアルティメットフォームである五代に向かってタックルして行く。


が、当然効くようなものではなく、ズドンッ!という音がして両者の足が地面にめり込んで、まるで岩に衝突したかのように蒔風の身体が止まる。


「蒔風さん、これ以上もう・・・・・!!!」

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」



その蒔風の肩を掴んで彼を止めようとする五代だが、蒔風の脚の筋肉が隆起してクウガの体が浮きだした。


そしてそのまま駆けだす。
その身体は斬撃波と発した炎で焼け裂けて行くが、彼は止まることなく走り続ける。


が、その脚は次第におぼつかなくなって戦いの衝撃で転がっていた拳大ほどの石に爪づいて倒れた。
だがその勢いは途切れることなく、べシャリと蒔風は倒れたものの、クウガの身体はすっ飛んで行き・・・



《ワールド!!!》



そして、蒔風が即座にメモリを発動させ、飛んで行くクウガの後ろにオーロラを出現させて元の世界へと強制送還させた。

が、そのオーロラに下半身が突っ込んだところで、クウガが何につかまっているのか上半身のみをこちら側に無理やり突き出してきた。


「蒔風さん!!」

「あなたは・・・こちらに来る必要はない!!」



蒔風がそのオーロラに向かって腕を伸ばして強引に閉じようとする。
そうして力を込め、鼻血まで出たところでようやっとオーロラが閉じる。


「へへ・・・やった・・・オガァッ!?」


蒔風が五代を元の世界に返し、やりきったと言ったところで、いまだアメイジングであるクウガが蒔風の伸ばされたままになっていた左腕を踏みつぶした。


痛みに蒔風が涙目になりながら、右手でその足を払って立ち上がる。



「五代さんをどうした!!」

「元の世界に返しただけだ・・・にしても・・・よくも関係のない人間巻き込んだなコラ」

「おかしいと思っていた・・・俺の知っているワタルじゃない、渡さんのキバとかがいたのに、なんでクウガは俺だけなんだって・・・」

「それで海東と探し回って連れてきたってかよ・・・・面倒なことを・・・」

「お前を・・・倒すためだ!!!」



そうして、クウガがもう一度蒔風にとびかかっていく。
力を使う前に、この力で叩きのめす!!!


「ハァァアアああああああああ!!!!」



クウガの拳に炎と雷が宿り、それが蒔風へと振り下ろされていく。



それを蒔風が右手で実に危うそうに回避していった。

受け流すだけで汗が一気に噴き出す。
下手をすれば受け流すために出した腕がそのまま引かれて行ってしまいそうだ。


だが


[ATTACK RIDE―――ILLUSION!]



そんな音がして、蒔風の体が六体の分身へと変わっていった。
腰にあるのは、ディケイドライバー。蒔風は変身することなく、その力を使ったのだ。



と、そこにさらに追い打ちをかけに行く。


[ATTACK RIDE―――Clear Vent!]



「インビジブルだとこちらからも攻撃できないが・・・」

「他ライダーの力も使えるディケイドだからこそのこの戦法」

「複数人からの見えない攻撃」

「お前に受けきれるかどうか」

「試してやろう」




[Final [Final Attack[Final Attack Ride---DE DE DE DECADE!] Ride---DE DE DE DECADE!]Att[Final Attack Ride---DE DE D[Final Attack Ride---DE DE DE DECADE!]E DECADE!]ack Ride---DE DE DE DECADE!]





ディケイドのファイナルアタックライドが放たれる。
いくつもの音声が重複し、何が何だかわからないが、それはクウガに向かって確実に突っ込んできていた。



ドドドドドンッッッ!!!!!



二つの斬撃、二つの巨大な弾丸、一つのキックをランダムなタイミングに打ち出されてそのすべてをクウガがまともに食らった。


カードが切れ、姿を表した蒔風の口すべてがニヤリと歪む。
しかし




「ガアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」



「う・・オォっ!?」

「ぬああああ!!!」



クウガはいまだ立っていた。
姿を現した蒔風たちの頭を掴み、地面に叩きつけ、握りつぶし、踏みつぶして消滅させる。

そして四体を消し、最後の一体に馬乗りになって拳を叩きつけようとしたその瞬間。





ギャリン・・・・・・



と、





背中に鋭い痛みを感じ、それが自分の前腰にまで伸びているのを感じた。


降り降ろそうとした拳をそのままに、クウガが自分の腹を見る。



そこには背中を貫き、腹から飛び出した「火」が、アークルを貫通しているという光景だった。




「う・・・ああああああああああああ!!!!!」



「分身は六体。攻撃したのは五体・・・・気付かなかったか?だから御しきれてないと言ったんだ」



斬ッ!!



そこから蒔風上に向かって刀を振りあげ、クウガを両断、カードへと変える。



「お前はあの瞬間ペガサスフォームになるべきだった。あのフォームならば攻撃を見切り、オレの居場所もわかっただろうによ・・・・・」



蒔風がクウガのカードを手に、話しかけるかのように呟いた。


そして、力なくブラブラしている左腕を見て、メモリを起動、挿入して再生しようとする。
しかし



「お・・・ぐぅゥゥウウウう!!・・・・ッッハ!!はぁ・・・はぁ・・・・無理か・・・・」



蒔風が再生しようとすると、ただただ激痛が走るのみでまったく再生しない。
身体に限界が来ているのだ。この腕を治すまでどれだけの時間が必要か。


それを考え、蒔風が例の懐中時計を見る。
時間はもうあまり残されていない。



蒔風はそこで通信を繋げた。
機械的な通信ではなく、何かというとテレパシーのようなモノを。







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「麒麟!!白虎!!!」



ドドンッ!!!!



二人の翼人を相手にしている青龍たち。
しかし、その数はもう半数近くにまで減っている。

たった今、麒麟と白虎がやられ、剣に戻った。


これまで彼らは倒そうとする戦いではなく、相手を消耗させる――つまりは逃げ回る戦法を取っていた。
そのまま本格的に逃げてもよかったのだが、そうしては朱雀の二の舞だ。あくまで相手の見える範囲を逃げ回る。


残る七獣は青龍、獅子、玄武、天馬のみ。



と、そこに蒔風の言葉が聞こえてきた。


『お前ら、今理樹に追われてるな?』


『そうも言ってられませぬぞ。クラウド殿にも攻められ・・・・』

『今絶賛戦闘中だコノヤロー』

『・・・・いかがなさい・・・・ましたか?』



それに対し、四人は声に出さず返答する。
蒔風は理樹だけでなくクラウドまでそっちに行っていたことに少し驚き、さらにそれに対してまだ何とか持ち堪えていた彼らを称賛しながら、さらなる無茶を言ってきた。



『理樹だけを引っ張ってこい。できるか?』


『難しい注文しやがんなぁ・・・』

『できるか?』

『・・・・やりましょう』


『任せた』




そこで通信が切れる。
そして、青龍が二秒ほど考えて、叫んだ。


「・・・・我々では・・・・敵いません!!逃げます!!!」



「よし来た!」「了解じゃ!」「うむ!!」



青龍の言葉と、彼らの応答から、その場にいたすべてのものの行動は速かった。



まず、倒れた三体分の剣を青龍が抱えて飛びたち、それを理樹が追う。
次にその後に続いて行こうとしたクラウド目掛け、天馬が突っ込んで一瞬で返り討ちにされた。

しかし、「逃げる」と言って逆に突っ込んできたのでクラウドが蹈鞴(たたら)を踏み、止まる。


そしてその前に獅子と玄武が立ちふさがり、剣になった天馬を青龍に投げ放って回収させて先に行かせた。


「天馬は囮か・・・!!」


「この先には通せませんのぅ」

「招待客は理樹殿のみでな。貴殿はまだ招かれておらんのだ」



「まさか・・・罠か・・・・!!!」



「ま、主ならどんな手を使ってもおかしくはないの」

「正攻法で行くのか・・・はたまた得意な卑怯で行くのか・・・・それはわからぬ」



そう、今の蒔風はわからない。
騙してくるのか、それともそれすらも騙しで逆に正攻法で来るのか。



なにはともあれ、急がねばなるまい。



「そこをどいてもらうぞ・・・・」


「・・・・龍虎雀武が一の堅牢・玄武。ここは通せぬ」

「獅子天麟が一の剛力・獅子。推して参る」





そうして、たった二人の時間稼ぎが始まった。




彼らの戦闘時間は実に五分と三十四秒。
しかし、終わるころにはもう理樹の居場所などわからなかった。





to be continued
 
 

 
後書き

ユウスケ
「負けた・・・・チクショウ、オレクウガなのに!!」

あなたはクウキです。

ユウスケ
「うるっせえ!!」


マークは・・まあユウスケですし、クウガのマークで。



五代さんは送りかえし、ユウスケは弱体化させて何とか勝利。
しかし、何を考えたのか今度は理樹をおびき寄せて・・・・?


ユウスケ
「次回、VS薄緑。満身創痍の舜は勝てるのか・・・・やられちまえ!!」

ではまた次回





リスト残り


長門有希
クラウド・ストライフ
海東大樹
野上良太郎
モモタロス
ウラタロス
リュウタロス
ジーク
デネブ
直枝理樹
乾巧
剣崎一真
左翔太郎
フェイト・T・ハラオウン
シグナム
ヴィータ
リィンフォースⅡ

 
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