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ソードアート・オンライン handle a system

作者:ハマT
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OS編ep3歌姫

 
前書き
オーディナルスケール編最終話です。一応裏設定としてリュウヤは右手に剣を握って戦ってますが記憶喪失の時は左手に剣を握ってます。 

 
ユナのライブ当日
キリト達はライブ会場に来ていた。
「あー喉が・・」
昨日のカラオケでハッスルしまくったシリカは喉をからせていた。
「大丈夫ですか?シリカさん」
「全く歌いすぎよ・・あれそういえばキリトは?」
リズの一言で皆辺りを見渡すがキリトの姿はなかった。
「トイレに行くって言ってたわよ」
遅れてシノンも合流しリュウヤは先に席取りに向かった。

キリトは一人エレベーターにのって地下駐車場に来ていた。
「やはり来ましたか・・黒の剣士」
「お前ノーチラスだな」
「今の僕はエイジだ!!」
キリトの言葉に声を荒げるエイジ。
「エイジ悪いが力付くでも兄貴とアスナの記憶を取り返す」
そういってキリトは手首に着けていた重りを外す。
「良いでしょう・・本当の力を見せてあげますよ」
「「オーディナルスケール起動!!」」

会場ではユナのライブが始まっていた。ド派手な演出で飛び出してきたユナはステージを走り回り歌を歌う。その様子を特等席で一人の人物が見ていた。
ーーオーグマーの開発者重村教授だ。
その教授に一人の少女が近付いてくる。何度もキリトとであったあの少女だ。
「お父さん!!もうやめて!!私生き返りたくなんてない!!」
「悠那・・それは自己保存モジュールが言わせてるだけだ」
その少女ーー悠那の言葉を切り捨てる重村。悠那はこれ以上何を言っても無駄だと思い、その場を後にした。

ライブ会場大道具倉庫
大きな機材が収納されている倉庫の中にジェネシスはいた。
ーーかつてジェネシスはただのネットゲーマーだった。色んなMMOをプレイしたがどのゲームも弱い部類に入るプレイヤーだった。強い武器を手に入れても強いプレイヤーにPKされ奪われた。そんなとき出会ったのがSAOだった。世界初のVRMMOに期待していたジェネシスだったがSAOがデスゲームとなった事により事態は一変した。約二ヶ月ただひたすらに絶望し外の世界から助けを待ち続けたが助けは来ることはなかった。やがてジェネシスは戦うしかないと気付き前線へと出るようになった。そこでリュウヤと出会った。崇拝者と言えばいいだろう。ジェネシスは幾度なくリュウヤに助けられた。それだけではない。リュウヤの強さに何時しか憧れを抱いていた。しかし五十五層でのフィールドボスとの戦いでジェネシスは外周から落ちた。それを助けたのがユナだった。
その事を思い出していたジェネシスの後ろに一人の人物が近付いてくる。
「遅かったじゃねぇか・・待ちくたびれたぜ」
ジェネシスが話しかけるがその人物は返事をしない。
「おい無視はねぇだろ・・お前誰だ?」
振り返るとそこにエイジでもリュウヤでもなくリーファがいた。
「あなたがジェネシスですか?」
「あ、ああそうだが・・」
「やっと見つけた・・リュウヤの記憶を返してもらいます!!」

地下駐車場ではキリトとエイジの戦いが続いていた。駐車場を疾走し互いに剣をぶつけ合う二人。
「SAOをクリアした英雄もARだとこの程度ですか!!」
「お前こそあの世界と違いよく動くじゃないか!!」
ーーエイジはかつて血盟騎士団の一人だったが死の恐怖を克服できず一度もボス攻略に参加することはなかった。しかし今はキリトと互角以上に渡り合っている。キリトが走りそれを追従するエイジ。エイジはVRで規格外の動きで戦うリュウヤと同じように壁を走りキリトを攻撃する。
「その動きまるで兄貴だな!!」
「そういえばそうだったね!!リュウヤさんはお前の兄だった・・だがあの人はお前や僕とは違う!!真の高みへと上ることのできる人だ!!」
かつてSAOで最前線で戦ったリュウヤ。表だって英雄扱いされることは無いものの生還者の中には崇拝者としてリュウヤに憧れを抱く人たちがいた。ジェネシスとエイジもその一人だ。
エイジの攻撃を受けるキリトだがエイジが剣ではなく拳で攻撃してきたことにより剣を落としてしまう。すぐに体勢を立て直すがエイジの攻撃の激しさに少しずつ後退する。
「お前の強さの秘密はこれかぁぁぁぁ!!!」
キリトが叫びエイジに向かって走り出す。それをエイジは剣で攻撃しようとするがキリトの目的はエイジの首もとにある機械だ。昨日エイジの首もとに一瞬だけ見えた謎の機械。どうやら身体能力をブーストする機械のようだ。その機械をエイジから取り外し落ちていた剣を拾うキリト。
「きさまぁぁぁぁ!!」
エイジとキリトが剣をぶつけ合う。一瞬の間の後倒れたのエイジだった。
「どんなに悲しい過去があったからといって過去の自分を否定するやつに俺は負けるわけにはいかない・・さぁアスナと兄貴の記憶を返してもらうぞ!!」

「リュウヤの記憶を返せだぁ?嬢ちゃん誰?」
「私はリュウヤの彼女です!!」
リーファのその言葉に驚くジェネシス。
「・・アイツに彼女なんていたのか・・あんたには悪いが返すわけには・・うぉ?!」
ジェネシスの言葉を遮る形で攻撃するリーファ。それをかわしたジェネシスもオーディナルスケールを起動してリーファに攻撃する。リーファの攻撃を防ぐジェネシスだか一切攻撃することができなかった。それもそうだリーファの気迫に圧倒され攻撃できないでいた。
「調子にのるなぁぁぁ!!」
ジェネシスが叫びリーファの腕をつかみ攻撃を無理矢理中断させる。それに驚き一瞬リーファの動きが止まる。そこにジェネシスは剣を叩き込むがそれをリーファは僅かに横に動いてかわす。すぐさまリーファはジェネシスの腹を殴りジェネシスの拘束を解く。一瞬左手に痛みを感じるがすぐに意識から弾き出す。
「私はリュウヤの彼女でお兄ちゃんの妹!!だから・・こんなところで負けるわけにはいかない!!」
刹那、リーファの剣がジェネシスを切り裂いた。

ライブ会場では一曲目が終わっていた。ファン達がそれぞれ歓声を上げる。しかしその歓声はどんどんと小さくなっていった。それもそうだなぜかユナの動きが止まったままなのだ。
「あー幸せ~」
その一言を最後に突然ユナが消えた。それにより解除全体がざわつき始める。その瞬間だった。突然一部のプレイヤーのオーディナルスケールが起動し始めた。それはアスナ達も同じだった。それと同時に会場にボスが出現した。

『キリトくん!!僕の独自の捜査で分かったんだが会場を飛んでいるドローンには出力をブーストする機械が取り付けられている!!』
エイジを倒したキリトは会場に向かっていた。エイジから聞かされたのは記憶の取り戻し方ではなく、ライブの真の目的だった。
ーー会場に集めたSAO全員に大出力のスキャンを行い記憶を一斉に奪うというものだ。
ただそれも普通にスキャンすればアスナ達と同じように記憶を失うだけで済むが菊岡の調査によるとライブ会場を飛び回っているドローンに出力をブーストする機械がつけられている。つまりもしスキャンが行われればナーヴギア同様脳に再生不可能のダメージを負うこととなる。それを知ったキリトは皆のオーグマーを取り外すために会場に向かうが会場のなかは既に戦いが始まりもはや止めることは出来そうになかった。

地下駐車場でエイジが、大道具倉庫ではジェネシスがそれぞれ教授に自分が敗北したことを連絡していた。
『君達にはまだ最後の仕事が残っているだろう?君達の記憶も提供してもらおう』
二人の前にボスが出現し止めと言わんばかりに二人を攻撃した。

会場の中にいたアスナ達はこの状況を一切理解できなかった。それもそうだ。一度に色んなことが起きすぎている。そのアスナ達の元にボスが接近する。死神の姿をしたボスをリズとエギルが迎撃しようとするがそこに新たにボスモンスターが接近する。
「リュウヤ!!」
「シリカちゃん!!」
悪魔の姿をしたボスからシリカを守ろうとリュウヤが立ちはだかる。そこに一つの影が飛んできて悪魔型のボスを一撃て倒す。
「和人さん!!」
「遅れてすまない!!」
キリトだ。キリトの到着に安堵したせいで気が緩みリズとエギルに死神の攻撃が突き刺さる。それを防いだのはキリトが何度も出会った少女ーーユナだ。
「ユナ!!」
「皆・・ごめんね私のせいでこんなことになって・・あの数字・・あの数字が一万を越えたら一斉にスキャニングが行われるわ!!」
そういってユナが示した電工掲示板に数字が表示される。3000と表示された数字だかそれも少しずつ確実なスピードで増え始める。
「ユナ・・どうすれば止められるんだ?」
「アインクラッド百層のボスを倒して・・黒の剣士!!」
「百層のボス?」
「オーグマーはナーヴギアの機能限定版でしかないわ・・今からオーグマーのフルダイブ機能をアンロックする後は御願い・・・」
ユナの言葉に頷き椅子に座るキリト。その肩にリズ達が手をのせる。
ーーそういえばそうだったな・・・いつも俺は・・・
「キリトくん・・・」
「アスナ待っていてくれ必ず帰ってきてそしたら・・あの約束の続きをしよう!!」
そういってアスナに指輪を渡すキリト。かつてアインクラッドで現実で星を見に行き、そこでまた指輪をプレゼントすると約束した二人。例え記憶が消えようとその思いは消えない。
「兄貴・・アスナを恃む!!」
「必ず帰ってきてくださいよ・・キリト」
「リンクスタート!!」

フルダイブしたキリト達はアインクラッド百層紅玉宮の上空にいた。
「まさか、こんな形でここを見ることになんてな・・」
エギルの言葉道理SAOでは七十五層でクリアしALOではまだ三十層位までしか攻略されていない。その為ここを見るのはイレギュラーが強い。ゆっくりと降下するキリト達の目の前に巨大な魔神が現れる。
ーーAn Incarmat of the Radius
これが百層のボスだろう。キリト達の姿を見るとボスの目が光動き始めそして十八本のHPゲージが表示される。
「いくぞ!!戦闘開始だ!!」
キリトの合図で一斉にボスに攻撃を始める。外周に上っていたシノンが狙撃するもバリアが出現し攻撃は届かない。キリトも攻撃がバリアに防がれる。
「スイッチ!!」
キリトの掛け声でシリカが攻撃するもやはりバリアに防がれる。
「スイッチ!!」
今度はリズが攻撃するもバリアを貫けない。
「スイッチ!!」
エギルの攻撃もバリアを貫けない。
「スイッチ!!」
エギルの掛け声でキリトが攻撃する。するとバリアが轟音をたてて砕け散る。それと同時にHPが僅かに減少する。
「よし・・このままたたみかけるぞ!!」
再び攻撃しようとしたときだった。ボスが突然雄叫びを上げる。それに呼応するように巨大な木が生えてくる。その木の葉から一粒の雫がボスの体に当たりーー僅かに減少していたHPが全て回復した。
「う、うそだろ?!」
「こんなのに勝てるのかよ?!」
回復したボスが杖を地面に着くとそこから木の根が生えキリト達に襲いかかった。

ライブ会場に菊岡と数人の男が到着していた。ライブが行われていたメインホールに入ろうとするもドアはロックされていて入ることが出来ない。
(・・中は君たちに任せる・・頑張ってくれキリト君・・皆!!)
菊岡は男達と会場の何処かにいる重村を探し始めた。

メインホールでは多くのプレイヤーが戦闘を行っていた。数値も8000を越えている。その様子を重村は特等席で眺めていた。
ーー重村教授には一人娘がいた。名前は重村悠那。当時世間で話題になっていたナーヴギアを開発した茅場の恩師という立場を利用して教授はナーヴギア、そしてSAOを娘にブレゼントした。そしてサービス開始時彼女は五分ほど遅れてSAOにログインした。教授もその日午後から抗議があり悠那のログインを見届けた後大学に出掛けた。帰ってきたのは午後五時頃。その時には既にニュースでSAO事件の報道が始まっていた。突然の事態に頭が真っ白になる教授。娘を助けるため半年にもおよび茅場を探し続けたが見つからなかった。
ーーそしてSAOクリアの一ヶ月前、娘はナーヴギアに脳を焼かれ死亡した。

「中々に面白い光景だろ?かつてあの城を生き残ったプレイヤーのほぼ全員がここに集められている」
『まさか先生が私がSAO開発初期に捨てたプログラムを見つけ出し使用するなんてね』
「オーディナルスケールのランキングシステムは絶対だ。ランキング一位になったものは不死となれる・・エイジもジェネシスもよくやってくれたよ・・後少しで私の夢が・・」
『確かに先生の夢は私の夢と少し近いところがある・・・私は信じているのですよ・システムを凌駕する奇跡の力を・・』
奇跡?そんなものは存在しない。存在するなら娘は死ななかった。あの日何かのトラブルでログインが夕方まで遅れるはずだ。

「・・リーファ君!!情報提供ご苦労だった・・ああ、ユウキ君の事は恃むよ・・もしリュウヤ君にバレたら何を言われるか分からないからね・・」
菊岡達は会場の管理室に来ていた。メインホールを除けば後はここだけだ。やはりドアはロックされており入ることは出来ない。一人の男が電子盤を操作するが開かない。
「貸せ!!僕がやる!!」
電話を終えた菊岡がスーツの胸ポケットから拳銃を取りだし電子盤を破壊しドアのロックを解除する。しかし中に誰もいなかった。
「やられたか・・あの監視カメラがどこに繋がっているか調べるんだ!!」
その様子を教授はタブレットで見ていた。教授がいるのは旧アーガス本社の地下、SAOサーバーの目の前だった。パソコンの画面を見ると既に数値は9000を越えていた。

メインホールではプレイヤー達の戦いが続いていた。
「リュウヤ君!!」
未だにフルダイブを行っているキリト達をユナとリュウヤがそれぞれ守っていた。ユナは巨大な盾を使い、リュウヤは剣で迫り来る敵を迎撃していた。
「・・ごめんなさい二人とも・・私のせいで・・」
ーー重村悠那。かつてSAOで死亡した少女。父親である重村教授はある日SAOサーバーのあるアーガス本社の地下に来ていた。そこで茅場が捨てたプログラムを偶然見つけた。やがて須郷や茅場のかつての研究室を探るうち教授の頭にある計画が浮かんだ。それがSAO生還者の脳から娘の記憶を奪いそれをもとにAIとして生き返らせるというものだ。
「・・もう時間がない!!オーグマーを外せばスキャンの影響は受けないから死ぬことはない!!皆を助けられないけど・・オーグマーを外して!!」
「ふざけるなぁぁぁ!!」
「リュウヤ・・・君?」
何かがおかしい。キリト達がフルダイブするときキリトと呼んだ。今の状態では和人さんと呼んでいる。もしかしたらーー
「・・・もしかして・・自力で記憶を・・」
「多分和人さんは知っているはずです・・・でもオーグマーを外さなかった・・それは皆を助けるためです!!和人さんは・・自分達だけが助かろうなんて思ってない!!」
「リュウヤ・・・君」
必死に叫ぶリュウヤ。その目には涙が浮かんでいた。もしかしたらリュウヤは記憶の狭間で戦っているのかもしれない。
「・・記憶が無くてもやっぱりリーダーっすね」
攻撃を防ぐリュウヤの間に人影が入ってくる。
「レンさん・・皆・・」
ブラッドナイトの皆だ。
「ここは私達で食い止めるから・・キリト達を助けに!!」
サチ達月夜の黒猫団もいる。
「アスナさん」
「うん」

キリトが走る。それをシノンが狙撃で援護する。先程の木の根をかろうじてかわしたのはキリトとシリカ、外周にいたシノンだけ、エギルとリズは絡めとられ動きを封じられていた。シリカがキリトと反対方向から攻撃しようとするも突然の足場が浮き上がり空から突然落ちてきたガレキに挟まれる。
「シリカ!!」
キリトがシリカに気を取られた瞬間をボスは杖で攻撃する。間一髪受け止めるも吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。ボスはキリトを掴むと目を赤く光らせる。
「やめなさい!!」
シノンが狙撃で攻撃を止めるがボスは目から光線を放ち外周を攻撃、何とかかわすもガレキに足を挟まれ身動きが取れなくなっていた。ボスは再び攻撃しようと目を光らせる。その瞬間キリトの目に二つの流星が見えた。一つはリズ達を拘束している木を切り裂き、もう一つはボスの頭に突き刺さる。
「皆さん!!」
「大丈夫?」
アスナとリュウヤだ。アスナは跳躍するとシリカを挟んでいたガレキを破壊しシリカを助け出す。
「アスナ・・兄貴・・」
「キリト君助けに来たよ!!」
ボスが再び叫び攻撃しようとする。しかしそれは突然飛んできた緑の光で止められる。光の飛んできた方を見ると一筋の緑の光がステンドグラスから飛んでくる。
「お兄ちゃん!!皆!!お待たせ!!助けに来たよ!!」
リーファだ。そのリーファの胸からユイが出てくる。
「お待たせしました!!皆を呼んできました!!」
リーファが飛んできたステンドグラスからいくつもの光が飛んでくる。ユージーンにサクヤ、アリシャにクライン、スリーピングナイツの皆やアンナもいる。さらに外周にはダインやベヒモス、闇風がいる。
「これを受け取ってください!!」
ユイが手を広げるとそこから光がキリト達に向かって飛んでいく。光に包まれたキリト達の装備が変わっていく。黒いロングコートに青と黒の剣、赤と白を基準とした騎士服にレイピア、白を基準としたロングコートに長い剣、赤い服に小さな短剣と青い小さな竜、ウェイトレスのような服にメイス、鎧に大きな斧、動きやすい服に巨大な銃。キリト達がSAOクリア時に装備していたものだ。ユイがSAOサーバーに残っていたデータをダウンロードしたのだ。
「皆いくぞ!!」
キリトの合図で皆が同時にボスに攻撃を始める。ユージーンが魔剣グラムでボスの攻撃を防ぎアリシャとサクヤが魔法で攻撃、クラインやアンナが素早い連携で攻撃しスリーピングナイツが魔法で援護、リーファとレコンはボスの攻撃をかわしながら魔法で攻撃する。外周では闇風達が銃でボスを撃つ。ボスが杖を地面に着くと木の根が生え皆を攻撃する。シノンはその根に飛び移ると根の上を走りながらヘカートⅡで狙撃する。足元ではシリカとリズが走りボスを攻撃、それにあわせエギルが斧を叩きつける。ボスの十八段あったHPゲージはあっという間にその数を四本まで減らす。ボスが再び地面に杖を着くと木が生えそこから雫が垂れる。
「あれを防いで!!」
アスナの合図で皆が一斉に攻撃し回復を止める。
「アスナ!!兄貴!!一気に決めるぞ!!」
ボスに向かって走り出すキリト達。それを止めようも杖で攻撃するボス。
「スイッチ!!」
それをキリトが防ぎアスナが跳躍する。
(ユウキ・・・力を・・貸して!!)
アスナの手に誰かの手が重なりレイピアが紫の光を放つ。
《十一連撃OSSマザーズ・ロザリオ》
かつてユウキから受けついだOSSだ。
「スイッチ!!」
アスナが叫ぶとリュウヤが走り込んでくる。
「くらえぇぇ!!」
リュウヤの剣が淡いピンクの光を放つ。
《片手剣十連撃ノヴァ・アセンション》
記憶の無いリュウヤの体が感覚だけでスキルを放つ。
「スイッチ!!」
リュウヤが叫ぶと今度はキリトが走り込んでくる。
「いっけぇぇぇぇ!!!」
キリトがリュウヤがアスナが皆が叫ぶ。ボスはキリトに向かって光線を放つがそれをリュウヤとアスナが身を呈して防ぐ。
「「いけ・・キリト(君)!!」」
「ハァァァァァァ!!」
キリトの剣が青く光出す。
《二刀流十六連撃スターバースト・ストリーム》
キリトが一番好きだったスキル。十六連撃がボスに突き刺さる。キリトの全ての攻撃が終わると同時にボスの体が四散した。ボスが消えた後一振りの剣がゆっくりとキリトの元へと降りていく。
『おめでとう・・だが君たちにはまだやるべきことがあるだろう』

「・・・まだなの?」
既に電光掲示板の数字は9900を越えていた。しかしまだキリト達は戻ってこない。必死に耐えるがついに耐えきれず弾き飛ばされる。サチ達も尻餅をつきすぐに立ち直れない。
ーーその瞬間突然ボスが消えた。
見るとキリトが剣をかまえ立っていた。キリトはユナに向かって頷く。それを見たユナはステージに移動し歌い出す。それを合図に戦闘する全てのプレイヤーにバフがかかる。その間もキリトの一振りで次々とボスが四散していく。

「何故だ!!」
教授はタブレットに表示される数字を見て教授は驚く。先程まで数字は9900を越えていた。しかし今は増えるよりも早く減少していた。
『お父さん・・ありがとう・・』
教授が振り替えるとそこには悠那がいた。
「悠那・・」
『お父さんはいつも忙しいのに私の無理を聞いてくれてありがとう・・あの日私は幸せだった・・ありがとうお父さん・・私はお父さんの思いでの中にずっといるよ』
その言葉を残し悠那は消える。それと同時に教授のミサンガが切れ地面に落ちた。

「今まで迷惑をかけてごめんね」
全てのボスを倒し終えたキリトはステージの側でユナと話していた。
「・・君の事を思い出したよユナ・・君は」
「ありがとう私の事を思い出してくれて・・アスナさんリュウヤさんあなた達から預かったものを返すね」
そういうと二人の頬に光る物を当てる。それと当時にユナの体が光出す。
「私は百層ボスのソリースで動いていたの・・だからボスが倒されたら私は消えることとなる・・」
やがてユナの輪郭もなくなり完全に光の粒子となり天へと舞っていく。それと同時に皆の記憶の中にユナの思い出が浮かび上がる。かつて三十六層でキリトとアスナはその歌を、シリカ、リズ、エギルは五十三層で、月夜の黒猫団は二十六層、ブラッドナイトは六十八層でそれぞれ聞いていた。リュウヤは元々歌にも少し興味あり何度かユナと話したり共に狩りに出掛けたこともあった。まるでその記憶は昨日の事のように皆の中に繊細に浮かび上がった。

ジェネシスはエイジに支えられながらメインホールに来ていた。少し前消えたはずのユナの記憶が戻り計画の失敗とユナの消滅を知った。
『二人とも覚えててくれたんだ・・・あの約束を・・ありがとう』
二人の頭にユナの声が響く。それと同時に二人は地面に膝をついた。

ライブから数日が経った五月六日
「クライン怪我は大丈夫なのか?」
「ったりめーよ・・お前も大丈夫か?」
この日は怪我で入院したクラインと記憶が戻り検査入院していたリュウヤの退院祝いとしてエギルのダイシーカフェに集まっていた。最もキリトとアスナは別件でいないが。
「それにしてもユナのやつ死んでたなんてな・・」
リュウヤとユナは親しかった。しかしとある時期を境に会うことはなかった。丁度ユナが死亡した日はボス攻略戦が行われ戻ってきたと思えばエイジの脱退宣言等で急に忙しくなり気付けば頭からユナのことが抜け落ちていた。
「そんなにユナって人の歌声って綺麗だったんですか?」
「ARアイドルのユナと全く同じ声だ」
直葉の言葉にリュウヤが答える。
「そういえばライヴの前の日変な人に絡まれたのよ」
シノンが唐突にそんなことを告げる。
「変な人?」
「ええ・・何でもユナのライブに行きたいからペアチケットの片方を譲ってくれって・・最初は断ったんたんけどリーファは合宿で来れないからどうせ使わないなら譲れって・・」
「それで譲ったの?」
「最初は譲る気は無かったんだけど、勝負を挑まれて・・本当そいつ無茶苦茶よ・・私の銃弾斬ったんだから」
「銃弾を斬ったぁぁ?!」
シノンの銃弾を斬ったことがあるのはキリトのみ。皆がキリトのことを思い浮かべるがその日キリトはオーディナルスケールのイベントバトルに参加しておりシノンと接触することはできない。
「ま、まぁい、いいんじゃないんですか?どうせ私は参加できませんでしたし・・痛っ!」
何故か狼狽え左手を押さえる直葉。
「手、どうした?」
「合宿で怪我しちゃって・・」
そういって左手を見せる直葉。
「左手の怪我ねぇ・・」
「シノンどうしたの?」
「なんでもないわ」
そういって微笑むシノン。
(やっぱり・・あの変な人はリーファだったのね)
「そういえばリュウヤあんた何で記憶を失ったのよ?」
「ふぁい?!」
突然のリズの質問に驚くリュウヤ。
「オーグマーで無くなる記憶ってSAOの記憶だけよね?ならなんであんたは全ての記憶を無くしたのよ?」
「・・菊岡からオーディナルスケールで妙なことが起きてるって言われてなそれで教授やエイジと深く関わっていたから多分全ての記憶にスキャンをかけて口封じにしたんだろ」
そう言うリュウヤだが実際はあの時ジェネシスは記憶の中から一番見せられたくない映像を作り出しリュウヤに見せた。その為リュウヤはショックから全ての記憶を無くした。その映像はーー
(言えるかよ・・・まさかカエルに集られて記憶喪失になったなんて・・)
リュウヤの苦手なカエルがリュウヤに集るというものだった。
「・・それにしてもキリトとアスナは何処に行ったんだ?」
やがて皆の話題が直葉のお土産に変わった頃クラインがリュウヤに問いかける。
「多分今頃・・星でも見てるんじゃないか?」

埼玉のとある山の中
アスナとキリトが星を眺めていた。かつてアインクラッド二十二層で現実世界に帰ったら一緒に星を見に行こうと約束した。
「キリト君これ・・」
アスナがキリトに小包を渡す。
「キリト君にばかりもらうのもダメだから・・今度はちゃんと渡してほしいな」
ライブの時にアスナがもらった指輪をキリトが受けとる。頷くとキリトはアスナの指に指輪をはめる。それと同時に空に流れ星が流れる。幾つも星が降る中、二人の影は重なりあった。

SAO事件全集には第二版より
‘’かつて戦いに向かう剣士を歌で勇気付ける少女がいた
我々は忘れてはならない名もなきプレイヤー一人一人を''
の一文が追加された。

アインクラッド四十七層フローリア
何処までも広がる花畑の中に三人の人がいた。大柄な男と少し痩せた男、そして小柄な少女だ。花畑でゆっくりと横になる大柄な男とそのとなりで座る痩せた男。小柄な少女は花畑ではしゃいでいる。やがて歌い出す少女。その様子を眺める二人。そんな三人の回りを三匹の蝶が舞っていた。


episode of ordinal scale the end and next episode is Alicization 
 

 
後書き
オーディナルスケール編を最後までお読みいただきありがとうございます。オーディナルスケール編は映画を見た衝動で書いたので多分僕が書いた中で構成を立ててから完結までが一番短い作品だと思います。本編では何度も死にかけたリュウヤはオーディナルスケール編では記憶喪失になるという新しいピンチに陥りますが本人はほとんどなにもしていない間に解決するというあまりやるせない事になってます。実はリュウヤが記憶喪失になるというのは書いている途中で思い付いた話で最初はキリトとリュウヤが敵対しライブの目的を知ったリュウヤがジェネシスと戦うという流れにするつもりだったんですがそれだと普通だったのでこの流れにしました。リーファとジェネシスの戦いも同じく書いている途中でこういう形に変えました。そしてリーファが何故か合宿に行かず東京でオーディナルスケールをプレイしている理由、キリトに協力したYの正体等幾つか明かしていない謎やシノンに絡んできた変な人との戦いや代々木公園のデート等書いていないエピソードが幾つかありますが・・・それを含めたオーディナルスケール完全版を近日中に投稿します。同時にこの完全版のみpixivにも投稿します。タイトルは『ソードアート・オンライン紅白の剣士オーディナルスケール編』で投稿はこちらでの投稿と同じ日に投稿する予定です。そちらの方もお読みいただくと嬉しいです。完全版では本編より先にあのキャラの秘密を明かす予定です。 しかも色々と加筆修正されているとか・・・ 
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