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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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死にたくないので

 
前書き
アクノロギアの小物感が突然過ぎて何とも言えなかった今週のFAIRYTAIL。でもウェンディがピンチなのが一番の気掛り。この小説だとアクノロギアかませになるかもだから問題ないけど。 

 
太陽の光がカーテンの隙間から部屋へと侵入してくる。それがちょうど顔に当たって眩しくなったところで、ゆっくりと目を開いていく。

「もう朝か」

大きく背伸びをしてから布団を剥がす。背伸びをすると身長が伸びるって聞いてから毎日朝起きて一番最初に背伸びをすることにしてるんだよね。

「レオン、ラウル、起きて」
「スゥ・・・スゥ・・・」
「ムニャムニャムニャ」

いまだに隣で寝ている少年と猫を揺すってみるが、二人ともまだまだ深い夢の中。仕方ない、先に着替えてしまうか。それから起こしても充分間に合うだろうし。
寝起きでふらつきながらパジャマを脱ぎながら今日着る服と下着をタンスから出そうとそちらに向かう。

「ん?」

その際視界に入った左腕がいつもと違うような気がして、立ち止まってそこを見る。

「・・・」

しばしの硬直。なんだか腕が黒く変色しているような気がしているのだが、まだ寝惚けているのだろうか?一度目を擦り再度そちらに視線を落とす。
だが、腕は黒く変色したままで、上半身の方まで伸びているのが目に入った。

「ぎゃあああああああ!!」
「なんだ!?」

あまりのことに驚いて悲鳴を上げる。その声で目覚めたレオンはこちらを向いた後、大きく目を見開く。

ドタドタドタ

それとほぼ同時に廊下から聞こえてくる複数の足音。その正体をすぐに把握した少年は、足音が扉の前にたどり着くよりも早く扉へと向かい鍵をかける。

ガチャガチャ

扉を開こうとノブを回す少女たち。しかし、それは鍵がかけられたために開けることができない。

「あれ!?開かない!!」
「シリル!!何今の声!!」

ドアが開かないとなってますます大騒ぎのシェリアとウェンディ。念のため扉を押さえているレオンが俺に静かにしておくように合図した後、扉越しに二人へと話しかける。

「大丈夫。なんか変な夢見てただけみたい。今は落ち着いて寝てるよ」
「寝言だったの?」
「ビックリしたぁ」

悪夢で思わず飛び起きるパターンはよくあるけど、そのまま二度寝に付くとは俺もずいぶんと図太い神経をしていると思われているな。ただ、シェリアもウェンディもその説明で納得してしまったらしく、声のトーンが大慌てから安心したものへと変わっていた。

「あんまり騒ぐと起きちゃうから、静かにしておいて」
「うん」
「ご飯できてるから起きたら連れてきてね」

寝ていると思っている俺を起こさないようにと配慮して、静かな足音でこの部屋からリビングへと戻っていく二人。二人がいなくなったところで、レオンと空気と化していたラウルが俺の方を向く。

「それ、どうしたんだ?」
「それよりまずは服着れば?」

左半身を飲み込みつつある黒い模様に目を細めるレオン。それに答えるよりも早く、ラウルに言われた通り衣服を上に羽織る。

「起きたらこんなことなってて・・・俺にも何がなんだか・・・」

状況を説明したいのは山々なんだか、こちらも理解していないとなればどうしようもない。なので顔を伏せ気味にそう言うと、二人は納得したように顔を見合わせる。

「これが前エーメって人が行ってたこと?」
「竜と悪魔のバランス・・・か」

カノッコ村でエーメに言われたことを以前レオンに伝え、滅悪魔法を使わないようにすることを全員に知らせた。この黒い模様は伸びてきている場所から考えて、滅悪魔法のものと考えていいだろう。

「けど、俺は感情が大きくブレたりしてないよ?」

エーメの言ったことがすべて正しいとするのなら、感情が大きく変動することがなければ二つの魔法のバランスが崩れることはないはず。そもそも一方を使用していないのだから、感情が崩れるとか以前の問題だけど。

「そればっかりは俺たちにはわからないよ」
「無意識に使ってるわけでもないだろうしね」

誰も正解などわかりようがないだけに、悩むだけ無駄なようにも感じる。でも、原因がわからないと直すことができないから、ウェンディたちの前に出ていくことができない。どうしたらいいんだろう。

「医者にでも連れていくか?」
「対応できる医者あるの?」

このままではダメだと様々な意見を出し合ってくれてはいるが、医者に見せてなんとかなるとは思えな・・・

「あ!!」

そこまで考えてある人物が頭を過る。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の顧問薬剤師で、俺やウェンディに取ってはとても親しみがある人物。彼女ならもしかしたら・・・

「心当たりあるの?」
「うん!!いけるかも!!」

ラウルの問いに元気に答える。わずかとはいえ希望を得ることができたとなれば、元気にならないわけがない。

「なら早めに行ってきなよ。シェリアたちには適当に言っておくから」

追い返した少女たちにこのことを知られたら大騒ぎになる。それをわかっている少年はバレないようにと配慮してくれている。

「じゃあみんなが出ていったら出掛けるよ」
「わかった!!」
「なら俺たちは飯食ってくるわ」

これからのことが決まったところで部屋から出ていくレオンとラウル。俺は身支度を整えつつ、一応出掛けるまでの処置として布団にくるまっておくことにした。

「シリル!!具合どう?」

しばらくして眠りそうになっていると、扉越しにウェンディから声をかけられる。どうやら体調不良ということになっているらしい。なので、それっぽい声で返答しておく。

「大丈夫。そこまでひどいわけじゃないから」
「私たち修行に行っちゃうけど、できるだけ早めに帰ってくるから!!」

そう言い残して扉から小さな足音が離れていく。しばらくすると行ってきますと声がして、扉がバタンと締まる。

「行ったかな?」

物音を立てないようにベッドから起き上がり、そーっと扉を開き外の様子を伺う。どの部屋からも人の気配がしないことを考えると、みんなちゃんと出掛けたみたいだ。

「じゃあ俺も動き出すとするかな」

顔を付近まで模様が出ているので隠せるようにニット帽とネックウォーマーを身につける。まだ秋口ではあるけど、これを付けても気にならない程度の温度になりつつはある。

ガチャ

扉を開いて外を見回してから鍵を閉める。さてさて、ポーリュシカさんの家は確か・・・

「向こうだったかな?」

マグノリアの周辺の森に住み着いているポーリュシカさん。彼女の自宅を目指し、ゆっくりと歩き始めたのであった。



















「あれ?そろそろだと思うんだけど・・・」

それから数時間ほど経った現在。俺は以前ナツさんたちと訪れたポーリュシカさんの家の付近にいるはずなんだけど、正確な位置がよくわかっていないため、なかなかたどり着けないでいる。

「クンクン、クンクン」

もう面倒なので匂いを頼りに歩いてみることにする。グランディーネとポーリュシカさんの匂いが一緒だから、すごく探しやすいんだよねぇ。

「あれ?この匂い・・・」

グランディーネの匂いを探っていると、一人別の人物の匂いが漂ってくる。それも、以前会ったことがある匂いだ。

「ずいぶんと懐かしい気もするけど、誰だったかな?」

何度も会ったはずの人物のはずなのに、思い出せない。最近はラミアの人としか会ってないし、昔接点があってもそう簡単には思い出せないのが現状なんだよなぁ。

(でも、同じ方向から匂いが来ているような・・・気のせいかな?)

二つの匂いが来る方向へと向かっていく。徐々に匂いが近付いてくると、前方に見覚えのある一軒の家が見えてくる。

「お!!あったあった!!」

ようやく辿り着いたポーリュシカさんの家。さっきまでどこかに行っていて帰ってきたばかりなのか、家の前に強く匂いが残っている。

「てかあの匂いもこの家からするんだけど・・・」

そして謎の匂いの正体もこの家からしていることが明白になった。う~ん・・・匂いはちゃんと覚えているのに、誰のものだったか全然思い出せない・・・

「ま、いっか」

誰かは中に入ればわかるだろうし、気にしていても意味がない。模様を隠すために身に付けていたニット帽とネックウォーマーを外し、扉をノックする。

「誰だい。今取り込んでて・・・」

人間嫌いだというポーリュシカさんは人がこの場所に来るのをひどく嫌っている。だから扉を開けに来るその声は、明らかに苛立ちを込めたものになっていたが、扉の前に立っている俺を見て動きを止める。

「こんにちは」
「なんだ、あんたかい」

ノックをした人物が俺だとわかるとわずかに笑みをこぼし頭をなで回してくるポーリュシカさん。前々から思っていたけど、彼女は俺とウェンディには優しい気がする。エドラスのグランディーネだから、俺たちに親心的なものを持ってくれているのだろうか?

「それで、今日はどうし・・・」

なぜここを訪れたのかを聞こうとした彼女だったが、俺の顔を見て用事を悟ってくれた。だが、なぜか頭を抱えるような仕草をした後、深いため息を漏らす。

「なんだい。()()()()かい」
「あんたも?」

不思議な言い回しに首を傾げる。その疑問に答えるために、彼女は俺を中へと招き入れる。

「あいつと同じ症状なんだよ」

先客を指さしそちらを見る。そこにいたのは、黒い髪をした上半身裸の美青年。

「グレイさん!!」

リオンさんの弟弟子である氷の魔導士、グレイ・フルバスターさんだった。

「お?シリルじゃねーか。久しぶりだな」

名前を呼ばれた彼はこちらへと振り返る。その顔には俺と同じような模様が刻まれていたが、今はそれどころではない。

「お久しぶりです!!」

懐かしい人との再会に大喜びで飛び付こうと駆け出す。だが、その途中であることに気付き、足を止める。

「どうした?」

迎え入れる準備ができていた青年だったが、足を止めて周囲をキョロキョロと見回す俺を見て訝しげな顔をしている。

「あの・・・ジュビアさんは?」

俺が足を止めた理由は、ギルド解散の後に彼と共にその場から立ち去ったジュビアさんのことだ。彼女もこの場に来ているなら、グレイさんに飛び付いたりしたら後が面倒くさくて仕方がない。

「ジュビアは来てねぇよ。抜け出してきたからな」
「そうなんですか?」

それを聞いてホッとしたような残念なような・・・一人懐かしい人に会うと、他の人にも会いたくなってくるから不思議だ。

「ん?シリル、もしかしてお前も・・・か?」

落ち込んでいると、グレイさんが俺の顔に伸びてきている模様に気付く。そうだった、この模様をどうにかしたくて来たんだった。

「グレイさんもですよね?」
「あぁ、昨日から急にな」

彼も最近になってこの模様が腕から伸びてきてしまったらしい。しかも彼も原因がわからず、医学の知識を持っているポーリュシカさんなら何かわかるかもと訪れたらしい。

「二人揃っておかしなもんでも食べたのかい?」
「いやいや!!そんなわけないじゃないですか!!」

俺とグレイさんが同じ症状ということは、これはやっぱり滅悪魔法の後遺症なのかもしれない。俺と彼がこの魔法を修得した時期は一緒だし、症状が出始めた日も一緒。なおさらその可能性が高まったってところかな?

「調べてみるから、腕だしな」

血液から何かわからないかと注射器を取り出すポーリュシカさん。痛いのは嫌だなぁ、と思ったものの、ここは我慢するしかないか。



















それから数時間後、ポーリュシカさんから様々な検査を受けたことにより、ようやく原因が確定したのであった。

「二人の考えていた通り、滅悪魔法を急速に覚えたことが原因だね」
「やっぱり・・・」

俺の場合は敵から実験として埋め込まれ、グレイさんはお父さんから引き継いだ魔法。それがこの原因となっているのだけれど、何か悪い点はあるのかな?とりあえず見栄えが気になるのが一番の問題なんだけど。

「この状態が長く続くと、心まで悪に染まっていく可能性があるよ」
「?どういうことだ?」

彼女の言った言葉の意味がどういうことなのかよくわからなかった青年が眉間にシワを寄せる。彼女はその疑問を晴らすために詳しく説明をしてくれる。

「滅悪魔法は悪魔を倒すための魔法なんだろ?たぶんそれを連発すると体にも心にも大きな影響を及ぼすんだろうね」
「心にも?」

体に悪影響なのは以前言われたから承知していたけど、心まで影響するとは思っていなかった。でも考えていればそうかも、と納得してしまう。この魔法を使っている時はどこか強気でいられた。それが魔法の副作用なら、心まで悪に染まりかけていたというのは納得できる。

「治せるか?」
「あんたたちからもらった血液で血清が作れるはずだよ。ただ時間がかかるから、今日はひとまず帰りな。二人とも待ってるのがいるだろうしね」

それを言われて表情が曇る。このことをウェンディに説明しなきゃいけないとは・・・気が引けるなぁ・・・

「血清も作っておくけど、これは心に影響されるところが大きいからね。あんたたちもしっかりしておくんだよ」

言われなくても、この魔法は封印して体に負担をかけないようにと決めていたんだ。心の方はこれから気を付けるとして、一度落ち着けないと何ともならない。

「もしかしたらしばらく通ってもらうかもしれないけど、治すためなんだからサボるんじゃないよ!!」
「わかってるよ」
「もちろんです!!」

怒鳴り気味にそう言われた俺たちは帰路へと付くことにした。ただ、グレイさんの表情が非常に固い。

「どうしたんですか?」
「いや、なんでもねぇよ」

ジュビアさんにこのことを伝えなきゃいけないというのが相当嫌なんだろうか?でも心配かけないように真実は伝えておかないと、後々面倒なことになると考えると回答は一つしかないと思うけどなぁ。

「シリル。俺のことはウェンディたちには内緒にしててくれないか?」
「なんでですか?」

なぜかウェンディにも知られたくないというグレイさん。ジュビアさんならともかく、なんでウェンディまで?それが不思議で仕方ない。

「いや、ジュビアと一緒に住んでるのが知られたくねぇんだ」
「そ・・・そういうことですか」

自分のことを溺愛している女性と同棲しているとなれば、変なことを言われると危惧しているらしい。まぁ、全力で茶化しに行くけど、それを考えただけで嫌になっているようだ。

「わかりました。じゃあ、また明日」
「あぁ、時間が合えばな」

懐かしの再会もここまで。ここからはそれぞれの自宅に帰るために別々の道へと向かっていく。

「でも、ウェンディたちになんて説明しよう・・・」

グレイさんに会ったことを言わずにこのことを伝える。しかも明日万一会ってしまうことを考えると、彼女が付いてこないように釘を刺しておかないといけない。
なんて言って安心させるべきなのか、頭を悩ませながら自宅に向かって歩き始めたのであった。






 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
滅悪魔法を覚えたからには一度はポーリュシカさんの元に行かないとと前々から思っていた今回のお話。グレイに再会したのもうまく活用していければなと思っています。
次はちょっとお遊びネタをやろうかと思ってます。シェリーの結婚式とかしてみたかったけど、結婚式ってどんなのかよくわからないんだよね・・・披露宴しか見たことないから。 
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