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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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成長してる

 
前書き
なんとか一週間で間に合わせられた・・・

尻流「忘れられてるかと思ってたよ」

ちょっとね、あとでいいかなぁ?って後回ししてたら一週間経ってたよ。 

 
シリルside

修行を始めて早一週間・・・キャンプを張るなどのことはせず、自宅から近くの山へと移動している俺たち。しかし、その足取りは非常に重たい。

「シリルは何か身に付いた?」
「全然・・・」

その理由は言うまでもなく、修行がうまくいっていないからだ。それぞれ自分の課題を克服するためのメニューをやっているのだが、みんな思ったような成果が得られないでいる。

「私たちが一番伸びてるんじゃないかしら?」
「センスあるんじゃない~?」
「そうかもそうかも!!」

そんな中で着実に力をつけているエクシードたち。だが敢えて言っておこう。元々弱かったんだから、伸び代が大きいのは当たり前なんだよ!!

「私も速度上がりましたよ!!」
「ちょっとだけでしょ」

セシリーたちと一緒に修行しているサクラもそれなりに強くなっているらしい。つまり俺たちだけ?まだ何も成果を得られていないのは。

「大丈夫だよ。シリルも魔力上がってきてるし、二人も初日よりは良くなってきてるから」
「そうかなぁ?そうなのかな?」

ゆっくり後ろから付いてきているレオンから慰めにも似た台詞を言われるが、イマイチ信用できない。こいつの場合ほとんど天性のものだから、ちゃんとトレーニングしたことないだろうし。

「だったら試してみよう」
「え?」

一人不信感を抱いていると少年からそんなことを言われ思わず立ち止まる。試してみるって・・・どういうこと?

















それからいつもの場所へと移動した俺たち。その場所で、全員の視線を一身に受けている俺とレオン。

「試すってそういうことなのね」
「何するのかと思ったよ~」
「むしろ他に何かある?」

本当に強くなっているのかどうか、実際に戦ってみればわかるんじゃないかとレオンが言うので、お試しに俺たちが手合わせしてみることになった。

「レオン!!ホント大丈夫なの!?」
「軽くやるから大丈夫だよ」

離れたところからケガだらけの少年を心配して幼馴染みの少女が声をかける。その声に少年は手を挙げてみせ、体の状態が悪くないことを示す。

「時間は五分でいいの?」
「そんなもんでしょ」

さらに今回は時間制限を付けてギリギリまで攻め合って取り返しがつかなくなるようなことにならないようになっている。にしても五分って・・・

「短すぎませんか?」
「それで何かわかるとは思えないけど」

この時間制限に苦言を呈しているのは俺だけじゃない。サクラもシェリアも時間が短すぎて意味がないのではと考えている。

「ねぇ、俺のケガも配慮してくれないかな?」
「そういうことか・・・」

今の一言でこの無茶苦茶な時間設定の理由がようやくわかった。レオンは歩くのもやっとなほどのダメージをいまだに体に残しているわけだから、長時間やると体がもたないのか。だから極力短くして対処してるってことね。

「ほら、早くやろう。時間なくなるぞ」

いつまでも文句を言っていても仕方ない。そう割り切ってバトルを始められるように体勢を作る。でもあんな修行で強くなっているとは到底思えないだけに、どうなってしまうのか不安で仕方ない。

「じゃあ行くよ。始め!!」

開始の掛け声と共に地面を蹴って接近する。相手は最初の位置からほとんど動けないから、こちらなら仕掛けていくしかない。

「水竜の・・・翼撃!!」

両手をクロスさせて魔力を溜めた後、一気に腕を広げて魔力を解放する。

「うおっ」

至近距離で放たれた魔法。それを彼は回避することができずに後方に押される。

ガクッ

押されたが倒れるところまでは持っていけないと思っていたが、地面が削れて止まりかけたところで少年の膝が折れその場に転倒する。

その理由がわからなかったが、勝負ならば全力で向かうべきだと攻撃を繰り出しにかかる。

「水竜の・・・咆哮!!」

胸を大きく膨らませ、吸い込んだ空気を一気に放出する。その時、吐き出した水の量を見てびっくりする。

(あれ?いつもより多い気がする)

翼撃の時は気にしていなかったけど、ブレスの勢いがいつもとは違う気がする。それが錯覚なのか現実なのかまではわかっていないけど。

封印の氷地獄(コキュートス)

迫ってくる巨大な水の塊を視界に捉え、冷気を宿した魔力を腕を振るうレオン。それにより大量の水は黒い氷と化し、砕けて地面へと落ちた。

「氷神・・・(ジエロ)

そのまま天に手を向けて巨大な黒雲を作り出した少年は、俺目掛けて大きな氷の塊を降らせてくる。

「わっ!!またこれかよ!!」

以前対戦した時にも降らせてきた雹。前も言ったけど、これ当たったら致命傷になりかねないんだからあんまり使わないでくれよ。

「こ・・・の!!」

避けようにも範囲が広いので逃げ切れるかはわからない。なので、両手に魔力を溜めた纏わせてそれを一気に振るい氷の塊を吹き飛ばす。
すべての雹を凪ぎ払おうと力一杯振るった水の波動。それは、予想していたよりも勢いよく空へと伸びていき、レオンの魔力によって作り出された黒い雲を消し去った。

「え・・・?」
「ウソ・・・」

予想外の出来事に全員が唖然としている。しばし言葉もなく立ち尽くしていると、いつの間にか後ろにやって来ていたレオンが頭を小突いてくる。

「はい、終了」

それと同時に敵である俺に背を向ける。それは、この力試しが終了したことを表していた。

「ほら、シリルも強くなってきてるでしょ?」
「うん!!すごかった!!」
「ビックリしました!!」
「こんなに伸びるんだね!!」

離れて様子を見ていたウェンディたちにそう言うレオン。この戦いを見ていた少女たちは、皆俺のパワーが以前よりも増していたことを感じ取ったらしく、大きくうなずいていた。

「このままいけばレオンに勝てる!?」
「「「それはない」」」

わずか一週間で成長したのが一目でわかるほどの成果を得ることができた。なので調子に乗ってみたところ、エクシードトリオにあっさりと一蹴されてしまう。

「じゃあ修行に入ろうよ。これで成長できていることはわかっただろうし」

その言葉に異議なしと全員が賛同する。彼の言葉を受けて散っていくウェンディたち。俺はレオンと主にトレーニングをしているため、その場に留まる。

「レオンが予想してたより伸びてた?俺」

強くなったのがわかるとなんだか楽しくなってくる。レオンから預けられた修行だったため、彼の反応が気になり顔を覗き込むようにして様子を伺う。

「もうちょっと強くなってると思ってたんだけど」
「何!?」

きっと驚いているだろうと思っていたのに、少年の表情はいつもと変わることなく淡々とそう告げる。そのリアクションは予想していなかったため、驚いて後退りしていた。

「お前どんだけあれが効果的だと思ってたんだよ!!」
「かなり効果的だと思ってた」

ただ魔力を高く維持していくだけのトレーニングでさらなるレベルアップを求めてきた少年に度肝を抜かれる。確かに強くなったけど、それ以上を求められると話が変わってくる。

「でも強くはなったじゃん」
「そりゃそうだけど・・・」

だったらもう少し色々教えて・・・いや、意図として教えてないのか?自分が最強であり続けるために。

「そろそろ新しいトレーニングとかないの?」
「知らん」
「え?」

彼の予想ほどではないにしても強くなったことはなった。なので、次の段階に移行させてもらおうかと思っていると、少年からあっさりとそんな回答が返ってくる。

「知らんって・・・どういうこと?」

最初のトレーニングは彼の発案でやり始めたのに、次のトレーニングがないとはどういうことなのか、疑問を直接ぶつけてみると、彼は表情を一切変えることなく答える。

「だってリオンくんから教えてもらったのこれだけだもん」
「受け売りかよ!!」

なんと彼から与えられたトレーニングはリオンさんから以前預けられたものらしい。しかも、彼から与えられたものはこれだけだったらしく、次に何をすればいいのかわからないらしい。

「だから今まで通りでいいんじゃないの?」
「絶対イ・ヤ・だ」

この地味なトレーニングには飽きてきた頃だし、これだけパワーアップしてれば個人的にはさらなる強化を求めたい。このままの修行だとレオンを越えるには足りないと思うので、変化を入れていきたいんだけど・・・

「じゃあ実践する?俺も少しずつ体慣らしていきたいし」

いまだ回復の基調が見えず、包帯で全身ミーラだらけの少年からうれしい提案がなされる。それを聞いた俺は大喜びでうなずく。

「やるやる!!」
「全力はまだできないから軽くな、軽く」

あくまで万全ではないのでゆっくりと希望するレオン。俺は全力でやりたいけど、今まで付き合ってもらったし、合わせてやるか。


















ウェンディside

「スゥ・・・」

全身に空気を行き渡され、魔力を高めていく。この辺り一体の空気を感じていき、それに同調していくように神経を研ぎ澄ませる。

「天神の舞!!」

すぐそばでは友人が木々を相手に格闘しており、その声と倒れる木の音が周囲に響き渡る。その少女の魔力も感じつつ、神経を極限まで研ぎ澄ませていく。

(今だ!!)

限界まで魔力と集中力を高めたところで、閉じていた瞳を一気に開きすべてを解放する。

「ハァッ!!」

短い掛け声で一瞬のうちに体内に込められていた魔力を放出する。

ブワッ

その瞬間、周囲の空気が大きく震えたのがわかった。その中心部にいるのは、間違いなく私。

(もう少し!!)

あと少し・・・本当にあと少しでドラゴンフォースを手にすることができそう。そう思いさらに出力を上げる。

シュウンッ

しかし、その思いとは裏腹に高まっていた魔力が消え去ってしまった。

ドサッ

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

その場に四つん這いになり大きく息が上がっている。うまくできそうだったけどできなかった上に、思ったよりも魔力と体力の消費が激しい。これだと仮にできたとしても、長時間維持することができない。もっと魔力の消費を抑えないと。

「大丈夫?ウェンディ」

しばらく休もうと思って近くの木の影に隠れるように座ると、シェリアも休むために私の隣に腰を掛けます。

「うん、全然平気だよ」

事前に準備していた飲み物を差し出され、それを受け取りながら笑顔でうなずく。彼女も飲み物を飲みながら、額に浮き出る汗を拭っていた。

「シェリアは順調?」
「う~ん・・・」

私の方はまだイマイチうまく行かないところがあり、なかなか成長しているように感じられない。なので彼女はどうなのかと聞いてみると、少女は眉間に皺を寄せて答えを考えている。

「まだちょっとだけど、少しずつ良くなってきてるかも」

しばし悩んでから苦笑いとも取れるような表情でそう答える。確実に成長しているかはわからないけど、少しずつでも良くなってきているのは感じられるらしい。ちょっと羨ましいなぁ、私も早く成長できている実感が欲しいよ。

「私も早くドラゴンフォースが使えるようにならないかなぁ」
「大丈夫だよ!!少しずつ出来てると思うよ!!」

落ち込んで丸まっている背中をポンポンと叩きながら慰めてくれるシェリア。やっぱりシェリアは優しいなぁ。お胸もちゃんとあるし、いいなぁ。

「ねぇ、なんで胸押さえてるの?」
「え!?」

すると、癖なんでしょうか、無意識に私が自分の胸を押さえていたらしく、心配そうに顔を覗き込んできます。うぅ・・・ただちょっとお胸のサイズが気になっただけで、深い意味はないんだけどなぁ・・・

「具合悪いの?シリル呼ぼうか?」

体調が悪いのだと勘違いして助けを呼ぼうかと聞いてくる彼女の優しさに罪悪感を感じながら大丈夫なことを伝えます。

「何かあったら呼んでね?いつでも飛んでくるから!!」

そう言い残して修行へと戻っていくシェリア。私も修行に戻らないと!!体はきっとこれから大人になっていくから、気にしちゃダメ!!うん!!きっと・・・大丈夫なはず・・・



















シリルside

「はい、おしまい」
「疲れたぁ!!」

背中から地面へと崩れるように倒れ込む。レオンと実践形式でトレーニングしてみたんだけど、こいつ容赦のないバトル方式をやらせてくるからキツかった・・・
最初は一分間全力で戦って一分間休んでを繰り返すインターバル方式。次に三分間一方が攻めてもう一方がひたすら受ける方式。時間が短いから楽勝だと思ってたら、休憩も短いから何度も意識がなくなりかけて危なかった・・・ニセットやったらしばらく休まないととてもとても動けなかったし。

「パワーもだけど、もう少し持久力も付けないとダメかもな」
「それは思った・・・」

大きく肩を上下させ息切れしているレオンと俺。二人ともいつも長時間戦っているから持久力があるように思っていたけど、実はただ気合いで持っていただけなのかわかってしまった。これを鍛える方が急務なのかもしれない。

「みんな!!そろそろ終わりにしよう!!」
「続きはまた明日ね」

キリがよかったのか、シェリアとウェンディも修行を一度終えて帰路に付こうと提案する。それに俺たちを含めて全員が賛同し、家に帰ろうとした。

「っ!!」

起き上がって歩き出そうとしたその瞬間、突然左腕に激痛が走る。思わず腕を押さえたが、すぐに痛みが引いていった。

「どうした?シリル」

先を行こうとするレオンが立ち止まり俺の方を見つめる。

「ううん。なんでもないよ」
「ならいいけど」

何事もなかったように歩き出すと、少年も気のせいかと考え直してシェリアたちの後ろを付いていく。お前のそういう単純なところ、結構好きだよ。

「それはいいとして・・・」

袖を軽く巻くって痛みが走った箇所を見てみることにした。すると、そこにはもう使わないと決めていたあの印が、色濃く浮かび上がってきていた。

「勝手に発動しちゃったのかな?」

ピンチになる度に使用していたから、いつの間にか自然に解放する癖でもついてしまったのかも。そう思った俺は注意しないとと思っただけで、特に何かをしようとは思わなかった。







 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
次は修行から少し離れたお話を一話挟む予定です。個人的には割りと重要視しているお話だと思うので、頑張ろうと思ってます。 
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