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トラベル・トラベル・ポケモン世界

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25話目 猛獣使い

 
前書き
またまた20000字超えです。長いです。 

 

「……なあグレイサン、俺の親と戦ってみないか?」
「お前の親ぁ!? 何でだよ?」
 イザルの突然の提案に、グレイは理解が追いつかずに聞き返した。

 グレイが、エレナとイザルの共同戦線に敗れた日の夜。
 グレイとイザルの2人は、バトルクラブ「ハーフ・シリアス」の宿泊施設に泊まることになった。
 相部屋になった2人が会話している中で、突如イザルからその話が出たのである。
 聞き返したグレイに対し、イザルが真意を説明する。
「……俺の親がジムリーダーだっていう話はしたよな? グレイサンは今、ジムバッジを2つ持ってるんだろ? だから、3つ目のジムバッジを俺の親から奪ったらどうだ、という話さ」
「ああ、そういう話。確かにバッジが増えれば得だし、悪い話じゃないんだが……イザルの親がやってるジムってどこにあるんだ? ここから近いのか?」
「……近くはないな。……だが、もしグレイサンが俺の親とのバトルを望むなら、ジムのスタッフがここまで車で迎えに来てくれると言っている」
「マジか。そりゃ嬉しいけど、何でそんな話になったんだ? もしかして、イザルの親って暇人なのか? ジムに人が来なくて廃業寸前とかなのか?」
「……アンタ、失礼な奴だな!? そんな訳あるか! ……俺の親がアンタの事が気になるって言うから紹介しただけさ」
「お前、いつの間に親と連絡とってんだよ?」
「……1日に1回は親に連絡するようにしてるのさ。……連絡をよこさないと親がうるさいからな」
「へぇ」
「……それで、どうするグレイサン? 俺の親と戦うか? ……嫌なら別に断っていいんだぜ?」
「いや、せっかくだし戦わせてくれよ」
「……分かった、そう伝えておく。……明日の朝に、この施設に迎えに来てくれるらしい」
「ああ分かった。ところで、お前の親は強いのか? オレが勝てそうな相手か?」
「……それは意味の無い質問だな。……ジムリーダーは、挑戦者のジムバッジの所持数に相応の強さのポケモンしか出さないことになっているからな。……ジムバッジ3個所持程度の実力があれば勝てるとしか言いようがないな」
「ああそう……」
「……ちなみに、俺の親は猛獣使いのジムリーダーだ。獣のポケモンを扱っている以外には特徴が無いからな、タイプ相性で対策することは無理だ」
「猛獣使いねえ、確かに対策のしようがないな」
「……対策ができないジムとか、ジムとしてどうなんだって感じはするがな」
 その後、会話は少し続いたが、明日のことを考えて2人とも早めに寝ることにした。



 翌日の早朝。
 グレイとイザルがハーフ・シリアスの入り口に向かうと、そこには既にジムのスタッフを名乗る者が立っていた。
「……じゃあ、せいぜい頑張ってくれ。……まあ、アンタの実力はジムバッジ2つ程度のものじゃないと思うから、アンタが負けることは無いと思うけどな」
「あれ? お前は来ないの?」
「……なんでわざわざ自分の親に会わないといけないのさ? 俺は今日はこのクラブの図書館にこもることに決めているんだ」
「ああ、そうなの」
 イザルをその場に残し、グレイを乗せた車はバトルクラブ「ハーフ・シリアス」を後にした。



 3時間程車に揺られたグレイは、サアドシティという都市にあるポケモンジムに到着した。
 ジムの前では、イザルの母親を名乗る人物がグレイを迎えてくれた。
「へえ~あなたがグレイちゃんかい! 息子がお世話になったみたいねえ。さあさあ、どうぞこっちへ」
 イザルの母親は、グレイをジムの奥に案内しながら、グレイに次々と喋りかけてくる。
「ねえグレイちゃん? うちの息子って外ではどんな感じなんだい? ちゃんと他のトレーナーと会話できてるのかい? 意地っ張りな性格は旅に出ても治らないのかねえ? グレイちゃんはどうやって息子と仲良くなったのさ? あの子素直じゃないから全然友達できないのに珍しいねグレイちゃん?」
「ああ……えっと……」
 1つ質問された事に対してグレイが答えようとすると、答える前にさらなる新しい質問が追加される。どちらの質問から答えようか迷っていると、また新しい質問が追加される。こうして未回答の質問が際限なく溜っていく。
 グレイは、圧倒的な手数の質問攻めを受け、バトルする前から疲れを感じ始めた。
(イザルが帰りたがらない理由がなんとなく分かった気がするな……)
 やかましく喋り続けるイザルの母親を見て、グレイはそう思った。

 グレイはイザルの母親に案内されて、ジムの奥にあるバトルフィールドにたどり着いた。
 直方体のバトルフィールドは、地面は平らに整備され、遮蔽物や障害物が一切なかった。お互いに逃げ場がない闘技場を思わせるバトルフィールドであった。
「じゃあ、早速バトルしちゃおうか! ルールは3対3のシングルバトルでね」
「ん? あなたと戦うんですか?」
「そうよ? 私がこのサアドシティのポケモンジムでジムリーダーを務めているサンヨウだよ。どうもよろしくね!」
 イザルの母親は、自らをジムリーダーのサンヨウと名乗った。
 その事にグレイは驚き、口を開く。
「猛獣使いって聞いてたから、てっきり強面(こわもて)な男がやってるもんだと……イザルの親父がジムリーダーをやってるかと思ってました」
「あっははは! 女にだって猛獣使いは務まりますとも! じゃあ、審判の用意もできたみたいだし、握手してからバトルを始めちゃおっか」
「ああ、どうもよろしく――」
 グレイは握手しようとしてサンヨウの右手に視線を移し、一瞬動きを止めた。
 そのグレイの様子に、サンヨウが口を開く。
「何か気づく事があった?」
「あの、右手の……小指はどうしたんですか?」
 サンヨウの右手には、指が4本しか存在しなかった。本来は小指が位置する部分には、指の代わりに痛々しい傷があった。
「右手の小指はね、ポケモンに噛み千切られちゃったのよ」
 サンヨウはそう明るく答えた。
「その手の傷、隠したりはしないんですか?」
「本当なら隠すのが良いんだろうけどね。私は猛獣使いのジムリーダーとして、ポケモンは時に人を傷つける場合があるって事を伝えなきゃと思ってね! もちろん人とポケモンは互いに助け合う存在さね。でも、ポケモンは人にとって危険な存在という側面もあることを伝えたい訳よ」
 サンヨウのその言葉を聞きながら、グレイは自分のポケモンがもつ脅威について何となく考える。
(オレがKKに噛み殺される場面は簡単に思いつくけど……よく考えればビビだって“むしのさざめき”で岩を砕けるんだもんな。ビビがふざけてオレに軽く攻撃しただけで、オレは命に関わるんだよな……)
 真剣な顔で考え込むグレイに、サンヨウが声をかける。
「でもねえ、ポケモンを怖がっちゃダメなのよ。ポケモンを怖がっていたらポケモンに舐められちゃうからね! どんな怖いポケモンでもかわいいと思えるくらいの度胸と余裕を持つことが大事さね! さあ、さっさとバトルしちゃおうか?」

「さあ、私の1体目のポケモンはこの子だよ!」
 そう言い、ジムリーダーのサンヨウは、カエンジシを繰り出した。
 カエンジシは、炎タイプかつノーマルタイプの、おうじゃポケモンである。四足歩行でライオンのような姿をしており、体は黒色や茶色で、首周りは炎のような立派な(たてがみ)で覆われている。
 グレイは知らない事であるが、カエンジシというポケモンは、♂の個体は首周りに立派な(たてがみ)をもち、♀の個体は頭から長く伸びた鬣をもつ。ジムリーダーのサンヨウが繰り出したカエンジシは首周りに鬣をもつ個体であるため、性別は♂である。
 グレイは、サンヨウが繰り出したカエンジシを見ながら考える。
(明らかに炎タイプな見た目だよな。だったら水タイプのKKが有利だな)
 グレイはモンスターボールを取り出し、ギャラドスを出した。
 現れたギャラドスは圧倒的なオーラと鋭い目つきによってカエンジシを威嚇し、カエンジシの攻撃力を下げた。

 さて、今まで様々なトレーナーと道端でバトルを重ねてきたグレイは、慣れた手つきでポケモンを繰り出してバトルを始めようとしていた。しかし、ここでグレイはある事に気がつく。
(あれ? これってジム戦だよな……? オレって戦わせるポケモン決めたっけ?)
 サンヨウは先ほど、『ルールは3対3のシングルバトル』と言った。当然、戦いに参加するポケモンの数は、それぞれの側で3体ずつということになる。
 現在サンヨウが身につけているモンスターボールの数は3個であるため、サンヨウは戦いに参加させる3体のポケモンは既に決まっていることが分かる。
 しかしグレイの現在の手持ちポケモンは、ビビヨン、ギャラドス、レパルダス、ハピナス、の計4体である。
(これって相手のポケモンを見てから、こっちの戦わせる3体を選んでいいってことか?)
 グレイが考えていると、サンヨウが声をかけてくる。
「いい勝負にしようねグレイちゃん! 楽しみにしてるからね」
 サンヨウは既にバトルを始める姿勢を見せていた。
(まあ挑戦者へのハンデって事なんだろ)
 わざわざ確認するのが面倒に思えたグレイは、適当にそう思うことにしたのであった。

 審判の合図により、グレイとジムリーダーのサンヨウの戦いが開始された。
「KK、突撃!」
 グレイの声と同時に、ギャラドスは“たきのぼり”で水をまといながらカエンジシに向かう。
「マロンちゃん、“にほんばれ”!」
 サンヨウに「マロンちゃん」と呼ばれたカエンジシは、技“にほんばれ”を発動し、周囲の空気を極端に乾燥させた。
 その隙にギャラドスが“たきのぼり”を直撃させてカエンジシを吹っ飛ばした。炎タイプをもつカエンジシに、水タイプの攻撃技“たきのぼり”は効果が抜群である。
 しかし、“にほんばれ”による空気の極端に乾燥により、ギャラドスの“たきのぼり”は威力を弱めらていた。カエンジシはそれほど大きなダメージを受けることはなかった。
 吹っ飛ばされて不安定な体勢のカエンジシに向かって、ギャラドスが太い尻尾を使ってカエンジシを薙ぎ払おうとする。しかし、
「マロンちゃん、“おんがえし”!」
 サンヨウの指示により、カエンジシは“おんがえし”を発動して、後ろ脚から凄まじい威力の蹴りを繰り出してギャラドスの尻尾を弾き飛ばした。
「KK、もう1回“たきのぼり”だ!」
「マロンちゃん、“おんがえし”!」
 ギャラドスは“たきのぼり”で水をまとってカエンジシに突撃する。しかし、周囲の極端な乾燥により威力は弱められる。
 対してカエンジシは“おんがえし”を発動して、今度は凄まじい威力の頭突きを繰り出してギャラドスの“たきのぼり”を相殺した。
「“おんがえし”ってどういう技なんですか?」
 激しい戦闘中にも関わらず、グレイはジムリーダーのサンヨウに質問を飛ばした。
 ジムリーダーのサンヨウは、嫌な顔をすることなくグレイの質問に答える。
「“おんがえし”って技は、ポケモンがトレーナーのために全力で相手を攻撃するって技だよ。ノーマルタイプの技さ。よく見ておきなね! ……マロンちゃん、“おんがえし”を見せてやりな!」
 サンヨウの指示でカエンジシは“おんがえし”を発動し、今度はギャラドスの胴体に向かって激しく噛みついた。
 カエンジシの“おんがえし”を見ながら、グレイはさらに質問を続ける。
「蹴ったり、頭突きしたり、噛みついたり……結局“おんがえし”ってどういう攻撃なんですか?」
「トレーナーへの感謝を力に変えて攻撃する技だから、そのポケモンによって攻撃方法は様々だね! マロンちゃん、“おんがえし”!」
「KK、“たきのぼり”だ!」
 ギャラドスの“たきのぼり”による水をまとった突撃と、カエンジシの“おんがえし”によるタックルがぶつかり合い、相殺された。
「“にほんばれ”で弱めても勝てないかい。だったら、マロンちゃん“ふるいたてる”!」
 カエンジシは“ふるいたてる”を使い、自身の攻撃力と特殊攻撃力を上昇させた。
 その間にギャラドスは“たきのぼり”の勢いでカエンジシを押しつぶし、さらに胴体で殴りつけたり尻尾で叩きつけたりしてカエンジシを痛めつけた。
 カエンジシは相当なダメージが蓄積されているのか、少しフラフラしている。
「さあ、やられた分を返しなマロンちゃん、“おんがえし”!」
 ギャラドスの“たきのぼり”と、カエンジシの“おんがえし”がぶつかり合った。
 カエンジシの攻撃力が上昇している影響により、今度はカエンジシの“おんがえし”がギャラドスの“たきのぼり”を撃ち破ってギャラドスに一方的にダメージを与えた。
 ダメージは受けたものの、ギャラドスは素早くカエンジシに近づいて、技ではない肉弾戦による攻撃を加え始める。
「よしKK! そのまま倒しきれ!」
「そうはいかないよ! マロンちゃん、“ワイルドボルト”だ!」
 “ワイルドボルト”は、電気をまとって相手にぶつかるという、電気タイプの攻撃技である。
 サンヨウの指示によりカエンジシは、殴りつけてくるギャラドスに向かって“ワイルドボルト”で電気をまとってぶつかった。
 電気タイプの攻撃技は、水タイプにも飛行タイプにも効果抜群である。水タイプかつ飛行タイプのギャラドスは、二重に苦手である電気技を受けたことで大きなダメージを受けた。
(おいおい! 炎タイプかと思ってたら電気技も使えるのかよ!)
 グレイは驚きながら、カエンジシの使う“ワイルドボルト”への警戒を強めた。
「さあマロンちゃん、もう1度“ワイルドボルト”!」
「KK! “たきのぼり”!」
 ギャラドスが“たきのぼり”で水を、カエンジシが“ワイルドボルト”で電気を、それぞれ体にまとって互いに激突した。
 威力で勝ったのはギャラドスの“たきのぼり”であった。結果としてカエンジシが一方的にダメージを受けることになった。
(“たきのぼり”と“ワイルドボルト”のぶつかり合いなら勝てるのか! だったら……)
「KK、とにかく“たきのぼり”で攻めろ!」
 グレイは、これ以上ギャラドスが“ワイルドボルト”を受けないように警戒し、“ワイルドボルト”との競り合いで勝てる“たきのぼり”を連打するように指示した。
「だったらマロンちゃん、“おんがえし”!」
 しかし、今度サンヨウは“おんがえし”を命じた。
 ギャラドスの“たきのぼり”と、カエンジシの“おんがえし”がぶつかり合った。その結果カエンジシの“おんがえし”が打ち勝ち、ギャラドスにダメージを与えた。
(“たきのぼり”を連発すれば相手の1番ヤバイ“ワイルドボルト”は防げるが、相手の“おんがえし”とぶつかったら勝てない……だが肉弾戦を展開すれば、激しいやり取りの中で“ワイルドボルト”を受ける可能性がある……どっちにしても大きなリスクがあるな。何か他に、リスクがない良いアイデアはないのか?)
 グレイは少し考えた後、腹を決める。
(やっぱKKにはゴリ押ししかないな)
 決心したグレイは口を開く。
「KK、肉弾戦だ! 暴れてくれ!」
 自分のギャラドスが守りには向かない性質であることを考えたグレイは、相手の“ワイルドボルト”の恐怖を無視して突撃を命じた。
 ギャラドスはカエンジシと技をぶつけ合った後、素早くカエンジシに接近する。カエンジシが牙で抵抗してくるが、ギャラドスは力づくでカエンジシの頭を潰してカエンジシに襲いかかった。
「そんなに近づいちゃって、いいのかい? マロンちゃん“ワイルドボルト”!」
「吹っ飛ばせKK!」
 カエンジシが“ワイルドボルト”で電気をまとい始めるが、それよりも早くギャラドスは頭突きでカエンジシを突き飛ばし、太い尻尾で薙ぎ払ってカエンジシを横に激しく押し出した。
 “ワイルドボルト”を空振りしたカエンジシに向かってギャラドスが“たきのぼり”で突撃した。無防備な状態で攻撃を受けたカエンジシは強く吹っ飛ばされた。
「KK! “あまごい”!」
 ギャラドスがそろそろ暴れることに満足した頃ではないかと考えたグレイは雨を降らせる技“あまごい”を指示した。
 しかし残念ながらギャラドスはグレイの指示を無視してカエンジシに突撃した。
「今だよマロンちゃん! “ワイルドボルト”!」
 突っ込んでくるギャラドスに対して、カエンジシの“ワイルドボルト”が直撃した。

 審判のホイッスルが鳴り響いた。戦う者のどちらかが戦闘不能となった時の合図である。

 ギャラドスはカエンジシの“ワイルドボルト”を受けたことで大きなダメージを受け、ボロボロの状態で浮遊していた。戦闘不能となったのはカエンジシであった。
「どういうことだ……?」
 攻撃をした側のカエンジシが倒れている理由が分からず、グレイはそう(つぶや)いた。
 それに対してジムリーダーのサンヨウが答える。
「“ワイルドボルト”は、攻撃の反動で技を使った者にもダメージが返ってくる負担の大きい技なのさ。マロンちゃんは体力がかなり削られていたからねえ、反動に耐えられなかったんだろうさ」



************
 現在の状況

グレイ側
 ギャラドス[呼び方:KK] (大ダメージ)
 ?
 ?

ジムリーダー・サンヨウ側
 カエンジシ[呼び方:マロンちゃん] (戦闘不能)
 ?
 ?

場の状態
・“にほんばれ”による極度の乾燥

************



「それにしても、ギャラドス対策のためにメンバーに加えていたマロンちゃんが、まさかギャラドスに倒されちゃうとはねえ……さすがだよグレイちゃん」
「ん……?」
 サンヨウの言葉に引っかかりを感じたグレイは、サンヨウに聞き返す。
「ギャラドス対策? なんでオレがギャラドスを持ってるって知ってるんですか?」
「そりゃ息子に聞いたからさ! グレイちゃんが強いギャラドスを連れてるって息子が言ってたもんだから、まずはギャラドスをどうにかしないとダメだと思ってね、炎タイプでギャラドスをおびき出して電気技の奇襲で倒そうと思ってたのよ」
 サンヨウの発言に対して、グレイは思わず問いかけをする。
「え……? 公式戦でジムリーダーが挑戦者を対策していいんですか……?」
「ん……?」
 2人の間に少しの沈黙の時間が流れた。
 自分が何か変な発言をしたのかとグレイが思い巡らしていると、突如サンヨウが衝撃の言葉を放つ。
「あれ? 言ってなかったっけねえ? これは正式なバトルじゃないよ」
「は?」
 理解が追いつかず、グレイは間抜けな声をあげた。
「正式なバトルじゃない……? どういう事ですか? ジムバッジと無関係って事ですか?」
「いやいや、グレイちゃんが勝てたら、ちゃんとジムバッジはあげるよ! ただし今回の私のポケモンは、ジムバッジ所持数が2個の挑戦者と戦わせるポケモンじゃなくて、私がプライベート用に育てているポケモンたちって事さ。まだ育てている途中で未熟だけど、そこらのトレーナーのポケモンには負けないくらいの力をもってるから安心するといいよ」
「安心って……そもそも、なんでバッジ2個の挑戦者用のポケモンじゃないんですか?」
「だってグレイちゃんって強いんでしょ? ジムバッジの数2個の挑戦者と戦わせるポケモンじゃ絶対に物足りないと思ってねえ」
「いやいや、なんでオレをそんなに強いトレーナーだと思ってんですか!?」
「だって息子が『グレイってトレーナーは俺と同じくらい強い』なんて言ってたからねえ。
あの捻くれ者でいじいっぱりな息子が言う『同じくらい』なら、息子よりも遥かに強いトレーナーに違いないと思ってねえ」
「いやいやいや! 本当に同じくらいの強さですって! あんたの息子はそこまで他人を認められない程の子供じゃないですよ」
「そうかねえ……? あの捻くれ者でいじいっぱりで泣き虫なイザルがねえ……? うちの息子もグレイちゃんを見習って、しっかり者になって欲しいんだけどねえ……」
 猛獣使いとしてポケモンの扱いが上手だからといって、自分の子供の成長度合いを見極められる訳ではないのだとグレイは感じた。それと同時に、自分の成長を全く親に認めてもらえないイザルに少し同情の念が湧いたグレイであった。
 サンヨウが口を開く。
「まあいいさ。ジムバッジってのは死闘の末に手に入れるものさ。今は余計な事は考えずに全力で私を倒しにきな! KKって言ったか、グレイちゃんのギャラドスも次のバトルを今か今かと待ち構えているからねえ」
 そう言い、サンヨウは新たなポケモンを出した。

 サンヨウが2体目に繰り出したポケモンは、ライボルトであった。
 ライボルトは、ほうでんポケモン。電気タイプである。四足歩行で、全体的に青色の体毛で、垂直に逆立った黄色の(たてがみ)をもっている。
 その鬣は常に放電しており、パチパチと小さな火花を作り出している。

(あからさまに電気タイプなポケモンだな……これもギャラドス対策ってことなのか?)
 ギャラドスが二重に苦手とする電気タイプのライボルトを見て、グレイはそう思った。
「じゃあ早速いくよ! レモンちゃん、“かみなりのキバ”!」
 サンヨウにレモンちゃんと呼ばれたライボルトは、電気を帯びた牙でかみついて攻撃する電気タイプの攻撃技“かみなりのキバ”を発動した。
「“たきのぼり”だKK!」
 対してギャラドスは、水をまとい、迫るライボルトに突撃した。
 先ほど、既に戦闘不能となったカエンジシが使った“にほんばれ”の効果は続いており、ギャラドスの“たきのぼり”は、不自然な空気の乾燥によって威力を弱められた状態でライボルトの“かみなりのキバ”と正面からぶつかり合った。
 それでも威力ではギャラドスの“たきのぼり”が打ち勝ち、ライボルトを後ろに弾き飛ばした。
「このまま正面突破は無理そうだね! ならレモンちゃん、“エレキフィールド”!」
 サンヨウの指示により、ライボルトは“エレキフィールド”を発動した。ライボルトの足元を中心に電気が広がっていき、バトルフィールドの地面全体に電気がかけめぐった状態になった。
 ライボルトが“エレキフィールド”を発動している間に、ギャラドスはライボルトに接近して、“たきのぼり”を直撃させてライボルトを強く吹っ飛ばした。それと同時、グレイはギャラドスに指示を送る。
「KK! “あまごい”」
「レモンちゃんは“かみなりのキバ”!」
 ギャラドスはグレイに従い、“あまごい”を発動して屋内のバトルフィールドに無理やり不自然な雨雲を発生させて雨を降らせた。
 ギャラドスの攻撃によって強く飛ばされたライボルトは、ギャラドスが“あまごい”を発動している隙に“かみなりのキバ”を届かせることはできなかった。
 再び、ギャラドスの“たきのぼり”と、ライボルトの“かみなりのキバ”がぶつかり合い、そして再びギャラドス側の攻撃が威力で上回った。先ほどまでの空気の乾燥は雨によって打ち消され、さらにギャラドスの“たきのぼり”は周囲の雨を吸収して威力が上がった状態になっていたのである。
(このままKKで2体目も倒せるんじゃないか? いけるだろこれ!)
 そう思い、グレイはさらにギャラドスに突撃を命じた。
「グレイちゃんのギャラドスは本当に強いねえ。こりゃあ最後の手段しかないねえ。レモンちゃん、静電気だよ!」
 サンヨウが指示した瞬間、ギャラドスと殴り合っていたライボルトは突如動きを止め、無抵抗にギャラドスの攻撃を受け始めた。

 ギャラドスは、無抵抗のライボルトの後ろ脚を“こおりのキバ”による冷気の牙で捕え、勢いをつけて地面に叩きつけ、地面からの跳ね返りの勢いを利用してさらに地面に叩きつける。
 ゴムマリで遊ぶかのようにライボルトを地面に何度も叩きつけていたギャラドスだが、一瞬ギャラドスの体が硬直して動きが止まった。
「今! “おんがえし”!」
 その隙にライボルトは“おんがえし”を発動し、後ろ脚から凄まじい蹴りを繰り出してギャラドスの“こおりのキバ”を相殺し、脱出を果たした。
「よし! レモンちゃん“かみなりのキバ”!」
「KK、“たきのぼり”!」
 再びギャラドスとライボルトの技のぶつかり合いが始まるかに思えた。しかし、ギャラドスは一瞬動きが止まり、僅かな隙ができる。
「レモンちゃん! 避けてから攻撃!」
 隙をつかれ、ギャラドスの“たきのぼり”はライボルトに避けられて空振りした。
 その直後、ライボルトの“かみなりのキバ”による帯電した牙の一撃がギャラドスに直撃した。

 ギャラドスは戦闘不能となった。



************
 現在の状況

グレイ側
 ギャラドス[呼び方:KK] (戦闘不能)
 ?
 ?

ジムリーダー・サンヨウ側
 カエンジシ[呼び方:マロンちゃん] (戦闘不能)
 ライボルト[呼び方:レモンちゃん] (大ダメージ)
 ?

場の状態
・“あまごい”による降水
・“エレキフィールド”によるエレキフィールド

************



「何か質問があれば受け付けるよ?」
 グレイが疑問に満ちた表情をしているのを見て、サンヨウはそう言った。
「KKがいつの間にか麻痺してたんですけど、何したんですか?」
 ギャラドスが倒される直前、ギャラドスが硬直して体の動きが止まった場面を思い出しながら、グレイはそう質問した。
「おや、麻痺してる事には気づいていたのかい。ギャラドスが麻痺したのは、レモンちゃんの特性「せいでんき」によるものさ。特性「せいでんき」は普通、接触してきた相手をたまに麻痺させるものだけどレモンちゃんは特別でね。特別な素質をもちながら特殊な訓練をやることで、特性「せいでんき」で相手を狙って麻痺させることができるようになったのさ」
「狙って麻痺させる……? じゃあ、そのライボルトに触っただけで麻痺するって事ですか!?」
「そうなるのが理想なんだけどね、そう上手くはいかないさ。今の所は技を使うことと能動的に特性を発動させることが両立できないからね。技を使わないで集中している時だけ、触れた相手を確実に麻痺させる事ができるのさ」
 そのサンヨウの言葉を聞き、グレイは次なるポケモンを考える。
(確かレパは麻痺しない特性をもっていたハズ……姐さんも一度ボールに戻れば麻痺を治せる……でも、そもそも触らなければ麻痺しないならビビに狙撃させるのもありか……)
 さらにグレイは、先ほどライボルトが使った技“エレキフィールド”の影響で、バトルフィールドにかけめぐり電気に注目し、サンヨウに質問する。
「さっき“エレキフィールド”って技使ってましたけど、何なんですかこれ?」
「これは電気技の威力を上げて、さらにポケモンが眠らなくなる特殊な電気網さ。ああ、ただしその効果を受けられるのは地面に接しているポケモンだけだよ」
 サンヨウの答えを聞き、グレイは再び思考する。
(つまり今のライボルトは電気技が強くなって、さらに眠らない状態ってことか。打たれ弱い上に電気が苦手なビビはこの状態じゃあ一撃で倒される可能性あるし、姐さんの“うたう”が効かないのもつらい。ここはレパしかないな! 相手は弱ってるし速攻で片付けよう)
 結論を出したグレイはレパルダスに戦わせることにした。



「レパ! “ねこだまし”で“みだれひっかき”!」
 グレイの指示の下、レパルダスは“ねこだまし”でライボルトを攻撃して怯ませ、その隙に“みだれひっかき”で超強力な連撃を繰り出してライボルトにダメージを与えた。

 相手のライボルトはあっさりと戦闘不能になった。



「麻痺しなかったところを見ると、グレイちゃんのレパルダスは特性じゅうなん、だね」
 倒れたライボルトをモンスターボールに戻しながら、サンヨウがそう口にした。
「もしかしてライボルトが攻撃してこなかったのは、レパの“ねこだまし”で怯んだ訳じゃなくて、さっき言ってた確実に麻痺させる特性を使ってたんですか?」
「最初はもちろん怯んでたよ。“ねこだまし”はそういう技だからね。でも倒れる直前は怯みから回復して動ける状態だったけど、あえて攻撃しないでレモンちゃんの特別な特性を発動させてたのさ」
 サンヨウの言葉に対し、グレイは少し挑発気味に言葉をかける。
「せっかく特性を決めたのに、オレのレパルダスの特性がじゅうなんで残念でしたね」
「そうでもないさ。特性かるわざ、じゃない事が分かっただけでもグレイちゃんのレパルダスの底が知れたさ」
 サンヨウは余裕の態度でその言葉を返した。
 『底が知れた』というサンヨウの若干の挑発も気になるが、それは無視してグレイは情報収集のために言葉を返す。
「もし特性かるわざ、だったら何だったんですか?」
「それはこれから私が使うポケモンを見てくれれば分かることさ」
 そう言い、サンヨウは最後のモンスターボールを取り出した。
「さあ頼むよ! ブドウちゃん!」

 サンヨウが繰り出したポケモンは、レパルダスであった。
 グレイのレパルダスと同じく、紫色で四足歩行の豹のように引き締まった体と、猫のようなかわいい頭をもっている。
 グレイとサンヨウ。互いに同じポケモンで対峙することとなった。
「猛獣使い……レパルダス……?」
 サンヨウが繰り出したポケモンを見て、グレイは思わず呟いた。
 猛獣使いのジムリーダー・サンヨウ。その人がプライベートで育成中のポケモンということで、最後には恐ろしい風貌の獣が出てくると思っていたグレイ。しかしグレイの想像とは違い、最後に出てきたのはレパルダスであった。
「確かに猛獣と言われればそうだけど、なんか猛獣使いの想像とは違うポケモンですね」
 そのグレイの言葉に、サンヨウは笑いながら答える。
「おやおやグレイちゃん。レパルダスを舐めてるね? 言っとくけど、さっき戦ったマロンちゃんとレモンちゃんの2体を倒してやっと半分って感覚だよ? ブドウちゃんはそのくらい強いよ」
 サンヨウの言葉と表情から嘘は感じられない。しかしグレイはいまひとつ相手のレパルダスを警戒することができない。

「レパ、“みだれひっかき”」
「ブドウちゃん! “ねこだまし”!」
 レパルダス同士のバトルが始まった。
 グレイのレパルダスが“みだれひっかき”を当てようとサンヨウのレパルダスに近づく。
 しかし次の瞬間、サンヨウのレパルダスが“ねこだまし”でグレイのレパルダスを攻撃して怯ませた。
 その光景を見てグレイは気づくことがあった。
(今……“ねこだまし”を同時に2発放った……? いや見間違えか?)
 気を取り直してグレイは指示を下し、サンヨウも指示をする。
「レパ! とにかく“みだれひっかき”で攻撃!」
「ブドウちゃん、こっちも“みだれひっかき”! 格の違いを見せつけな!」
 グレイのレパルダスとサンヨウのレパルダスは、互いに密着して“みだれひっかき”で相手を攻撃しあった。“みだれひっかき”による圧倒的な手数の引っ掻き攻撃は、時にぶつかり合い、時に相手の体へと届いてダメージを与えた。
 しかし、同じ技であるにも関わらず、両者の攻撃の手数には大きな隔たりがあった。
(なんだよあの攻撃速度!? あり得ねぇだろ!)
 サンヨウ側の“みだれひっかき”は手数でグレイ側を圧倒し、より速いペースでグレイのレパルダスの体力を削っていたのである。
 現状をどうにかしようと、グレイはあわてて指示する。
「レパ! なんとか“すなかけ”を当てろ!」
「無駄さ! ブドウちゃん、“ダメおし”!」
 サンヨウのレパルダスが、グレイのレパルダスに向かって“ダメおし”を繰り出した。
 グレイのレパルダスは強く宙を舞い、地面に落ちて動かなくなった。戦闘不能となったのである。



************
 現在の状況

グレイ側
 ギャラドス[呼び方:KK] (戦闘不能)
 レパルダス[呼び方:レパ] (戦闘不能)
 ?

ジムリーダー・サンヨウ側
 カエンジシ[呼び方:マロンちゃん] (戦闘不能)
 ライボルト[呼び方:レモンちゃん] (戦闘不能)
 レパルダス[呼び方:ブドウちゃん] (小ダメージ)

************



(最初の“ねこだまし”……最後の“ダメおし”……やっぱりどっちも2発分の攻撃を出してるように見えたな……。今思えば相手の“みだれひっかき”の連続攻撃の頻度も、レパの“みだれひっかき”の2倍だったような気が……)
 考えるグレイに向かってサンヨウが声をかけてくる。
「どうだいグレイちゃん! 私のレパルダスは強いだろう? おや、そんな考え込んだ顔してどうしたんだい? 何か気づく事でもあったかい?」
 『気づく事でもあったか』。そのサンヨウの言葉は、サンヨウのレパルダスには何か強さについて重大な秘密があるという事を物語っているようにグレイには思えた。
 グレイは、自身で導き出した1つの仮説の答え合わせをするべく、サンヨウに訊ねる。
「サンヨウさんのレパルダス……技を2つ同時に繰り出してませんか?」
「おや、2回攻撃に気づいたかい! さすがだよグレイちゃん! 気づいたグレイちゃんには特別にタネ明かしをしようかねえ」
 そう言い、サンヨウは自分のレパルダスの強さについて語り始める。
「まずブドウちゃんは特性かるわざ。かるわざは普通、身軽な状態の時に素早さが上がるっていうものだけど、ブドウちゃんはそれだけじゃないのさ!」
 先ほど、ライボルトが通常の特性よりも強力な能力をもっていた例があるので、グレイは自然とサンヨウの言葉に真剣に耳を傾けることになった。
「元々特別な才能を持っているブドウちゃんに、さらに特殊な訓練を施していてね。ブドウちゃんの「かるわざ」は、体の動きが速くなるだけじゃなく、攻撃頻度も上がるのさ」
「攻撃頻度が……上がる……?」
「そうさ。まあ分かりやすく具体的に言えば、ブドウちゃんは特性かるわざ発動時には2回攻撃ができるのさ! 最初に放った“ねこだまし”も2回分の攻撃をしたし、“みだれひっかき”も普通の2倍の手数で攻撃できる。もちろん最後の“ダメおし”も2回分の攻撃が当たっているはずさ!」
 技を2回分同時に使っているという考えが当たっていた事が判明したグレイ。しかし重要な事は、その相手をどう倒すかという事であった。
 攻略の手がかりを掴むために、グレイはサンヨウに質問を飛ばす。
「その特性かるわざが発動したら2回攻撃できるって言ってましたけど、その特性が発動する条件は何なんですか?」
「特性かるわざの発動条件は、ポケモンが身軽な状態であることさ。逆に身軽じゃない状態っていうのは、ポケモンに木の実を隠し持たせていたり、アクセサリーを身につけさせている時さ」
 いまいち欲しい情報が得られなかったグレイは、もはやヒントを聞き出す構えではなく、答えを聞き出す構えで質問を投げる。
「その2回攻撃を防ぐ方法は? どうしたら2回攻撃を防げるんですか?」
「防ぐ方法は無いよ」
 そう即答した。サンヨウはさらに言葉を続けて言う。
「ブドウちゃんには何も隠し持たせてないし、余計に伸びた体毛も頻繁に切っている。常に身軽な状態、常に2回攻撃できる状態さ」
「マジかい……じゃあ、あれだ! せめて覚えてる技を教えて下さい! そのレパルダスが覚えてる技!」
「おやおや、いくらジムリーダー相手とは言え対戦相手にそれを聞くかい? まあいいさ、特別に教えてあげようかねえ。ブドウちゃんの技は、“ねこだまし”、“みだれひっかき”、“ダメおし”、“おんがえし”この4つだよ。何か知らない技はあるかい?」
「“ダメおし”は知らないです」
「そうかい。“ダメおし”は悪タイプの攻撃技でね。直前にダメージをくらっているポケモンに命中させた場合、威力が大幅に高まるという特殊な効果もあるね」
「え……? じゃあ“ダメおし”も2回連続攻撃できるってことは……2回目の攻撃はいつも威力が高い……?」
「その通りさ、よく気づいたね! さて、もう聞きたいことはないかい?」
 サンヨウから得た様々な情報を整理するべく、グレイは思考する。
(“ねこだまし”は最初に1発だけ出せる技だからもう関係ない……おそらく“みだれひっかき”が主なダメージ源だろう、レパもそうだから多分同じハズ……“ダメおし”も2連続ヒットしたら半端じゃないダメージを受けるな……オマケにどんな体勢からでも繰り出せる“おんがえし”まである。……でも、どれも近距離の物理攻撃ばかりだ。狙撃に徹すればあるいは……!)
 グレイはモンスターボールを取り出し、その手に握った。

「頼むぜ、ビビ!」
 その言葉とともに、グレイは最後のポケモン、ビビヨンを出した。
 振り向いて視線を合わせてくるビビヨンに対し、グレイは冗談っぽくジェスチャーを送り始める。両手で蝶の形を作り、その場所を猫の手の形を作った右手で切り裂き、最後に突き立てた親指で首を横に斬った。
 ビビヨンは苦笑いのような表情をグレイに返した。ジェスチャーは『攻撃されれば死ぬ』の意味をもっており、防御力の弱いビビヨンが相手レパルダスの攻撃を受けたら一撃で倒れるという警告のメッセージである。
 グレイは再び相手レパルダスを見ながら考える。
(相手は悪タイプのポケモン……ビビの“むしのさざめき”は効果抜群だが、“サイケこうせん”は全く効かない……つまり肉弾戦ができないビビは攻撃方法が“むしのさざめき”1種類だけってことになるな。あとは“しびれごな”と“ちょうおんぱ”をどう使うかだ。そう、相手はレパと違って特性「じゅうなん」じゃないから麻痺させることができるのを忘れたらダメだな)
 思考を終え、グレイは使うべき戦法を決定した。

 審判の合図により、お互い最後のポケモンによるバトルが開始された。
「ビビ、狙撃だ! 近づかれたら死ぬと思え!」
 グレイの指示でビビヨンは“むしのさざめき”を遠くのレパルダスに向けて発射した。
「ブドウちゃん、“おんがえし”で防ぎな!」
 レパルダスは、飛来する“むしのさざめき”による音の衝撃波に向かって“おんがえし”を繰り出して攻撃した。“おんがえし”は飛来する“むしのさざめき”の威力を完全に消滅させた。
「ブドウちゃんの2発分の“おんがえし”の方が威力が強いようだね! じゃあブドウちゃん、相手に近づくんだ!」
 レパルダスはビビヨンに向かって走り始める。ビビヨンが“むしのさざめき”を放つ度にレパルダスは“おんがえし”で打ち消した。
 障害物が全くない闘技場のようなバトルフィールドには逃げ場がなく、レパルダスとビビヨンの距離はすぐに縮まっていく。
「ビビ、壁作戦だ!」
 グレイの指示に対して、ビビヨンは戸惑いの表情を返してきた。その理由に気づいたグレイは早口で言葉を投げる。
「ビビ、大丈夫だ。そのレパルダスはレパとは違って“しびれごな”が効くんだよ!」
 グレイの所持するレパルダスの特性は「じゅうなん」であるため“しびれごな”は効果が無い。そのためビビヨンは『レパルダスには“しびれごな”が効かない』という刷り込みがあったのである。
 グレイが間違った指示を送っている訳ではないと分かり、ビビヨンは壁作戦を行うために急上昇して空中静止(ホバリング)する位置を高くした。
「なんだい、空に逃げたって無駄だよ? レパルダスは全力でジャンプすればバトルフィールドの天井まで届くからね。グレイちゃんもレパルダスを連れてるなら、そのジャンプ力は分かるだろう?」
「逃げただけじゃないんだ、これが。まあ見てて下さいよ」
 グレイはビビヨンを指しながらそう言った。
 サンヨウが視線を移すと、ビビヨンが高い位置で“しびれごな”を発動して麻痺効果のある粉をばらまいている光景が目に映った。
「そんなもの当たらないさ。ブドウちゃん、後ろに避けるんだ!」
 サンヨウの指示でレパルダスは一旦後退して“しびれごな”が降ってくると推測される場所から退いた。ゆっくりと落下する“しびれごな”が地面に落ちるまでには十分な時間があった。
 改めて攻撃指示を出そうとするサンヨウは再びビビヨンに目を移し、そして(つぶや)く。
「なるほどねえ、『“しびれごな”の壁』って訳かい」
 ビビヨンは“しびれごな”の後ろに陣取り、ゆっくりと落下する“しびれごな”に合わせてビビヨンもゆっくりと地面に移動し、常にレパルダスとビビヨンの間に“しびれごな”が存在するように位置取りをしていた。
 “しびれごな”がある程度地面に近づいた頃、ビビヨンは上に向かって新たな“しびれごな”をまき、素早く急上昇して新たな“しびれごな”の後ろに陣取り、再び同じ動きを始めた。
「なるほどねえ、その動きを繰り返せば壁はいつまでも維持できる訳かい。じゃあその戦法の強度をお手並み拝見といこうかねえ。ブドウちゃん、粉に向かって“おんがえし”!」
 レパルダスが、ビビヨンとその途中にある『“しびれごな”の壁』に向かって力強く高くジャンプしながら“おんがえし”を発動する。
 “しびれごな”自体には威力は無いため、レパルダスの2発分の“おんがえし”によって『“しびれごな”の壁』は跡形もなく散り散りになり消滅した。
 しかしその直後、“おんがえし”による攻撃を終えたレパルダスに、ビビヨンの“むしのさざめき”が直撃した。
 レパルダスは大きなダメージを負い、また空中で踏ん張りがきかないこともあって“むしのさざめき”に押し出されてビビヨンとの距離が開いた。
「よし! ビビ、狙撃だ」
「“おんがえし”だよ! そのまま近づきな!」
 ビビヨンから放たれた“むしのさざめき”を“おんがえし”による引っ掻き攻撃で打ち消したレパルダスは、そのままビビヨンに向かった走る。
「ビビ、壁作戦!」
 ビビヨンは再び高い位置で“しびれごな”を発動して麻痺効果のある粉をばらまいて、レパルダスとの間に『“しびれごな”の壁』を作り上げた。
「またそれかい? 麻痺しないためには攻撃技で『壁』を壊さなきゃなんない。でも攻撃技を『壁』に使うとビビヨンからの攻撃を防げない。よく考えられてるさ。……でも、少し甘いんじゃないかい? さあブドウちゃん、“みだれひっかき”だよ!」
 今度レパルダスは、“みだれひっかき”を発動しながら高くジャンプして、ビビヨンとその途中にある『“しびれごな”の壁』に迫った。
 レパルダスによる超“みだれひっかき”によって『“しびれごな”の壁』はかき消された。その直後、空中のレパルダスに向かってビビヨンの“むしのさざめき”が飛来する。
 しかし、レパルダスの“みだれひっかき”による連続攻撃はまだ続いており、『“しびれごな”の壁』に続いて“むしのさざめき”も完全に相殺した。
 互いに技を使い終わった直後、空中のレパルダスは最初のジャンプの勢いを維持したままビビヨンに飛びかかるが、ギリギリの所でビビヨンはそれを避けた。
 レパルダスが着地する瞬間のタイミングを狙ってビビヨンが“むしのさざめき”を放った。不安定な姿勢のレパルダスに“むしのさざめき”が迫る。
「“おんがえし”だよブドウちゃん!」
 しかし隙を狙った“むしのさざめき”は、レパルダスの“おんがえし”による尻尾の薙ぎ払い攻撃によって相殺された。

 一歩間違えれば今の時点で負けていたとグレイは思った。レパルダスの飛びかかり攻撃を避けることができたから良かったものの、もし捕らえられていたらビビヨンは地面に引きずり下ろされ、次の瞬間にはレパルダスの強力な2回攻撃で倒されていただろうと。
 『“しびれごな”の壁』による、麻痺かダメージかの2択を強いる戦法は、相手の連続攻撃という手段によって2択の枠を超えられて失敗。
 さらに着地の無防備な瞬間を狙った一撃も、どんな体勢でも繰り出すことができる“おんがえし”によって防がれて失敗。
 グレイは新たな戦法を求められる状況になってしまった。

 しかし、そう簡単に新しい戦法など思いつくものでもない。
 グレイはその場しのぎで、とりあえず『“しびれごな”の壁』を再びビビヨンに作らせることにした。
 先と同様、レパルダスは超“みだれひっかき”で『壁』と“むしのさざめき”を強引突破しつつビビヨンに飛びかかった。
 しかしグレイが何も打開策が無いことを察してか、ビビヨンは守りに徹する姿勢を見せていたためレパルダスの攻撃をギリギリで回避することができた。
 さらにビビヨンは、レパルダスが着地する瞬間の無防備な体勢を狙って“むしのさざめき”を放った。しかしそれも先と同様、レパルダスの“おんがえし”で防がれた。ビビヨンは上昇しつつ再び“しびれごな”を発動し、壁作戦を継続する。
 その様子を見つつグレイは思う。
(オレがタイミングとか指示しなくても、壁作戦とか、着地の隙を狙うとか、勝手にやってくれるんだよなビビは。結構ビビって学習能力高いよな。さっきもレパルダスには“しびれごな”は効かないんじゃないかって抗議の視線を送ってきたし……何ならオレが間違った指示を出しても勝手に修正してくれるんじゃないか? ……あ!)
 突如として作戦を思いついたグレイは、作戦のタイミングを計るためにバトルの状況に目を移す。
 状況は、レパルダスの飛びかかり攻撃を危なっかしく避けたビビヨンが、レパルダスの着地の瞬間を狙って“むしのさざめき”をちょうど発射した瞬間であった。
「ビビ、後ろに逃げろ! 壁際までいっぱいだ!」
 グレイの指示により、ビビヨンはバトルフィールドの壁際まで後退してレパルダスとの距離をとった。
「壁際に逃げたって無駄さ! フィールドの端なんかじゃ、これ以上の逃げ場は無いからねえ!」
 サンヨウの言葉を無視し、グレイは指示を続ける。
「ビビ、狙撃!」
「“おんがえし”で防ぐ! そして近づきなブドウちゃん!」
 ビビヨンから発射される“むしのさざめき”は、やはりレパルダスの“おんがえし”によって防がれる。
 互いに攻撃技を使った直後、レパルダスは素早くビビヨンの方へ走り、距離を詰めた。



****



 壁際のビビヨンがレパルダスの進攻を止めるために“むしのさざめき”を発射するが、その度にレパルダスは“おんがえし”でそれを防いだ。
(まだ育成途中で未熟とは言え、やっぱりグレイちゃんには強すぎたかねえ? ブドウちゃんを戦わせたのはマズかったかも知れないねえ……)
 サンヨウは目の前の状況を見ながらそう思った。
 ついにレパルダスはビビヨンに接近し、ビビヨンを完全に追い詰めた。
(これで“みだれひっかき”で詰みだね。……1発ごとにそれなりの威力がある引っ掻き攻撃が連続で放たれる。しかもブドウちゃんはそれを2倍の手数で放てるんだ。……例えグレイちゃんのビビヨンが“むしのさざめき”で抵抗したとしても延命にしかならないねえ。……でも、手を抜くつもりはないさ。全力でグレイちゃんのビビヨンを潰しにいくとしようかね)
 ここでサンヨウは、バトルの最後にグレイがどのような態度でどのような指示をするか注意深く見ることにした。
 グレイに限った話ではない。全ての挑戦者に対してサンヨウは、バトルで負けが決まった時にトレーナーがどのような指示を出すのか注意深く見ることにしていた。
(“むしのさざめき”で“みだれひっかき”に抵抗して、少しでも戦う時間を長くする努力をするかい? あるいは奇跡を信じて、普通では絶対にやらないような突拍子もない指示をするかい? それとも素直に負けを認めて、もう何も指示をしないかい? グレイちゃんはどれなんだろうねえ……?)
 その選択に優劣は無く、どの選択が良い悪いという話でもない。しかし、どれを選んだかによって、このポケモンバトルをどのように解釈しているのか分かることもある。
 ポケモンバトルが絆を深める儀式と考える者ならば、例え勝てなくても少しでも長く戦う努力をするかも知れない。あるいは楽しむ場と考える者ならば、最後に突拍子もないことを試すかも知れない。勝利を求める者ならば、勝つ見込みのないバトルに指示することを無駄と考えるかも知れない。
「さあブドウちゃん、“みだれひっかき”だよ!」
 指示したサンヨウは、グレイの下す指示を注意深く聞いていた。
「ビビ、混乱させろ! “サイケこうせん”だ!」
 グレイが指示した“サイケこうせん”とは、超能力的な光線を相手に発射して攻撃し、さらに命中した者をたまに混乱させることもあるエスパータイプの攻撃技である。
 この土壇場で下されたグレイの指示に対し、サンヨウは素早く指示内容を変更する。
「まだだ、ブドウちゃん! それを受け止めてから攻撃開始!」
 レパルダスは悪タイプのポケモンであるため、エスパータイプの攻撃技“サイケこうせん”はレパルダスには全く効かない。つまり、当たっても害の無い“サイケこうせん”に向かってわざわざ“みだれひっかき”を当てて威力を相殺させる必要は無い。
 手加減なく相手と戦うサンヨウは、最も速く相手を倒せる方法を選んだのである。
 “みだれひっかき”の繰り出しを遅らせながらビビヨンの技に突っ込んで行くレパルダスを見ながら、サンヨウは思う。
(なぜ“サイケこうせん”なんだい? 延命狙いの抵抗か、奇跡を信じた突飛な行動か、何とも判断し(がた)いね)
 しかし次の瞬間、サンヨウはレパルダスの様子を見て異変に気づく。
(いや! あれは“サイケこうせん”じゃないね!?)
 レパルダスはフラフラしながら明後日の方向に向かって攻撃をしている。その状態を見たサンヨウは、レパルダスが混乱しているのだと察することができた。
「よし、やれビビ!」
 グレイのその言葉を合図に、ビビヨンから“むしのさざめき”が次々と発射され、レパルダスに襲いかかった。
(こりゃあ私の負けだねえ)
 そう思いつつサンヨウはふと考える。
(負けが決まって指示を放棄した私は、バトルをどう解釈してるんだろうねえ?)
 自身のレパルダスが戦闘不能となって倒れた時、サンヨウは自らの問いに対する答えを見つけることになる。
(きっと私にとってバトルは、相手がどんなトレーナーか知るための行為なんだねえ。相手がジムバッジを渡すに値するトレーナーだと分かれば、私にとってバトルの目的は果たされている訳だ。こりゃジムリーダーの職業病かも知れないねえ……)



************
 結果

グレイ側
 ギャラドス[呼び方:KK] (戦闘不能)
 レパルダス[呼び方:レパ] (戦闘不能)
 ビビヨン[呼び方:ビビ]  (無傷)

ジムリーダー・サンヨウ側
 カエンジシ[呼び方:マロンちゃん] (戦闘不能)
 ライボルト[呼び方:レモンちゃん] (戦闘不能)
 レパルダス[呼び方:ブドウちゃん] (戦闘不能)

************



 サアドシティのジム。そのジムリーダーであるサンヨウに勝った証、ビーストバッジを受け取りながらグレイは最後の場面に何が起こったかサンヨウに解説した。
 曰く、「ビビに“ちょうおんぱ”を指示する時はいつも「混乱」と指示している」と。さらに、「ビビは『レパルダスに“サイケこうせん”が効かない』ということを知っていた」と。だからこそ、あの場面の指示でビビヨンは“ちょうおんぱ”を選んだとグレイは語った。
 グレイは表情には出さないものの、ビビヨンとの絆を確かめられたことが嬉しい様子でそれを語った。

「ところでグレイちゃん。ビビヨンやレパルダスとはうまく付き合っているけど、ギャラドスの扱いには随分と苦労してるんじゃないかい?」
 サンヨウの指摘に、グレイはうなずきながら答える。
「そうなんですよ。でも、それでも良いんじゃないかって最近は思ってます。ポケモンと心が通じ合わなくても、とりあえず利害関係を築いてポケモンを制御できればいいんじゃねえかって感じで。……そう言えばサンヨウさんのポケモンは、3体とも“おんがえし”を覚えてましたね。感謝を力に変える技でしたっけ? 凶暴なポケモンとも利害関係じゃなくて心を通じ合わせられるんですね」
 そのグレイの言葉に、サンヨウが反応した。
「いや、それはむしろ逆さ。私は利害関係を築いてポケモンを制御するために“おんがえし”を覚えさせているのさ。私がポケモンに“おんがえし”を覚えさせる理由は3つあってね……」
 右手の親指をたたんで4のポーズを作りながらそう語るサンヨウ。小指が欠けているので、立っている指の数は3本である。
「まず1つは、私への感謝を強制させることさ。凶暴なポケモンってのはね、多かれ少なかれ強い力を求めているもんさ。ところが、私に感謝してないポケモンは“おんがえし”で強い威力を出すことができない。私に感謝する方がより強くなれるって状況を作っているのさ」
 サンヨウはさらに語り続ける。
「2つ目の利点は、“おんがえし”の威力の強さでポケモンとの信頼関係が計れることさね。そして最後3つ目は……これはジムリーダーの中でも意見が分かれる所だからオフレコでお願いしたいんだけどね……いいかい?」
 グレイは、他の人には言わないとサンヨウに約束して続きを催促した。
 サンヨウは少し小さい声で話し始める。
「“おんがえし”の利点3つ目。……それは、万が一ポケモンに反逆されて襲われた時に、少しでも脅威を減らすためさ。トレーナーに襲いかかるような状態のポケモンがトレーナーに感謝することなんてできないからねえ、反逆される時には“おんがえし”は威力を発揮しない訳さ」
 語り終えたサンヨウは、もう1度釘を刺すようにグレイに話しかける。
「いいかい? ジムリーダーのサンヨウが反逆対策のために“おんがえし”を覚えさせてるなんて言ったらダメだよ? ポケモンを信頼するのがトレーナーの正しい姿勢で、ポケモンが反逆するなんて考えるとはジムリーダー失格だ! なんて言う人もいるからね」
「分かってますって! 誰にも言わないですよ」
 グレイにとっては、ポケモンが反逆することを想定することがジムリーダーの資質を疑われる行為であるようには思えなかったが、とりあえず誰にも言わないことを再度約束した。

 ジムの入り口まで送ってもらっている途中、グレイはサンヨウにたずねる。
「ところでその“おんがえし”って技、ギャラドスでも覚えられる技なんですか?」
「なんだいグレイちゃん? ギャラドスに“おんがえし”を覚えさせたいのかい?」
「はい」
「よし分かった。この後はジム戦が何件か入ってるから、また夕方に来てくれるかね? そしたらギャラドスに“おんがえし”を教えてやるさ」
「ありがとうございます。また夕方に来ます」
「気にすることないよ。じゃあまた夕方にね」



 こうして、ジムリーダーのサンヨウとの戦いは幕を下ろした。
 グレイは3つ目のジムバッジを手に入れ、さらにギャラドスに“おんがえし”を覚えさせるという新たな制御方法を学んだのであった。


 
 

 
後書き
長い間のお付き合いありがとうございました。
この続きの構想もあったのですが、私自身が小説を書くことに飽きたので
これで完結とします。 
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