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Fate プリズマクロエ お兄ちゃん強奪計画

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異世界への帰還

 ここにもカレー堕ちしてカレー教徒に成り下がった女がいた。
「実はここだけの話、異世界のシローは聖杯戦争をしていないので、その間にカレーを研究して極め、粉から選んだ麻薬カレーを生産する能力を持っていると言われる」
「はあああっ?」
 もう、病んだイリヤ並みに、異世界のバゼットの言葉が天啓に聞こえ、ゴクリと喉を鳴らしたり、泣きながら頷いたり、両肩を掴まれて揺さぶられて、カレーの神の祝福に目覚めた。
 正悟カリー師、ターメリック・ムハマンド・ジャラララバード師誕生の瞬間であった?
 約3,4名をカリー地獄に招待して、人生を大きく踏み外させた手ごたえを感じたクロエは、満足してヨガのポーズで踊った。

 食後、凜とルヴィアはアンジェリカに連れられて元の世界に行って、間桐の連中の人形も作って、銀行で間桐の財産を抑えに行くと言った。
「良ければ、私も同行させて欲しい」
 ロード・エルメロイまで同行を申し出て、バゼット二人も異世界に逃げる準備をした。
 今回も、その破滅や喜劇を見るために、クロエは同行した。美遊と二人っきりになるのを恐れたイリヤも同行したがったので、結局全員で一旦異世界に退避する事になった。
((チッ、先輩とイチャイチャスるはずだったのに))
 大勢の余計な人物が、二人の愛の一時を邪魔してしまったので、愛の初体験が先延ばしになってしまい、やはり元の世界でご休憩3500円、宿泊6000円、カラオケ温泉完備の場所にしけこもうと思う桜と桜人形だった。
 すでに同期も完璧、双子のように先輩に対してはハモって答えられる二人。
「イリヤ、あんたも帰ったらママに怒られるわよ、もう家で監禁されて、ここにも来れなくなるし」
「だ、大丈夫だもん、バゼットさんからも説明してくれるもん」
 年長者がきちんと説明して、不可抗力だったと言ってくれるが、残念ながらアイリには通用しない、天然なのでその時の感情が最優先の人と言うかホムンクルスである。
 とりあえずロード・エルメロイと10万ユーロほど現地通貨と交換し合い、桜やルヴィアとはもっと大きい換金契約をする予定になったので、英雄じゃ無い方のバゼットも活動資金ができて、エルメロイ卿も現地で通貨が使用できた。
「バゼット、君はしばらく向こうに逗留して、こちらとの違いを事細かに記録するのだ。あちらの世界のバゼットは、こちらから命令する立場にはないが、英国に戻って報告する際、リンとルヴィアのリポートを届けて欲しい、私の手紙も同封する」
 二つの聖杯で奇跡を起こして星ごと救ってくれた感謝の言葉と、良ければカレイドステッキの調査許可、自分の世界との違いを技術交換して、交流もしたいと正直に「自分宛て」と大師範に手紙を書く。もちろん事前に「自分」と大師範に電話するつもりなので混乱させるが、魔術師なので受け入れてもらえるだろうと考えた。

「ああ、シロー、こんなに大勢と人形を二つも移動させるなんて、とても消耗してしまう、どこかで休憩、いや宿泊しないと回復しないry」
 アンジェリカは事前にクロエに吹き込まれていたセリフを言って、シローとしっぽり濡れる予定だった。
 しかし言うタイミングが悪く、空気も読まずに言ったので、全員に聞かれてしまい、まだセイバー装束の美遊と、バーサーカーとキャスターのカードを用意して黒い笑顔をする桜人形が、桜にカードの使い方を教えたので中断させられた。
 現在桜陣営がキャスターとバーサーカー、美遊がセイバーとランサー、イリヤはアサシン、アンジェリカがギル君から借りっぱなしのアーチャーとライダーのカードを持っていたのでイリヤ一人負けである。

「オーギュスト、今帰りましてよ」
 移動時間が勿体ないので、エーデルフェルト邸の庭に出現した一同。
 オーギュスト的には、バゼットはこの屋敷を荒らして、自分の肋骨をへし折って、お嬢様達を死の寸前の窮地にまで追い込んだ敵なので戦闘モードに入った。
 もう一人の不審者は、記憶の中にあるルヴィア様の恩師であらせられるロード・エルメロイだと検知したので敵対しなかった。
 お嬢様のライバルである凜は、どこかに書いてあるように「足腰立たなくなるまで」メイド?として調教して、自分の老いた肉体でも未だ意気軒高の部分を利用して、しっかり仕込むつもりでいたが、異世界に行ってなぜか仲良くなってしまっていたので見逃した。
「お帰りなさいませ、お嬢様。何でも異世界に旅立たれたそうで、ご苦労なさいましたな。ご一緒しておれば、何かとお役に立てたかと存じますが、お供できず申し訳ありませんでした」
「いいえ、車まで下がって待機を命じたのはわたくし、屋敷の管理を任せて正解でしたわ、オーホッホッホッ!」
 笑い声の加減から、何やら上機嫌なのを悟って、それ以上言わない事にしたオーギュストは、お嬢様の言う通り「向こうで同盟を結んで世話になった」バゼット二人と凜も快く迎えた。
 敵が三人いるのに「異世界から連れて来た」と言われただけで納得した、有能な執事だった。

 全員でエーデルフェルトに滞在する用意をして、部屋を割り当てられた所で凜が仕切った。
「ここからは別行動にしましょう。桜人形と私は弁護士を呼んで3時までに銀行に乗り込むわ、アンジェリカは爺さんの人形をお願い。ルヴィアと先生は別行動(オーギュストの目が届かない所でご休憩)。イリヤとクロはいったん帰宅、監禁されちゃダメよ。衛宮君とバゼットはイリヤの護衛、もう一人のバゼット……見分け付かないから私か先生の護衛ね」
 帰宅するのは怖かったので、凜かルヴィアに付いていこうとしたイリヤだが、親に顔を見せるよう言われ、渋々従った。
「お疲れさまでした、ミユさん、お嬢様のお守りは大変だったでしょう?」
「いえ、ルヴィアさんにも凜さんにも。イリヤにも救われたばかりで……」
 美遊はオーギュストに労われたが、自分は囚われの身で、ルヴィアやイリヤ、凜やバゼットにも救われたのを伝えたので、ほんの少しイリクロへの怒りが収まった。
「左様でしたか、いえいえ、仕事などはしなくても良いのですよ、ミユさんは今はお客様なのです、よくお休みになってください」
「はい……」
 イリヤまで敵になってしまい、他の女達も全員恋敵だったので、心の緊張がプッツリ切れた美遊は泣き出してしまって、自分の部屋で少し休ませて貰えた。

 エーデルフェルト邸から徒歩数メートル。その距離が永遠にも思えたイリヤも家に帰ってしまった。
 もしパパがいればセラと一緒にガチ泣き号泣抱擁再会、ママがいれば本気のグーパンで、クロと一緒にママパンチを頂戴する。サディストの目をしたリズにも梅干し百回ぐらいグリグリされそうで怖かった。
「ピンポン」
 インターホンを押してイリヤが対応させられる。
「あ、あの、イリヤです、帰りました……」
「あたしもいるわよ」
 クロの声を合図に、家の中でドタドタと走って玄関に家人が殺到して来る音が聞こえ、イリヤは「面倒なことになった」と思い始めた。
 多分ニンジェとかサムライとかメイジの出迎えがあって、ここを突破しないとブルーリボンを貰って地下四階以降に行けるエレベータが使えなかったり、ウィザードリー2にブルーリボンを持ち込むとロングソード+5になって、2の序盤結構て使えたりするので魔物たちの出迎えを待った。

「イリヤちゃん、どこまで行ってたのかしら~?」
 まず笑顔のアイリスフィールが「ボッ!」とか擬音を出して、イリヤの身長よりデッカイ拳でフィニッシュブローを放って、娘に本気のグーパンを叩き込もうとしたが、後をついて来たはずの士郎が目の前にも居て、顔に傷が付いているのを見て、ママの中からもガビーンとか擬音が鳴り、急停止の全力でブレーキをかけてどうにか止まった。
「シロー?」
「あ、お邪魔します、美遊の兄の方の士郎です」
 イリヤやクロで最前列を押し付けあっていた所、桜二人とバゼット二人と士郎が押し出され、結局、アイリに肉の塊にされる苦行は士郎に落ち着いたが、ガチ殴りされる被害には合わなかった。
 バゼット一人は、ロード・エルメロイの護衛、桜の人形は銀行に乗り込むのに凜が徴発して連れ去った。
 残りの人物はゾロゾロとアイリハウスに連行されて行った。
「お邪魔します、異世界人で美遊の兄の衛宮士郎です」
「異世界人の「衛宮」美遊です」
「一回タヒんで消えて聖杯になって、現世に受肉し直したクロエです」
「この家のイリヤです」
「この世界のバゼットです」
「この世界の間桐桜です、異世界の先輩の家にお嫁に行く事になりました」
 途中一名、何の変哲も無いイリヤが帰宅したが、クロエは記憶以外一応別人で血印無し、桜はこの世界の先輩のように、告白しても「聞いてなかった、聞こえなかった」系の難聴主人公に愛想を尽かし、自分が生きているだけでガチ泣きしてくれる先輩の所にお嫁に行くと言い切った。
「「「「い、異世界?」」」」
 ママの動物的な感でも、異世界人はちょっと想定外で、目の前の傷あり士郎と、この家の士郎は傷以外で見分けがつかず、先程のバゼットも桜も見分けが付かなかった。
「おいおい、どうしたんだ? まだ時差ボケで眠いんだ」
 そこに切嗣まで登場してさらに混乱を招いた。
「お、親父……」
 また異世界の傷あり士郎が絶句して、生きている義父を見て、もう一度「ぶわあっ」とか擬音を出しながら目の幅で泣き始めた。
「親父~~~~っ!」
 こらえきれない涙を流し、今までの辛かった事、美遊を抱えて正義を成すか妹を救うか一人で悩んだ事、美遊を外に出掛けさせてしまい朔月家の墓でジュリアンに攫われてしまった事、桜も美遊も失いながらも聖杯戦争を勝ち抜いて、せめて美遊だけでもこの世界に送り届けた事、友人を作って元の世界に帰ってきた美遊を、自分の力では救い出せなかった事、イリヤ達が自分も美遊も救ってくれて、その上で聖杯2つで奇跡を起こして、自分たちがいた世界を救ってくれた事まで泣きながら異世界の切嗣に報告してしまい、自分でも伝える相手ではないと気付いていたが、それでも体では全部切嗣にぶち撒けてしまわないと居られなかったので残らず話した。
「辛かったな、でもよくやった、士郎」
 もうその言葉だけで補完されちゃって、満足して、緊張の糸がプッツリ切れて泣き、クロエにもアンリマユされてニヨニヨされてしまい、生暖かい目で見られた。
「親父~~~~っ!」
 ママもセラもリズも、士郎がここまで男泣きしながら話すのを止められず、全部聞いて貰い泣きしていたので、イリヤもグーパンや梅干し百回を免れた。
「クロエは一回死んじゃったのかい? そんな無茶はダメだよ」
「アハハ、イリヤに吸収されたというか、何というか」
 体に穴が開いて、軽く死にそうだったのを吸収されたので、予定調和と言うか何と言うか、説明できずに困るクロエ。
「こっちの士郎は、何か「大人になった」と言うか、もう「一皮剥けた」感じだな」
 普通の表現で成長した士郎を褒めた切嗣だったが、女達にはもちろん括弧内が別の意味に聞こえた。
「「「「「なにいいいっ?」」」」」(ママ、セラ、リズ、桜、イリヤ)
 一緒に行動していたイリヤも、自分たちが行く前に、アンジェリカとかベアトリスに、鎖で繋がれたままの士郎が、あんなことやこんなことをされて、跪いて足を舐めさせられたり、足で踏まれたりして調教されたのでは無いかと思えた。
 同行していないママとセラとリズと桜は、もう士郎が大人の階段を上ってしまって、自分が奪おうと思っていた童貞や貞操が何者かに踏みにじられて、穢されて奪われてしまったのだと思って激情し慟哭した。
 ちなみにセラの場合だけ、イリヤやクロが被害に逢わないよう、自分の身を差し出して筆下ろしでも何でもさせてやるつもりだった。それ以外の女はママも含めてガチである。
「シロー? 誰に手を出したのですっ? やっぱりイリヤとクロ? そうなんですね? やっぱり貴方はいつか、こんなことをしでかす人だと思っていましたっ!」
 初対面の異世界士郎の胸倉を掴んで、早速往復ビンタ責めを始めるセラ。こっちの士郎が止めても聞こうとしない。
「シロー、誰とヤッたの、リズお姉タソに正直に言ってみようか?」
 大型のハサミを用意して、初対面の相手の局部を切り取ろうとするリズお姉ちゃん。
「シローはずっとママの脚とか胸を嫌らしい目で見ていたから、きっとパパがいない隙に夜這いをすると思っていたのにっ」
 一名不倫願望と義理の息子にレイプされる願望まで持っている変態がいたが、切嗣が、
「アイリ、それはどう言う意味かな?」
 と聞いても、使い終わって役目を果たして、愛など冷めきって触れられるのも虫唾が走る夫などアウトオブ眼中だった。
「お兄ちゃん、誰と浮気したの? やっぱりアンジェリカ? 桜の人形? イリヤにはまだイタズラしてないけど、クロエは天井裏から本気で夜這いかけて来るから撃退しないと毎晩だし」
 美遊も、イリクロに着物を着せて、クロエなど全裸肌襦袢をさせてパンツは没収したので、兄の嫌らしい指がイリクロに触れたのも、アンジェリカのだいしゅきホールドで引き倒されかけたのも許せない美遊。
「やめてっ、このお兄ちゃんは別人なのよっ、うちのお兄ちゃんはこっち、みんなとは初対面なのよっ!」
 イリヤの叫びで女達は「あれ~っ? そ~だっけ?」とやっとこさ気付いて、謝りもせず撤収したが、正当な怒りを押し付けている美遊は撤退しなかった。
「ギブギブギブッ」
 正確に頸動脈の脈動を押さえて来る、妹のチキンウィングフェイスロックに、タップしてギブアップした傷あり士郎。ようやく女達のリンチから解放された。

「いやあ、異世界の初対面の方に申し訳ない」
「たぶん、君の今までのカルマが、俺にぶつけられたんだと思う」
 士郎同士が会話して、女たちのリンチのうち、美遊以外は全部この世界の士郎の難聴のせいだと言いたかった傷あり士郎。セラのビンタで頬が腫れていた。
 切嗣はアイリの愛が既に自分に向いていないのを知って、自分の小さな部屋で膝を抱えて泣きながら眠った。
 そこでクロエが枕元に座って父に向かって、こう言った。
「もうママとは別れちゃえば~? 天然で奔放な女なんて、すぐ浮気するし、セラかリズでどう? アンジェリカとか桜の人形とか、永遠の女子高生とかもいるわよ、セラなら「ご主人様!」で絶対服従、不倫とかあり得ないし、アンジェリカなら「サー!イエス!サー!」でこれも絶対服従、リズはダメ過ぎて、桜は魔女だけど、ヤンデレリスカメンヘラボーダー中二病だから、重たすぎる愛で答えてくれるわ」
「ああ、パパの味方はクロエだけだよ、ママと別れて一緒に暮らそう」
 と泣かれて手を取られ、一瞬で切嗣もアンリマユされた。
「ねえ、パパがよく寝言で呼ぶ、「ナタリア」とか「舞弥(マイヤ)」とか「シャーレイ」って誰~~?」
「うぐぅ」
 口にタイヤキでも詰め込まれたのか、切嗣は「うぐぅ」の音を漏らした。
 瞬間フリーズドライされた切嗣は、娘のクロエもあの化け物たちと同じ女なのだと気付かされた。
 
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