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Fate プリズマクロエ お兄ちゃん強奪計画

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選択肢の誤り

  クロエは帰り際、家に手紙を投函した。
「ちょっと山で遭難したけど、ルヴィアの別荘に到着しました、もうすぐ帰れます」
 などとわざとらしく絵葉書を入れて行った。ママには大体バレていて、イルヤがツヴァイフォームになったり、山で受肉したギルガメッシュと戦ったり、保健医の先生からも「消えた」「行方も分からない」と連絡があったが、兄とセラとリズが帰らないイリヤとクロを心配しているので、大丈夫だと証拠を残した。

 その頃のイリヤ
 家の全員が出かけてしまい、今家にいるのは喧嘩中の美遊と自分だけ、その事実を知ったイリヤは、ガクガク震えながら布団を被り怯えていた。
(み、美遊に殺される……)
 イリヤ的イメージ映像では、現在埴輪像から大魔神に変身した美遊が廊下を歩き回り、イリヤかクロを発見すると、シンゴジラみたいに体中からビームを出して破壊されてしまう。
 自分より酷い事をして、スナイパーライフルでヘッドショットされるはずのクロやアンジェリカまで居ないので、元の世界に移動して何かしに行ったようだが、イリヤだけ置いて行かれ、美遊警護と言うか生贄に放置されたようで怖すぎた。
 せめて凜かルヴィア、バゼットか桜人形だけでも残ってくれても良かったのに、ここにジュリアンでも訪ねて来られれば終わりである。
「はう~~~」
 綺糺から何度か電話があり、外国人らしき相手からも電話。美遊が受け答えして「士郎は留守、凜もルヴィアもいない」と返答していたが、外国語を話せるのはルヴィアか凜、アンジェリカぐらいで、イリヤもクロエも日本語オンリー、外人顔して名前も外人だがネイティブ日本人で、実際は学校でもコテコテの関西弁しか喋れない。金髪で青い目の西川ヘレンと同じであった。
「英語怖い」
 美遊が英語通話に困り、出ようとしなかったのでイリヤが取ったが、「アイキャンノットスピークイングリッシュ」と見事な日本語訛りで言えただけで、ウィッキーさんに話し掛けられたように電話からも逃げた。

「おい! いるかシロー? 一体何を言いやがった? うちにまで欧米の奴が来やがったぞ、コラッ!」
 玄関にジュリアンの声が響き、イリヤ終了のお知らせが告げられた。
 ルヴィアが綺糺に「8英雄」のジュリアンとアンジェリカ人形も留学するかもしれないと言ったので、凜も士郎も留守の間にエインズワースにお迎えが行ったらしい
(ジ、ジュリアン、もしかして?)
「ジュリアン様~、イリヤとか焼いちゃっても良いですか~?」
 警護役と言うか、ベアトリスも来ちゃってた。
「雷帯2まで許す」
 またイリヤの中からガビーンと擬音が聞こえ、ルビーがいても防御できない攻撃が許可された。
「愛してるわぁ、ジュリアン様ぁ」
 ジュリアンもベアトリスも機嫌が悪いのか、ミョルニルで消し炭にされるのが決定したイリヤさん。
 美遊もこの珍客とは顔を合わしたくなかったので、庭で姿を隠し電話も線を抜いて不通。イリヤを障子の隙間から見ている病んだ少女がいた。
「おいっ、シロー」
(アンジェリカ、助けて)
 ジュリアンの姉に助けを乞うが、人形なので桜人形も本来の主人には逆らえない。
(お兄ちゃんっ、戸締りぐらいして行って)
 留守番もいるので特に戸締りせず、庭から出発したので、最悪の敵の侵入を許してしまい、さらに布団の中で震えるイリヤ。
「イリヤさん転身しましょう」
 ルビーの提案で転身を進言されたので、マジカルステッキで転身したが、その魔力の波動でジュリアンとベアトリスに見付かってしまう。
「あら、白い方ね、すぐ焼いてあげるわ」
「ひいっ」
 田中さんは目的を果たして消えてしまったので、もう縋る人がいない。イリヤはカレイドステッキだけでベアトリスに立ち向かった。
「ミョルニ……」
 ベアトリスは、ジュリアンに包丁を突き立てる寸前の美遊の殺気を感じて停止した。
「それ以上は外でやって、庭も駄目よ」
「「はい……」」
 転身してインクルードしてセイバー化しながら、マジ殺人用の包丁で武装した美遊に恐れをなして退場した二人。宝具より美遊が怖かった。

「シローの奴はどこに行った? 俺は留学なんかしないぞっ!」
 一応、捨て台詞とかも残して、士郎不在の家からも去ったジュリアン。ツンデレなので怒りながら来るが、夏休みが終われば恩人と同じ学校に通い、もしまた来た時に麻薬カレーがあれば一成と同じく堕ちる運命にあった。
「た、助かった~、ありがとう、美遊」
「別にアンタを助けた訳じゃない、家を守っただけ」
 相変わらず氷の表情で告げられたイリヤは、オーロラエクスキューションでも食らったように凍らされて、スリーピングコフィンの中でガラスのハートも砕けた。
「あうう~~」

 昼には一行が帰って来て、目の幅で泣いていた士郎の涙も収まっていた。
「桜、今日からここが君の家だ」
「ええ、先輩、いいえ、旦那様」
「は?」
 士郎はこの魔女の計画的犯行を予想していなかった。家族を失って天涯孤独?の身になって寄る辺なき身、縋る場所も人もなく、大好きな先輩に泣かれて拉致されてしまった場合、セキニンを取って貰う事しか考えていなかった。
「ちょっと桜、なに言ってんのよ、姉に相談も無く」
「さあ? 子供のころに別れてしまって「貴方の事」余り覚えてないんです」
 完全他人の目で血が繋がった姉を見てから、「もう頼れる人は先輩だけなんです、すぐ結婚しましょうね? でないと私、この家にも居られなくて、もう行く場所が無いんです」と目で語られ、士郎にも抱き着かれた。
「うっ」
 桜人形を見てドン引きして撤収するかと思っていた姉も、桜同士がほんの少しの会話だけで何かの同盟を結んでしまい、姉、金髪縦ロール、金髪ツインテールのデッカイの、士郎の妹を全廃するまで一緒に闘い、異世界の同一人物なのでそのまま二人で嫁ぐか、雌雄を決するのは最後に、と考えていたのに気付かされた。
「先輩、私とも結婚しましょう」
 桜に妊娠出産子育てを任せ、その間に士郎が浮気しないよう、「全力で」夜のお勤めをするつもりの桜人形。
 もちろん自分とアンジェリカだけが永遠の女子高生なのを知っている。
((((桜、恐ろしい子))))
 凜とルヴィアだけでなく、クロエやアンジェリカも月影先生の髪形になって、少女漫画特有の白目を剥き、桜姉妹?のテレパシー能力や即断即決能力を恐れていた。
「式は簡単なので良いですよね? 姉さんにも来てもらって、お友達にも少し。向こうの世界が落ち着いたら、弓道部のみんなとか、向こうの先輩にもお披露目しましょうか?」
 式の途中、向こうの士郎が「ちょっと待った~~っ」と言ってくれるか、告白してくれて修羅場になるのを期待してしまう魔女。
 弓道部で披露宴をして、兄の人形とかにも祝儀を弾んでもらって、間桐の全財産を掴むつもりでいた。
(((((((桜、恐ろしい子)))))))

「お兄ちゃん、どこ行ってたの? 綺糺さんとか外国から何回も電話があったわ」
 美遊が電話線を繋ぐと、すぐに電話が鳴った。
「アロー、アイムskfhぴhg@tkさshだ;lhfg、アインツベルン」
 ドイツ訛りの英語と言う難問を受け、ヒアリング不能だった士郎は、総毛立ってヘルプミー表示でルヴィアとアンジェリカを見て受話器を渡した。
「(翻訳)電話代わりましたわ、は? アインツベルン? イリヤスフィールの親戚ですって?」
 フランス語訛りの英語で会話するルヴィアだったが、アインツベルンと聞いてクロエに変わろうとしたが、「アイキャンノットスピークイングリッシュ」とイリヤと同じく見事な日本語訛りで断った。
「ええ、親族としてドイツに迎えたい? ええ、親戚なので旅費も滞在費も出す? でも本人達は英語もドイツ語も喋れませんよ?」
 相手方は「若いので心配ないでしょう、ドイツ語などすぐに覚えますよ、すぐに迎えの者が参上します」と軽く言ってくれた。
 一行が帰って来て安心したイリヤも参加して、ルヴィアからもアインツベルンから電話があったと説明を受けた。
「みんな、私に内緒でどこ行ってたの?」
 イリヤは留守中ジュリアンとベアトリスまで来てしまってピンチだったと伝え、エインズワースに外国人が来てしまって、ジュリアンは留学しないと告げて帰ったのも伝えた。
「あら、イリヤはドイツ留学で決定? お兄ちゃんはどっちに行くのかしら? ドイツ、イギリス?」
「「エ?」」
 士郎やルヴィアの言葉、綺糺からの電話で、ヨーロッパ方面がどれぐらいの騒動になっているか理解していなかった一同は、クロエが言った意味が分からなかった。
 するとすぐに別の電話があり、今度は凜が電話を取った。
「私は言峰綺糺、衛宮士郎はいるかね?」
「ゲッ」
 耳元で綺糺の声を聴いてしまった凜は、気分を害しながら士郎に電話を渡した。
「私だ、現在ヨーロッパから、君達を留学させようと、多数の勢力が日本に潜入した。魔術師、魔術師殺し、魔術師殺しを倒す暗殺団が入国している。非常に悪い状況だ。早急に逃げるか、姿を隠すのをお勧めする」
「何でそんな事にっ?」
 一晩で状況が悪化し、あちらでの話し合いは決裂してテーブルを蹴り、「実力行使」で士郎たちを拉致してでも留学させるのが決定していた。
「うむ、君たちが考えているより、イリヤスフィールや朔月美遊君の価値は高い。何せこの世界を奇跡で救った聖杯でもある二人だ。あの転身装置2本、あれも重要だ。もし遠坂嬢やルヴィア嬢を嫁入りさせるのに成功した家は、未来永劫七英雄の末裔を名乗れる。魔術師の家系で、それがどれだけの価値を持つか分かるかね?」
 士郎達の周りで騒動が起こり、その破滅が愉悦になる綺糺は、クロエの悪意に思いっきり乗っかった。
「エ?」
 家の外では早速機銃掃射の音が響き渡り、双方で魔法杖(カラシニコフ)が乱射され、炎の魔法が展開されたり、雷撃の呪文が炸裂した。
 第六次聖杯戦争の開幕であった。
「うそ~~~~ん」
 士郎は選択肢を誤って、クロエにアンリマユされてしまった。
 
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