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マクロスフロンティア【YATAGARASU of the learning wing】

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防戦

 
前書き
戦闘描写がアレなのは相変わらずです。もっと戦闘の緊迫感とか伝えたいんですけどねぇ。 

 
「なあルナ、ホントに大丈夫なのか?このストライクパックっての。」

「ええ、問題ありませんわ。………計算上は。(ボソッ)」

「………おい、最後小さくなんつった?」

なにやら不穏な一言が聞こえたが……本当に大丈夫なのかよ。

俺の愛機、VF-25E/adには見慣れぬ装備が取り付けられている。ストライクパックと呼ばれるそれは明日試験運用予定だった試作品だ。普段はアーマードなのだが……まともに使えるのか?

隣にいる少女……とはもう呼べないか。ルナ・アンジェローニはルカの姉だ。俺の機体、VF-25/adの開発主任で運用データ目当てでL.A.IからS.M.Sに出向している。

信用してるし頼りにもなるのだが、それでも不安は残る。シミュレーターはやってるが実機で動かすのは初めてだ。仕方ない。

「つー訳だ。フォロー頼むぜ、クレイ?」

『俺かよ!?まあ良いけどな。』

開きっぱなしにしている通信回線を通して僚友であり、頼もしい火力支援要員であるクレイ・クレーエの声が届く。

『おしお前ら、揃ってるな……ってフィーナがいねぇな。何してる?』

姐さんからの通信。姐さんは既に機体の準備を終え、出撃の順番待ちだ。

「……おっけ。ルナ、もう大丈夫だ。ギリギリまで付き合わせて悪かったな。」

「いいえ?私も貴方とストライクパックには無事戻ってきてもらいたいですし。データの為にも。」

「ハハッ、そっちが本命だろ?んで、フィーナは何をやってんだ?」

中々来ない最後のメンバーを心配してた時、

『済みませーん!遅れましたー!』

『遅ぇぞフィーナ!!』

『いやー、アイランド1に居なかったので……』

なるほど。それなら寧ろ速い方か。

このフィーナ・コルネイユという少女。時々間の悪いというか……クレイはドジっ娘属性とか言ってたな。よく分からんが。

でも確かに、彼女は元々ゼントラーディなのだがちゃんと遺伝子適合を確認せずにマイクローン化したせいで戻れなくなってしまった過去を持つ位だ。それならこれくらいの間の悪さ、許容範囲内だろう。

『……おし、揃ったな?レイヴン小隊、出撃()るぞ!!』

『『「Yes,mom!!」』』

姐さんの号令に機体がリフトアップされ、リニアカタパルトとシステムが同調を開始、僅かに機体が浮き上がる。

『レイヴン1、アリーナ・ヴァローナ、出るよ!!』

隣のカタパルトからアーマードパックを装備した銀灰色のVF-25S/adが飛び立つ。

「……レイヴン2、烏羽翼、行くぞ!!」

そして俺の漆黒と蒼穹のVF-25E/adもまた、果てない宇宙に向けて弾き出されるのだった。










『酷いなこりゃあ……』

『新統合軍が弱いんでしょうか?それとも……』

『……VF-171は腕が無くても数さえいれば相応の戦力になる。それでこうってことは……』

「………奴等が相当強いって事だ。」

編隊を組み、戦闘宙域に達した俺たちレイヴン小隊を迎えたのは一方的な蹂躙に晒される新統合軍の姿だった。既に前線なんてものはなく、あちらこちらでバジュラが飛び回っている。さらに……

『なっ……奴等!アイランド1に!!』

一部の個体がアイランド1に取り付き、防御シェルターが展開される前に内部に侵入した。

『防衛線を抜けた個体はスカル小隊が片付ける!アタシらの仕事はこのザルみたいな前線の立て直しだ!!』

「っ……了解!」

本心を言えば直ぐにでもアイランド1に入った個体を始末しに行きたいがまさか命令を破るわけにもいかない。……時と場合によるが。

『レイヴン小隊全機!散開後各自で新統合軍機の援護、撤退支援をしつつこれ以上奴等を通すな!組み合わせはアタシとフィーナ、翼とクレイだ!やれるな?』

『『「Yes,mom!!」』』

『OK!そんじゃ、レイヴン小隊(スコードロン)全機、交戦開始(エンゲイジ)!!』

姐さんの号令の下、二手に別れて戦闘に介入する。

『翼!温い機動だと置いてくぞ!』

「……いや、逆じゃねそれ?」

俺の機体は速力と単一目標への瞬間火力に優れたE型のストライク装備だ。対してクレイは広域戦闘能力と継戦能力に主眼を置いたC型のシューター装備、ストライクもそう機動性が高い訳ではないがクレイ機に比べれば遥かに上だろう。

『そう思うなら前は任せたぞ?』

「ハイハイ……っとアレは……?」

『うわぁぁぁ!!?助けてくれ!』

前方に現れたのは数匹のバジュラに追われ此方に逃げてくるVF-171の姿だった。

「チッ!そこの新統合軍機!そのままこっち連れて来い!!」

『うぉ!?りょ、了解した!頼む!!』

そう言うと危なっかしい機動で此方に方向転換して飛ぶVF-171、それに反行するように機首を向け……

「動くなよ!喰らえ!!」

VF-171を掠めるように背面の連装ビーム砲を三連射、背後から迫るバジュラを纏めて吹き飛ばす。

『ヒッ!?……っ、救援感謝する。』

「防衛線はS.M.Sで引き継ぐ。無理せず後退しろ。」

『……分かった。すまん。』

一言礼と謝罪を口にして戦域を離脱するVF-171。遠ざかるエンジンの光を見送りつつ一言呟いた。

「殻さえ破れてない卵には荷が重いさ。」

『辛辣だねぇ。』

クレイの茶々には苦笑だけ返す。実際ナイトメアプラスは悪い機体じゃない。勝てないまでも互角に戦えるだけのポテンシャルはある。つまり現状の新統合軍では扱い易いVF-171でさえ満足に使いこなせない程度の練度しかないということだ。

「そら、次来るぞ。仕事しろ。」

『はいよっ……っと。』

返事ともぼやきともつかない声で応えたクレイのVF-25C/adが目の前でバトロイドに変形。VFをしてVBに迫ると言われるその火力を接近中のバジュラの群れに向け、遺憾無く発揮した。

ビーム砲が、ミサイルが、レールガンが、75mmの大口径ガトリング砲が一斉に砲火を吹く。20匹程のバジュラに殺到したそれらが次々と炸裂し、宙を薙ぎ、肉片を飛び散らせ、火花を咲かせる。射撃の嵐が過ぎ去った後には大量のバジュラの残骸と2、3匹の生き残りが弱々しく漂うだけだった。

「相変わらずふざけた火力だな。」

『それしか取り柄がないからな。』

レーザー機銃で生き残りに止めを刺しつつ軽口を叩き合う。これが出来るということはまだ余裕のある証拠だ。

『次のお客さんが来店されたぜ?ウェイター、ご注文をお聞きしろ。』

「OK、シェフ。フルコースを用意して待ってな?」

新たに現れた10匹程のバジュラの群れに向けて加速、マルチロックを駆使して機体各所に装備された計四八発のミサイルを斉射する。回避、或いは迎撃しようとそれぞれに動くバジュラ。その乱れた隊列の隙間を高速で抜けると同時にガウォークに変形、急制動を掛けつつ反転する。

ほぼ最高速度の状態からこんな機動を行えば、普通は気絶は必至だろう。だが、VF-25にはフォールド技術を利用したISCという慣性制御装置がある。それにより短時間ならGを無視した機動が行える。

反転を終えると同時にビーム砲の狙いを定め発射。さらに両腕に保持したL.A.I製の試作レールカノンを構え、トリガーを引く。が

「うぉ!?」

予想外に強い反動に咄嗟に機体バランスを制御、磁力で加速され、放たれた砲弾はバジュラに直撃し……衝撃で粉々に砕け散った。それだけで止まらず、2匹目のバジュラを吹き飛ばし、3匹目のバジュラに深手を与えた所で漸く収まる。

次の瞬間にはクレイ機からの射撃の嵐が直撃し、残ったバジュラを殲滅する。

「……おいおい、シミュレーターじゃこんな威力は無かったぞ?」

『ハハッ、お前の機体も十分ふざけてるじゃんか!』

「ったく、ルナの奴……こんな危ないもの持たせやがって。」

ため息を溢しつつ次の敵を探そうとしたときだった。

『デルタ1よりレイヴン2へ。新たに防衛線を抜けた個体がいます。フォロー願います!』

「了解!クレイ、俺が行くぞ?」

『まあ、だろうな。俺の機体の足は速いとは言えないならな。』

「じゃ、ここは任せたぞ!」

『ああ、任された!!』

機体をファイターに戻し、スラスターを全開で吹かす。一分もしない内に防衛線を抜けたというそのバジュラが見えてきた。通常のものより大きな体躯をもつ紅いバジュラ。……親父を殺したタイプの個体だ。

そいつが今、まさにフロンティア船団の母船たるアイランド1に向け、背中に背負った長大なビーム砲を放とうとしていた。

「……!させるかよ!!」

ファイターのまま、機首にピンポイントバリアを展開して体当たりする。バジュラの体が揺れ、ビームはあらぬ方向へ飛んで行く。

「オオオオオ!!」

バトロイドに変形、アサルトナイフを引き抜き顔面に突き立てる。バジュラは二、三度痙攣したかと思うとそのまま動かなくなった。

「……ふぅ、ギリギリセーフか。」

確実に殺した。その確信が俺を油断させたのかもしれない。センサーが背後の高エネルギー反応を訴え、振り返った先には、頭を潰したそのままでビーム砲をこちらに向けるバジュラがいた。

「っ……この野郎がぁ!!」

目の前が、橙色の光で一杯になった。










目を覚ますと、知らない天井だった。

……と、いうのは些か陳腐だろうか。だがまあ事実だ。一体俺に何があったのか。

「えっと……まずここは何処だ?」

「フロンティア船団の軍病院だ。」

ふと聞き覚えのある声が隣から響く。寝た状態のまま首だけそちらに向けると見知った人物が同じくベッドに横たわっていた。

「オズマ少佐?」

「災難だったな、俺もお前も。」

見ると怪我をしたのか包帯を巻いている。この人が怪我を負うとは余程の事があったのだろう。

そこまで考えて自分の体の事に思い当たる。ひとまず上体を起こし、体の状態を確認する。怪我はしていないようだ。筋肉は若干鈍っているが二、三日トレーニングすれば取り戻せるだろう。

頭には包帯が巻かれている。はて?頭?何か思い出しそうだな……。たしか……

「あ、あのバジュラ!?」

思い出した!たしか頭を潰したはずのバジュラにビームを撃たれたんだ!死んでないって事はよっぽど当たり所がよかったんだろうが……よく生きてるな、俺。

「……あれ?俺どうやって助かったんだ?」

「……覚えてないのか?……まあ二日も寝てたんだ。直前の記憶は曖昧か。」

二日も寝てたのか……体が鈍る筈だよそりゃ。

「ハイ……バジュラに砲撃された所で記憶が途切れてます。」

あの距離、あのタイミングで撃たれたビームをどうにかできるか?俺は無理だ。

「……お前の機体、左腕が無かった。」

「へ?」

「恐らく左腕にピンポイントバリアを集中しつつエネルギー転換装甲の出力を全て左腕に回す事でギリギリ凌いだんだろう……っていうのがルカとルナの共通見解だ。」

「ははぁ………。」

何というか、よく咄嗟に出来たな、俺。

「……ちなみにオズマ少佐はどうしたんです?」

「ああ、ミシェルが狙撃でバジュラの頭を潰したんだがまだ生きててな。油断してたらこのザマだ。」

……俺と同じか。頭を潰してもまだ生きてるってどんな生き物だよ。……そもそも生き物かどうかも怪しいか。生物兵器って線もある。

「……何にしてもフロンティア船団は守りきれて良かったです。被害は?」

「幸い民間人に死者は出なかった。新統合軍では30人ちょっと。それと………ギリアムが死んだ。」

「なっ!?」

ギリアム大尉といえばオズマ少佐、姐さんに続くS.M.Sのナンバー3だ。本人の希望でオズマ少佐の部下としてスカル小隊に加わっていたが本来なら小隊長を任されても可笑しくない技量の持ち主だ。その彼が……死んだ?

「逃げ遅れた民間人……俺の妹を助ける為に機体を降りて生身でバジュラに銃を向けたらしい。……軍人としてこれ以上ない程立派な最期だったと、見届けた奴が言っていた。」

ギリアム大尉の死。それがフロンティア船団を守りきったという結果に釣り合うのだろうか?……いや、考えても答えはない。なら、前を向くべきだ。

「ああ、それと……」

「何です?」

「……ギリアムの機体を動かしてランカを逃がした一般人がいてな。お前の後輩だ。名前は……早乙女……そう早乙女アルトとか言ったな。」

「…………はぁ?」

アルト?何故奴が出てくる。……どうやら気絶している間に色々あったようだな。なるべく早く把握しないと……なんだか把握したらしたで面倒そうだが。 
 

 
後書き
まさかの主人公、気絶です!別に話作るのが面倒だった訳じゃないよ!?戦闘だと地味だし。シェリル達とシェルター突っ込むのも無理があるからいっそ……なんて思ってないからね!!?(焦) 
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