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FAIRY TAIL~無表情な妖精

作者:ルーザー
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1,小さな怪物と妖精との出会い

彼、スカー・フォールは妖精の尻尾を探し、放浪していた。行く先々で闇ギルドに関わってしまい、それら全てを潰す羽目になって居た。別に潰す必要はなかったのだが如何も彼の名前は知られていたらしく賞金首になって居た。掛けられた懸賞金は300万ジュエルと高額だ。
だか、ギルドを潰すにつれて彼は闇ギルドだけではなく正規ギルドや評議員にまで目を付けられた。
どこに行っても注目の的である。今もそうだ、休息がてら立ち寄った場所、何処かの王国なのは解るが住民の一人が彼の顔を見た途端、奇声を上げ、家へ逃げ込んだかと思えば他の住民も逃げまどい始めた。さながら終末の時の様だ。
「‥‥水」
回りなど気にせず、飲み水を探す。彼は密かに毒が仕込まれてても良いなどと考えても居た。それ程に喉を嗄らせ、欲していた。
ふらふらと歩いて居ると一人の男と出会った。彼は樹木のような頭をしていた。
「少年よ、喉が渇いているのか?」
「‥‥あぁ」
男は水の入った入れ物を差し出す。それを受け取ろうとした時、彼は左腕に紋章がある事に気付いた。
「‥‥それ、なんだ」
水を飲み、聞くと彼は答える。
「ん? ギルドの紋章が如何した?」
ギルドの紋章、ならば知って居るかもしれない。
「名前を聞いても?」
「私はウォーロッドと言う、それが如何した?」
「ウォーロッド、貴方は妖精の尻尾と言うギルドを知って居るか?」
ウォーロッドは紋章を指差し、答えた。
「これが妖精の尻尾の紋章だ」
その言葉で彼はウォーロッドを見詰めた。探し求めていたものが目の前にあった。そして落ち着いた態度、漂う魔力、間違いないと確信した。
「入りたいのか? 入りたいのならそれ相応の力量が居るぞ?」
ウォーロッドはそんな物は無いがと思いつつも、暇を持て余していたからと言う理由で彼をからかう事にした。しかし、彼はウォーロッドが予想していた元は違った行動をした。
膝を折り、首を下げ、言う。
「貴方の所なら変れると‥‥その言葉を信じ、此処まで来た。どうか入れて欲しい」
見た限り十にもならない子供が一人でこんな砂漠まで来るなど到底思えなかったが彼の手には幾多の試練を乗り越えた時に着いたと思われる傷が多々あった。それだけで普通の子供ではないと悟った。
「貴様、親は?」
「親?」
「そうだ、幾ら強いと言っても此処まで一人で使わす親の名前は?」
そうだ、幾ら強くても子供は子供、流石に親の教育が悪い、その親を探して少し説教をしようと思って聞いてみたが彼は返答に困っていた。
「それは‥‥解らない、しかし親しくしてくれた女いた」
「如何言う事だ?」
「実は‥‥記憶が曖昧で自分の事が良く解らない、名前もよく解らない、でもスカーやフォールと言った呼び名で呼ばれていたのは覚えている、親の顔なんて尚更思い出せない」
ウォーロッドは困り果てた、名前も解らない子供、嘘を言って居るようには見えないが彼は異常なのは一目見て解る。
「ん~如何したものか」
「‥‥所で、正式な名を聞いて居なかった」
「ん、あぁ‥‥私はウォーロッド・シーケンだ」
名前を聞いて彼は咄嗟に構えた。攻撃の構えを。
「マカロフ‥‥ではないのですか。彼がマスターと聞きました‥‥私を騙したのですか?」
彼の瞳がすっと獲物を見据えたかのような瞳へと変る。ウォーロッドは慌てて言う。
「違う、元組織の人間だったと言いそびれてしまっただけじゃ。騙す気はなかった」
「‥‥そうですか」
残念そうに言うと彼は迫りくる軍勢をじっと見つめ、ふと呟いた。
「貴方は実力を知りたいと言って居ましたね?」
「む、そうだが」
「“あれ”を全て殺せば証明できますか? ギルドに入れるだけの力量があるか?」
押しをせてくる軍勢を指差し問う、ウォーロッドは酷く驚いた、この小さな少年は事もあろうか軍隊をあれですましている。余程実力に自信があるのだろう。
「待て、殺しては駄目だ」
そう言うと彼は。
「解りました、では殺さず無力化すればいいのですね?」
と言って次に
「十分位掛かります、では」
そう言って彼は軍勢相手に単身突っ込んでいった。何か有ってはいけないと援護できるよう身構えていたがその心配は杞憂だった。彼は一人で軍勢を圧倒していたからだ。剣で切られても平然な表情で敵を地に伏せ、殴り、投げ飛ばす。魔法を弾き、殴る殴る殴るの一方だ。鋼鉄で出来た鎧は砕け、剣は折れ、魔法は当たってもかすり傷一つない。気がかりなのは魔法は効かないのだが物理攻撃は彼に通じて居る事だ。剣で切られてば血が出る、然し魔法は効かない。謎だ。
「む?」
彼を見ていたウォーロッドはある事に気付いた。魔力の流れだ。
彼の魔力は凄まじい。魔力だけ見れば聖十大魔道にも及ばんとするほどだ、だが彼はどうしてか魔力を無駄に放出するだけで形作らない。そこでウォーロッドはこう考えた。
「魔法の使い方を知らないのではないか?」
このように考えた、でなければ抑々彼は傷一つ付くはずがない、いや“近付けない”の方が正しい。その恐ろしくも膨大な魔力を制御し、敵にぶつければそれで全滅だ、だがそれを彼はしない。するのはほんの少し魔力を拳に纏わせる程度、後は無駄に放つだけ。そして攻撃は恐ろしくも人を殺すための最小限の動きしかしない、今は殺すなと言っているからか、手加減をしているがそれでも下手をすれば死ぬ。
急所しか狙って居ない。この動きは洗礼された暗殺者のそれに近い。
「‥‥」
妖精の尻尾に居た頃にそのような動きをする者が居たか思い出すウォーロッド。記憶をめぐり、行きついた記憶に居た人物。名をガロウズ・ディスペアー、滅多に表に出てこなかった人物だ。主に情報収集をしていた為、知って居る人物が圧倒的少数。そんな彼は一人の女性とコンビを組んでいた。そのコンビ名が滅びの救済と言う名前。そしてコンビの女、女の名前が確か――――
「ウォーロッド」
彼の声で顔を上げた。血だらけの表情にはっ付けたかのような無表情、そうだ、あの女もこんな顔をしてた。まるで彼女を見ているかのように思えるほどに。
「クライム・フォール」
彼女の名前を呟く、彼は目を見開き、驚いた。
「それだ」
彼はウォーロッドの肩を掴み、言う。
「女の名前だ、そうだ、それだ。その名前だ。クライム・フォール」
新しいものを見付けた無垢な子供のように彼は目を輝かせ、その名前を何度も呟く。暫く呟くとある事に気付いたのかウォーロッドに問う。
「何故、名前を知って居るんだ?」
記憶が曖昧なのもあって女が自分の親だと認識して居ないのだろう。この真実を言うべきかどうかウォーロッドは悩む。その姿を見て彼がこう答えた。
「もう死んだんだ、何も思わないよ」
「!」
「何と無く、解った。女は俺の親って事、成る程納得だ」
そう言って彼はウォーロッドに今までの事をはなした、自分はどんな事をされたか、させられたか。彼女は何度も自分を庇った事やその最後をなど、詳細を包み隠さず話した。自分が普通で無い事も解っていた、それでも行く先も無い彼は彼女の最後の言葉だけが頼りだった。
「こんな自分が普通の場所に行くなんて無理だろう、それでも今はそれしかない、もうそれしかないんだ」
「‥‥」
ウォーロッドは黙って話を聞くしかなかった。確かに妖精の尻尾に彼を入れる事などウォーロッドには簡単な事だ。だが彼は異常だ。そんな存在をあそこに置いておけるか解らない。だが今の彼には変化が必要だ。彼の普通は異常、ならばそれを変えるには彼にとって普通と言う異常を感じさせるしかない。
ウォーロッドは決断した。
「スカーよ、一つ約束してくれないか?」
「?」
「もう、人を無暗に殺さないと約束してくれ」
そう言うと彼は少し眉を寄せる。
「約束を守る自信はある、だがそれをすると身を守れない」
彼は人の殺し方を骨の髄まで仕込まれたが自分の身の守り方を全く知らない、それはそうだ。殺してしまえば護る必要はない、何故なら死体は攻撃しないから。
「ならば(ワッシ)が教える、魔法をな」
「魔法? なんだ、武器の名前か?」
ウォーロッドは解りきって居た事だが深く溜息を吐いた。あの二人は魔法を真面に教えず、何故殺し方を教えたのかと。しかし嘆いても始まらない。
「使い方が解れば、きっと変わるぞ」
変ると言う言葉は彼には興味を持たせるには十分な言葉だ。証拠に彼はその言葉に喰いつき「教えてくれ」と懇願した。
「私が教えるのはあくまで簡単なものだ、きっと直ぐに身に着くだろう、それまで私と修行だ」
こうしてウォーロッドの元で魔法を学び、彼が妖精の尻尾に辿り着いたのは一年後だった。 
 

 
後書き
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