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夏のお留守番

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第四章

 そしてだ、午前はゲームを続けていた。それから昼になるとだ、
 沙織は自分からだ、漫画を読むのを中断して健太郎に言った。
「お昼作るわね」
「もうそんな時間か」
「ええ、ラーメン作るわね」
「俺も手伝おうか?」
「健ちゃんお料理出来るの?」
「いや、全然」
「ならいいわ、ここでゲームしてて」
 立ち上がりつつだ、沙織は健太郎に言った。
「インスタントラーメンだからすぐに出来るし」
「お湯入れるだけだったら俺にも出来るぞ」
「いいから、来てくれたんだしこれ位はするか」
「そうなんだな」
「ええ、ちょっと待ってね」
 こうしてだ、沙織はお昼を作ったが健太郎はゲームをしている間インスタントラーメンを作るにしては時間がかかるなと思った。
 そして沙織に呼ばれてテーブルに着くとそこにあったのは。
「うどん?」
「インスタントラーメンなくてね」
 沙織もうどんを前にしている、健太郎に箸を渡しつつ言った。
「その代わり冷蔵庫の冷凍のところにおうどんがあったから」
「それか」
「冷凍うどんよ」
 うどんはこれだというのだ。
「おつゆは素とみりんとお醤油で作ったから」
「簡単にか」
「そう、簡単によ」
 見れば完全なすうどんだ、葱もない。
「だから食べてね」
「うどんか」
「嫌い?」
「いや、大好きだよ。うどんだと夏でもな」
 汁のそれでもとだ、健太郎は沙織に箸を受け取りつつ話した。
「幾らでも食えるよ」
「おかわりもあるから」
「一杯食ってもいいか」
「というか残さないでね」
「おい、そんなにあるのかよ」
「五玉あったけれど全部茹でたから」
 沙織は健太郎にまたあっさりとした口調で言った。
「頑張って食べてね」
「いや、二人で五玉って多いだろ」
「小学生二人だとね」
「幾ら作ってるんだよ」
「お兄ちゃんがいるとそれだけ食べるからついつい」
 茂のことを考えて間違えて多く作ってしまったというのだ。
「そうなったの、けれど残さないでね」
「あっさりと言い続けるな」
「駄目?」
「あっさりときついこと言うなよ、まあうどん好きだしな」
 けれどとだ、健太郎は応えてだった。そのうえで。
 昼食のうどんを食べた、確かに多かったが何とか完食した。そしてゲームを再開させてその時にまた言った、
「もう食えないよ」
「全部食べたわね」
「必死にな」
 実際に過ぎた満腹感に苦しんでいる、だから言葉もいささか不機嫌なものになっている。
「そうしたよ」
「じゃあお菓子は」
「暫くいいよ」
「そうなの」
「ああ、適当にそっちで食ってろよ」
「もう食べてるわ」
 今も漫画を読んでるがポテトチップスも食べている。
「こうしてね」
「そうか、じゃあ俺はいいからな」
「おやつまでは?」
「今は無理だよ」
 本当に何処にも入らないというのだ、胃の中に。 
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