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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはStrikerS ~揺らぐ~



機動六課隊舎内ロビー


そこでシャーリーがフォワードの四人に話をしていた。
内容は、なのはの過去。

フェイトとシグナムも同席し、その内容を静かに聞いていた。


なのはの歳には合わない異常なまでの正義感。
そして膨大な魔力。

魔法との出会い、二つの事件。


フェイトとの戦いや、ヴォルケンズ、闇の書の意志との戦いでのなのはの戦いをモニターに出しながら、その歴史を語っていった。







そのあまりのスケールに、フォワードの四人が唖然とする。

画面の中のなのははまだ齢九歳の小学三年生。
そんな少女が、身に余る危険と力と勇気を以って、ひたむきに、必死になって戦う姿。


自分達よりも小さな子が、あんなにまで凄まじい一撃を放ち、そして一人でも戦ってた事に、四人は驚いていた。





そして、ついに八年前のなのはの過去が明かされた。


「八年前。ある世界で、なのはさんが大怪我をしたの」

それは今まで無茶をやってきた代償だった。

任務は無人世界に現れた謎の敵影との戦闘。
当時なのはは十一歳。

管理局内で早くもエースとして活躍していた彼女なら大丈夫だと、現場の局員は皆そう思っていた。







だが、そんなはずはなかったのだ。






小さな体に、大きな魔力。更にはどんなことでも成し遂げてしまう、強い意志。
それゆえに彼女は二年間、ダメだと言われて空を飛び、無理だと言われて戦った。



闘い続けて、そして墜ちた。



その巨大な魔力を、できるからと言って次々と使用した結果、彼女の身体には反動と疲労が溜まっていたのだ。




「全力全開」

それをいつでも言い続け、どんな時でもためらわずに貫き通した彼女は、結果的に無茶な機動を行って、戦闘中に身体のコンディションが崩れた。
地上に落ち、そこに敵に攻められ、大怪我と言うのはあまりにも表現が足りないほどの怪我を負った。

ヴィータがその場に駆け付けた時はもう遅く、レイジングハートは折れ、雪は真紅に染まり、白い彼女のバリアジャケットは真っ赤になって、胸の赤いリボンを隠してしまう。



その怪我は尋常ではなく、命を拾えたのが不思議なほどのもの。

だが、彼女の地獄はここからが始まりだった。
怪我の治療、一時的な魔力の枯渇、身体の損壊、残る痛み。


そして、もう二度と空を飛べないかもしれないという恐怖。



このときからすでに無意識下であっても、彼女は彼に憧れていたのかもしれない。
だから恐れた。私は、彼のようにもう誰も救えなくなってしまうのか、と。


しかし結果として、なのはは回復した。
過酷なリハビリや、先のことの不安や恐怖と戦いながらも、彼女は血反吐を吐く思いで必死になって身体を取り戻した。





そして決心した。
こんな思いは絶対しないし、させない。

誰にもさせない。あんな地獄は、見させない。


その想いから、なのはは教導を絶対に安全な、そして、絶対に墜ちない子を育てるようになった。



墜ちて命を散らさぬように。
墜ちて地獄を見ないように。


それがなのはの意志。
なのはの想い。



それを知ったフォワードが、言葉に詰まる。
特にティアナは、自分がどんなことをしていたのか、ここにきてようやっと理解したようで、その眼には涙がたまっていた。







そこでシャーリーが選手交代と、フェイトに次の話をしてもらう。


「じゃあ・・・・・・・」



と言ってフェイトがモニターに映像を出す。
そこには蒔風のワールドリンクによって発動した、なのはの砲撃や、「奴」との戦いの映像があった。

おそらく、先日ユーノからもらったものだろう。
それを映して、話そうとした、そのとき





「なんだよ・・・・・・これ・・・・・・・・・・・」


ロビーに蒔風の声が響いた。

ティアナに対して、やり過ぎたことを謝りに来たのだろう。
そして、廊下で話を聞いてしまった。

その真偽を確かめるべく、部屋に入ったらその映像。
これではまるで・・・・・・





その蒔風はモニターに映るなのはにヨロヨロと近づく。




そして、呟いた。




「なのはが・・・・墜ちた?身体の負担で?それで・・・・これは・・・・・・・・」

蒔風の目の前には「奴」との戦闘が映っている。
その中にはもちろん、ワールドリンクの効果で強力な砲撃を何発も放つなのはの姿も映っている。


「これは・・・・オレの・・・・まさか・・・・・・・オレは・・・・・・・・・・・」


蒔風の考え。
それに気付いたフェイトが、蒔風の肩を掴んで必死になって言った。

「違うよ!!!舜のせいじゃない!!!これは別のものだから!!!舜のあれは、体に負担は残さなかった!!」

「俺は・・・・・オレは・・・・・オレハ・・・・・・・・誰かの未来を・・・・・・・・消しかけたのか?」


自分の肩を抱き、ガタガタと震えて膝を突く蒔風。
その眼は焦点があっておらず、今にも気を失ってしまいそうだ。


「なのはの無茶はなのはの責任だから!舜のせいじゃないから!!!私もはやても、みんな大丈夫だったから!!!」

その言葉に理解しているのか、蒔風が首をフルフルと振って頭を抱え始めた。


「俺は・・・・俺は・・・・・・・人の未来を・・・・その願いを・・・・・・想いを・・・・消してたのかもしれない・・・・・・・・・」

「舜!!ダメ!!!!」

フェイトが必死に話しかけるが、蒔風が「ウッ」と息を止め、まるで嘔吐でもしそうな顔になる。



「いや、待て・・・・じゃあ、あのなのはの教導は・・・・・・こっからはじまっていたのか?ここが始まりだったのか?」

先日の模擬戦。
目の前の状況に激高し、イラつきを爆発させてしまった、あの時。


自分はなのはになんて言った?
「お前は劣った」?
「話し合うことを忘れた」?

ふざけんな。
我を忘れて好き放題言ったのは自分じゃねーか。

なのはのこんなことも知らないで、一方的に言うだけ言って。
命の恩人を気取って何が「銀白の翼人」だ。

ただの最低野郎じゃないか。
こんな自分になりたくなくて、オレは理想の自分を作り上げたんじゃねえのか。

結局、大元の歪みは消えないと言うのか。
いや、論点をズラすなよ蒔風舜。



俺がやったことはなんだ。
自分のことを棚に上げ、なのはのことを知った気になって、いい気になって説教して。

オレがやったのはただ、自分のイラつきをぶつける相手に、ちょうどよく気分の高ぶったなのはがいたから焚き付けただけ。

それで一方的に襲い掛かって、暴れまわって、挙句の果てにそれっぽいこと言っていい感じに締めて・・・・・・

オレはなんだ。
ただの理不尽じゃないか。


俺が今まで一番嫌ってきたことじゃないか。



『お前、理不尽嫌いなんだってな』

『ああ、謂れのないことで誰かが傷つくのは嫌だ』

『だがそれを正すんなら、覚悟しろよ。そうする以上、お前はその理不尽を正す「もう一つの理不尽」になるんだからな』

『正義は、相手にとっての悪、ってことか?』

『そう言うこった。そして、暴走したそれは悪以上にクズなことをしてしまうことがある。それを肝に銘じておけ』



いつか、誰かと話した会話が思い出される。


「誰かの想いを踏みにじったのは、俺だ!!」

「しゅ、舜?」

いきなり叫んだ蒔風に、フェイトがビックリして下がる。


「あいつの想いも知らないで、あいつの考えも知らないで!!自分が正しいと一方的に言い放って、さもいい話だったように自分の都合のいいように終わらせる・・・最悪だ!!最悪のクソ野郎だ!!自分からいきなり殴りに行って、それでお前の為にやったんだ?ふざけんな!!しかもあいつがそうしなければならなくなった理由は、俺にあるかもしれないんだ!!」

「そんなことは・・・・」

しかし、フェイトはそこで否定できなかった。
確かにWORLD LINKによる身体への負担はなかった。それは間違いない。


だが、あの模擬戦での乱入。
それをこうあらためて言われると、確かに違和感があった。


「しかもいきなりティ、ティアナを殴り飛ばしてだぞ!?あんなやり方あるか。あんなバカみたいなことあってたまるか・・・・・俺、何やってんだ・・・・何やってンだ・・・!!!」



あの時は状況に流されてしまったが、蒔風の様子もおかしかった。
いくらなんでも、いきなり殴りかかるなんて彼らしくもない。

そう、まるで今までの彼ではなかったかのような。



その生き方に「死」を抱かない彼は。
そのズレを持つ彼は、ついにここで致命的に崩れ始めた彼は。



もう今までの自分を支えることもできなかった。




涙を流し、嗚咽し、過呼吸のように浅い息を幾度も吐きながら、ヨロリと立ち上がって、その部屋を出ようとする。


「舜!!」「蒔風!!!」

フェイトとシグナムが蒔風を呼びとめ、せめて付き添おうとするが、蒔風が小さな声を絞り出して、それを断った。


「もうだめだ。こんなにまでなって、オレはもう・・・今までのようにはいられない」


ヨロヨロと

まるでまともに重力を得ていないような歩き方で蒔風が部屋を後にする。
その憔悴しきった蒔風の姿に、エリオとキャロが信じられないと言った顔をしている。



「舜さんが・・・・・あんなに・・・・・?」

「いったい・・・・・・どういう事なんですか?」


そこで、フェイトが皆に話し始めた。
蒔風の事を、知りうるすべてを。











「舜が世界を回っている理由は、前にも話したよね」

「はい、確か・・・・・・」

「世界の軸となる人物を殺して、その世界を取り込んで力にしようとしている「奴」って言うのを追ってきてるんでしたっけ?」

「そう。でもね、彼のいた世界は、私たちの知ってる地球とは違うらしいの」

「違う・・・ですか?」

「他の世界とか、魔法とか、そう言う特別な力なんて、何一つとしてない世界」

「蒔風は"no Name"だといっていたな」

「その世界で、舜は「奴」に襲われた」

「襲われたって・・・・大丈夫だったんですか?」


エリオが積極的に聞いてくる。
それに、しっかりと答えていくフェイト。


「大丈夫じゃ・・・・なかったみたい」



「え・・・・・?」


「これは主はやてがリィンフォースⅡを作成する際、夜天の書のデータを調べた時に見つかった記録でな。映像では残ってないが、情報として、我々はそれを知った」

「舜の世界は、一回破壊されかけた。舜自身も殺されかけて、大切な仲間も、傷付けられた」

「その時の蒔風はただの人間だ。「奴」に敵うはずもなく、瀕死の重傷にまでやられたらしい」


「そして、管理者と言われる女の人から、翼人の力を解放してもらったんだって」



「じゃ、じゃあ・・・・・あの力は・・・・・・」



「そう、自らの世界を破壊され、その悲劇を打ち破るために得たもの。だから舜はいつも必死なんだよ。自分の世界と同じことを絶対に繰り返さない、って」

「その存在の大きさから、崩壊しかけた世界には居られない。そもそも、蒔風の世界は"no Name"。居られ続けるわけもないのだろうな」



「だったら舜さんは・・・・・」



「その世界はだんだん修復には戻っているらしい。だが、その頃にはもうすでに蒔風を知る者はいないだろうな」

「そんな・・・・・・・」

「だから、彼はひとりなのだ。常にひとりで世界を回り、勝ち続けるという異常をこなし続ける」



「だからあんなに怒ったんだ・・・あの力が欲しいなんて・・・・私・・・・・・」



ティアナが後悔する。
なんという事を言ってしまったのか、と

彼は決して、大丈夫などではなかったのだ。





ティアナが今すぐ蒔風に謝りに行こうと席を立つ。
しかし、フェイトがそれを止めた。


「ダメ!!今の舜は、多分誰の話も聞けないから・・・・」

「な、なんでですか?」

「そうですよ。舜さんのあの様子は普通じゃなかったです。一体何が・・・・」



そこからシグナムが話を始めた。



「翼人と言うものは、実はよくわかってはいない。だから蒔風の言ったことしか現状、情報がないのだが、あいつが言うには翼人は人の想いを司っているらしい」


「人の・・・・」

「想い・・・・」


「舜によると、今までも何人かに会ったらしくて。勇気とか、愛情とかね?」

「そして蒔風の翼の想いは「願い」だそうだ」



「願い・・・・ですか?」


「そうだ。そしてそれは、人が未来に進もうとする力でもある。つまり、高町のあの事件が自分に原因があると思ったあいつは、今苦しんでいる」

「人の未来が、人の願い。だからこそ、舜は悪とか善とか、関係なくその質で見比べるんだよ」


「だからティアやなのはさんに・・・・・・」

「うん。人の意志を潰す、っていうのは、舜が一番嫌う事だから」


「だから、それをしてしまったあいつは、思いつめている」

「他でもない自分自身がそれをしてしまったんだ。しかも、自分の気付かないうちに」

「自分で気づいてやっているのなら、まだいい。だが、あいつは・・・・・自分でも気づかない歪みを抱えてしまったんだ」

「だったらなおさら!!!」

「あの人をきちんともとに直さないとじゃ」

「今はだめ。舜が落ち着くまで待たないと、きっと話はできない」



フェイトがそう言って締めくくる。
そして、蒔風が消えていった廊下への扉に、全員が目を向けた。






それから数十分後






ガジェットを何の苦もなく粉砕してきたなのはとヴィータが帰還する。


そして、シャーリーがフォワードたちに自分の過去を話してしまった事を聞く。
それに関しては、まあしょうがない、となのはも特にとがめなかった。


しかし、フェイトの言葉に、なのはが悔しそうな顔をする。




彼に知られた。あの過去を。




とりあえずはその後、なのははティアナとしっかりと話し合い、無事に仲直りすることができた。





だが、この問題は、まだ終わってはいなかったのだ。








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エリオと蒔風の部屋


明りはついておらず、カーテンも閉じられて外の光も入ってこない、真っ暗な部屋。
そのベットの中で、蒔風が頭を押さえて蹲っていた。




「だめだ・・・・・・・・だめだ・・・・・・・もう・・・俺は・・・・・・・・」




蒔風は世界に情報を求めていた。
内容は、なのはの落ちたあの事件。

犯人なんかはどうでもいい。
なぜ落ちたか、それを求めた。


すると世界は必要と思ったのか、その原因を蒔風に流し始める。


その内容を理解し、蒔風が後悔し、そして思った。




確かに俺の負担じゃないみたいだ・・・・・・
でも・・・・・俺はロクなモノを残さないみたいだ。


なのはは落ちた。
こんなくだらない俺への憧れなんかで無茶をして。



さらに自分は昼間に何をした?

自分の怒りにまかせて、勢いでなのはのリミット解除して、それでまたあいつの身体に反動や負荷が溜まったらどうするんだ?
それであいつがまた地獄を見るようなことになったらどうする?


そんなこと、「願い」の翼人として許されるわけにはいかない。





もう駄目だ。
関われない。




俺は最初から、「奴」だけ倒してればよかったんだ。



そうだ、俺はイレギュラー
本来ここにはいない者。



だったら・・・・・・俺は





この物語にはいらなかったんだな。





だったらそうあろう。
俺はもう介入できない。

これ以上、あいつらの未来を、世界を、物語を、壊すことなんてできるはずもない。







さあ、「蓋」を再構築しよう。
なに、少し修正するだけだ、問題はない。

心を保て、蒔風舜。

お前は世界を守らなきゃならないんだぞ。
それが俺のやるべきことだ。

翼人として、やるべき事を為せ。


泣き虫に戻ってる場合じゃない。
臆病者になるんじゃない。

それにはすべて「蓋」をしろ。


自信を取り戻せ
誰とも関わらないだけの自信を


そうだ、いつもの言葉をつぶやこう。
そうすれば、自分はできると、思えてくるから。




「大丈夫だ・・・・俺は世界最強だから・・・・・・」






to be continued
 
 

 
後書き

蒔風がいきなり乱入した理由。
理由はもっともらしいこと言ってましたが、その大元は彼の「歪み」にありました。


スバルが感じたのは、そういう物だったんですね。


ここからダラダラなるんですよね・・・・



アリス
「次回、決別の告白」

ではまた次回













私の教導地味だから、あんまり成果が出てないように感じて、苦しかったんだよね? ゴメンね 
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