| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはStrikerS ~アグスタにて、ガンナーの憂鬱~



「さぁーて、今回の起動六課は!?」

「リィンですぅ♪今日、ミッドチルダのグランドホテル、ホテル・アグスタで骨董品や古物限定のオークションが開催されます。その中には取引許可の出ているロストロギアもあり、それをレリックと間違えてガジェットが出てくるかも知れません。だから今回の任務はそれからの護衛任務です」


輸送ヘリの中でリィンが全員に任務内容を伝える。
何だかノリが日曜夜七時くらいのアニメみたいだ。




起動六課メンバーは現在新たな任務についており、その内容はさっきリィンが言った通りだ。

さらにはやてが言うにはシグナム、ヴィータは既に現地入りしており、ヘリの中にはシャマルにザフィーラもいる。


「こりゃ総力戦だな」

「まあね。こういったオークションは密輸取引の隠れ蓑にされることが多いし、用心にこしたことはないよ」


そう言いながらフェイトがスカリエッティに関する事も伝えておく。



そうしてある程度の話が終わり、ヘリはホテル・アグスタに到着した。

「じゃあ私たちは中の警備に回るから、外はヴィータちゃんたちとフォワードの皆に任せるね?」


そういって何かが入った紙箱を持って来たなのは、フェイト、はやて。
それに蒔風が任せとけ、と胸を張り、外に向かおうとして、なのはに腕を捕まれた。


「舜君は~~~こっち♪」

「え?」





------------------------------------------------------------



数分後、オークションの受付にメイクアップした四人がいた。
その四人に注目が集まる。




「はぁ~~~~~っ、お前らドレスとか似合うのな」

「舜君のタキシードだって様になってるよ」


なのはたち三人がドレス、蒔風がタキシードに着替えて中の警備に当たることになった。
確かに中の要人の方が護衛対象としては上だ。

しかし蒔風はタキシードなんて着たことがない。
だからやんわりと断ろうとしたのだが


「舜君がいない間に「奴」の「欠片」が来たら困るんやないの~~~~?」

と言われてしまった。
こうされたら蒔風にはもうどうしようもない。
やむなく着替え、中の警護に当たることにした。


「うむ、たまにはこういう服装もいいな」

「なんや、まんざらでもない感じやん」

「一回着ちまえばもうどうにでもなる」

「な、な、舜君、誰が一番綺麗?」


唐突にそうはやてが蒔風に聞き、なのは、フェイトも興味津々に蒔風を見てきた。


「あ?そうさなぁ・・・・・誰が綺麗か?正直、三人とも綺麗だな。うん、普通の男性なら惚れちまうな」

「ふふん、せやろ?だけどうちが聞きたいのは誰が一番かや。評価は求めとらん!舜君なら誰に惚れる!?」


はやてがさらに突っ込んだところを聞き、なのはとフェイトがしどろもどろになる。
当の蒔風はキョトンとした顔をして、あぁ、と合点がいったような声を出し、頭をポリポリとかいた。


「無理無理。俺が誰かに惚れるなんてことないからさ。あっはっはっはっは!!!」


そう言って三人の肩に腕を回し、仲良く中に入っていく蒔風。

「俺たちは友人。仲のいい仲間。頼れる親友。それでいいじゃん。な?」


そう言って、豪快に笑いながら自分の立ち位置に向かう蒔風。
一体どういうことなのかわからないまま、三人が立ちつくす。


「舜君、好きな人いんかなぁ・・・・・」

「でも、誰かに惚れることはないって言ってたから、それは違うんじゃ・・・・」

「舜君・・・・一人でいるつもりなのかな?」



そんなことをはやて、フェイト、なのはと呟き、友人として心配した。
彼はまだ、ひとりなのか、と。






------------------------------------------------------------




そうしてオークション開始時間が近づく。

どうやら連絡ではシャマルのクラールヴィントに反応があって、ヴォルケンズが出現してきたガジェットを迎撃し、食い止めて居るようだ。



『来たみたいだな』

『うん。私たちはこのまま現場待機。報告だと、かなりの数が来てるらしいから気ぃ抜かんといてな?』

『『了解』』『おっけ~~~~』

『・・・舜君、その気の抜けた返事だと説得力無いで?』

『やるときゃやるよ。こっちもお客さんだ』

『え?ちょ、それどういうこと(プツン)






蒔風がはやての言葉を途中で切る。
その眼の前には黒い人型の蟲のような化け物。


漆黒のその姿に、紫のマフラーをしたそれは、脇になんかしらのケースを抱えていた。



「まったく・・・変な反応したから来てみりゃ、仮面ライダーみたいのがこの世界にいるなんてな。黒いボディに真っ赤な目ってお前はまりすぎ」


蒔風がその蟲に歩いていき、虫がジリジリと後ずさる。

『ガリュー、どうしたの?何かあったの?』

と、そこでその蟲、ガリューの脳内に、主の声が聞こえてきた。


『え?見つかった?だったら無茶はしないで・・・・大丈夫?うん、じゃあ任せる』




ガリューの目が一瞬だけ閉じるように光を失い、そして一気に光った。

流石は蟲のような外見をしてるだけあって、その速度はかなりのものだ。
柱や壁、天井を飛びまわり、蒔風の目をかく乱させようとする。
しかし、この男は見るだけならクロックアップにだってついていく男だ。

身体は反応できなくても、その動きははっきりと見えていた。


「逃げる気か。なるほど、指示を出して居る者がいるようだな。そいつを持ち帰るのが最重要か?お前の主は・・・・・・誰だっ!?」


ガシッ!!と蒔風が腕を伸ばす。
ついにガリューがその場から離脱しようとしたその瞬間、その隙に首に巻かれたマフラーを蒔風が掴んでその動きを止める。
そしてその間に腹に向かって拳を固め、一撃を放とうと振りかぶる。


「打・・・・滅・・・・ぼ・・・あら?」



だがガラン、とケースを落とし、ガリューの身体が黒い光になっていずこかへと飛んで行ってしまった。
蒔風は追おうとも考えたが、とりあえず守るべきケースは守ったことだし、今はポジションを離れるわけにはいかないと、とりあえず回線を開く。


『俺だ。地下駐車場にて敵の使役獣と思われる者と交戦した。警備員が一人、昏倒されている。狙われたケースは無事だ』

『そうかーーー、って、いきなり念話切って何しとんのやぁ!!!』

『うっせ!!こっちだってすこし集中せにゃならん状態だったんだ!!ってか、なんかあったのか?』



蒔風がはやてに外の状況を聞いた。

なんでもどっかの召魔導喚師によって、ガジェットが最終防衛ラインであるフォワードたちの目の前に転送され、そこで一戦交えているのだそうだ。
しかもとたんにガジェットの動きがよくなり、AMFもあって簡単には倒せない。


『しゃーねえ。やっぱ張ってて良かったってことだ』

『え?』

『前線に伝えてくれ。今から結界を張って一気にガジェットを押し出す。そこで殲滅してくれ』

『結界?いつの間に用意したんや?』

『青龍たちを所定ポイントに向かわせて剣に戻ってもらっただけだ。後は簡単に発動できる。カウント十秒前』

『了解、全員に伝えたで。七、六・・・・・・・』




蒔風とはやてがカウントし、それがゼロになり巨大な結界が出現した。

その起点はホテルの周囲四点にある。
中心のホテルからドーム状に大きくなっていき、蒔風が任意で敵とみなした無機物をドームの壁で押しやっていく。
そしてその外壁に溜まったガジェットを、シグナムやヴィータが破壊していった。



『これで終わりか?』

『そうやね。私はまだ中の警備におる。なのはちゃんとフェイトちゃんは外の現場検証に行ったから、舜君もそっちの方手伝ったげて』

『了解でっす』





そう言って駐車場に転がっている警備員を医務室から来た職員に預け、出口からそのまま外に出て、検証に付き合うことにした。







------------------------------------------------------------



「ユーノ!!!久しぶり!!!元気してたか!?」

「え??・・・舜!?舜じゃないか!!!!!どうしたんだい!?」


蒔風がなのは、フェイトと合流すると、そこに懐かしい顔があった。
ユーノ・スクライアである。

今ではもう立派な青年となって、考古学者兼無限書庫司書長となったユーノに蒔風が肩を組んで再会を喜び合った。



「いや、また「奴」がこっち来てさ。ビックリしたよ。こっちじゃ十年経ってんだから」

「舜と僕達とじゃ時間の流れが違うみたいだからね」

「ま、十年前の時もおれは中身ずーーーっと十九歳だったんだけどな」

「そういえばそうだったね」


そんなことを言いながら、フェイトと一緒に話していたのか、ジュエルシードの話になった。


「またこのメンバーで探すか?ジュエルシード!!」

「僕はもうあんな激しい動きはできないよ」

「ンな事ねえって!!アルフも呼んでさ、リリカルマジカル!!ってやろうぜ!!」

「わーわーわー!!舜君、それ恥ずかしいからやめてぇ!!!!」

「フェイトも、止まれ止まれ止まれ~~~~って無茶してたしな」

「う、うう・・・・・反論できません」

「でも舜だってアースラで叫んでたらしいじゃないか。僕となのはを送り出すために」

「あのときなにか言ってたんだ?」

「流石に十年も前じゃわからんだ・・・・・」



『これはオレの正義なんだよ!!ずっとそうだったんだ!!!ずっとそうしてきたんだ!!!』




「「「!!!??」」」



『てめえらは解決するために行動してんのか?規則に書かれたことを守るために悲劇を食い止めんのか!?違うだろ!!!正義があって、そのために行動するんだろうが!!!!!』



「ゆ、ユーノ、それ・・・・・・まさか・・・・!!!!」

「ふ、僕が君のような翼人のデータをそのまま破棄させる男だと思ってるのかい?翼人の伝承の検証、という名目で、クロノから君に関する映像記録などをもらっているのさ」



そう、ユーノが突然出したモニターには、十年前のアースラで、小学三年生姿になっている蒔風が啖呵を切っているシーンが流れていた。



「わー懐かしい!!思ってみればこのころから舜君大人びてたもんね」

「舜、私が無茶やったときこんなこと言ってくれたんだ」

「ユーノ君、そのデータ私にもちょうだい!!」

「私もほしいな」

「分かった。後で送っておくよ」

「や、やめろ!!!そんなもの流すな!!!お前らもほしがるな!!」


なつかしむなのは、笑顔で喜ぶフェイト。
そして狼狽して耳まで真っ赤になった蒔風。


「こんなもん改めて見るんじゃねえ!!!本人の前で流すな!!!」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ蒔風だが、ユーノは容赦なく流していく。




『お前らが止めたかった悲劇ってのはよ、あそこにあるものじゃないのか?それを止めるために、みんなここにいるんだろう!?』

『正義を語るんなら、味方も敵も、どっちも救って見せてみろよ!!!潰すより生かす方が難しいんだ。だったらそっちをやってみせろよ!!』

『時空管理局は、何が救いたいんだ?人か!!世界か!!両方か!!!』

『フェイトのことを想うなら、時には主の命にも逆らえよ!!!あらゆる手段を使えよ!!!それが、命懸けってやつだろうがよ!!!』

『世界ってのはさ、確かにクソったれなことがたくさんあるさ。でも、絶望するほど救いがない世界なんて、ないんだ』

『だけどな、誰かが失われて誰かだ助かるなんて、俺はそんなのはもう見たくない!!!』

『ああ、そうさ!!綺麗事だよこれは!!!闇の書を止めて、はやても救うなんて、現実的じゃないかもしれない。でもな、それを為すために俺は力を持ってんだ!!クロノはここまで強くなったんだ!!なのはとフェイトはあそこで踏ん張ってんだ!!封印するならその後にしろ。そこで見ていてくれ。俺たちのなすことが、どんな結果になるかをな』

『はやてが目を逸らして、夢の中ににげちまったら、ヴィータやシグナム達の頑張りが全部なかったことになっちまうじゃねえかよ!!!!』

『逃げるなんて軟弱な生き方は認められない。そんな生き方は誰も救われない!!!!』

『お前のその永遠は停滞だよ。先に進まなくちゃ、その命は輝かないんだ!!!』





「おぉ!!」

「凄いねーーー」

「うん、そして、こうやって舜を追い詰めるのも楽しみだったんだ」





「やめてくれえぇぇぇぇ・・・・・・・・・・・」





蒔風が地面で頭を押さえて転がっていた。
もう顔が真っ赤とかそんなレベルを超えている。

身体をビクンビクンさせて悶えるその姿に、なのは達は笑っていた。


「でもその時のこの言葉で、救われてきたんだからさ、そこは自信持とうよ!!!!」

「そうだよ?舜の言葉があったから、私は立ち上がろうとできたんだ」



「うう・・・・・オレさんに自信なんざねえよ・・・言ってなきゃ保てないから言ってるだけだよう・・・・・」




そんなこと言いながら和気あいあい?と話しこむ四人。




そんなこんなで今日の任務は終了した。




被害は多くなく、結果としては上々の任務となった。





------------------------------------------------------------





ガジェットがホテル前で暴れている時。
そして、ティアナがミスをしてしまった時。



「すごい・・・・・・・こんな結界・・・・一瞬で・・・・・・いつの間に・・・・」



ティアナが呆然と、元気のない目で上空を見、突如として発生したその結界を見ていた。
連絡によるとこの結界は蒔風のもので、害はないそうだ。




(やっぱり・・・・・あの人は凄い・・・・・凡人は私だけなのか・・・・・・な・・・・・・)




ティアナは気落ちしていた。
ついさっき、攻めてきたガジェットを撃ち落とすため、無茶なショットを行って危うくスバルに当たってしまうところだったのだ。

すんでのところでヴィータがやってきてその球は弾かれたが、あのまま当たっていたらと思うと恐ろしい。




ヴィータがその事を怒鳴り、蒔風の結界で押しやられたガジェットを破壊しに行ってしまい、ティアナが呆然と考える。






自分はやっぱり駄目なんだ。
今のままじゃダメなんだ。あの人たちの域には届かない。

私の力を、ランスターの実力を認めてもらえない。



こんな失敗して、挙句の果てにはスバルに八つ当たり。
これじゃ駄目だ。もう絶対に失敗はできない。


そのためにはもっと強くならなくちゃいけない・・・・・・・・


でも、最近本当に自分の普通さを叩きつけられた気がする。



オーバーSやニアSクラスの隊長、副隊長。
将来有望な後衛スタッフ。
そしてどんどん成長している同期達。


さらにあの男だ。
蒔風舜。伝説の、銀白の翼人。

なのはさんたちにも負けないような、そんな噂の人物。


そんな中で私はどうすればいいんだろう・・・・・・・
どうすれば私は私としてあの中にいられるのだろう・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・



そんなことは決まっている。
そうだ、決まってるじゃないか。


もっと強くなって、自分を認めてもらって、ランスターの弾丸は、いかなるものでも撃ち抜けると証明するんだ。

私の・・・・兄さんを・・・・兄さんから受け継いだ私の魔法を、認めさせてやるんだ。








現場検証でなのはさんが来たとき、少しだけ注意を受けた。
「ティアナは一人じゃない。皆が一緒」と言われた。


そうだ。なにも一人で突っ走らなくてもいい。
私に仲間がいる。一緒に強くなっていく。


でも、これは私一人の問題。あまりあの子たちに迷惑はかけられない。






それに・・・・・・・・




なのはさんの訓練で、私は本当に強くなってるのだろうか?
いや、訓練に不満があるわけではない。
でも凡人である自分は、他の三人と一緒のメニューではだめなのだ。

なのになのはさんはほかの三人と同じ量の訓練しか与えてこない。



ダメなんです。
それじゃ私はだめなんです。


基礎ばかりじゃなくて、更に使える応用を。

もっともっと強くなれる、そんな魔法を
誰も失わなくてもいい、そんな強い魔法を





私に・・・・・ください・・・・









to be continued




★☆★☆★




後書き




 
 

 
後書き

アリス
「次回、師と教え子。思いの違い」

ではまた次回










行くよ!相棒!
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧