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提督はBarにいる。

作者:ごません
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■提督と艦娘達の夏休み~浜遊び編・2~

「でも提督、トロピカルドリンクってどんな物なんですか?」

「う~ん、これ!っていうレシピがねぇんだよなぁ……」

 トロピカルドリンクってのは、トロピカルフルーツ……オレンジやパイナップル、バナナ、ココナッツなんかの南国で獲れるフルーツだな。そういうのを使った飲むだけで南国を感じられるドリンクだ。酒を入れたり、クラッシュアイスでフローズンスタイルにするもよし、タピオカやナタデココを加えて食感を楽しむもよし、店ごとに創意工夫が為されて実に色んな味が楽しめる。

「う~ん……わかったような、わからないような…」

「あ~、じゃあ試しに1つ作ってやるよ」

「い、良いのでしょうか…?お手伝いなのに、榛名が飲んだりして……」

「いいのいいの。どうせ俺がやりたくてやる店じゃねぇんだし」

 別に俺の店から持ち出された酒や果物では無さそうだから、俺の懐が痛む物でもない。それならば気兼ねなく飲ませても問題ないだろう。

「さぁて、じゃあハワイのトロピカルドリンクの女王『マイタイ』でも作りますかね」



《マイタイのレシピ》

・ホワイトラム:45ml

・ホワイトキュラソー:1tsp

・パイナップルジュース:2tsp

・オレンジジュース:2tsp

・レモンジュース:1tsp

・ダークラム:2tsp

※カットパイン、カットオレンジ、マラスキーノチェリー等の飾りはお好みで

 さて、マイタイってのはタヒチの言葉で『最高』という意味らしい。綺麗にシェイクして彩りよく飾ってやれば目でも楽しめる華やかなカクテルとなる。作り方としてはダークラム以外の材料をシェイカーに入れてシェイクし、氷を入れたグラスに注ぐ。そこにダークラムをフロート(混ざらないように浮かべる)し、オレンジやパイン、マラスキーノチェリーなどを飾ってストローを刺してやれば完成。今回は彩りに、ハイビスカスの花も添えてやろう。

「お待ち、『マイタイ』だ」

「綺麗で飲むのが勿体無いです……!」

 榛名は目を輝かせてグラスを眺めている。しかし、作った側の俺としては複雑だ。

「中の氷が溶けて味が変わってくから、俺としちゃあとっとと飲んで欲しいんだがなぁ」

 アルコール入りのトロピカルドリンクはほとんど、時間をかけて味わうロングスタイルのカクテルになる。……だが、時間が経てば経つほど氷は溶けて味が薄まっていくのも確かなのだ。出来れば間を置かずに飲んでほしい、というのが正直な所だ。

「そっ、それもそうですね!ではいただきます!」

「あ、あんまり焦って一気に飲むと……」

 俺の忠告も虚しく、一気にストローで吸い上げた榛名が噎せ返った。さっきも言ったが、ロングスタイルのカクテルってのは長時間かけて飲むのを前提にしている為にアルコール度数の高いカクテルが多い。一度に大量に吸ったらそりゃ噎せ返るわな。




「ケホッケホッ……うぅ、酷いです…」

 噎せながらも今度は少しずつマイタイを啜る榛名。しかし、顔を赤くしてうっすら涙を浮かべる榛名を見ていると、何というかこう……そそられる物がある。おっと、そんな邪な事を考えていないで仕事に移るとしよう。

「あら提督、いらしてたんですか?」

 小屋の入り口を見ると、少し陽射しに疲れたような様子の扶桑が佇んでいた。紅白のワンピースタイプの水着に若草色の花柄のパーカー、それに黄色のパレオと色彩豊かな出で立ちだ。

「あぁ、ついさっき金剛に無理矢理引っ張って来られてな。それより扶桑は辛そうだが大丈夫か?」

「えぇ、ちょっと砂浜からの照り返しと直射日光で頭痛が……」

 おっと、そりゃ良くねぇな。日射病や熱中症ってのは侮ると命の危険すらある。

「そりゃ大変だったな。そこの椅子に腰掛けて、少し休んでくといいや」

「すいません、じゃあお言葉に甘えて……」

 ふぅ、と軽く溜め息を吐きながら席に着く扶桑。こういう症状の時には水分とミネラル、ビタミンの補給が優先される。……よし、ノンアルコールのトロピカルドリンクを作って出してやるとするか。夏らしくスイカを使ったトロピカルドリンクにしよう。

《爽やか!スイカのトロピカルドリンク》

・スイカ:種を取り除いて100g

・プレーンヨーグルト:100g

・きび砂糖:大さじ1

・ココナッツパウダー:大さじ2

・氷:一掴み


 作り方は簡単、上記の材料をミキサーにぶちこんで、後は細かくなるまでミキサーにかけるだけ。今回はちょっとアレンジして、ミキサーにかける時に粗塩を2つまみ加えた。

「ほら、『塩スイカのトロピカルドリンク』だ。ゆっくりでいいから、飲んで休んどけ」

「ありがとうございます……あぁ、冷たくて優しい甘さ。身体に染み渡って行きます」

 扶桑はそんな事を言いながら顔を綻ばせている。榛名がジト目でこっちを睨んでいる気がするが、気のせいという事にしておこう。




「ひゃ~、あっちぃ~!」

 そんな事を叫びながら小屋の中に入ってきたの黄緑に黄色の水玉模様のビキニを着た長波だった。それに続けて夕雲、巻雲、朝霜、清霜、高波と、最近着任したばかりの沖波が続く。夕雲型はいつも一緒のイメージがあるが、それは遊びの時でも変わらんらしい……と思ったが、2~3人足りないな。

「あれ、風雲と早霜、それに秋雲はどうした?」

 秋雲は陽炎型なのだが、過去に夕雲型だと勘違いされていた事もあってか、夕雲型の面々と行動している事が多い。

「早霜の奴は間宮さんのトコで手伝いしてるぜ?」

 と朝霜。オレンジのワンピース水着が眩しい。

「風雲姉さんは飛龍さん達に捕まって泳いでるかも……じゃなかった、泳いでます!」

 そう語るのは高波だ。白の可愛らしい水着深緑色の髪とよく合っている。風雲もあまり交流が無かったのでこんな機会だから触れ合いを持ちたかったが、まぁ普段から仲の良い飛龍達に捕まったのなら仕方あるまい。

「秋雲は毎度の事ですけど、『こんなネタの宝庫、書かなきゃ私じゃない!』とか叫んで必死にスケッチしてますぅ……」

 呆れたように巻雲がぼやく。薄いピンクのワンピースに、水色のパーカーを羽織っているが巻雲も秋雲に負けず劣らず、その袖はダボダボだ。その犯人であろう夕雲に視線を向けると、必死に目線を逸らしながら持っていた日傘で顔を隠そうとしていた。

「暑いしはしゃいでたら喉渇いちまったよ。なぁ提督、なんか飲み物作ってくれよ~」

 カウンターに突っ伏した長波がうにゃ~……と溶けたようになりながら何かドリンクを、と注文してきた。夕雲型の面々カウンターに着いて飲む気まんまんらしい。

「わかったわかった、出してやるよ。……で、ご注文は?」 
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