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提督はBarにいる。

作者:ごません
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冷めても美味しいお弁当講座・サブのおかず編②

 さて、お次は豚バラ肉と蓮根を使った炒め物を一品。

「あれ?豚バラ使うんですか?」

「あぁ、使うのを避けた方が良いとは言ったが、使わないとは言ってないぞ?」

 豚バラは脂身も多いが、その分味わい深い肉の部位でもある。使わない手はないだろう。ようは余分な脂をどう処理するか……それがポイントだ。

《蓮根と豚バラのカレー炒め》

・蓮根(皮なし):200g

・豚バラ薄切り肉:70g

・ごま油:大さじ1

・カレー粉:小さじ1

・めんつゆ(2倍濃縮):大さじ1

・パセリ:適量

 まずは食材選びとカットから。豚バラは出来る限り脂身の少ない物を……ってのは、当然だな。蓮根は皮を剥き、3mm幅で銀杏切りにして薄い酢水に5分程さらしておく。豚バラは3cm幅にカット。

 さて、炒めていこう。フライパンにごま油を引いて熱し、中火で豚バラを炒めていく。ジュウジュウといい音と共に、肉の焼ける美味そうな匂いが漂う。それと同時に脂も染み出して来ている。

「やっぱり出て来ちゃうんですねぇ。どうするんですかコレ?」

「安心しろ、その為の蓮根だ」

 豚バラの色が変わった所に水を切った蓮根を加えて炒めていく。

「蓮根をはじめとする根菜の類いは、水分や油分を吸い取って自分の中に閉じ込めてくれる。豚の角煮なんか作る時に大根入れたりする人いるだろ?」

「あぁ、たまにいますね」

「ありゃ大根の酵素で肉を柔らかくする意味もあるが、大根が余分な脂を吸ってくれてサッパリさせてくれるからだ」

 それに、脂と共に溶け出した旨味を吸った根菜類は、絶妙に美味い。そういう効果も狙って、豚バラに蓮根をチョイスした。

 中火を維持したまま蓮根を加えて3分程炒めたら、めんつゆとカレー粉を加えて絡めながら、水分が飛ぶまで炒めてやったらパセリを振って完成。

「カレー味ってご飯が進みますよね、やっぱり」

「まぁ、あんまり嫌いって奴は聞かねぇよな」






 脂の多い肉と根菜の組み合わせの弁当に向いているおかずをもう一品。今度は牛肉を使った炒め煮……『牛ごぼうのしぐれ煮風』を作ってみよう。

《決め手は蜂蜜、牛ごぼうのしぐれ煮風》

・牛切り落とし:100g

・糸こんにゃく:50g

・ごぼう:100g

・醤油:大さじ2

・酒:大さじ1

・蜂蜜:大さじ1~2

・鷹の爪:お好みで

・ごま油:小さじ1

・水:大さじ1

・片栗粉:大さじ1/2


 まずはごぼう。今回は食感も楽しみたいのでささがきではなくスライサーでスライスしていく。その後は酢水につけて灰汁抜きをしておく。牛肉は食べにくそうなら適当な大きさにカットしておく。

 ごま油を引いて鷹の爪を加えて軽く炒め、香りが出てきたら牛肉を炒める。サッと炒めて色が変わったらごぼうを入れ、ごぼうの香りが立ってくるまで炒める。

 ごぼうからいい香りがしてきたら醤油、酒、蜂蜜、糸こんにゃくを加えて蓋をしたら、10分程煮る。

「砂糖じゃダメなんですか?」

「蜂蜜が牛の脂を固まりにくくするんだ。それに、砂糖だとベタついた味になるから弁当向きじゃない」

 ごぼうと糸こんにゃくにしっかりと味が染みたら、水溶き片栗粉でとろみをつけて完成。


「すき焼きっぽい味付けですけど、蜂蜜のおかげでサッパリしてますね」

「それと鷹の爪だな。後からピリッとしていいアクセントだろ?」




「でも、これだと葉物野菜が無いですね。何かいいレシピはありますか?」

 教えたレシピを思い出しながら尋ねてくる五月。もちろん、ポイントを押さえて葉物野菜メインのメニューも教えるつもりだ。

「んじゃ、肉野菜炒めといきますか」

「え、でもお肉を使ったらベタベタになっちゃうんじゃ……」

「誰も精肉を使うなんて言ってないぞ?使うのはハムやベーコン、ウィンナー等の加工肉だ」

 加工肉は脂が多いように見えて、その実加工の途中に余分な脂は削ぎ落とされる為に少な目だ。それに一度火を通している物が殆どなので脂が固まりにくい。弁当にはうってつけ、というワケだ。

《提督流・基本の野菜炒め》

・キャベツ:250g

・人参:30g

・ピーマン:1個

・ベーコン20g

・サラダ油:小さじ1

・塩小さじ1/3

・お好みの味付け:適量


 さぁ、野菜を刻むぞ。野菜炒めはシャキシャキとした食感も楽しみたい。なのでキャベツは小さくなりすぎないように、一口大にカット。人参、ピーマン、ベーコンは細切りに。

 さて、刻み終わった所で炒めていこう。フライパンにサラダ油を引いて熱する。

「材料に比べて油が少なすぎませんか?もう少し入れた方が……」

「ベーコンからも油が出るし、何よりキャベツから水が出るからな。他の具材は半分蒸し焼きに近い状態になるから、実はこのくらいの油で足りるんだ」

 油が温まったらベーコンを投入。サッと炒めて香りが立ったら野菜を全て入れて、全体が混ざるように鍋を振りながら炒めていく。

「おぉ~、プロっぽい!」

「アホか、この位練習すりゃ誰でも出来るわ」

 具材が混ざって油が回ったら、ここに塩を小さじ1/3。

「こんな少しの塩で味付けですか?」

「違う違う、この塩は野菜をシャキッとさせるのと、発色を良くする為の塩だ」

 炒まり過ぎる前に塩を振る事で水分を適度に抜いて歯応えを残すのだ。更に塩が野菜の発色を良くしてくれる。

「こっから本格的な味付けだ。今日はにんにく醤油に軽く胡椒で」

 今日はちょっと豪勢に、俺の手製のにんにくのたまり醤油漬けの醤油タレと胡椒を少々。鍋肌から醤油を垂らしてやればこがし醤油のいい香りが立ってくる。

「よし、こんなモンかな」

「うわぁ……美味しそうです!」

 基本の野菜炒めの作り方はこんな感じだ。後はベーコンをハムやウィンナーに変えてみたり、野菜の品目を変えたりしてレパートリーを増やせばいい。

「大分解ってきました。後は気を付けた方が良いことってあります?」

「そうだな……おひたしとか和え物は入れたりするか?」

「たまに入れたりしますね。カズ君に汁が漏れてたって怒られた事がありますけど……」

 と苦笑いする五月。意外とこのテの悩みは多いよな。

「和え物やお浸しは、味付けをしてから水気を絞った方がいい。調味料の塩分で、更に野菜から水が出るからな」

 ほうれん草のお浸しを例にとってみよう。お浸しは茹でたほうれん草を流水にさらして冷まし、ギュッと絞ってから味付け、盛り付けて完成だ。……しかし、ここに落とし穴がある。料理をする奴なら半ば常識だと思うが、食材…特に野菜類は塩をすると水分が出る。当然、しっかりと絞ったお浸しのほうれん草も例外ではなく、味付けに使った醤油などの塩分に反応して水分が出てくる。これを絞らずに弁当箱に詰めてしまうために液漏れが起きやすい。だからこそ俺は、味付け後にもう一度絞る事をオススメしたいのだ。

「でもそれじゃあ、味も抜けちゃうんじゃないですか?」

「お浸しにして暫く置いておいて、味を染み込ませておけば絞ってもそれほど味は落ちねぇぞ。一度試してみるといい」

 煮物にも同様の事が言える。詰める前は大丈夫だと思っていても、時間経過で中から水気が出てくる。これを防ぐには詰める前に茶漉しに乗せて水分を切ってから詰めるといい。

「成る程……勉強になりました!これでカズ君のお弁当作ってみます!」

「あぁ。旦那さんによろしくな」

 そう言って五月は足早に鎮守府を後にした。今日は事前にホテルを取っておいたらしい。数ヵ月後、沢山の艦娘達に囲まれた五月の写真つき葉書が送られてきたのは、また別の話。 
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