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終わらないジングルベルを ~ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー企画~

作者:高田黒蜜
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黒澤家の長女とただイチャイチャしてベッドで(自主規制)なことをするだけなのに妹が突撃してきたので姉妹丼になって襲われました本当にありがとうございますinクリスマス

 
前書き

※黒澤姉妹のキャラ崩壊

お久しぶりです。本日はグリッチさんの企画に参加させていただきました。平常運転の内容になっておりますのでゆっくりじっくり楽しんで行ってください。


 

 
"これから彼女の家でいちゃいちゃするぜぃ!!あわよく
ば夜の営みなんかも......笑"







そんな非リア充な人にとっては不愉快極まりない発言をTwitterでとばす。うん、満足。
これでどうせRTだのお気に入りだの、リプで"爆ぜろリア充"だのと炎上してるんだろうな。
そんな予想できる展開にニヤリと口端を持ち上げる。




「なにを1人で笑ってますの?」
「ピギィッ!?な、なんでもないぜ」
「さり気なく妹の真似をしないでいただけますか?」
「おっと失礼。妹のルビィちゃんがあまりにも天使すぎて」
「そ、そんなの全然関係ありませんわ」


俺の彼女である黒澤ダイヤは呆れたような声色で呟く。だけどこのやり取りに心地良さを感じているに違いない、うん。
俺は彼女に愛されているからな!
黒澤家の玄関を通り、靴を脱いで長い床を歩いていた。


お互い、今は大学1年生。
地元の内浦を離れてTOKYOの大学に進学していたが、今日は絶賛クリスマス。年末年始は恐らく俺が忙しいのでこうして黒澤家に3日ほどお世話になることにした。


とはいえ、何度も訪れた事のある家だから多少のことは知ってるつもりだ。黒澤家の事、両親の事、妹のルビィちゃんの事......当然、ダイヤの事も。



「御両親は?」
「今日1日不在ですわ」
「ふーん。大天使ルビィちゃんは?」
「さらっと大天使だなんて付けないでくださいませんか?確かに妹のルビィは可愛いですが貴方に言われると腹が立ちますわ」
「うわっ、出たよシスコン。はーこれだから最近の若モンは歪んでるんだよ。主にダイヤの性格みたいに」
「叩きますわよ?」



とか言いつつ、俺の事大好き過ぎだから叩かないくせに。
俺は頭をガシガシと掻きむしってダイヤの背中について行く。



俺とダイヤが出会ったのは高校1年の春。
女子高の浦の星と、俺の在学していた男子校の合同生徒会という集まりの時に知り合った。当日お互いに役員ではあったし、議題について話し合う時も反りが合わなくて意見が対立する時なんてよく......いや、全部そうだった。
とはいえ、容姿にはメチャクチャ惹かれていた。一目惚れだった。黒髪ロングに前髪パッツン。口元のホクロを見てると発情してしまうのは間違いなく俺だけだ。すらっとした綺麗な姿勢は黒澤家だからだ。多分それだけで通じる。

その日はそれだけで終わったけど、浦の星に"高海千歌"という古い友人がいるため、ヤツの力を借りてどうにか連絡先を入手!

積極的に話しかけていくうちに一緒にご飯を食べたり映画を見たり、デートっぽい展開まで漕ぎ着けることが出来たのは高校2年の冬。
その時は恋人同士では無かったけど俺の脳内では既にカップルという認識になっていた。


「そういえばこの前教授が提示した経済学のレポート終わりましたの?」
「あーそんなのあったな。あんなのその日のうちに片付けたよ」
「は、早いですわね...この前の講義で分からないことがありましたのですが〜」
「何?寝技?」
「ち、違いましてよ!!!経済学に寝技は関係ないですわ!」



向こうから告白してきた。「貴方が好きですわ、誰も渡したくありません」というなんともグッとくる告白をしてきたのは高校3年の夏。
もちろん即答で受け入れた。
やり取りは付き合う前となんら変化は無いけども、時々感じるダイヤの熱い視線を受けるだけで大満足だった。


「まー寝技はどうでもいいや。んで、どこでございましょうかダイヤお嬢さま」
「ここですわ」
「スルーかい」


ダイヤの部屋。何度も足を運んだ事があるけれど、久しぶりなだけあって妙に緊張するし、部屋いっぱいに畳の匂いとダイヤの香しい匂いが広がっていて思わず鼻息が荒くなりそうだった。



なんとか堪えて、あくまで自然体でベッドにどしんと座る。ついでに旅行カバンを脇に置く。ダイヤから数枚のレジュメを受け取り、綺麗にマークされた箇所を眺める。




「どう、ですの?」
「ねるねるねるね」
「え?」
「なるほどねるねるねるね」
「......は、はぁ」


いかん!滑ってしまった。
俺は咳払いで誤魔化し、胸ポケットに挟んであったボールペンで要点をすらすらと書き込む。
「はいよ」と渡した時のダイヤの顔はキョトンとしていた。

「え?これだけですの?」
「あぁそれだけ。ダイヤは難しく考えすぎだかんな、しかも教授が言ってた所から僅かにズレた内容纏めようとしてるからこんがらがるんだよ」
「そ、そうでしたのね......」
「寝てたろ?」
「そ、そんなことはございませんわ!わたくしが講義中に居眠りをするなど決してありえませんわ」
「そーだよなーあの黒澤家の長女様が、講義如きで居眠りするなんてありえねーよなー」




懐からスマホを取り出して適当にぼやく。
ダイヤは目を逸らしながらも僅かに肩を震わせて『バレてますのね』と考えていそうな表情を浮かべている。

そりゃ俺の隣でかっくんかっくんしてたら気づかないわけないよな。

スマホで内浦に住んでる両親に『黒澤家なう。明日には顔出す』と打ち込んでスマホをベッド奥に投げ捨てる。
するとそのままするするとベッドに接していた壁にぶち当たり、僅かに空いた隙間にストンと落ちてしまった。


「あっ」
「なにをなさってますの」
「呆れ顔するなよ。まぁいいや後でとる」


それにしても、本当に静かな場所だな。
TOKYOだったらこうはいかない。車の音、人の話し声、何かがぶつかる音などなど。
とにかく喧しくて落ち着いてなんかいられない。


しかしどうよ。
ここは本当に静かだ。
聞こえるのは葉の擦れる音や虫の鳴き声、僅かであるが耳障りにならない車の音。

逆に静かすぎて落ち着けなくなってる。



「なぁ、ダイヤ」
「ひゃいっ!?なんでございますの!?」
「いや呼んだだけなのに何故そこまで驚く必要がある」
「別に特にはなにもございませんわ」
「あっそ。でさ......こうしてこの時期にここにいるとすげぇ懐かしくないか?」
「この時期、ここに?......ええとそれはつまり」


知らない振りをして誤魔化そうとするダイヤにちょっとだけムッとした。


「お前が初めて俺に甘えてきた日じゃねぇか。俺覚えてるぞ。ずっと強がっててろくに手も繋ごうとせずにいた事を。どんだけ恥ずかしがり屋なんだか、初心なんだか」


付き合い立ての俺らは本当にいちゃつきなど無かった。俺からは積極的にいったつもりだが軽くあしらわれて相手にしてくれなかった。手を繋ぐと振り払われて早歩きで逃げるし、デートしようと誘ってもダンスの練習だとかで拒否されるし。まぁこれは仕方ない。だからお昼くらいはと思いきや生徒会の仕事で無理ときた。

今思えば恥ずかし過ぎてくっつけなかったんだなと微笑ましく思えるのだが、あの時の俺は『本当に好かれてるのか』不安で不安で仕方なかったのだ。わかるか?この非リア充諸君!

『誰にも渡したくない』と言われたはずなのに手のひら返しにされた俺の気持ち。わかるか?わかるわけないよなぁDT諸君!ガハハハッ!





だからこそ。クリスマスの日、ダイヤの家に誘われた時は『別れを告げられるんじゃないか』と怯えていたが全然そんなことは無く、



「『今までごめんなさい。貴方にああ言ったことが恥ずかしくて...ずっと逃げておりましたの』だったね」
「あ、ぁぁぁ!!なんて事を思い出させるのですか!?おやめなさい!!」
「ぶあっぷっ!!こらダイヤ!お前物投げるなって親に教えてもらわなかったのか!」


枕を始めとして、ノート、旅行カバン、中身の入ったペットボトルを投擲してくる。
危険物じゃないだけマシなんだろうけど、そもそも人にものを投げるあたりでアウトだ。


「ダイヤ落ち着け!」
「落ち着くのは貴方ですわ!そんな恥ずかしいことよく平気で───」


これ以上は言わせないとばかりに口を封じる。


──そう、俺の口で



最初はソフトなキスから。
そして、徐々に舌を絡ませるスタイルで。


「ふぅ、っ......んっ、はぁ......んっ......ちゅっ、ちゅぅ......」


漏れる吐息がエロい。



「ぷはぁっ......はぁ、はぁ」
「はぁ......おま、舌絡めすぎな」
「そ、そんなことございませんわ。人のせいにしないでくださいます?」
「ったく。昔は俺の事好きだとか言いながら避けてきたのにな」
「っ!それは、昔の事で...今は、貴方の隣平気ですわ」


お互いに離れ、ダイヤは引っ張ってそのままベッドへ俺を座らせる。
ストンとそのまま俺のすぐ隣に座った。

「......ほ、ほら。平気ですわ」
「顔、真っ赤だぞ。それはいいのか?」



そんな言葉が口から出た。つい、照れくさくて。


「今更、何を言っておりますの?......貴方が隣にいるから、顔が赤いのですわ」
「......っ」


俺の彼女は、ダイヤは頬を染めながらはにかんだ笑みを浮かべる。そして、身体を寄せてきた。
ダイヤの細くて長い指が、俺の手の甲に触れた。
ていうか、手を握ってきた。



「いつでもどこでも、こうしてスイッチ入ってくれればすげぇ嬉しいんだがな」
「こんなこと、公の場ではできませんわ。恥ずかしいですもの」
「......だな。こんなダイヤ、他の男に見せたくねぇわ」


更に俺らの距離が近くなる。
俺の顔をのぞき込むようにして。息がかかるほどの距離。その距離が1ミリ、2ミリと縮まる事に俺の視界にはダイヤの整った顔しか映らなくなった。

「あっ...」


ダイヤの細い声が漏れる。


「なぁ」
「なん、です、の?」
「今日...御両親は来ねぇんだよな?」
「きま、せんわ」
「......ルビィちゃんは?」
「る、ルビィは... 花丸さんの家で」
「狙ったな?この時を」



目を逸らして、ダイヤの事を直視していないとわからないくらい、ほんの僅かに頷く。普段は人前は当然のこと、俺の前ですらそういった表情を見せないダイヤに魅せられて、ごくりと生唾を飲み込む音が聞こえた。ダイヤとの付き合いはそこそこ長いもんだと思っている。それこそ、一年前まで共にスクールアイドルをしてきた仲間よりも。まぁ、鞠莉や果南と比べたら短いけど。それでも、そんな彼女たちですら、今のとろんとした彼女の顔を見たことがあるだろうか。



「たまには...いいではありませんか」


 俺は優しくベッドに押し倒す。たったそれだけの行動で俺の鼓動は早まり、まるで黒澤ダイヤという蜘蛛の巣に捕らえられたように彼女の瞳から、体から目を離すことができなかった。左手でダイヤの頬伝い、その手が頬から黒髪、そして耳たぶへと這う。耳の中にちょっと触れただけでビクリとダイヤは反応するところがなんともいえないエロさを感じさせる。


「なんつーか、今日のダイヤは可愛いな」
「今日のって...その言い方ですといつもは可愛くないと言われているように聞こえますわ」
「そうだな、いつもは可愛いというか...美しい?」
「どうしてそこで疑問形なのですか?」
「んなこときにすんなって」


「なんつーか、今日のダイヤは可愛いな」
「今日のって...その言い方ですといつもは可愛くないと言われているように聞こえますわ」
「そうだな、いつもは可愛いというか...美しい?」
「どうしてそこで疑問形なのですか?」
「んなこときにすんなって」



 俺はもう一度ダイヤの髪を触って、おでこに軽くキスをする。なめらかですべすべだった。それでは物足りなかったのか空いた両手で俺の背中を強く抱きしめる。いつもは自分から触れてこない、触れることを拒んでいるダイヤがいつになく積極的でちょっぴり嬉し恥ずかしだったりする。俺とダイヤは恋人同士の関係で、それは当然お互い理解している。とはいえ、いつでもどこでも一緒に行動するわけでは無いし、年がら年中イチャイチャ見せびらかすような恋人関係でも無かったりするわけ。強いて言うなら仲良しな姉弟?友人?みたいな。実際千歌達にはカップルと認識されなかったわけで
 だからこそ、こういった甘えてくる行為そのものが久しぶりすぎてやたらテンションが上がってくる。



「ダイヤ」
「な、なんですの?」
「...キス、してもいいか?」
「そういうこと、女の子に尋ねるものではありませんよ」




 おーけー、と適当に返事して俺はダイヤに顔を近づける。いつもダイヤの肌は綺麗でつやつやしてんのなあって思っていたけど、いざこうして間近で見るとそれがもろにわかる。元々綺麗だったのかもしれないし、陰ながらの努力の成果なのかもしれない。




「んっ...ちゅ、ん、んぅっ......」


なんてことを考えて止まっていたら、むっとした表情のダイヤが不意に顔を近づけてきた。


「ん、ふぅ...まったく、貴方は何惚けていたのですか。口先尖らせて変な顔になっていましたわよ」
「ダイヤの肌綺麗だな~って思っていただけだよ」


 そう言いながら俺はもう一度唇を重ねる。やさしくて穏やかで、そして何処に行くあてもない口づけだった。あたたかくて親密な気分になっていて、そのことを何かのかたちで残しておきたいと無意識に考えていたのだろう。俺たちのキスはそういうタイプのキスから始まる。そして徐々にお互いの舌で相手の口内をかき回していくディープなものへとチェンジする。ちなみに、舌を入れるのを先にしてくるのはダイヤであったりする。そう、そういう事に興味なさそうな人こそ、貪欲で積極的だとよくネットの書き込みで見かけるけど、まさにその通り。
 他人はどうであれ、ダイヤはそういうのに疎いと思っていた...が、残念俺より知識が豊富なのでした。やはり勉強熱心で清楚っぽい女性は、営み的で保健体育の実技的な知識も豊富なのだろう...全員が全員とは言わないが。あくまで私見である。





「...はぁっ、っく、ちょ、ダイヤっ...息させろってっ...」




 空気を求めて唇から離れようとする俺と、まだ満たされずに啄むように唇を突き出すダイヤ。俺が下がるとダイヤは近寄ってきて、そんなことを繰り返してたらいつの間にかダイヤに押し倒されていた。はて、予定では俺が押し倒すはずだったんだがどうしてこうなったんだ。『もうすこし』と耳元で囁かれると男として断れず、仕方なしと身を任せる。
 しかしまぁ、されるがままというのも癪なので、意識がキスに回ったダイヤのどさくさに紛れてさり気無くふくよかな胸に手を這わせる、当然、直で。


「ふうっ!?ぷはっ、ちょっと何をなさってますの!」
「いいじゃんスキンシップスキンシップ♪」
「ですから!触っていいなどと一言も———はうっ!」



 二つの双丘を下から頂点へ手指を這わせて、その動きに合わせてキスの真っ最中のダイヤに口から何とも言えないエロティックな吐息が漏れる。知ってた、とんでもないくらいにエロいことを。


「やっん、いつまで...そうしてる、はぁ...おつもりです、の?」
「ん~?まーずっとしててもいいかなって。ダイヤがすげぇ可愛いし、エロいし、更にも一つエロいし」




しかし、そんな甘い時間は長くは続かない。






直後、ガラガラガラと扉の開く音が響いた。にもかかわらず俺の上に覆いかぶさってるダイヤはキスを止めない。

「っぷは、だ、ダイヤ...誰か、帰ってきたって」
「はぁ...は、はぁ。気のせいですわ。今日はわたくしと貴方以外誰もいませんもの」
「ちょ、おま―――」














「ただいま~。お姉ちゃん帰って来てたんだ———」



 聞こえるのは女の子の声。すべてを言い終わることなくビキリとダイヤの部屋に片足突っ込んだままの黒澤家次女、ルビィが立っていました。片手には大きな買い物袋が下げられていて、はみ出ているのは赤と白の服と何らかの動物の角のカチューシャ。
 俺とダイヤが実家に帰省する、しかも敢えてクリスマスという日を選んだことを知っていたからか、コスプレでもして盛大に盛り上げようという寸法だったのだろう...。この日をどれだけ待ちわびていたのか想像しただけで、俺とダイヤの及んでいる行為に申し訳なさが募るわけで。


「えっと...そ、その~」


 何か言いたそうに口をパクパク、まるで魚が餌に食いつくような動きをしながら、ドスン、と買い物袋が手から落とす。一方俺の視界にはさっきまでの赤みとは別の意味が含まれている赤みを帯びて、だけど唇を離そうとはせずに見事固まっていた。




「ピ...」
「あっ」



瞬間、俺とダイヤは耳をふさぐ。




「ピギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーっっ!!!!!」






 黒澤家に騒音で有名なポケ〇ン、ドゴ〇ムが現れた。








~☆~








「―――ということでルビィちゃん、俺といちゃいちゃしようぜ、ふごぉぉっ!?」
「殴りますわよ」
「...な、殴ってから言う発言じゃねぇぞ」
「ま、まぁお姉ちゃんそんなに怒らないで?ね?こ、恋人同士なんだし...そういうことも、するんだもんね?」



 何故か俺だけ正座。おかしい...一番積極的だったのはどこの誰だっけ、あん?なんて視線を向けてもマイ彼女の目力には勝てるはずもなく、『すべて俺が悪い』という責任を転嫁させられた。ルビィは男女の営み(未遂)現場を初めて目の当たりにして、日本語が日本語じゃなくなってたけど、お茶を飲んで、ようやく落ち着きを取り戻してくれた。


「つか、最初に誘ってきたのはダイヤの方じゃ...って待て。俺が悪かったから熱湯の入ったティファール投げつけようとしないでくれ。用途が違うぞ!!」
「あら?わたくしがそんな淑女らしからぬ事をするとでも?」
「今のダイヤは淑女どころか痴女の方が正しいかもしれないけど」
「な・に・か?言いまして?」
「何も言っておりませんともええ!!」


 これ以上油を注ぐと吹きこぼれそうな気がしたので流石にこれくらいで留めておく。それよりも。まずは恥ずかしい思いをさせてしまったルビィに謝ることが先決だ。


「まぁ、ごめんねルビィちゃん。誰もいなかったからつい、盛り上がっちまって」
「い、いえ!こちらこそ確認もせずにふすま空けてしまって...ごめんなさい」

 そもそも、玄関の扉が開いたときに抑えておけばルビィにもダイヤにも恥ずかしい思いさせずに済んだのは確かな事なので、抑えきれなかった俺と外部の音をシャットダウンしたダイヤが悪い。

「そういえば貴女花丸さんのお屋敷にお世話になりに行くのではありませんでした?」
「それが、花丸ちゃん...今日ずっとふらふらしてて家に帰って確認したら熱があって...」
「ふ~ん。それで帰って来たってわけなんだな」




 それはまぁ災難と言いますか。俺からすると二人っきりでいちゃいちゃできなくなるのが大変残念な事ではあるのだが、花丸の事を考えると不謹慎だ。でも...もっとエロいことしたかったなと思うのは男として、人として仕方ない事である。あの状況、抑えろという方が無理なのである。
 そんな俺の中途半端なムラムラを知ってか知らずか、頬を染めたダイヤは『とにかく、今日は無しです』と、眼力でそう訴えかけていた。



———今日は無し


 つまり、このどこに矛先を向ければよいのか途方に暮れた欲を今日は我慢しろ、と。ダイヤお嬢様はそうおっしゃりたいのでしょうか。それあはあまりにも酷いのではないでしょうか。少なくとも俺としては留置場に放置されるより残酷っす。


「で、でもお姉ちゃん?」

そんなとき、ルビィが、腕組みをしてぶすっとふくれっ面を露わにするダイヤに何か言い出す。

「この前読んだ少女漫画に...その、男の人は、えええええっちなことを中途半端にされると、と、とても辛くなるって、書いてあったよ?」
「な゛ぁっ!?ルビィそんな厭らしい情報なんの本から仕入れたのですか!」

 まさかのちょいフォロー。そういえば聞いたことがある。最近の少女漫画なるものはそんじょそこらへんの男子が読むようなラブコメ的漫画なんかよりも、ずっと大人で、エロい描写が描かれているという事に。恐らくそれ関連のシーンを彼女は読んでしまったのだろう。だから、知っている。
 そんな妹をダイヤは傷1つ、穢れを教えずに優しくお世話してきた。それ故、その綺麗な妹が邪念にまみれた事を覚えてしまったと知ると、内心穏やかではいられないだろう。自分の事は棚の上に置いて、ではあるが。



「だから、ね?私に気を遣わなくてもいいから...二人きりで...」
「ルルルルビィ!?ああああ貴女何を言ってるのかわかってますの!?」
「私だって、もう子供じゃないもん。それに———」




 言葉を遮って、ルビィは俺の前でしゃがみ込む。正座で足をシビラせている俺は、頬を赤く、赤く染めて顔を近づけてくるルビィの存在に意識が回らない。その結果。




「...ちゅっ」




 唇を突き出して、俺の頬にキスをするなんて行動を起こすなんて想像もできなかったわけで。意識が覚醒したときはその後(・・・)の事だった。


「な、な、な...」
「......ふふっ。お姉ちゃんがちゃんと捕まえてないと、私が貰っちゃうかもしれないよ?」
「なにをなさっていますのーーーーっ!!!!!!!」


 ドタバタ、と黒澤家姉妹にしては本当に...もしかすると初めて見たコメディ感溢れる光景を他人事のように眺めながら、キスをされた頬をさする。その惚けた俺の姿が頭に来たのか、ダイヤはズンズンと擬音を立てながら俺に近付き、襟元を掴みあげる。

「ルビィに何を吹き込んだのです?」
「いいっ!?俺はなんもしてねぇ!」
「なら何事ですの?貴方みたいな変な殿方を好きになるのはわたくしだけだと思っておりましたのに、ルビィを毒牙にかけるなんて言い御身分ですこと」
「毒牙なんて、か、かけてねぇ...それに俺はダイヤが好きなんだから———」
「キスされて...嬉しかったのではないのですか?」
「...............それはないです」
「何ですか今の”間”は!!??」

 ぐいぐい、と締め上げる力に比例して意識が飛びかけそうになる。すげぇ嫉妬されてて愛されてんなぁ、と彼氏冥利に尽きるというか、嬉しく思う。だけど意識とぶ。


「違うよお姉ちゃん。お兄さんは、悪くない...です」
「ル、ルビィ...ほんと、なのですか?」

 ダイヤの質問に...無言の返事。答えはつまり、そういうこと。
カミングアウトが真意だと漸く落ち着きを取り戻したダイヤは、俺から手を離して静かにルビィの肩にポン、と手を置く。開放された俺は酸素を求めて喘ぐ。


「ルビィ、わかっておりますの?この人はわたくしの所有物(モノ)ですわ。ですから貴女のその気持ちは応えることはできないのですわ」
「...知ってるよ?」
「......」
「お姉ちゃんが、お兄さんの事を愛してて、お兄さんもお姉ちゃんのことを愛してて。相思相愛だって知ってるよ。でも、私だって...お姉ちゃんに負けないくらい、好きなんだもん」


 ルビィの告白に何も言わずにただ黙って聞くダイヤ。正直、俺は当事者でありながらもイマイチピンとくるものがない。彼女に好かれるようなことはした覚えがないし、そもそも好かれるほど関わりをもったわけでもない。正直なところ、大好きなお姉ちゃんを勝手に奪っていった変態野郎って思われているかもしれないとビクビクしていた。だからこその、ルビィの告白に釈然としない。まぁ、好きだって言われるのは嫌いじゃない、むしろとてもうれしい事ではあるけど。


「それで、貴女はこれからどうするつもりですの?」

 呑気な俺に対して、ダイヤは態度を一変して”お姉ちゃん”ら”姉”になっていた。そりゃ当然のこと。姉妹そろって一人の男に恋心を抱いてしまったのだから。とても仲良しな姉妹ならなおの事、この事態はよろしくない。疎遠なんてなりかねない。ふたりの仲良しっぷりを知っているから、それだけはなって欲しくない。こんなしょうもない変態の為なんかに長年培ってきた信頼とか愛情とか、そういった類のものをぶち壊されちゃ、逆に罪悪感を感じてしまう。
 トントン、と畳を足で小突きながらルビィは儚げな表情を浮かべる。現在進行形で俺は置物勢になってるけどそんなこと気にしない。俺はこの結末を見届けるだけ。横やりを入れてはならない。

「私は...お姉ちゃんも、お兄さんもどっちも大好き。お姉ちゃんは?」
「え?」
「お姉ちゃんは...私の事、好き、かな?」





突拍子もなく、妹は尋ねる。


「そんなこと、応えるまでもありませんわ」
「そう、えへへ♪私もお姉ちゃんの事大好き♪」


 嬉しそうに口の端を持ち上げて笑うルビィと、恥ずかしがりながらも照れてるようなダイヤ。この瞬間俺とダイヤには無い...長年培った絆を見れたような気がした。















———とはいえ。



 根本的な問題は何一つ解決していないわけで。
良い感じに話がまとまりそうになったのもつかの間、妹の........あまりにも少女漫画に影響を受けすぎた、元純粋ルビィの大問題発言から、また事態は更に面倒な方向へ進む。



「お姉ちゃん」
「なんですの?」


姉の膝の上に座っている妹が唐突にこんなことを言い出してきた。











———姉妹丼(・・・)って、知ってる?







 ルビィの口からまさかそんな単語を聞かされるとは思わなかった俺は口に含んでいた紅茶を噴き出してしまった。いや、そもそも少女漫画からそんなゲスくてヤバめな単語が出てくるはずがない...多分。


「それは、どういったお料理なのですか?親子丼(・・・)に似ている料理なのですか?」
「...ダイヤ、やめてくれ。この話の流れで親子丼はまずい。主に俺の理性が」


 頭上に疑問符を浮かべるダイヤの耳元でこしょこしょ話すルビィ。直後真っ赤になって俺とルビィを交互に見るダイヤ。何故かその様子を見てルビィは嬉しそうで、俺は当然ため息をついて...。






「...まぁ、ルビィが一緒でしたら。わたくしは構いませんわ」








なんてネジが874本くらいぶっとんだ発言をあのダイヤから聞いてしまったので。

ギリギリ切れるか切れないかの理性がぷっつりといってしまった。









.....正直なところ、その後の展開はよく覚えていない。微かにあるのは、耳に残っている黒澤姉妹の吐息交じりの声と、いつもは2つある双丘が、4つに増えてメロン畑とすらっと伸びた四肢の感触。午前3時、俺の両サイドに下着姿で寝ている彼女達(・・・)









...あとは、これからどうしようという将来設計。










そんでもって、充電しきったiPhone画面には炎上してたTwitterに新たに投稿したツイートだけ。

















”黒澤家の長女とただイチャイチャしてベッドで(自主規制)なことをするだけなのに妹が突撃してきたので姉妹丼になって襲われました本当にありがとうございますinクリスマス”






......ハッピーメリークリスマス♪

 
 

 
後書き
こういう黒澤姉妹もありだなと思った次第です。クリスマスに新たに妹も仲間入り!晴れてハーレム結成おめでとう!

ということで僕の出番はここまで。企画に参加させていただきありがとございました。

 
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