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終わらないジングルベルを ~ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー企画~

作者:高田黒蜜
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サンタコスプレを、幼なじみの美少女に懇願した。

 
前書き
どうも、企画運営主及び今日の作品の執筆者のグリッチことチーズ丸太郎です。
今回は果南ちゃんメインで書きました。いつものノリと勢い任せの文章ですが、お楽しみいただければ幸いです。 

 
俺が最後にガチで頼み事をしたのは、大学1年生の春に深刻な金欠になって、追加の仕送りを親に縋ったときくらいだ。人生史上何度目かもわからない『一生のお願いだ!』って言葉を駆使して、親に折れてもらったあの日のことは、一生忘れない。
そして、今日。俺は、ある人物にクリスマスプレゼントを要求している真っ最中だ。


「頼む、果南!これだけで俺は満足なんだ!!」
「……本気?」
「本気だって!絶対似合うからさ!頼む!!」
「似合うどうこうの問題じゃないんだけど……」


さっきからマジで言ってるのに、幼なじみが中々折れてくれない。なぜだ……俺はただ単に、




「《サンタコスしてくれ》って言ってるだけじゃん!!サンタコスのどこがいけないんだよ!?」



「いや、それ自体は悪くないけどさ……そもそも、なんで私に頼むの?」
「お前が一番スタイルいいから」
「理由が明らかにおかしいんだけど」
「あと、お前かわいいしさ。このサンタコス、絶対ブスには似合わないやつだからね。せっかく美少女が知人にいるんだし、着てもらいたくて」
「……褒めても無駄だよ、絶対着ない」


ふっふーん、顔赤くしちゃってかわいいなぁ。言われ慣れてないことを言われると、すぐ赤面するのが果南のクセだ。高校生のとき、果南はスクールアイドルをやっていたのだが、「昨日のライブ、お前が一番かわいかったぞ」とか言うと、表情は変えなかったが顔には出ていた。サバサバしているようでそんな面もあるんだなぁと思わされた出来事である。なお、「お前が一番かわいかった」というのは紛れもない本心。幼なじみだからといって贔屓目で見たのではなく、他のどの子よりも彼女が輝いて見えた。
おっと、話がそれたな。
果南は結局まだ折れてはくれていないので、少し方向性を変えて頼んでみることにする。


「うーん……じゃあさ、着てもらう代わりに、お前の欲しい物何か一つだけ、なんでも買うなり、あげたりしてやるよ。それでどうだ?」
「……ふーん」


お、目の色が変わったぞ。でも果南のことだから、あまり高価なものを要求してはこないだろう。千歌や曜に同じことを言ったら、なんて返ってくるか怖いったらありゃしねぇぜ……みかん一年分とか言われたらこっちまでみかん臭くなりそうだ。柑橘系男子、やったね!!……はぁ。
想像で萎えていた俺に構うことなく、少し考え込んでいた様子の果南が、再びこっちを向いた。


「わかったよ。なんでもいいんだよね?なんでも」
「おう、なんでもいいぜ。何が欲しいんだ?」
「それはそっちの要求に応えてから言うよ」
「おっけー。じゃあ、これね」


果南は「はいよ」と言い、俺が密林で厳選に厳選を重ねたサンタコスを受け取り、隣の部屋に入っていった。ようやくだ……ようやく、あの抜群のプロポーションを、サンタ姿で拝むことができる……やったぜ。リア充でなくても、クリスマスを楽しむことはできるんだ。俺が証明した。
だが、明らかに着替え終わるには早いタイミングで果南が戻ってきた。案の定、やはりサンタ姿ではない。そして、心做しか若干キレてるような気がする。


「ねぇ、こんなに露出が多いなんて聞いてない」
「普段はそんなこと気にしないのにどうしたんだよ」
「いや、だってこれスカート短いだけじゃなくて、お腹とか肩まで露出してるし……」
「普段水着を着てる時よりかは肌は隠れてるぞ?」
「うっ……」


痛いところを突かれ、ものすごく嫌そうな顔をした後、頭を掻いた彼女は、


「……あーもう、着ればいいんでしょ着れば」


そう言って妥協した。いつも水着で肉体美をさらけ出しているから、抵抗なんて感じないだろうと思ってたんだが、意外なところもあるもんだ。




* * *




「はい」
「ブフォッ!?」


なにこれ……女神?俺の幼なじみが、こんなにエロかわいくなるとは思ってもいなかった……
赤い生地のスカートから伸びる脚は適度な肉感、お腹はランニングが趣味なだけあって引き締まっており、肩は少しピンク色に染まって色欲的だ。そして、おっぱい。ええ。生地が少ない分、強調されていて素晴らしい。


「……あんまりジロジロ見ないでよ」
「お、恥ずかしいの?」
「ち、ちがっ……別に、こういうこと慣れてるからどうってことない……けど」
「じゃあ、なんで顔真っ赤なんだよぉ、ん?本当は強がったりしてんじゃないのぉ?」
「う、うるさい!」


いやぁ、眼福眼福。これは今までで一番嬉しいクリスマスプレゼントかもしれない。下手な薄い本よりエロいシチュエーションなう。俺の興奮度はMAXに近くなっていた。……あ、そうだ。


「ねぇ」
「……なに」
「その格好のまま、『プレゼントはどうする?私のカラダ?それとも、私のココロ?それともぉ~……りょ・う・ほ・う?選んで、ダーリン♡』って言ってみようか」
「……はっ?」


言ってることがわからない……とでも言いたげだったので、もう一度繰り返す。


「だからさぁ、サンタコスの状態で『プレゼントはどうする?私のカラダ?私のココロ?それともぉ……りょ・う・ほ・う?私のバージン、奪ってダーリン♡』って」
「何言ってんの!?ぜっっっっったい、ありえないからッ!!あとさっきよりもセリフ悪化してるし!」
「えぇ……じゃあ最初の方で許すわ」
「どっちにしても言わないよ!!」


そんなに拒否しなくても……だってこれ、10秒で終わるぜ?しかもあっち側にしてみれば、こっちは自分の欲しいものならなんでもくれるって言ってるわけなんだから、これくらいは当たり前だよなぁ?
そう思っていると、サンタコスをした幼なじみが俺の目の前に立ってきた。


「なんぞや?」
「……まだ私の欲しいもの、言ってない」
「ああ、そういやそうだわ」


なんだそのことか。まあ、あのセリフを言ってもらうのは、彼女にあげるものを聞いてからでもいいだろう。どうせお金のかかるものではな……いや待て、もしかしたら、こんな格好をさせた復讐にとんでもないものを要求してくるかもしれない……例えば……何があるかな?わからん。


「まあとりあえず言ってみろよ」
「私の欲しいもの……で、いいんだよね?」
「?」

改めて確認するようなことでもないと思うが……まさか、そんな頼みにくいようなものなのか!?えぇ……俺、ちょっと怖くなってきましたよ……


「お、おう、お前の欲しいものでいいんだぞ!遠慮するな!!」
「……わかった」


俺の大袈裟な表現に、一言だけ、彼女は理解を言葉にした。やけに神妙な面持ちの果南に、俺は鼓動を速めずにはいられなかった。視線が合うと気まずくなって、反射的にそっぽを向いた。
ずっと斜め後ろしか見ていないので、果南がどうしているかはわからない。まだか、まだかと焦る心に、待て、待てと静止を呼びかけるのに必死だった。さっきまでの興奮は冷めやり、全て緊張へと転化していた。


……まだ来ない。体感的には、もう5分くらい経っているような気がした。俺の忍耐もそろそろ限界に近い、早くしてくれと思ったときだった。


果南が俺の手を、強く握った。俺がバッと目線を上げた瞬間、


「は、ハッピーメリークリスマス!!」


……と、言ってきたので、


「は、ハッピーメリークリスマス……?」



……と、返した。お、おう……ハッピーメリークリスマス……
手は強く握られたまま。祝いの言葉を勢いに任せたような調子で声を上げた彼女は、俺との視線を逸らしたり合わせたりしている。落ち着かない様子が伝わってきて、こっちもさらにそわそわしてきた。
そして。地に足つかない状況を断ったのは、果南だった。



「わ、私の欲しいものは……き、君の心!!モノって言ったら失礼かもしれないけど……私、君のことが好きだから……」


果南の声がフェードアウトしていき、沈黙が流れる。…………くっ、



「ぷっ、ははははははははははは!!!」
「んなぁっ……!?笑わないでよ!私、必死だったんだから!!ちょっと聞いてる!?」



* * *



「いやぁ、ごめんごめん。果南がそんなこと言うとは思ってもいなかったからさ、つい……くっ、ふふふ……」

その後、1分くらいはずっと笑ってた。普段冷静な人が取り乱すのがこんなにおかしいなんて……

「もー……そんなに面白いものでもないでしょ」
「いや、面白いよ」
「こっちは至って真面目だったんだけどなぁ」
「それは知ってる」
「じゃあ早く答えて」
「えぇ、何に?」
「……怒るよ?」
「ヒィ」

果南さん、その視線ヤバいっす。野獣の眼光の5000兆倍は恐ろしい。プーチンを思い起こさせるぜ……ウラジーミル・マツウラかな?威厳なさすぎぃ……
……さて、そろそろ解答を出してあげないとな。まあこんなことを考える余裕があるくらいだし、今の俺は意外に緊張していないようだ。というかあまりにも思い切った告白をされたことが要因だろう。その点で、果南に感謝したい。もちろん、俺みたいな男を好きになってくれたことにも。


「さっきの返答だけどさ」
「……うん」
「果南の欲しいもの、果南はもう手に入れてるよ」
「えっ……?」
「俺はずっと果南に心奪われてきた。なんだかんだ、ずっと恋してた。スタイルがいいっていう理由だけで女の子にコスプレ頼むほど、俺はツワモノじゃねぇよ」


俺が自分でもクサイなぁと思うセリフを吐くと、彼女の張り詰めていた表情が和らいで、でも少しむず痒そうな笑顔が見えた。……かわいいな、やっぱり。
そんな風に惚気ていると、いつものように切れ味鋭い言葉が飛んできた。


「かと言って、好きな女の子に懇願するのもおかしいと思うけどね」
「痛いところ突っ込むなぁ……アレだよアレ、好きな子には意地悪したくなるアレ」
「ふぅん、じゃあ私に意地悪するつもりだったんだ?」
「うわぁ、すっげぇ聞こえが悪い!」
「意地悪するつもりだったの?そうなの?」
「や、やめろ!そんなつもりは……」
「でも『俺は果南にずっと……』」
「ああああああああ!!!よくない!!リピートはダメ!!!」


結局、最高のプレゼントを貰ったはいいものの、幼なじみ──いや、ガールフレンドには頭が上がらない俺なのでした。
ちなみに、翌年先ほどの例のセリフを言わせて、その後めちゃくちゃセックスするのは、また別のお話──




 
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