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提督はBarにいる。

作者:ごません
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その女、露出狂につき(後編)


「今は春だしな、旬のアスパラガスを使ったパスタを振る舞おう。」

「良いですね、アスパラガス!あの歯応えが美味しいです!」

「良いですねぇ~、楽しみでグラスが進みます!」

 早くもポーラ、グラスで3杯目に突入。段々と白磁の焼き物のように白い肌に赤みが差し始めた。目もとろんとし始めている。少し急いだ方がいいか?

《アスパラとホタテのアーリオ・オーリオ風》※分量2人前

・スパゲッティ:150g

・グリーンアスパラ:8本

・ホタテ貝柱(刺身用):6個

・にんにく(みじん切り):1片分

・白ワイン:大さじ3

・薄口醤油:大さじ1

・塩、胡椒:各少々

・オリーブオイル:大さじ1

・鷹の爪(お好みで):1/2本

 まずは材料の下拵えから。アスパラガスの根本の固い皮は薄く剥いてやり、穂先を切り分けたら残りはピーラー等を使って薄いリボン状にカット。ホタテは4つに切る。

 パスタは袋の表示通りに茹でてザルに上げておく。

 フライパンにオリーブオイル、にんにく、ピリ辛が好みなら鷹の爪を加えて弱火にかけ、焦がさないように香りを出す。香りが立ってきたらアスパラガスとホタテを加えて中火にし、サッと火を通す。穂先は柔らかいし、胴の部分は薄切りにしてあるので直ぐに火は通るはずだ。

 ある程度具材に火が通ったら、白ワインと隠し味の薄口醤油を加えて一煮立ち。ここにパスタを加えて強火にし、フライパンを揺すりながら全体に絡める。もしもパスタが乾燥してきていたらパスタの煮汁を少々加えてもいいぞ。しっかりとソースとパスタが絡まったら味見。塩と胡椒で味を整えたら完成だ。

「ホラよ、『アスパラとホタテのアーリオ・オーリオ風』だ。」

「お~、これはrosso(赤)よりもbianco(白)が合いそうですねぇ。提督ぅ~、vino bianco(ヴィーノ・ビアンコ:イタリア語で白ワインの意)下さぁい♪」

 マジでよく飲むな、ポーラ。既に一人で赤ワインボトル1本開けてるんだが……。隣に座るザラの顔が明らかにひきつり始めている。

「ポーラ……?いい加減にしないと…」

「まぁまぁザラ、この位ならウチの鎮守府の『並』だから大丈夫だ。それよりホレ、折角のパスタが冷めちまうから早く食べな?」

「そ、そうですか?じゃあ遠慮なく……ん!美味しいぃ~!」

 先程まで不機嫌だったザラも、パスタが口にあったようだ。目をキラキラさせながら頬張っている。勿論その傍らには白ワインも一緒だ。

「んふふ~、これは最高の組み合わせでひゅねー、とってもぉいし~です~♪」

 方やポーラは完全に酒食をお楽しみモードだ。さっき出してやった白のボトルも、既に半分程が消え失せている。




「あ、ごっちそうさっまが~きっこえない~♪これもの~んで~?にゃはははは♪」

 あれから30分、注ぎつ注がれつ飲んでいたら既にボトルワインは6本空いた。俺もザラも飲んではいるが、半分は間違いなくポーラの胃の中だ。

「あ゛~……暑い、服が邪魔~!」

 酒を飲んで血行が良くなって暑く感じたのか、ポーラが着ていたシャツの前をはだけさせる。瞬間、目に飛び込んで来たのは2つのたわわに実ったメロンだった。

「あ!こら、ポーラ!止めなさいって!」

「あぁ、そんなに焦らんでもいいよ。とりあえずシャツが破けたりするといかんからな、しばらくほっとけ。少し酔いが冷めたら優しく閉めてやってくれ。」

「え、提督……焦らないんですか?」

 この程度で焦っていたら、この飲兵衛だらけの鎮守府で提督なんてやってられんよ。脱ぎたがる奴、絡み酒の奴、泣き上戸に怒り上戸、精神が幼児化するやつまでいるからな……って、こいつは君らの先輩だったか。まぁとにかく、この程度のトラブルなんざ日常茶飯事、ケンペイ=サンもこの位じゃ飛んでこなくなったしな。それに、俺も目の前でいきなりおっぱい見せつけられて慌てふためく程ウブじゃあねぇってことさ。

「一応これでも妻帯者だからな。その程度じゃ驚かんわ。」

 寧ろ風呂上がりに半裸で彷徨くウチの嫁を何とかしてくれ、と言いたい。

「あ~、涼しくていい気持ちぃ♪」

 ポーラは自分があられもない姿になっているとも気付かずに(?)、気持ち良さそうに白ワインのグラスを傾けている。

「さて、歓迎会にパスタ1皿だけってのもな。ザラ、何か食べたい物とかあるか?」

「え、ザラですか?……うーんと…あ!出来たら冷たいパスタが食べたいです!」

 冷製パスタか。確かタコが有ったっけな……よし、タコを使った冷製パスタと行こう。

《タコと青じそのジェノバ風スパゲッティ》※分量2人前

・スパゲッティ:160g

・茹でたタコ(足):150g

・青じそ:30枚

・トマト:1/2個

・にんにく:1片

・松の実:大さじ2

・粉チーズ:大さじ1

・塩:小さじ1/3

・胡椒:少々

・オリーブオイル:大さじ4

 ジェノバ風ってのはすなわち、前にローマやイタリア達にも作っていたジェノベーゼの事だ。ジェノバってのはイタリアの都市の名前で、その辺りではパスタソースにバジルを大量に使うのが特徴なんだ。今回はバジルではなく冷製パスタに合わせて更に爽やかに仕上がるように青じそを使った和風ジェノベーゼだがな。

 タコは食べやすい大きさに削ぎ切り、トマトは1.5cm角の角切りに。スパゲッティは袋の表示通りに茹でて冷水に取って〆てやり、ザルに上げて水気を切る。

 青じそと使っていない材料全てをミキサーに入れ、ペースト状になるまでかき混ぜる。

 後は茹でたパスタとタコ、トマト、ソースをボウルに入れて混ぜ、器に盛ったら完成だ。

「お待たせ、『タコの和風ジェノベーゼ』だ。バジルの代わりに日本のハーブの紫蘇を使ってみた。」

「シソは初めて食べますね……んん、バジルよりも後味が爽やかな感じです!冷たいパスタがよく合いますね♪」

 言われてみればそうだな、青じそは素麺や冷や麦、場合によっては冷たい蕎麦なんかの薬味にも用いられる。冷製の麺料理との相性はバッチリな訳だ。

「こっちのパスタもとってもおいしー♪ですね。提督……赤と白、どっちにしよう……あ~めんどくさ~い!両方持ってきてぇ~!」

 この期に及んでまだ飲もうというのか、ポーラ……。お姉ちゃんの顔がマズイ事になってるぞ…?

「ポーラぁ……?」

 瞬間、ザラがポーラの頭を鷲掴みにした。表情は笑顔だ。…だが、青筋がヒクヒクしており明らかに笑っていない。途端に青ざめるポーラ。

「ダメよぉ……ポーラ。私達明日からお仕事なんだから、飲みすぎたら起きられないわよ…?」

 ザラの気迫は鬼気迫る物がある。まるで深海の鬼・姫級と対峙しているかのような圧迫感を感じる。

「アッハイ、ゴメンナサイ……。」

 既に戦意喪失したポーラは小さく謝る事しか出来ない。

「じゃあ提督、私達帰りますね。御馳走様でした♪」

「お、おぅ。明日寝坊しないようにな~……。」

 ポーラに向けていた気迫は何処へやら。帰ると決まった途端に元に戻ったザラを見送りながら、心の中の『怒らせちゃいけない艦娘リスト』に、そっとザラの名前を書き足す提督であった。 
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