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提督はBarにいる。

作者:ごません
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その女、露出狂につき

 『礼号作戦』のゴタゴタから数ヶ月後、ウチへの配属が遅くなっていたザラが送られてきた。遅くなった『お詫び』として、ザラの妹も伴って。

「お久し振りです、提督!ザラ級重巡1番艦・ザラ、着任しました!」

 ……やっぱりか。何となくそんな気はしてたが、このザラはあの時救出したザラ本人らしい。こりゃ後でジィさんに電話して詳細聞かねぇとな。そしてその隣に気だるそうに立っているのがーー

「あ~どうも~……ザラ級3番艦のポーラですぅ…よろしく。」

 何ともまぁ、ユルいというか無気力というか……ぱっと見た限りでは初雪とか望月のようなダウナー系の娘に近い感じだが、どうだろうな?

「あぁ、よろしく。俺がこの鎮守府の提督だ。今日一日は鎮守府内の施設を見て回って貰おうと思う。案内役はイタリア……君達にはリットリオの方が通りが良いかな?に任せてあるから。」

 調度そこにノックの音が。

「提督?失礼します。」

「あ、リットリオさん!」

「お久し振りですぅ~…」

 やって来たイタリアを見て、二人とも嬉しそうだ。二人ともリットリオが改名する前に沈んでいる為に、リットリオの方が名前の通りが良いらしい。

「んじゃ、案内は任せるぞ、イタリア。」

「はい、喜んで♪……あ、それと提督。」

 イタリアが耳元に口を寄せてきた。おっと、まさかの告白とかじゃないよな?

『もしかして今晩、私たちの時の様に歓迎会を考えてらっしゃいますか?』

『あぁ、一応な。姉妹揃っての着任だから、二人纏めてだが。』

 小声で会話を交わすと、イタリアの顔が明らかに曇った。一体どうしたと言うのだろう。

『あの……お酒にはくれぐれも気を付けて下さいね?特にポーラには。』

 ポーラ?あの無気力系にしか見えない娘に気を付けろ、とはどういう事だ。……まぁ確かに、ポーラの身体からはワインの香りがしていたので怪しんではいたが。まぁ、気を付けるに越したことは無い、か。

「ヘイdarling!隣にwifeが座っているのに他の女とイチャイチャするのは感心しませんヨー?」

 今日の秘書艦は数ヶ月ぶりの本妻・金剛だった。※ウチの鎮守府では秘書艦は持ち回り制です

「なんだ金剛、嫉妬か?」

 俺がニヤリと笑うと、金剛は顔を真っ赤にして反論してきた。

「そ、そんなんじゃないデース!ただ久し振りの秘書艦なのに構ってくれないから……」

「なんだよ、やっぱり嫉妬じゃねぇか。」

「だっ、だから違うってーーングッ!?」

 四の五の煩いので唇で口を塞いでやった。30秒後、息苦しくなったのか、俺を突き飛ばす様にして離れる金剛。

「解ったか?こんな事すんのはお前だけだ。これでもまだ愛情表現には足らねぇか?」

「た、足らないデース……。」

 俯いて真っ赤になり、小刻みに震える金剛。あ~、火が点いちまったか。

「仕方ねぇなぁ……ほれ、休憩室行くぞ。」

 執務室のドアに鍵を掛け、奥に設置されている休憩室に向かう。……え、ナニしてたかって?聞かなくてもわかんだろ?言わせんな恥ずかしい。ただ、休憩室から出てきたのは3時間後だったとだけ伝えておこう。

※仕事はキッチリ終わらせました。



~数時間後・執務室改め『Bar Admiral』~

「うわぁ、本当に素敵なBarになってる!」

「すご~い……。」

 当初の予定通り、ザラとポーラの姉妹を招いて歓迎会を催す事にした。イタリアからの忠告が気にはなったが、他の連中はやってるのにやらないという訳にはいかんからな。

「さぁさぁ、入り口に突っ立ってないで、こっち来て座りな。」

 いそいそと来て座る二人に、まずは挨拶から。

「この度はウチの鎮守府にようこそ。昼間は提督、夜はこのBarでマスターやってるからよ、酒が飲みたくなったら気軽に来てくれよ。」

「本当ですかぁ~?素晴らしいですねぇ~…♪」

 にへへへへぇ、と顔を崩して笑うポーラ。どうやら酒好きらしいな、着任の時の香りで薄々感付いてはいたが。

「ちょ、ちょっとポーラ!?飲みすぎはダメだからね!」

 酒が飲めると聞いて喜ぶポーラに対し、それを引き留めようとする姉のザラ。何だ、そんなにポーラの酒癖は悪いのか?

「まぁ、とりあえず着任祝いの乾杯と行こうか。」

 そう言って俺はイタリアワインのボトルを取り出して、3つのグラスに注いだ。

「それじゃ……乾杯。」

「乾杯♪」

「Salute!(サルーテ!※イタリア語の乾杯)」

 ザラは日本語での乾杯だったが、ポーラはまだ慣れてねぇのかイタリア語の乾杯だったな。飲み方も対照的だ。ザラは少しずつ味わうようにチビチビと飲んでいるが、ポーラはまるでジュースでも飲むかのように喉を鳴らして一気に飲み干してしまった。

「ぷはぁ。キャンティなんていいワイン仕入れてますねぇ、提督。」

 あんな飲み方で解るのか。というか日中のユルい喋り方はどこ行った?

「あ、提督不思議がってますねぇ?私お酒が入った時の方が調子が良いんですよ。舌もよく回るようになるしぃ。」

「お、おぅ……」

 ポーラの隣ではやってしまった、という表情のザラが座っている。……成る程、イタリアの忠告はこれか。

「まぁ、適当に楽しんでくれ。俺も楽しんで貰えるように努力するからよ。」

「え、でも提督……」

「まぁまぁ、この程度の酔っ払いならウチの鎮守府にゃもっと酷いのが居るから……それも複数。」

 誰とは言わないが、軽空母とか、重巡とか、海外組の戦艦辺りに。

「そ、そうなんですか!?精鋭揃いの鎮守府だって聞いてたので、てっきり真面目な人達ばかりかと……」

「んな事ぁねぇさ。人間誰だってストレスの溜めすぎは毒だからな、適度に酒や遊びで息抜きしてるよ。まぁ、飲兵衛の精鋭揃いってのは認めるがな?」

「提督、ザラとばっかりお話ししてないで、ポーラにも構って下さいよぅ。」

 ザラとばかり話していたらポーラに拗ねられた。酒が入ってエンジンかかったのか、感情表現も豊かになってきている。

「そういえば提督、お料理も得意なんですよね?リットリオさんから聞きました。今日は何を食べさせてくれるんですか?」

「ん?あぁ、ちょっとパスタを仕入れすぎてな。ワインに合わせてパスタを楽しんで貰おうと思ってるよ。」

「パスタですか~。ザラ姉様もお料理上手ですから、ポーラうるさいですよ~?」

 本場イタリアの舌を唸らせるのは難しいかも知れんが、出来る限りの事はするさ。 
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