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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  W ~この街のW・これで決まりだ~

風都の街の一角にある「かもめビリヤード場」二階部分。
そこに鳴海探偵事務所はある。



そこのなかで、四人の男が身支度をしている。



一人は帽子をかぶり直し
一人は本を閉じて机に置き
一人はコーヒーの入ったカップを飲み干し

一人は腹部の包帯をチェックして立ち上がった。





「行くぞ」




誰ともなくその言葉が発せられ、開け放たれた扉に向かって歩いていく。
その背を見つめ、送り出すのは一人の女。


彼らの身を誰よりも案じ、戦いの場へと送りだした。





「みんな・・・・帰ってきてね・・・・・」







そうつぶやいて、椅子に座ろうとする探偵事務所二代目所長。



そしてそれから十分後、事務書の扉が叩かれる。

ゆっくりと開かれたその扉は、彼女を置いてけぼりにはさせてくれなかった。



------------------------------------------------------------




「よしよし・・・・・これでいい。最終的な微調整はこれで終了だ」


「奴」がコントロールパネルの前でうんうんと頷く。
そこには「奴」のガイアメモリが置かれていて、機械に突き刺さっていた。


「最終調整終了。いや、なんとか間に合ったな。俺ってば天才!!」


機械を眺めて、そうつぶやく「奴」は結構笑顔だ。
だがその機械はと言うと、動いているのが不思議なくらいの状態だった。


ハッキリ言おう。ガラクタである。


スクラップを適当に組み上げました的な感じの機械がそこに一台置かれていた。
機械がスクラップなら建物もスクラップだ。
元はナニカの製造工場だったようで、今は廃棄され、ガラクタしか転がっていない。



意気揚々とその上からメモリを手に取った「奴」が、拳を振りおろしてその機械を粉砕し、バチバチと火花を弾けさせて、機械が沈黙する。




そしてその建物から出てきて程なくする。

山から下りようとしている間に、「奴」の足が止まった。






「ほう・・・・・ここを嗅ぎつけてきたか。探偵!!!!」






「この街はオレの庭だ。わからないことなんざ、ねえよ」


その場に翔太郎、フィリップ、照井が立っていた。
山の中腹辺りの開けた場所だ。そしてここは、Wがミュージアム最後の敵と戦った場所でもある。


「奴」は感心したような声を出しながら、探偵モノの犯人がよく言う言葉を言った。



「では聞かせてくれ。なぜここがわかった」


「簡単さ。君の持つそのガイアメモリ、特にアルティメットは例外はあれど相手のどんな能力でも取り込む。だがそんなものが簡単に出来るわけなどないのさ」

「必ず微調整が必要になってくる。そう踏んだ俺たちは、この街に残る「ミュージアム」関連の建物を虱潰しに当たった」



「で、ここに行きついたってわけだ。もちろん、生半可なことじゃなかったぜ・・・・蒔風のアドバイスとフィリップの検索、警察が押収した情報に、オレの土地勘。すべてがなけりゃ、ここにはこれなかった」

「じゃ、あいつは?」

「オレを呼んだか?」



蒔風が「奴」の前に現れる。
その身体はしっかりと二本の足で立っていた。


「全く・・・腹食い破るとはやってくれたな。完治できなかったぞコノヤロー」

「ふん・・・戦闘に差し支えないくせによく言う」

「まあな」




「とにかく、だ。これ以上この街に手出しはさせない」

「そしてこの街を守る、仮面ライダーにも、だ」




「ハードに行こうぜ?翔太郎!!」

「ああ!!いくぜ?相棒!!」

「準備はいいよ、翔太郎」

「覚悟を決めろ・・・・」






《サイクロン!》

《ジョーカー!!》

《アクセル!》




「「変身!!!」」
「変・・・・・・身!!!!!」




《サイクロン!ジョーカー!!》

《アクセル!》


フィリップの身体が崩れ、岩場に隠れる。



そしてその場に、三人が立つ。
W、アクセル、蒔風が「奴」を、「奴」の罪を糾弾するように睨みつける。





「さあぁ!!!・・・・振りきるぜ」

「やられた分は返させてもらう」


『行くよ、翔太郎』

「ああ・・・・・」




「『さぁ、お前の罪を、数えろ!!!』」






その言葉に、「奴」がポケーッとして、それからハッとして指を折って数え始めた。


「ん~~っとね・・・・・・両の指程度?」

「それだけあれば十分だッ!!!」



その言葉にまずアクセルが飛び出す。
だが「奴」がアクセルに手の平を向ける。


その行動に手の方へとアクセルの意識が向く。
だが「奴」がとった行動は足にあった。


足元の石を、地面ごと抉って蹴り飛ばした。
散弾のように飛び散るその攻撃に、アクセルが顔を腕で覆い、その脚が止まる。


「貴様・・・・余計なことはするな・・・・・」

その言葉に「奴」がふふふ、とニヤつく。
手をいじりながらアクセルの方を見て、両手を上にあげる。


その手に握られているのはイーターメモリ。
だが、それ一本しかない。



「!?貴様、もう一本はどうした!?」


アクセルが怒鳴って聞く。
それに答えるように「奴」は、指を鳴らした。


ドゴン!!!!


すると上から一本の丸太が落ちてきて地面に突き刺さり、「奴」の手にもアルティメットメモリが同じように落ちてきてその手に収まる。



土煙で「奴」の姿が一瞬消え、それがすぐに風に洗われる。
そしてそこにあった丸太には、ひとりの人間が括りつけられていた。


「なに!?」

『あれは・・・・・』


「所長!?」


そう、そこに括りつけられていたのは鳴海亜樹子であった。
意識がないようで、その首はぐったりとうな垂れている。



「てめぇ・・・亜樹子に何をした!!!」

「なにもしてないさぁ。ただな、置き去りはかわいそうだと(ズッ)・・・・・思ってな!!!(ブォン!!!!)」



「奴」がその体から「欠片」を出し、丸太を運び攫わせる。
それを目で追い、アクセルが心底憎そうな声を出してそれを追う。



「くそ!!!!!!!!逃がさんッ!!!!」


アクセルがバイクフォームに変形し、その後を追う。
さらにWと蒔風も駆けだそうとするが、その道を「奴」が阻む。



「行かせんよ」

「くそ・・・・照井と俺らを分断させる為か・・・・・」

「しょうがない、俺らでやるぞ」

「でもあいつの相手は!!!」

『翔太郎。信じるんだ。彼も、この街の仮面ライダーだ』



その言葉に無言で答える翔太郎。
そして頭をあげ、蒔風と共に相手を見据える



「話は終わったか?始めようか」

「やらせねえよ。この街は」

『僕達が守る』

「よし・・・気合入れてくぞ!!!!」


「『応!!!!』」





Wと蒔風が駆けだす。
Wの右パンチに蒔風の右回し蹴り。


だが「奴」はここであえて蒔風のキックを無視した。
脇腹に蒔風の蹴りが命中し、「奴」の息が吐き出される。


それでも「奴」は一向に止まらず、ズゴッ!!と地面に足をめり込ませて、Wの顔面に拳を鋭く突き出した。
Wのパンチを頬から紙一重でかわし、その拳がWのマスクを破壊せんと迫る。


「!? つぉおアッ!!!!!」


そこで蒔風が左腕を振り上げてその拳を阻害する。
拳はそれたが、それはWの右半分の顔をかすりゆく。


そしてWの視界が回転した。
頬を拳が下から上にかすっただけで、Wの身体が風車のように幾度も回転した。


一瞬で視界を奪われたWの回転の中心に、さらに拳を振るう「奴」
それを蒔風が真っ向から両手の手の平で受け、弾くように両腕を開いた。


バチィッ!!!!と信じられないほど鋭い音が鳴って、二人の身体が後方へと吹き飛び、巨大な岩にぶつかる。


Wがフラフラと、蒔風が手をプラプラと振りながら立ち上がって言った。



「野郎・・・・・ダメージ無視しやがった・・・・・」

『そのまま押してはいけないのかい?』

「「奴」の方が基本値は高い。押し切るのはよほど調子のいい時か、「奴」を弱らせた時だけだ」



「奴」が地面に唾を吐きながらこちらに向かってくる。
それに対してうんざりしたように蒔風が叫んで走った。



「いちいちいちいち・・・・厄介なんだよお前は!!!!!」



ドゴウ!!!!



蒔風の拳が放たれる。
だが今度は顔面に放たれたそれを「奴」は思いっきりのけ反って避ける。


《サイクロン!トリガー!!》


そしてその空を見上げる「奴」の視界に、緑と青に半身色分けされたライダーの姿が現れる。


サイクロンによって連射が可能となったトリガーマグナムを「奴」に放ち、その銃弾が「奴」の上半身に向かってくる。
だが「奴」は蒔風の襟を掴んで自分の身体にかぶせてそれをガードしようとする。

しかし、蒔風もそのまま受けるほど迂闊ではない。
即座に身を捻って「奴」と上下を入れ替わり、蒔風が下、「奴」が上となり、向き合って地面に倒れる。



「奴」の背中に風の弾丸が十五発程命中し、そこから黒い影が血のように散るが、「奴」はそんなことはお構いなしに蒔風の頭を掴んで、思いっきり頭を振りかぶって頭突きをかます。



ゴッ!!!ガゴンっ!!!



まず「奴」の額が蒔風の頭に当たり、そしてその勢いでさらに地面を衝突する。

ガゴバンッ!!!!!!





蒔風の頭を中心に地面が窪み、ひび割れる。
正面と高等部の二段構えの衝撃に、蒔風の頭蓋骨の中が揺れ、意識を一瞬で脳味噌から消失させる。



《ヒート!トリガー!!》



と、そこに蒔風の頭を跨ぐようにWが着地し、「奴」の額に向けて高熱の弾丸をぶっ放した。
「奴」は瞬時に手のひらでそれを受けたが、それでも弾丸に押されてその体が後方に押し出される。


その「奴」にWは追撃をやめない。
炎の銃弾を放ちながらトリガーメモリを抜き、マグナムにセットして、マキシマムドライブを発動させる。


《トリガー!!マキシマムドライブ!!》



「『トリガーエクスプロージョン!!』」



ドゴォ!!!!!



炎の柱のような砲撃が放たれ、「奴」に迫る。
「奴」も波動砲を撃ってそれに対抗する。


砲撃と砲撃とがぶつかり合って、中間点でせめぎあう。
そこに蒔風が頭を振って立ち上がり、腕を構えて竜を放つ。


「土惺・・・・竜!!!!!」



竜の形となった地面が空中でくだを巻き、「奴」に向かって突進する。
砲撃を撃っていた「奴」はそれを頭上からくらって、さらにマキシマムドライブで爆発が起こる。





「やったのか?」

「まだだろうな。だが、確実にダメージは・・・・・・」






《イーター!!!》




「んなっ!?」


ガイアウィスパーが鳴り、「奴」をやったはずの炎がどんどん中心部分に集まって吸収されていく。



そしてすべてが食われ、そこにはイーターメモリによって右腕が変わった「奴」がいた。




「腹いっぱいだな・・・っと!!!!」


そしてその蛇のような右腕を真っ直ぐこちらに向け、そこから先ほどWが放った砲撃と同じモノが放たれた。



「ッ!!!」

「うぉお!!!!!」



Wと蒔風が転がってそれを避ける。
だがその砲撃は途切れることなく、まるで図太いレーザーのように大地を焼き切ってWに迫る。



『翔太郎!!守りを固めろ!!』

「わかっ・・・・てる!!!!!」


《ヒート!メタル!!》


Wがヒートメタルに変わる。
だがレーザーの威力を見るに、おそらくこれでも耐えられない!!!



「だアぁッ!!!!」


そこに蒔風が割って入る。
その手には超圧縮された獄炎弾があり、横に薙がれたレーザーとWの間に立ち、両手でそれを押しつける。


一瞬でそれが膨れ上がり、レーザーを押し返すが、それと同時に蒔風の足元も後退する。
そして二、三秒の膠着から、一気に獄炎が爆発し、Wと蒔風が吹っ飛ぶ。




「ぐっ・・・おい、蒔風!!!」

「ぐっ、がぁぁぁぁ・・・・・・・おグッ・・・っは!!・・・・・・」


蒔風がWに庇われる形で地面に落ち、胸を押さえて悶絶する。
そこに「奴」がツカツカと迫ってくる。



「イーターメモリはいかなるものをも食らう。そしてそれを使用者のレベルに合わせて吐き出すことも可能なのさ」



そう、それがこのメモリ、「捕食者の記憶」のイーターメモリ。


恐ろしいのはその顎や牙だけではない。
飲み込むというその特性こそ真骨頂。



「だから・・・どうした!!!」

蒔風が痛みを振りきって立ち上がる。
Wも蒔風に並び、「奴」を睨みつける。


だがその息は荒く、とても戦いができる状態じゃない。


それでも蒔風は言う。



必ず勝つ、と




絶対なんてものがどこの世界にも存在しない事を知りながらも、彼は言う。


必ず成し遂げて見せるという、覚悟を込めて。




「てめえには前にも言ったろうが・・・・てめえじゃ勝因にはならない。たとえどんな力を持っても、お前は勝因を手に入れられない」

「主人公が勝つってか?それが一番ムカつくんだよ・・・主人公だから大丈夫だなんて戯言がよ!!!」

「主人公・・・・だからじゃない。オレだからだ・・・・・・オレがいる事が勝因だ。主人公なんざ、知った事か!!!!!」




そこまで言い切った蒔風がWにそっと耳打ちする。



「なんとかしてこの状況を打破する。時間を稼いでくれるか?」

「オーケ。やってやる」

『やれやれ、今回の依頼人は我がままだ』

「うるせぇ」





ドンッ!!!!



Wがメタルシャフトを構えて走り出す。
そして蒔風が自身の体力回復に専念し始めた。







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「ハァァ!!!!!」



ザシッ!!!ズズン!!!



時間は巻き戻って一方のアクセル。
結構離れた場所にまで来てしまっており、広い荒野まで連れ出された。


バイクフォームで一気にジャンプし、身体を回転させてエンジンブレードを握る。
亜樹子の括りつけられた丸太を担いだ「欠片」の背をブレードで切り、ついに追いつく。



落ちた丸太をキャッチし、縄を斬って亜樹子を解放する。
アクセルが名前を呼んで、亜樹子が目を覚ます。


「え?・・・・・ここどこ?あたし聞いてない!」

「大丈夫か、所長」

「竜君!?」

「隠れていろ。説明はあとでしてやる」



アクセルが亜樹子の背を押して、その場から去らせる。
その間に「欠片」がメモリを挿入し、アルティメットドーパントへと変貌した。



「今度こそ逃がさん・・・・・」

「ブシュウウウウウウウウウウウウウウウウ・・・・・・・・・」

「さあぁ!!・・・・振り斬るぜ・・・・・」



ドンッ!!!とアクセルが一気に踏み出し、アルティメットドーパントへと迫る。


(スキャンされては終わり・・・・ということは、スキャンされる前に倒せばいい事!!!!)



《アクセル!!マキシマムドライブ!!》



アクセルがマキシマムドライブを発動させ、後ろ飛び回し蹴り「アクセルグランツァー」を放つ。


それが止められたことは一度もない。
アクセルはメモリを一つしか持たない代わりに、そのメモリの力を最大限に活用できる。

その威力は瞬間的にWのそれを越える。



「オォオァ!!!!」


ドッ、ガァン!!!!!



だが




それは止められた。
アルティメットドーパントの腕にギリギリと止められ、その首がキリキリとアクセルの方を向く。



ピーーーーッ!!!!



そして赤い光がアクセルをスキャンし、その脚を掴んで投げ飛ばした。




「グアっ!!!」

「竜君!!!」



倒れるアクセルに亜樹子が声をかける。
だがアクセルは来るなと手の平を亜樹子に向けながら立ち上がる。



「そうか・・・・・貴様はメタルと同等ではなく、メタル以上の硬度を持っていたんだったな・・・・・・」

照井が絶望的な状況を反芻する。

今この場で戦えるのは自分一人。
相手はサイクロン、ジョーカー、メタル、アクセルの力を取り込んだアルティメットドーパント。

しかも相手に対抗するにはエクストリームの力が必要になってくる。
だが今Wは「奴」の相手をしているだろう。



結論として、照井の思考に勝利という文字はどうしても浮かんでこなかった。



しかし、それでも





《エンジン!!マキシマムドライブ!!》




「ハアアアアアア!!!!」



ドゴン、ドゴン、ドゴォン!!!!!!!



アルティメットドーパントをエンジンブレードによるマキシマムドライブ「エーススラッシャー」で「A」の字に斬る。
無論、それでもメモリブレイクはされず、簡単にはじき返されてしまう。




「チッ!!やはり効かんか」


もうおわりか、と言う様にアルティメットドーパントが拳を握りしめてアクセルに迫り、その拳を振るう。
アクセルがそれをかわそうとするが、驚異の身体能力でその拳が軌道を変え、腹部のど真ん中、鳩尾に命中してその体が吹き飛ぶ。



「グボッ・・・ガッ」


ゴン!!ゴガン!!!ズシャッ!!!!



地面を削りながらアクセルが吹き飛び、その装甲にひびが入って火花が散る。

アルティメットドーパントはもはや単純な力では「奴」をも凌駕している。
全身から疾風を噴き出し、炎をまき散らして、硬質化した拳をガンガンと鳴らしている。



元が「奴」の「欠片」で、そこにあれだけの性能が降り混ざっては一撃の大きな技ではもはや倒せない。


無論、照井もその考えに至っている。
だがどうしてもそれになれない。


倒すには超高速の連続打撃による一点集中攻撃。
それがわかっていて、彼にはその手段があっても、それができない。


それになるということはこの装甲を脱ぎ捨て、速さにすべてを捧げなければならない。
しかしそこまで薄くなった装甲でもしも一撃でも食らえば、今以上の衝撃が身体を襲うだろう。

最悪、身体を貫き、そして・・・・・・



照井の脳裏に蒔風の貫かれた腹部が思い出される。



それに恐怖することは恥ではない。
しかし、照井はそんな自分が許せなかった。



「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」




ガゴンッッッ!!!!!!!




咆哮をあげながらも、地面に頭を思い切り叩きつけられるアクセル。
そしてアルティメットドーパントは幾度も幾度も、アクセルの頭を潰していく。

そしてそれが何度か目になった時、アルティメットドーパントの頭にガスッ、と何かが当たった。




それは拳ほどの大きさをした石だった。
アルティメットドーパントが飛んできた方向を見ると、そこにはその場から今にも逃げ出しそうな感じで、それでいて絶対に逃げないという覚悟がある顔をした亜樹子だった。



亜樹子は何も言わない。
きっと言おうとしても言葉など出ないだろう。

だが、それでも




彼女の意思は、言葉に出さずとも伝わるものだった。
否、言葉にしないからこそ伝わる想い。

それは言葉にした瞬間に、陳腐な物に聞こえてしまう、そんな思い。




それを見たアルティメットドーパントがゴトンッ、とアクセルを手放し、亜樹子へと向かう。
亜樹子はその場から一歩たりとも下がらず、アルティメットドーパントを見据えて立つ。

そしてそいつが目の前に来て、亜樹子の姿がその影に包まれる。




ゴォウ!!!と拳が降りあげられて、亜樹子が目を瞑る。
そしてそれが振り下ろされて





「貴様、何をしている」





その腕をアクセルが後ろから掴んで止めていた。


「ぬ、オオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」



アルティメットドーパントの身体を思いっきり振りかぶって投げ飛ばすアクセル。
アルティメットドーパントは全くダメージを受けずに着地する。



「欠片」は痛みなど感じない。
ただ、怯みはするだけである。

そしてもしアルティメットドーパントが生身の人間が使用者だったら、その右腕に痛みを感じただろう。




「竜・・・君?」

「心配をかけたな、所長。だがもう大丈夫だ」

「だ、大丈夫って・・・・」

「頭から少し血が抜けてな、スッキリした。もうゴタゴタ悩まん」


そう言ってアルティメットドーパントに向かうアクセル。
その背中に亜樹子が叫んだ。


「待ってよ!!あのドーパントって竜君以上の力を持ってるんでしょ!?だったらここで引きつけて、時間稼ぎをすればいいじゃん!!倒さなくっても、ここに引きつけているだけでも十分だよ!!!」



亜樹子の言うことはもっともである。
そして蒔風たちが「奴」を倒せば、おそらくはこの欠片も消えるだろう。

だが、もしそうならなかったら?
そして蒔風たちが負傷していたら?

ならば自分がやるしかない。



そしてそれ以上に




「所長・・・・・・オレがいつも変身するとき、なんて言ってるか知っているだろう」





             ―――さあ、振りきるぜ―――






そう、それは彼の覚悟だった。




彼は振りきる。
逃げる犯罪者たちを追って、捕まえるためにスピードを

彼は振りきる。
敵を倒すためではなく、街を守るために、その憎しみを



そして何より彼が振りきるのは




「今までの・・・・自分自身ですらをも、だ」


そしてその手には「挑戦」のメモリが

「さぁ・・・・《トライアル!!》(ガコッ、プーッ)すべて・・・・・(プーッ)・・・・・振りきるぜ!!!!」プーッ・・・・プァン!!!!!




《トライアル!!!》




アクセルの装甲が一瞬黄色に変わり、そして装甲がはじけ飛んで、その身が一気に青くなる。



仮面ライダーアクセルトライアル



その名の意味は、挑戦。
常に挑戦するその対象は、いつだって自分自身である!!!!



「ガアア・・・・ガアッ!!!」



アルティメットドーパントが即座にアクセルトライアルの力をスキャンする。
それを見た亜樹子が絶望的な声を上げる。


これでアルティメットドーパントはトライアル以上の速度を得た。
トライアルの強みはその速度で攻撃をかわし、一気に攻撃を当てて敵を粉砕することにある。
だが相手がそれ以上の速度だったら、それは意味を為さない。


だがそれを知りながら、アクセルトライアルが悠然とアルティメットドーパントに迫っていく。
アクセルトライアルがトライアルメモリを抜き、宙に放り投げる。

それに合わせてアルティメットドーパントも超加速を開始する








そして、始まった。












「ガアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!」




アクセルトライアルの超高速連続キック、マシンガンスパイクとアルティメットドーパントの超高速攻撃がぶつかり合う。


アクセルトライアルの一撃よりもアルティメットドーパントの一撃の方が重い。
だが、それでもアクセルトライアルはアルティメットドーパントの攻撃と打ち合っていた。




なぜか。





そんなことは決まりきっている。




照井竜はただ、一撃で無理なら多撃で迎え撃つという、トライアルの基本的動作をおこなうだけだ。






「オレは・・・・もう失うわけにはいかない!!!!!」



ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!



「そのために・・・・・過去の自分を、さっきまでのオレを!!!!!」



ガンガンガンドドッガンガンドドドッガンドドドドドッガンガンガドドドドドドドッ!!




「すべて・・・・・振りきるぜェッ!!!!!!」



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!





バシッ!!!!!




連続キックがすべてアルティメットドーパントに叩きこまれ、落ちてきたトライアルメモリをキャッチする。
そしてメモリに刻まれた数字、そのタイムを読み上げる。








「8.2秒・・・・・・それがお前の・・・・・」



《トライアル!!マキシマムドライブ!!!》



ギィーーーーーーーーーーン!!!!!


「ご、ガ!ゴガアアアアアアアアアアアアアア!!!!」




「絶望までの、タイムだ!!!!」






それはアクセルトライアル最速の数字。
彼はこの戦いの内に乗り越えた。


そもそも


彼は最初、トライアルを使った時の訓練で、十秒の壁を越え切ることはできなかった。
だがしかし、彼は宿命の戦いの内にそれを越え、トライアルを使いこなしたのだ。




彼はできることをただやったのみ。
だがそれの何と力強いことか。

それを表すかのように、一点に集中された攻撃の破壊力が一気に解放され、アルティメットドーパントの全身に「T」の字のエネルギーが炸裂し、その身が膨れ、爆発する!!!!





ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!







爆風が周囲を襲い、飛んできた砂に亜樹子が目をつぶる。
そして眼を開けた時、そこには見慣れたあの刑事の顔があった。




「怪我はないか?所長」

「竜君の方が怪我だらけじゃん」

「そうか・・・・・そうだな。早く左たちの所へ・・・・・」

「そ、そうだね!!急ごう!!!」




照井が亜樹子の肩を借りながら歩いていく。
仲間の戦っているその場所に。









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ところ戻って蒔風たち。


「ははははははっ!!!」

「グッ・・・・・」


Wが時間稼ぎのために戦ってからまだ一分と数秒しか経ってない。


形態はヒートメタル。
その手にメタルシャフトを握っている。


「ハァッ!!!」


Wがシャフトを振るい、「奴」に攻撃を放つ。



ギャン!!!



だがそれはそんな効果音を放って「奴」を素通りしてしまう。


否、素通りではない。Wがシャフトの先端を見る。

そこにはあったはずの先端は無く、その先は「奴」の蛇の口内にあった。


「な!?」


「は、マズ・・・・・フンッ!!!」


「奴」が噛み砕いたそれを弾丸のように吐き出し、それがWを襲う。



「来た・・・・・・・行けるぞ翔太郎!!!!!開翼!!!」

「やっとかよ!!!!」



そこでついに翼人、蒔風が動き出す。
獅子天麟を盾のように構え、その弾丸からWを守る。


「射撃援護を頼む。いくぞコラァ!!!!」

「任せろ!」

《ルナ!トリガー!!》



蒔風が突っ込み、その背後からWルナトリガーが銃弾を放つ。
その銃弾はルナの特性によってホーミング弾となり、蒔風を避けて飛んで行き、的確に「奴」に命中する。


「ぬっ・・・・逃げやがって・・・・・」


その軌道では「奴」もすべての弾丸を追い切れず、放たれた弾丸の9割をくらってしまう。
それでも蛇の口からは食った1割を放ち、蒔風がそれを弾き消していく。


そして蒔風が「奴」の腹部に獅子天麟を横薙ぎにぶった切ろうと振るう。
だが、それでも「奴」は引かない。


「奴」の上半身からワニの顎のようなモノが出てきて、蒔風を食い散らかそうとその牙を閉じる。


しかし



「グああああああああッ!?」


叫びをあげたのは「奴」だ。

蒔風は四本組み上げた風林火山を「奴」のその大きく開かれたワニの顎に向かって片手で二本、縦に突っ込んでいた。
それを噛もうとすれば当然、上顎と下顎を同時に貫かれ、もはやその口は使い物にならなくなる。

そしてその風林火山の内側に獅子天麟を通し、「奴」の腹部を切り裂いた。



「ごブッ・・・・・バアアアアアアアアアッ!!??」



「胃袋斬られたイーター・・・・食っても喰ってもでてくる出てくる」

「ガブッ・・・・デメエ゛ェァアアアアアア!!!!!」

「こっちも腹貫かれてんだ。それくらい大目に見ろ」



その「奴」を蒔風が風林火山を掴んで蹴り飛ばし、ワニの顎を引き裂く。



そしてWと蒔風が互いに寄る。
そして肩にポン、と手を置いて蒔風が言った。



「さ、言ってやれ」


「おう・・・・・教えてやろうぜ、フィリップ!」

『ああ、何度でも言ってやるさ』





それは彼らの決め台詞。
この街を穢す犯罪者に、いつだって語られるその言葉。


ガイアメモリに溺れた彼らに、自らが犯した罪を自覚させるため



そしてその罪を忘れないために、何度でも、いくらでもいい放つ。



その意思に反応してか、エクストリームメモリが飛んで来て、ダブルドライバーに装着、自動展開される!!!



「『さぁ(ガシュウ!)お前の罪を(エクストリーム!!)・・・・・数えろ!!!』」


その発言に、「奴」ではなく蒔風が答えた。


「あいつの罪の数?・・・・WORLD LINKと同じ数じゃねえのか?」

『それはたくさんありそうだね』

「だったらその分ぶちのめす!!!」

『ま、それで許されるわけもないけどね』

「たしかにwww」



「オレが罪なら・・・てめえらみんな罪人だぁ!!!!」



「うっせたーこ。お前の願いは確かに順当さ。だがな、そこに誰かを殺すなんて項目があったら、それだけでアウトなんだよ!!!いくぜ!!!!」




【KAMEN RIDER W】-WORLD LINK- ~WEPON~!!




その発動と共に、Wの基本の6メモリが空中に飛び出して、クルクルと回り出す。
ドンドンドンドン回転数を上げ、それが各色の球体にまで見えてきたところで、それが鳴り響いた。




《サイクロン!》
   《ジョーカー!!》
《ヒート!》   《メタル!!》
  《ルナ!》 
     《トリガー!!》



そのメモリを中心に、人の形が成っていく。
それは各メモリの色をしたW。
しかも単色だ。


六色のライダーに、本家本元のWエクストリーム。



そして六体が一斉に駆け出し、「奴」に攻撃を仕掛けていった。



まず、ルナが腕を鞭のように伸ばして「奴」に巻きつかせて、動きを止める。
その「奴」にメタルがシャフトで殴り上げ、さらにトリガーが追撃の銃弾を放ってさらに上へと押し上げられる「奴」

上空高く上がった「奴」に、サイクロンの手にジョーカーとヒートが乗り、疾風の力を身に受けて、その「奴」にまで到達する。
そして「奴」に二人同時にアッパーをぶちかまし、さらなる上空へと突きあげる!!!!


「さ、追いついてぶちのめせ!!!!」





【KAMEN RIDER W】-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~!!





「ハアアアアアアアアアアアアア!!!!!アぁッ!!!!!!」




Wが飛び出し、上空高くにいる「奴」に向かって上昇していく。
そのWの周囲を、風が覆っていった。


それはこの街の風、街の想い。


それを守護する仮面の戦士に、さらなる力が与えられる!!!



Wサイクロンジョーカーエクストリームの身体中央を走るクリスタルサーバーの色が黄金に変わり、街のシンボルである風都タワーの風車の羽を模した3対の翼で、自由自在に空を飛翔する事が可能となったその姿。



仮面ライダーWサイクロンジョーカーゴールドエクストリームが顕現する!!!!!




翼によってさらに飛翔し、Wが次々とマキシマムドライブを溜めていく!!!



《サイクロン!マキシマムドライブ!!》
《ジョーカー!マキシマムドライブ!!》
《ヒート!マキシマムドライブ!!》
《メタル!マキシマムドライブ!!》
《ルナ!マキシマムドライブ!!》
《トリガー!!マキシマムドライブ!!》


立て続けに腰のマキシマムスロットにメモリを挿入しては抜き放っていく。
そして最後に、「奴」のほんの少し上まで到達したダブルが、エクストリームメモリを閉じ、開く!!!


《エクストリーム!!!マキシマムドライブ!!!!!》




「ゴッがアアアアアアアアアアア!!!!!!!」



「『ダブル!!リミットブレイカー!!!!』」




ドッ!!!!ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!







上空からWと、その脚の先端にいる「奴」が共に落ちてくる。
落ちながらもWはさらに羽ばたき、その速度を上げていく!!!!



「おおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

『はあああああああああああああああ!!!!!!』






ゴッ、ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!





凄まじい爆発が起き、蒔風が身を屈める。
その爆炎の中から一本のメモリが飛び出て、砕け散る。


そしてその爆炎の後には、ひとりの仮面ライダーの姿があり、変身が解かれてそれが二人の姿になる。








「終わったな」

「ああ。ありがとうな」

「礼を言うのはこっちの方さ。さて・・・・・君には訊きたい事がたくさんあるんだ!!教えてくれ!!!世界の事!!!」

「あんだけ療養中に聞いといてまだあるのか!?」


「大丈夫か!!左、フィリップ、蒔風!!!」



そこに照井と亜樹子が到着する。



「やったのか?」

「ああ、きっかりとな」

「そうか・・・・・よかった」


「そうだ、この街に来たんだ。名物の風都ラーメン、略して風麺、食いに行こうぜ!!!」


「そうだな・・・今回は時間もある。少しのんびりしていくか」

「時間ってどれくらいだい?」

「そうさね。大体二時間」

「だったら早く行こうぜ!!!!」



こうして蒔風達が街に繰り出す。



この世界を出る頃には、蒔風は腹いっぱいだった。






「そろそろ時間だ」

「またな」

「会えるかどうかはわからないけどな。じゃあな、ハーフボイルド」

「ハードだ!!!」

「はっはっは。でもな、みんなを救うって想いは、実は結構ハードなんだぜ?」

「ん?・・・・そうだな・・・・そうだよ!!オレはハードボイルドでいいじゃねーか!!」

「お前はハーフだけどな」

「あぁ!?このやろう!!!!」

「逃げろや逃げろ、と。じゃね~~~」


[Gate Open---KAMEN RIDER W]




そうしてこの街から蒔風が去る。




今日も街にはいい風が吹く。



幸も不幸も、一緒に運んで。






------------------------------------------------------------




「あらん?また来るのね、翼人」

「ぬ?お主知っておるのか!?」

「知ってるわよ?彼とはお友達だからねん」

「ぬう・・・・・・」

「あなたにとっては結構キツイかしら?」

「大丈夫だ。あ奴とは違うのだろ?」

「そうね」


二人の漢女が話し合う


その国では今まさに出陣を迎えようとしていた。

なされたのは、予言。



銀白の翼が来ると言うもの。
一度来た世界。故にその予言はできたのだろう。




翼人、再び外史に舞い降りる。





to be continued 
 

 
後書き

熱く書けてるかな?どうかな?

心配なのはエクストリームとトライアルへの強化変身シーン。



ああやって読むと何だかごたごたしてるけど、そのシーンを想像してもらえれば熱いはず!!!!!




ちなみに今回、メモ帳のサイズで一位を更新しました!!!

アリス「なのはA'sの最終話を超えましたか」


はい
そして今回、照井がとにかく熱い。
どうしてこうなった。それはそれでいいんだけど。

ア「そういえばアルティメットドーパントはトライアルの力を取り込んで、どれくらい早くなったんですか?」


マキシマムドライブ風に言えば、「8.8秒、それが絶望までのゴールだ」


ア「はや!!!!」


それを乗り越え振り切りました!!!!
キャーーー!!竜くーーーん!!!!!



【仮面ライダーW】

構成:"ライクル"75%
   "フォルス"5%
   "LOND"10%

最主要人物:左翔太郎

-WORLD LINK- ~WEPON~:各メモリライダー召喚(仮面ライダージョーカーみたいな感じの)

-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~:Wをゴールドエクストリームに。更に基本6メモリ&エクストリームマキシマムドライブ重ね掛け





ア「最主要は左さんだけなんですね?」

どっちかと言えば彼でしょう。最主要は。
もちろん、フィリップもそうなんですが、最主要に限りなく近い主要という感じで。


なのはとフェイトみたいな?
いや、これは違うか?


ア「そういえば平成ライダーはこれでやりきったみたいなこと言ってませんでした?」

ええ、この場で言ってしまいましょう。



オーズは出しません。



これは最初から決めていました。
当時、Wは執筆を始めてその間に終わるだろうと思ってましたけどね。


ア「オーズはなしっと・・・・でも出したいんですよね?」


まああくまでも現時点、第一章での話です。


じゃあそろそろ。



ア「次回、蒔風、「真」の外史へ」

ではまた次回












乙女繚乱☆三国志演義 
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