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提督はBarにいる。

作者:ごません
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アニヲタ比叡の優雅な?休日・3

 ローソンを後にした比叡達一行が向かったのは、セブンイレブンだった。セブンの強みは何と言っても自社ブランドの『セブンプレミアム』だ。惣菜やお菓子、ドリンクに至るまで多種多様な商品ラインナップだ。特に惣菜は本格的な一品料理が多く、少し割高に感じる値段設定もその味を味わえば納得できる。それほどに美味いのだ。更に嬉しい事に、セブンイレブンは酒の品揃えが豊富だ。缶ビールや缶チューハイに始まり、ボトルワインや焼酎、日本酒、ウィスキー等々、手軽に女子会や宅飲みの買い出しを済ませようとすれば1軒で事足りてしまう。……惜しむらくは、セブンプレミアムの商品もカウンターに配置されている揚げ物系のホットスナックも、どちらかと言えば酒よりもご飯に合う味付けな所か。

 阿賀野達も好きな物をチョイスして次々とカゴに放り込んでいる。比叡も負けじと朝ご飯(最早時間的には昼ご飯に近かったが)のパスタとサンドイッチ、それにスナック菓子やツマミになりそうな惣菜に、アルコール度数の低くて飲みやすい缶チューハイを選んでカゴに入れていく。

 金剛型四姉妹の中で最も酒に弱いのは比叡だ。鎮守府内でも屈指の蟒蛇である霧島に、それに負けず劣らず飲める金剛。泣き上戸で絡み上戸な榛名、そして眠り上戸の比叡と、姉妹の酒の強さはこんな感じだ。中でも比叡は酒を飲みながら眠り込んでしまい、途中で目を覚ますと再び酒食を楽しんで眠り……を繰り返す、なんとも変わった飲み方をするのだ。一滴も飲めない訳ではなく、酒が入ると眠くなってしまうのだ。

「よし、こんなもんでいいかな……?」

 どれも美味しそうで買い過ぎてしまった。本当はあと2、3軒回って食べ比べを考えていたのだが、それはまた今度にしよう。とレジに並びながら考える比叡だった。




 帰りの道中は和気藹々と阿賀野達と語らいつつ、鎮守府への帰路に着いた。比叡の部屋に戻り、阿賀野達を部屋に通す。

「うわぁ……これが比叡さんの部屋ですかぁ。」

 初めて立ち入る部屋に興味津々、といった具合で部屋の中を見回す阿賀野。

「ちょっと阿賀野姉、あんまりキョロキョロ見回したら失礼でしょ!?」

 そう言って姉を諌めるのは能代だ。

「でも、普段の比叡さんからは想像出来ない感じの……」

「メルヘンチックなお部屋だよね~。」

 矢矧が言葉に詰まったのを、酒匂が補完する。比叡の部屋の内装は、ボーイッシュな服装に反してとても可愛らしい。ベッドの上にはぬいぐるみが所狭しと置かれており、クッションやテーブル等も機能性よりも見た目重視のデザインだ。ただ、壁際に置かれたラックには比叡の趣味である漫画本やDVDが置かれており、そのジャンルを見るとその部屋にはそぐわない。

「まぁ、適当にその辺に座っちゃって?食べ物とかも適当に広げてね。」

 てきぱきと準備しながら、比叡は何のDVDを流そうかと思案する。比叡はアニメオタクだ、それは間違いなく断言できる。……ただ、その好きなジャンルがあまり女子っぽくない。ロボットアニメやバトル物……どちらかと言えば男子高校生等が好みそうなジャンルのアニメが好きなのだ。逆に、女子が好みそうなジャンルのアニメはあまり見ない。

「何がいいかなぁ……攻殻、はマニアック過ぎるかぁ…ガンダムは……ダメだ、最近のイケメンだらけのが無い。」

 ブツブツと言いながらラックの中のDVDの山を漁る。とは行っても、半分以上はまだ見ておらず、しかもアニメにハマるきっかけになった提督からの借り物がほとんどだ。

「ぴゃ!これ面白そう~!」

「うわ、ちょっと、酒匂ちゃん!?」

 知らぬ間に比叡の背後に来ていた酒匂が、とあるDVDBoxを引き抜いた。

「ねぇねぇみんな!コレ見ようコレ!」

 姉達の同意を得ようと、酒匂が阿賀野達の元へそのDVDBoxを持っていった。

「阿賀野は何でもいいよ~?」

「まぁ、私もあんまりアニメ見た事無いからなんでもいいわよ?」

「右に同じ。」

「ぴゅう♪じゃあ決定~!」

 トントン拍子に、というか比叡の関知しない所で鑑賞する作品が決まってしまった。まぁ、まだ見ていない奴だったし、たまにはこういうのも良いかと思い直して比叡も阿賀野達の所へ腰を下ろした。

「んじゃ、とりあえず乾杯しよっか。」

 比叡の呼びかけに応じてプシュッ、という栓を開ける音が5つ響き、

「「「「「かんぱ~い!」」」」」

 アニメの鑑賞会を兼ねた女子会が始まった。




『肉の無い青椒肉絲なんてのは、青椒肉絲って言わねぇんじゃねぇのか?』

『……いや、言うね。』

『言わねぇよ!』

『金が無い時ゃ言うんだよ‼』

 TV画面の中では優男とハゲ頭の厳つい男が2人、肉の入っていない青椒肉絲をつつきながら口論している。

「SFアニメって奴なのかしらね、これ。」

 缶のハイボールを啜りながら、矢矧が一言。

「でも、オープニングの曲は格好いいよねぇ~!」

 缶入りのスパークリングワインを飲みながら阿賀野がはしゃぐ。そりゃそうだ、とスミノフのグリーンアップル味を口にしながら比叡は密かに思う。ロボットアニメが専門だった比叡に、『絶対に面白いから見てみろ』と提督が半ば強引に押し付けて来たのだ。提督が言うには、

『ストーリー、キャラの個性、劇中の音楽、これ等の組み合わせが最高にイカしてる。特にアクションシーンと曲の組み合わせのセンスは他の作品の追随を許さない位格好いいぞ。』

 と言っていた。確かに格闘戦のシーンなど、音楽に合わせて踊っているかのようにさえ見える。

「でも、このスパイクって主人公ちょっとくたびれててダサいかも……」

 と、セブンイレブンの揚げ鶏をかじりながら能代が言うが、

「え~?そうかなぁ、私は格好いいと思うけどなぁ。」

 と比叡がボソリ。途端に阿賀野達が『えっ?』という顔をして比叡の顔を見た。 
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