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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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66部分:第七話 恐怖の集結その八


第七話 恐怖の集結その八

 カナンだけでなく他の狂闘士達もそれを見ている。アトロムがそれを見て言った。
「本当に全員で来ていますね」
「まさかとは思いましたが」
「そうだな。だがこれはこれで好都合だ」
 サムソンも言いカナンはこれを好都合だと述べた。
「好都合ですか」
「そうだ。キャンサーだ」
 彼はデスマスクを凝視していた。強い視線には凄まじいまでの闘志が宿っていた。
「黄金聖闘士の一人。ここで倒させてもらおう」
「ここでですか」
「まずはあの男を全力で倒す」
 彼はこう宣言した。
「向こうにいる同志達と協同でだ。いいな」
「十人がかりで、ですか」
「いや、御前達は他の聖闘士達を狙え」
 しかし彼は同志達はデスマスクには向かわせないと言った。五人はそれを聞いて誰もが目を顰めさせた。そのうえでカナンに対して問うのだった。
「カナン様、それは一体」
「どういうことですか?」
「あの男、間違いなく相当な力の持ち主だ」
 カナンはデスマスクをこう評していた。
「そして誰であろうが躊躇なくその手にかけることができる。そうした意味で我々と同じだ」
「我々とですか」
「そうだ。だからだ」
 彼はそれを理由としていた。
「あの男は私が相手をする」
「左様ですか」
「黄金聖闘士といえど一人ならばだ」
 カナンはその冷徹だが戦いに燃えた目で言う。
「どうとでもなる。二人ならば変わったが」
「その場合はどうされていたのですか?」
「御前達五人をキャンサーに向かわせ後の四人をもう一人に向かわせていたか」
 カナンはここでも二段構えの作戦を考えるのだった。これが実に用意周到であると言えた。
「インプ達を他の聖闘士達に向け私は指揮にあたっていた」
「そうなりましたか」
「黄金聖闘士は確かに強力だ。しかし一人だ」
 彼はそれを指摘する。
「一人ならば。勝つことができる」
「それではカナン様」
「そのように」
「うむ。我等も動くぞ」
 デスマスク達を映し出していたその映像を右手を一閃させて消す。そのうえでまた言うのだった。
「戦場に行くぞ」
「はっ」
 五人は頭を垂れ左手を拳にしそれを胸のところにやって一礼したうえで応える。それが済むと一斉に姿を消す。彼等もまた動きだしたのであった。
 その頃デスマスク達は。予定通りロファールを追っていた。
「いいか」
「はい」
 ジャミアンがデスマスクに応える。デスマスクは彼等の先頭にいる。
「つかず離れずだ」
「つかず離れずですか」
「見られてるぞ」
 そのうえでこうも言った。
「あいつ等からな」
「へっ!?」
「まさか」
 それを聞いてディオも声をあげる。彼等は慌てて周りを見回す。
「何もいませんけれど」
「小宇宙さえも」
「もう見ちゃいないさ、安心しな」
 だがそれはすぐに打ち消してこう述べたのだった。
「今のところはな」
「そうですか。ならいいんですがね」
「驚きましたよ」
「蝿を使ったんだよ」
 デスマスクは言う。
「蝿をな」
「蝿を!?」
「まさか」
 六人は皆それを否定しようとする。だがデスマスクはその六人に対して言うのだった。
「相手は何だ?ベルゼブブだぞ」
「ええ、そうですが」
「それで蝿ですか」
「ベルゼブブの姿はな、巨大な蝿なんだよ」
 デスマスクは語る。
「蝿ですか」
「元々はな、メソポタミア辺りの神様だったんだよ。それが変わり果ててそうなったんだ」
「そうだったんですか。神様ですか」
「あの連中は大概そうさ」
 狂闘士達をさしての言葉だった。
「元々は神様や天使だのでそれが変わり果ててな」
「ああなっていると」
「それでアーレスの下にいるってわけだ。戦いにだけ己を見出してな」
「何か俺達とは全然違うんですね」
「そこんところは」
「あの戦衣か」
 デスマスクはそれについても言及する。
「見ればわかるだろ。あの赤をな」
「血塗られた赤」
「それが奴等の象徴そのものだ。戦いに餓えている証拠だ」
「そして血に」
「アーレスは戦乱と流血を司る神様だよな」
「はい」
 これはもう言うまでもなかった。それが為に知られておりそのうえ忌み嫌われている神であるからだ。とりわけアテナとの対立は有名である。彼等が仕えているそのアテナに。
「だからだよ。あいつ等はその身を落としてもまだ戦いを忘れちゃいない」
「それでですか」
「また出て来たのは」
「いいか」
 デスマスクの言葉が引き締まったものになった。
「気を抜くんじゃねえぞ。死にたくなかったらな」
「ええ、それは」
「絶対に」
「そういうことだ。じゃあ追撃を再開するぜ」
 デスマスクの指示の下で彼等は進む。それが罠であると知りつつ。今はライプチヒの森を進むのだった。


第七話   完


                  2008・5・17
 
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