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提督はBarにいる。

作者:ごません
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提督の休日・8

 二人で脱衣場に向かい、服を脱いでいく。パッパと脱ぎ終えて金剛が服を脱いでいくのを背後から眺める。

「だ、darling……?あんまりまじまじと見られると恥ずかしいデース。」

 そんな事言ってもなぁ。目の前に極上のオンナが居たら、そりゃあ見ちゃうでしょ。

形の整ってキュッと引き締まったヒップ。

筋肉と脂肪のバランスが絶妙な太もも。

細すぎず、かといって弛んでいる訳でもない健康的なウェスト。

大きいが、垂れる事なく張りを保ったバスト。

瑞々しく、新鮮なフルーツを想像させるリップ。

白く、キメ細やかな肌。

手入れを欠かしていないのだろう、艶やかなブラウンの髪。

 全てが絶妙なバランスで、男を蠱惑的に誘ってくる。それを独り占めできる幸せ。改めて、コイツを選んでよかったと、そう思った。

「いやぁ、相変わらず綺麗な身体してるよなぁ。」

 ついつい本音が駄々漏れになるのも致し方ない事だろう。そのせいで殴られかけたけど。こんな美人と、互いに一糸纏わぬ姿で一緒に風呂に入るなんて、すげぇ贅沢だよな。




「あ゛~、生き返るなぁ。」

 今日2度目の入浴だが、風呂は何回入っても気持ちが良いもんだ。

「確かに、バスタイムはいいですネ~。」

 ふへえぇぇ~……ととろけたような顔をしている金剛。今向かい合わせに湯船に浸かっているんだが、う……浮いてますよ奥さん!何がとまでは言わないが、情緒もなく言えば脂肪の塊だ……浮かない方が可笑しいか。

「う、浮くんだなソレ……。」

「……?そりゃ女の子の形してても船ですからネー。」

 違う、そうじゃない。

金剛が先に湯船から出て、身体を洗い始めた。スポンジにボディソープを泡立てて身体を擦っていく。

「どれ。背中流してやるよ。」

「ふぇっ!?い、いいですヨ~!恥ずかしいデス!」

「遠慮すんなって、ホラ。」

 ううぅ~……と唸りながら、縮こまってしまった金剛の背中を、スポンジで擦ってやる。

「力、強すぎないか?」

「だ、大丈夫デス。気持ちいいデス。」

 しかしこうやってみるとホント、小さい背中だ。これで人類を守る為の盾として戦ってくれているんだ。……よく見ると、古傷のような跡がうっすらと見える。

「金剛、この疵は……」

「あ~…見つかっちゃいましたか?」

 金剛は恥ずかしそうな、少し悲しそうな表情を見せた。

「やっぱり大きなケガをすると、少しだけど跡が残っちゃうんデスよ。こういう疵を嫌がって、フラれちゃった娘もいるみたいデス……」

 艦娘故に仕方のない事だと言えば、それで片付いてしまうのかもしれない。だが、これをそんな一言で片付けてしまうのは間違っている。そう思った。

「だ、darling!?何してるデース!?」

 気付いたら、泡だらけなのも気にせずに、金剛を後ろから抱き締めていた。

「疵は消してやれん。…けどな、背負い込むな。その疵の嫌な思い出は、一緒に背負って軽くしてやれる。」

「ハイ……。」

 艦娘と結婚するってのは、こういう事に理解を示して受け入れる覚悟のような物が必要なのだと改めて思った。



「「カンパーイ♪」」

 グラスを打ち鳴らす。中身は安物の赤ワインだが、ゴクゴク飲むには気兼ねなく飲める方がいいだろう。

「ンー♪カレーがマイルドで美味しいデース!」

 豆乳がいい仕事してくれてるんだよな、そのカレー。ごぼうのシャキシャキとした食感も、普段のカレーとは違う食感を味わえて面白い一品だ。さて、俺もシェパーズパイを頂くか。

「ん!美味っ!」

 芋のまったりとした口当たりに、ラム肉の風味とトマトの酸味と旨味がガツンと来る。イギリス料理は不味いと敬遠されがちだが、ちゃんと作れば美味い料理は沢山ある。

 イギリスには元々、美食を良しとする文化がない。美味しいの基準値を美食家のレベルではなく普通の生活を営んでいる人々の程々なレベルとして考えると、むしろ合理的であるとする料理研究家さえいる。

 だが、イギリス料理が不味いと言われる大きな理由を挙げるとしたら、野菜は食感が解らなくなるまでクタクタに茹でる、揚げるときは真っ黒焦げになるまで揚げる、麺を必要以上に茹でるといった食材本来の味や食感を残さずに加熱する調理法が他国には受け入れられない事が多いからだ。更に、「味付けは個人の好みで調味すべし」というのがイギリス料理の基本スタンスなので、調理中に殆ど味付けらしい味付けをされない。今も一流レストランのテーブルには塩や酢などの調味料が置かれている所が多い。

 これにはイギリスの過去の習慣や歩んできた歴史が影響するのだが、長くなるので興味のある人は自分で調べてみてくれ。……まぁ、今食ってる物が美味いからまぁいいか。



「はぁ~…食った食った。満足だぜぇ。」

 ワインをぐいと飲みながら、まったりとテレビを眺める。洗い物は金剛に任せてしまった。

「darling、洗い物は終わったヨー。」

 時刻は2230。そろそろ寝てもいい頃かな?

「そろそろ寝るか?」

 瞬間、金剛の顔が真っ赤になる。想像しちゃったんだろうなぁ、ナニを……もとい、何をとは言わないけど。

「何だよ、今さら恥ずかしくなったか?」

 当然というと聞こえが悪いが、金剛とは既に何度も肌を重ねている。最初のケッコン相手だってのもあったが、お互いに両思いだったのだから、自然とその回数は増えるワケで。

「ち、違いマスよ!ただ……今日は『初めて』の日だから特別なんデスよ……?」

 ハァ。んな事で悩んでたのかよ。

「金剛、おいで。」

 近付いてきた金剛を抱き寄せ、耳元で囁く。

「俺にとってはお前と過ごす日は毎日が特別で、毎日が記念日みたいなモンだ。今日は、それが少しだけ違うだけさ。」

 そう言って優しく口付け。すると金剛は小悪魔のように笑うと、

「これでfinish?なワケないでショ~?」

 と、挑発してきた。いい度胸だ、後悔させてやるぜ。 
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