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ソードアートオンライン 孤独者と闇裂く対剣

作者:香月
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デスゲーム
第一章
  決着。そして亀裂

騎士ディアベルの死亡によって、レイドパーティーは混乱に包まれていた。恐怖だけが渦巻き、捻れ、絡み合い、ひとつの可能性を導きだしている。

このままでは、死ぬ。と。
恐怖で仲間が次々と逃げ腰になる中、大きな怒声が飛んで来た。
「へたってる場合か!」
そうだ、まだ、終わってない。
「全員!体制を整えろ!時間は俺とキリトで稼ぐ!」
「ユキ!お前は他のプレイヤーの護衛に回るんだ!」
俺は武器を変化させる。
緋色の刀身、紅色の鞘と鍔が姿を顕す。
片手用直剣、長剣カテゴリ、紅緋。
俺は紅緋を脱力して構える。
「キリト!行くぞ!」
「おう!」
同時に駆け出し、背後と正面に回り込む。
コボルト王が吼え、刀を突き出す。
「パリィ!」
カァン、と甲高い音がして、コボルト王は僅かにたじろぐ。
「オオオッ!」
すかさず連撃を撃ち込み、スキルを発動させる。
紅蓮の光芒が三角形を描き、コボルト王を抉る。
紅緋専用スキル、デルタ・プロミネンス。
荒ぶる咆哮と共にHPが激しく損傷していく。
「ぜぁぁぁっ!」
キリトも俺のスキルの終わりごろに技を出していく。
片手剣二連撃スキル、スネークバイト。
深碧の刀身が一瞬で閃き、コボルト王の腹を深々と抉る。
コボルト王の可視可能なステータスに鈍足が追加された。
「よし!」
キリトは明らかに油断していた。
「キリト!気を緩めるな!」
俺の叫びは虚しく、鈍色の刃がキリトに迫る。
「やぁぁぁぁぁぁ!」
突如、紫の光芒が顕れ、野太刀を弾く。斬撃を放ったのはユウキだった。
「すまない!」
俺とキリトは同時に斬撃を繰り出す。
「「ッ…ぜぁぁぁっ!」」

片手剣二連撃、バーチカルアーク
片手剣二連撃、ホリゾンタルアーク
2つの剣が十字を描いた。
「ぐるぁぁぁぁぁ!」
コボルトの長が大きく吼え、体を縮めていく。
その直後、乾いた破裂音と共にコボルト王はデータの塊となって四散した。

Congratulations!

「終わった、のか……」
俺はその場に尻餅を突き、勝利への実感を噛み締めていた。
他の者も抱き合うなり肩を叩きあうなど、勝利を祝福しあっている。しかし____
「なんでや!」
叫びとも嘆きとも取れる声が広間に響いた。
「なんでディアベルはんを見殺しにしたんや……!!」
沈黙が部屋を支配し、疑いの目が俺たちを包む。
「そぉやろなぁ!ジブンらはボスの使う技解っとったやないか!?」
周囲に居る他のプレイヤーもざわつき始める。
「やっぱり、ベータテスターが無料で情報を受け渡す気なんて無かったんだ!」
不意にキリトに袖を引かれる。
「頼む。話を合わせてくれ。」
キリトの手は僅かに震えていた。
「ハハハハハッ!」
周囲が驚きに包まれる。
「ちょっと、冗談にも程があるぜ!攻略本に書いてあることは事実だよ!」
「全くだ。それに、ただのベータテスターごときと同格扱いとはな。」
「なんやてぇ!?」
「俺は、たった1000人ぽっちのベータテストで、ソロ狩りだけで9層後半まで進んだ!ボスの刀スキルを知ってたのは、自分の体で覚えていたからだ!他にも色々知っているぜ?」
「ああ。それに……」
俺は紅緋を雪一文字に変え、ソードスキルを放つ。
「刀スキルなら、俺が知ってる。」
「」


ユウキやラン、キリトのパーティメンバーの細剣使いが何か言いたそうな口をしているが、キリトは片手で三人を制し、罵声を俺たちに集中させ続けた。
「ベータのチーター、だからビーターだ!」
そうだ、ビーターだ!

「ビーター……いいな、それ。」
「そうだ。俺たちはビーターだ。そこらの雑魚と一緒にしないでほしいな。」
俺たちはシステムメニューからラストアタックボーナスを実体化させる。
ユニークアイテム、コート・オブ・ミッドナイト
同じくユニークアイテム、コート・オブ・スカーレット

裾を大きく靡かせながらコートを羽織る。
「二層の有効化はしておいてやる。着いてくる奴等は初見のmobに殺される覚悟をしておけよ。」


俺はユウキに向かって踵を返し、キリトは二層へ続く階段を上っていく。
「ユキのこと、頼むな。」
ユウキやランたちの視線から逃れるように顔を反らす。
「「また、いつか……」」

遺す様に呟き、階段を駆け上がる。そして、牛のレリーフが掘られた門を開ける。
「行こう。」
「ああ。」
俺たちは一歩、一歩と棘の道を歩んでいく。
 
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