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提督はBarにいる。

作者:ごません
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出がらし?いいえ、食材です。

「ふへえぇ~、疲れたのねぇ。」

 疲労した身体を引き摺るようにのそのそと歩いてくる一団。揃いの制服のようにスクール水着を身に纏い、両脇には獲得してきた資源であろう重油入りのドラム缶やら弾薬の詰まった箱やらを抱えている。顔立ちは駆逐艦と同じか少し年上位の印象で、その髪は彼女らの重要課題であろう『隠密性』って何だっけ?と尋ねたくなる位カラフルだ。赤にピンク、紫に金髪銀髪。絶対目立つだろ、それ。

「おぅ、今日もオリョクルお疲れさん。」

「あ、提督!今日もオリョクルで資材拾って来たでち。」

 このでちでち言ってんのが伊58、通称ゴーヤ。割りと何でもズケズケ言ってくる気の強さが特徴だ。

「これでまたアイツ等を一網打尽なのね!」

 そのゴーヤの隣でなのなの言ってるのが伊19、通称イク。悪戯好きで俺も手を焼いているが、出撃すると持ち前の強運で空母や戦艦を一撃で仕留めたりする。

「そ、それよりもはやくお風呂入りたい……」

 歯をカチカチ鳴らしてガタガタ震えているのが伊168、通称イムヤ。スマホいじったりとか以外とメカに強い。

「ろ、ろーちゃんも~……」

 イムヤの隣で同じようにブルブル震えているのが呂500、通称ろーちゃん。元々はドイツ海軍初の量産型潜水艦娘U-511だったのだが、妖精さんが二回改装したら完全にゴーヤ達の影響で(毒されて?)、最初の物静かでおどおどしてた純白お肌のユーちゃんはどこへやら、明るく元気で活発、こんがりと日焼けしたろーちゃんへと変貌を遂げた。この変わり様を見た向こう(ドイツ)の総統が、

『どんな魔改造しやがった畜生めええぇぇぇぇぇっ‼』

 と叫んだとか叫ばないとか。

「アハハ…、でも早くお風呂にドボーンってしたいよねぇ。」

 そう言いながらタオルで身体を拭いているのが伊401、通称しおい。他の潜水艦娘よりも頭1つ分身長が高いせいか、若干お姉さんぽく見える。いつも風呂に飛び込む為、注意しているのだが一向に治らない。

「………………。」

 一団の後ろの方で物静かに本を読んでるのが伊8、通称はっちゃん。普段から自ら積極的に話す事を好まない性格なのか、あまり言葉を交わした記憶がない。しかしながら、艦だった頃に単独でドイツと日本の間を往復した経験からか、隠密行動の上手さはピカイチ。虎視眈々と獲物を狙うスナイパーだ。

「みんな、お疲れ様。暖かい物を用意してあるから、遠慮なく食べていってね!」

 大鯨がそう言うと、潜水艦達全員がわーっと駆け寄っていく。流石は潜水母艦、ゴーヤ達の信頼は厚い。



「梅干し、おかか、昆布にタラコ。」

「ツナマヨや明太子、筋子なんかもあるのね!」

「こっちの豚汁も美味しいよ~?」

 ワイワイガヤガヤと食卓を囲む潜水艦達。彼女らの頑張り無くしては、この鎮守府は立ち行かなくなってしまう。

 鎮守府の運営には、予算とは別に艦娘達の修理や補給、装備の開発や建造等に使用する重油や弾薬類、鋼材にボーキサイトといった資源が必要不可欠だ。資源を得る方法は3通り。

1)大本営からの任務報酬や定期的な補給

2)遠征による資源獲得

3)出撃時に出来る資源回収

1の大本営からの任務報酬や定期的な補給は、数量が決まっている為に何度も獲得は出来ない。2の遠征も艦隊の編成数には限りがあるため、効率良く遠征させる計画を建てなければ厳しい。それを補うのが3の出撃時の資源回収だ。

 出撃する海域によっては資源を回収出来るポイントが存在する。鉱山や精錬所、補給基地等様々だが、特に有名なのは往復した東部オリョール海だろう。南西諸島海域にあるオリョール海は、北方や西方、南方といった激戦地への物資の中継地となっているのか、深海棲艦の補給艦の艦隊が多く、それを撃沈してシーレーンを潰す作戦が定期的に行われている。撃沈された艦艇は潮流の関係か、海域内に数ヶ所確認されている潮溜まりに流れ着く。その残骸から重油や弾薬を引き抜き、回収するのだ。特に、潜水艦はその駆逐艦以上の燃費の良さから向いているとされ、潜水艦のみで編成された艦隊でオリョール海を周回し続け、資源を回収するオリョールクルージング……通称オリョクルが提督達の中でも騒がれている。特にウチみたいな大所帯になると遠征や任務報酬だけじゃあ足りず、オリョール海やバシー島沖、カレー洋など様々な資源を回収出来る海域では潜水艦達に世話になりっぱなしだ。その証拠に、ウチの鎮守府に所属する艦娘は250居るが、その1/5……50隻は潜水艦娘だ。



「今年も一年、お疲れさんでした。」

「全く、人使いの荒い提督で困るでち。」

 ハフハフ言いながらせんべい汁にがっつくゴーヤ。まぁ、確かに潜水艦達に無理を強いていたのは認めざるを得ない。

「だ~か~ら、こうやってねぎらってんだろ。ホレ、これもサービスだ。」

 俺が出したのは『昆布のごまかつお和え』と『出し殻かつおのだし巻き風』。どちらも出汁を取った後の出し殻を捨てる事無くリメイクした物だ。

《昆布のごまかつお和え》

出汁を取った後の昆布:5cm四方

黒すりごま:大さじ1/2

花かつお(小分けパック):1/2パック

醤油:小さじ1/2~1

みりん:小さじ1

コーレーグース:適量

作り方は簡単。昆布を細切りで刻んだら、全部の材料を混ぜるだけ。超簡単。

《出し殻かつおのだし巻き風》

出し殻かつお:10g

卵:2個

白だし:小さじ1

全ての材料を混ぜ、熱したフライパンに流し込んだらスクランブルエッグを作る要領で中心に寄せるように混ぜる。ある程度固まったらフライパンの端に寄せて形を整え、ひっくり返して両面に焼き色を付ける。蓋をして火を止め、2分程放置して余熱で火を通したら完成。



「この昆布ピリ辛で美味しいのね~。」

「だし巻きもジューシーで最高ですって!」

 うんうん、中々好評。

「お!美味そうなモン食ってるじゃん‼」

「あらあら、ゴーヤちゃん達だけはずるいわよ?」

「ウチらにも振る舞ってぇな提督~。」

 あ~らら、匂いに釣られて寄ってきちゃったか。まぁいいか、

「ホレ、お前らも並べ並べ~。喧嘩せんでも食わせてやっから。」

 結局、潜水艦達だけでなく、沢山の艦娘達が舌鼓を打った。こういう団欒こそ、ウチのチームワークの良さを産んでるんだろうな。こんな年の瀬も悪くはないさ。 
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