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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)

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第56話 家族

 
前書き
あと少しで第2章が終わります 

 
数週間前の学園都市
白い髪をした華奢な少年『一方通行(アクセラレータ)』に背後から声が掛かった。
「少しいいかな?」
サングラスを掛け、ピアスをしたオールバックに髪を流した20代後半の男性が髪が白い少年に声を掛けた。
「どこの研究所の使いだ?」
「......何故そう思う?」
「俺に近付いてくるヤツなンざ、俺を研究して甘い汁吸おうって輩か学園都市トップの座を狙って突っかかってくるバカと決まってるからな」
「なるほどね」
男性はサングラスを直しながら、耳まで裂けた口を覗かせた。

白い髪の少年の周りには、少年の講釈の後者が身体の至るところから出血しながら数人が倒れており、「ぐ......」と時折呻き声が聞こえた。
一人の髪を染めたパンチパーマの男性が頭を抑えながら、起き上がるとブロック片を持ち上げた。

「へへ......チョーシのって余裕かましてんじゃねぇぞ、テメーーーー!!」
ブロック片を振りかぶると無防備に後頭部を晒している少年目掛けて投げつけた。
しかし、投げたはずのブロック片は投げ主の顔面に当たり、顔に減り込む。

「ワリィワリィ、言ってなかったっけなァ。デフォじゃ"反射"に設定してあンだよ......って聞いてねーか」
自分より背の高い男の歯抜け姿に虫けらを似通わせて嘲笑うように少年は説明した。

「『絶対能力進化(レベル6シフト)』?」
「まあね、詳しくは話せないけど君の協力をしたいんだよ」
「はン、興味ねェよ。俺は学園都市の第一位。ようは世界の頂点って事だ。今より強くなったからってそれが何だってンだ」
「そうだね......確かに君は『最強』の能力者だね。だが『最強』どまりでは君を取り巻く環境はずっとそのままだね」

少年の言った言葉が自身に突き刺さってくる。
出世の為に縋り付いて来るクズのような研究者。
学園都市トップを狙って闇討ちをしてくる不良の輩。
全てが鬱陶しい限りだった。

「『完全なる存在』すなわち『神』に成ればこのような下賤な生活から出られるかもね」

完全なる存在
神......
この能力(チカラ)はいつか世界そのものを敵に回しーー
本当に全てを滅ぼしてしまうかもしれない
チカラが争いを生むのなら
戦う気も起きなくなる程の絶対的な存在になればいい
そうすれば......いつかまた


それが『暁』の思想さ
一方通行(アクセラレータ)......

サングラスを掛けた男性の目が鈍く光った。

******

病院の前で会ったサソリが着ている外套を身に付けた御坂美琴そっくりの少女に御坂は頭を混乱させながらも動向を探っていた。

この儚げで可憐な少女を守ってあげたい!
ありとあらゆる災悪から救ってあげたいと考えるお姉さまなのであった。
「......かつして芽生えた奇しくも同じ顔をもった者同士の友情は永遠である」
「変なナレーションを付けるな!......なによ儚げで可憐よ似合わないわ」
「それそっくりそのままブーメランになりますね」
「うぐっ!」

そりゃあ、ガサツだし
へんなコレクター魂に日が点くし
あの頭がツンツンした奴には勝てないし

「ミャア」
と鳴く黒猫の目の前で指を叩いて、ちょっかいを掛けるミサカ。
「っでサソリとはどういう関係なのよ?」
「傀儡の師匠と弟子の関係です」
「分かった......何でそうなったのか教えてくれる?」

.......
ポクポクチーン
「ミサカは過去を捨てました......傷心中です」
「おい!!大事な所をはぐらかすな!」
「時代は傀儡です。傀儡王にミサカはなる!です......正確には傀儡女王ですが」

見えない帽子を被りながら、両手を広げた。
風影人形も大の字になった。
ビクッと黒猫が驚いて草むらに逃げ込んでしまった。
どうやら、風影の傀儡が怖いようである。

「あっ......」
型はそのままに暫く沈黙が流れた。
そして、御坂を見ながら一旦停止。
「いや、シャッターチャンスじゃないわよ。猫逃げたし」
「あらら、では」
再び、外套を捲り上げようとするミサカに御坂が鬼の形相で殴りつけた。
「痛いです......このご時世お色気シーンを入れないと人気出ませんよ」

「何の話!?」
「シリアスばかりでは読まれないですよ......でもまあ、お姉さまの身体では......」
「だからってアンタがやらなくても良いじゃない!!」
「展開的には、うふふな温泉旅行や水着回も欲しい所ですね」
「やらないわよ!」


注)6年前、リメイク前の作品でどっちの展開も書いていました。
伝わない?
伝わらなくて結構です!
黒歴史ですから......(原作ストックが切れて、無茶苦茶な展開を書いて時間稼ぎをしていました)
原作ストックがあるって大切


御坂がギャースカギャースカ言っていると欠伸をしながら車販売のアイスクリーム屋を運転している中年男性が通り掛かった。
「何だぁ?」
服装が異なるが双子の口ケンカに見えた中年男性は、御坂達に近づくと窓から顔を出した。
ヒゲを生やした少し頼りなさそうな中年男性だ。
「そこの双子。姉妹ゲンカはよくねーぞ」
「コイツは妹じゃないっ!!」
「オイオイ、冗談でもそんな事言うもんじゃないぞ。ちょっと待ってな」
「?」
そう言うとチョコミントアイスとチョコバニラアイスをコーンに乗せて御坂達に差し出した。
「ほれ。これをやるから仲良くしな」
「アイス?押し売り?」
「人聞きが悪いな。ケースを洗うんでね。よければ食べてくれよな」
「いや、悪いけどアイス食べている場合じゃ......」
御坂が断るようにアイスを持ち上げるが
隣にいる暁の外套を着たミサカは、舐める事はせずにガツガツと力強く食べていた。

「濃厚でいてくどくなく、後味がさっぱりした甘さ......牛乳が良いのは当然ですが、研ぎのいい和糖を使わなければ、この風味は出せません。コーンはクッキーを砕いたクラスト生地を意識したものですね」
そして、高速で食べ終わると中年男性に親指を立てて真剣に褒めた。
「グッジョブです!何処かの師匠よりも気が効きます」
「はは、ありがとうよ。夫婦は別れりゃ赤の他人だが、姉妹の血は一生繋がったままだ」

中年男性は一仕事終えて車へと乗り込んでいく。
「ウチのカーチャンも稼がないと......赤の他人になっちまうかも......」
途中までかっこいい大人だった、最後の言葉でなんだが「が、頑張ってください」としか言えなくなってしまう。

「ま、とにかく姉妹仲良くなー」
「だーかーらー!違うって......行っちゃたし。まあ、ハタから見ればしょうがないんだろうけど......」
と自分の手に持っていたアイスを舐めようとするが御坂の舌は虚しく空を掠めた。

「あれ?ない」
さっきまであったチョコミントアイスが綺麗さっぱり消失していた。
隣にいる容疑者Mを見上げると口元には犠牲になったチョコチップアイスの破片がうっすら残っている。
「オイッ!意地汚いマネすんな」
「何の事でしょう?とミサカはチョコミントの爽やかな余韻を楽しみつつシラをきります」
胸ぐらを掴まれているミサカだが、そっぽを向いて、口に付いたアイスを舌でペロリと舐めとった。

「あとは、お姉さまが農作業をするのも面白いかもですね......とミサカは天を仰ぎながら言ってみます」

注)うぐぐ!!やめてください......(作者)

「よく分からないけど......誰かに凄いダメージを与えている気がするわ」
ミサカから手を話すとミサカは崩れた着衣を直すように首元を正した。
「さて糖分補給も完了しましたので、練習を再開しますか......師匠は厳しい方ですので」
ミサカが糸を操り傀儡を宙に浮かせ始める。

師匠!?
そうだったわ!
サソリに訊けば良いんじゃない
アイツならはぐらかしてくる事もないだろうし

御坂はポケットから携帯電話を出そうとした瞬間に先ほどの戦利品であるカエルのバッジがコッと音を立てて落ちた。
「っとポケットに入れといたの忘れてた」
携帯電話を片手に御坂がカエルのバッジを拾おうと前屈みになっていると
「?それは何ですか?」
「いや、ガチャガチャで獲った景品だけど......」

ぴーん!
御坂は何かを閃いた御坂はミサカの外套にカエルのバッジを付け始めた。
「何でしょう?」
「いいからジッとしていなさい」
カチャカチャと御坂が外套の袂付近にカエルのバッジを付け、少し離れて見栄えを確認している。
「こうして見ると結構アリって気も......」
少し自分のアイディアに酔いしれながら誇らしげに眺めていると
「いやいや、ねーだろ!とミサカはお姉さまのセンスに愕然とします」

右手を振ってナイナイアピールをするミサカの隣で口をあんぐり開けた風影の傀儡も呼応するかのように右手を振ってナイナイした。

「なっ!何おう!!じょっ、冗談よ冗談。ちょっと試しにつけてみただけ」
内心傀儡の動きに嫌悪感を抱きながらも羞恥心が上回り、御坂は顔を赤くしながらカエルのバッジを回収しようと手を伸ばしたが......

パァン
と傀儡の手が御坂の手を弾いた。
御坂の手がジンジンと痛む
「......」
御坂は再度回収にチャレンジするがミサカの前に移動した傀儡が叩き伏せるように御坂の手を叩く。
「くっ!!」
パパパパパン!
高速でバッジを取ろうと腕を何回も伸ばすが全て滑らかに操られた傀儡の腕に弾かれた。

「何すんのよっ!!いってぇ」
両手が紅葉のように赤く腫れた手を自分の前に持ってきながら怒るように大きな声を出した。
「ミサカにつけた時点でこのバッジの所有権はミサカに移ったと主張します。あと、傀儡さばきが上がりました」
「センスないって言ったじゃない!」
「いえ......コレはお姉さまから頂いた初めてのプレゼントですから」
ミサカは外套に付けられたカエルのバッジを摩りながら伏し目がちに言った。

「!?」
予想外の反応に御坂は思わず心臓が高鳴った。
何だろう......これ?
一緒に猫とじゃれて
一緒にアイス食べて
缶バッジ取り合って

これじゃあ
まるで本当に......家族じゃないの!

「もうちょっと、マシなものはなかったのかよ......とミサカは本音を胸の奥にしまって嘆息します」
「やっぱ返せーーーっ!!」

こういうマイペース加減は師匠(サソリ)譲りみたいね
このままじゃあ、ラチがあかないわね
とりあえずサソリに.....

携帯電話を取り出してサソリの番号に掛けた。
耳元では、コール音が鳴り響いた。
暫くすると取る音が聞こえたので
「あっ!サソリ?ちょっと良いかし......」
電話の先では、恐らく想像以上にコダゴタしているらしく複数の人の会話が聞こえてきた。
『これどうなってんだよ!急に鳴ったぞ!?』
『電話ですわよ!何で知りませんのー!?」
『知るか!』
『そこに耳当てて......違う違う!逆逆!』

あー......しまったわ
そういえば、サソリにメールの説明はしたけど電話の説明してなかったわ
落ち着くまで待とうかしら......

「たぁ!とぉ!」
風影の傀儡を操り、腕を前に突き出したたり素振りをするミサカを横目に御坂はため息まじりに一息入れた。

「!?」
急に御坂の身体が動かなくなり、目の前の時空が歪み出した。
サソリが使う空間転移に似ているが、凄まじい殺気が一点から拡張している。
「な、何が!?」
御坂は言うことを効かない身体を従わせようと力を込めるがサソリに繋がったままの携帯電話がするりと落ちた。
よくよく見れば傀儡を操っているミサカも身体のコントロールが出来ないようで冷や汗を流しながら、空間の歪みを見ていた。

一点から出て来たの写輪眼を移植したミサカの生首だった。
その髪を掴みながら『ゼツ』が3次元世界に這い出てきた。

「やあ、九九八二号」
黒白が身体の半身で別れ、背中から棘を出した奇妙な人間に御坂の生唾を飲み込む。
「ゼツ......様」
ミサカは息を荒くして震えた。
左脚に灼かれるような痛みが走る。
悪魔の実験は留まる事は無かった。
ゼツは手を伸ばすと、ミサカの金縛りを解く。
ミサカはフラフラしながらも懸命に二本の足でなんとか立っていた。

「さあ、こんな所に居ないで実験に復帰して貰おうかな」

実験?!
どういうこと!?

御坂は未だに解けない術に抗うように力を込めるが身体が石のように硬くなってしまったようで、声すら出せなかった。
足元には、微かにサソリの声が携帯電話から漏れている。

「はあはあ......ミサカは捨てられました」
「そんな事はないよ......君は貴重な資源(ゴミクズ)だからね」
耳まで裂け、鋭利な歯がギラギラと光り出す。
「サッサト殺サレテ来イ」
黒い半身が無機質な音域でミサカを見下すように言い放った。

「い、嫌です......ミサカにはしたい事が出来ました!」
ミサカは傀儡を片手にゼツに決死の猛抗議をした。
このまま行ってしまえば、殺されてしまう。
ミサカの言葉を受けても白い半身はニタニタと笑いながら、片腕に持っていたミサカの生首を目の前に差し出した。
「そうか」
「!?」
「断るなら、次にこうなるのはそこに居る御坂美琴かサソリかな。君が来れば手を出さないよ」

「貴様ハ死ヌ事ニ存在価値ガアル......真ッ当ニ生キル権利ハナイナ」
ゼツが印を結ぶと腕から鋭利な樹木が出現した。
「!?」
金縛りの術で動きが止められている御坂の首元に鋭利な樹木を向けた。
「見せれば満足するかな?」
血がタラリと御坂の首から流れ出して、首元の制服に染みる。
「あ......わ、分かり......ました。お願いします......お姉さまには手を出さないでください」
「うん、良い子だ」
満足そうにゼツが笑うと、信じられない物でも見るように鬼の形相を浮かべる御坂を見下ろした。

「初めましてだね御坂美琴。僕はゼツだよ。サソリとは同じ組織に属していてね色々とやったもんだよ」
ゼツは鋭利な樹木をしまうと掌からモニターを出現させる。

モニターには、サソリがスサノオを使ってミサカを傷付けている映像が流れた。
「!!?」
「サソリもこの実験の協力者だよ。あのクローンに傀儡を仕込んだのも実験の為さ......」

サソリが!?
そ、そんな
そんなの嘘よ!

「君は知らないだけさ......サソリは殺人鬼だからね。目的の為なら手段を選ばないよ」
モニターをしまうと黄色い光りを放つ瞳を御坂に向けた。
「サッサト行クゾ」
「まあまあ、御坂美琴の事も考えなよ......仲良くなったクローンがこれから殺されるんだからね。さぞ、心が痛むよね」
「......!?」
ゼツが御坂の顎を触りだした。
「そうだ......『かくれんぼ』をしようか。僕達が消えてから1分後に君に掛けた術が解けるようにしておこう。実験の場所を特定して止める事が出来ればクローンの命は助かるよ。ね、常盤台のエースさん」

御坂の髪が蒼色の電撃を放出してゼツ目掛けて電流を流した。
「オット......」
背中の棘が伸びて避雷針の役割を果たし、御坂の電撃を回避した。

「それじゃあ......ゲームを始めようか。御坂美琴、頑張ってね」
白ゼツは印を結ぶと、手に持っていたミサカの頭部の眼にチャクラが溜まり、時空を捻じ曲げ始める。
「お姉さま......ごめんなさい......ミサカは大丈夫で......す」
今にも泣き出しそうな顔をしながら、ミサカは風影の傀儡ごとゼツ達と時空間忍術により一点に凝縮されて行った。

御坂は自分の不甲斐なさに身体を震わせた。
クソ
クソクソーー!?
待ってなさい!
必ず後悔させてやるわ!

やり場の無い怒りは電撃となり、御坂を中心にバチバチと電流が発生する。
足元に転がる携帯電話はずっと前から通話のままであった。 
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