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特権階級

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第一章

                 特権階級
 その国でも革命が起こった、その時期は何かと世界中で革命が起こり人民の人民による人民の為の国家が生まれていた。
 この革命についてだ、大阪市内のある中学校で国語の教師である菅野興毅が言っていた。猿そのものの顔で如何にも柄が悪そうでスーツを着ていてもヤクザかチンピラにしか見えない。ボクシング部の顧問でもありいつも生徒を指導と称して殴っている。
 その彼がだ、授業の時に生徒に言っていた。
「この前の革命やけどな」
「ああ、あの革命ですね」
「また共産主義革命起こりましたね」 
 生徒達も菅野に応える。
「そうなりましたね」
「前の政権の大統領とか全員捕まったんですよね」
「それで銃殺になりましたね」
「あれでええんや」
 菅野は強い声で言った。
「特権階級なんてな」
「全員ですね」
「処刑してですね」
「皆平等になって」
「幸せになるべきですね」
「そや」
 まさにとだ、菅野はその如何にも品性が卑しそうな顔で言った。ある意味教師に相応しい顔であろうか。学校の教師程悪事が公になりにくい仕事もないのだから。セクハラも暴力も職権乱用もしたい放題である。
「皆平等で差別のない社会が共産主義国家や」
「それじゃあ日本も」
「やがては」
「共産主義になるべきや」
 菅野は言い切った。
「何時かはな」
「ですか」
「絶対にですか」
「そや、なるべきや」 
 こう生徒達に言うのだった、そして。
 生徒達は菅野のその言葉をこの時はまずは素直に聞いた。多くの者が共産主義は正しくその国は立派な差別のない完全に平等な国になると思った。
 だがその時菅野の話を聞いた前川賢章は家に帰ってその話を祖父の昭彦にするとだ。祖父は六十近いがまだ髪の毛は黒々としていて引き締まっている顔で妻と娘の血を引いていることがわかる孫の白い細面で厚い唇と丸い目を持つ中学生らしい丸坊主の頭の孫に言った。
「それはちゃう」
「ちゃうん?」
「その先生の言うこと気にするなや」
 こう言うのだった。
「絶対にや」
「先生の言うことちゃうん」
「ちゃうわ」
 絶対にという返事だった、祖父は夕食後の煙草を楽しみつつ孫に話していた。
「絶対にな」
「先生の言うことやのに」
「先生かて人間や」
 それ故にという返事だった。
「間違えることかてある」
「そうなん」
「これ話すのは御前が大人になってからしよと思うてた」
 昭彦は賢章にこうも言った。
「けど言おか」
「人間は誰でも間違えるんやな」
「そや、学校の先生でもな」
「そうなんや」
「それと共産主義はな」
 このイデオロギーそしてその下に動く国家のこともだ、祖父は話した。
「そんなええ国ちゃう」
「違いますか」
「そや、絶対にちゃう」
 このことは先程よりも強い断言だった。
「間違ってもな」
「ほなどんな国なんなん?」
「わしは陸軍におったやろ」
「士官学校におったんやったな」
「それで満州におった」
 つまり関東軍にいたというのだ。
「戦争が終わる時にな」
「それでソ連に捕まってシベリアにおったって」
「前に言うたな」
「祖母ちゃんと母ちゃんが言うてたわ」
 そして婿養子に入っている彼の父もだ、賢章に話していた。 
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