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猪突猛進

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第二章

「毎日ちゃんとな、頭に叩き込んでるからな」
「考えないでか」
「頭に教科書に書いてること叩き込んでるのか」
「だから成績いいんだな」
「そうなんだな」
「そうだよ、覚えてるんだよ」
 考えずにというのだ。
「そうしてるんだよ」
「だからか」
「それで成績はいいのか」
「考えないで覚える」
「そうしているんだな」
「お袋に言われたんだよ、あんた考えるの苦手だから覚えろってな」
 親だけによくわかっていることだった。
「とにかくな」
「それで考えないで覚えてる」
「文系でも理系でもか」
「数学も公式覚えてか」
「それでやっていってるんだな」
「教科書を何度も読めってな」
 考えずにというのだ。
「そう言われてな」
「成程な」
「まず覚えることか」
「考える必要ないか、学校の勉強って」
「そうなんだな」
「とりあえず俺はな」 
 暢樹はというのだ。
「それでやっていってるよ」
「何か凄いな」
「考えずに動いでもいいのか、勉強も」
「教科書開いて覚える」
「そうすればいいか」
「そうなんだな」
 皆話を聞いて言う、彼自身の。
「少なくともこいつ成績いいしな」
「猪突猛進でもか」
「覚えればいいんだな」
「勉強も」
「頭で考えるよりもな」
 ここでもこう言う暢樹だった。
「教科書開いてノートに書くんだよ」
「かなり斬新な勉強への考えだな」
「そのことは否定出来ないな」
「けれど実際にな」
「それで成績いいからな」
「じゃあそれもありか」
「そうした考えも」
 友人達は考えることはしないが成績優秀な暢樹を見て言った、彼は実際に考えずに行動してばかりだったがそれでもだ。
 成績もよく部活も頑張っていた、猪突猛進でもそれが彼を動かしていた。
 暢樹は八条大学文学部考古学科に進んだ、そこでも考えることなくとにかく前に動いていたが学ぶことには非常に積極的でだ。
 彼の性格から考えると意外なことによい論文も書いた、それでだった。
 大学の教授の一人にだ、直々にこう言われた。
「大学院に残ってだ」
「それで、ですか」
「考古学を研究してみないかね?」
「俺に学者になれってことですか」
「そうだよ」
 その通りだとだ、教授は暢樹に答えた。
「君にはその素質があるからこそ」
「そうですか」
「君ならね」
 それこそというのだ。
「いい学者になれるよ、風変わりでも」
「俺が考えないからですね」
「考えないで動くというのはね」
 教授は暢樹にさらに話した、彼の研究室の中で。
「学者向きではないがね」
「やっぱりそうですか」
「しかし君はまず本を開く、どんな本でも」
「それで学ぶからですか」
「フィールドワークも積極的だ」
 現代の学問には欠かせないそれもというのだ。 
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