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衛宮士郎の新たなる道

作者:昼猫
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第12話 眠る町

 
前書き
 Fate/Grand Orderのエネミーを一種類出します。
 士郎が相手とるのは何もサーヴァントや人間だけではありません。 

 
 ヒカルが復讐の一歩を歩き始めようとしている頃、士郎はシーマを相棒にパトロールに出掛けようとしていた。
 見送りに、何時もの様に寝泊まり含めて遊びに来ていた冬馬達が玄関まで来ている――――筈なのだが、今日ばかりは何故か就寝が早くていないのだ。
 代わりにと言うワケでは無いが、偽装を解除して今日こそは衛宮邸を守り切ろうと意気込んでいるエジソンの姿がそこにあった。

 「どう思う?」

 何が?とは言わない。言われずともエジソンも察していた。
 気をどれだけの量を持とうと高度に操れようと、魔力を持たぬ者達を唯人と言う。
 その唯人である冬馬達3人に加えて記憶喪失の預かりの美女2人の計5人ともほぼ同時に睡魔が襲ってきたので就寝すると言い残して、各自自分たちの部屋に戻って行ったのだ。
 だが夜も更けて行けばそう言う事もあるだろうが、問題は20時と言う時間帯だ。
 いくらなんでも早すぎるし、冬馬達はもしかすれば今日の学園生活で多くの体力を使ったからという理由があるかもしれないが、ティーネとリズは安全のために衛宮邸及び藤村邸の敷地内から一歩も外に出ていないので体力も有り余っている筈だった。
 にもかかわらず、2人までも早い時間からほぼ同時に就寝するなど可笑しい事態が起きていたからだ。

 「詳しいことは判らぬが・・・・・・何かしらの波――――電波の様なモノを感じるな」
 「・・・・・・その電波の影響で5人とも早くから寝床に着いたと?」
 「それぐらいしか推測できまい」
 「その電波は5人の体に対して悪影響は無いのか?」
 「私は医者では無いから詳しい事までは断言できぬが、失礼を取って(本人の許可では無く、何故か今此処には居ないスカサハ)5人の顔色を見たが、そこまで悪そうでは無かった筈だ」

 エジソンの現段階までにおける推測を聞いて、厳しい顔ではないが不安げは取れていなかった。
 しかしそれをシーマが尤もな言葉で焚きつける。

 「此処で推測ばかりしても始まらぬし、5人はスカサハが診てくれておるのだから、あとは我らが元凶を潰せば済む話であろう?」

 生前の記憶を一時的に失い自身の真名すらも未だに思い出せないシーマであるが、彼の本質は善性であるがために、士郎を焚きつけるも本人自体がこの事態に憤慨しているのだ。

 「さぁ、行くぞマスター!どのようにしているかは知らぬが、無辜の民たちを害そうとする何か或いは何者かを討ち、平和な日常を取り戻そうではないか!」

 義憤から来る鼓舞に、士郎にとっては好ましく、懐かしい感覚を齎す。
 まるで美しくそして強い自分の嘗ての騎士たるセイバーと背中を預け合い、最終決戦や終わらない四日間と言う異常を食い止めたあの時の感覚だ。
 魔術師としては確実に変人な部類に入るだろう士郎ではあるが、これこそ真に信頼し合えるマスターとサーヴァントの理想形の一つと言える感覚であろう。

 「ああ、頼りにしてるぞシーマ(セイバー)衛宮邸(うち)の守りは任せたぞエジソン(キャスター)!」
 「応とも!」
 「了解した!」

 そして士郎の信頼から来る本音に、2人のサーヴァントも応える。
 短い期間ではあるが、3人の信頼は既に揺らぎの無いモノになっていた。
 そうして今日も士郎は背中を任せられる相棒と共に、平和な日常を守るために衛宮邸を出て行った。


 -Interlude-


 それとほぼ同時刻に、冬木市と川神市内で同じことが起きていた。

 「何だよこりゃ!?」

 衛宮邸の隣の藤村邸では、魔術回路を唯一持つ吉岡利信以外の組員や藤村一族の全員が寝床或いは睡魔に耐えきれず、そのまま寝落ちしていた。
 他も同様で、街全体が――――。

 「矢張り全員トウマ達と同じように寝ているな、マスター」

 衛宮邸を出てすぐに待ちの異変に気付いた2人は、最初は近辺を調査して行き、今は少し離れた区域を調べていた。

 「――――ああ、これはいよいよ異常事態だ・・・!」
 「余には分からないが、マスターには何所からそのデンパとやらが来るのが分かるか?」
 「それは俺にも・・・・・・!?」
 「如何し・・・!」

 2人してほぼ同時に同じ方向へ振り向く。
 彼らが向いているのは隣の川神市方面である。

 「感じたな?」
 「マスターもな。この魔力の奔流は何だ?」
 「立ち話する時間も惜しいから向かいながら話す」

 それをアイコンタクトのみで了承するシーマは、士郎とほぼ同時に魔力の奔流の発生源へ駆けて行った。士郎としては今起きている街の異常現象と無関係とは思えなかったからだ。
 だがそれ以上に魔力に発し方に覚えがあるのだ。
 それは士郎自身がシーマとエジソンを召喚した際のものと酷似しているのだから。


 -Interlude-


 魔力の奔流発生が起こる前、ヒカルは激痛に耐えていた。

 「ハッ・・・・・・ハッ・・・ッッッ~~~~~~~!!」

 これは男が持つ魔導書の力を手にするための儀式。
 本来ならば魔術回路を持っているのであればその様な儀式は要らないのだが、ヒカルにはそれが無いのでこの儀式を通過しない限り復讐の力が手に入らないのだ。
 しかしその痛みもだんだん薄れて行き呼吸も整えることが出来てきた。
 そして――――。

 「至ったな?」
 「・・・・・・・・・・・・はい」

 ヒカルは見事儀式を耐え抜き、復讐のための力を振るう資格を手に入れたのだ。

 「見事だヒカル。だが今日はもう疲れただろ?それ故、続きは明日に――――と言うのは野暮か?」
 「はい、今や、らせてくだ・・・さい。私は少しでも早くアイツ等に復讐したいんです・・・!」
 「クク、呼吸は整えられても痛みが引いていないのに無茶な奴だ」

 言葉とは裏腹に実に愉快気に話す男。
 だがこの男はヒカルの無茶を好ましく思う。
 復讐の成功率を上げるには、感情に支配されずに精密に寝られた計画をただ淡々とこなしていくことこそ重要だ。
 しかし何時でも計画通りに行くとも限らない原因が、世に見えずとも蔓延っているのが“理不尽”であり、その時のここぞという時に踏ん張り乗り越えて行ける要因こそが強烈すぎる感情だ。
 故に男は、ペース配分を全く気にしないヒカルの無茶を止めようとは思わない。
 ――――何せこれは俺のでは無く、ヒカルの復讐劇なのだから。

 「だがいいだろう。望むなら、今この場でお前の“憤怒”に相応しい反英雄を召喚してやる」

 男はヒカルの望みのまま、英霊召喚の儀に移る。
 そうして魔法陣が一瞬にして浮かび上がると、まだ詠唱も始まっていないのに魔力の奔流が起きる。
 それを距離の離れた高層ビルの屋上で見る者がいた。

 「相変わらず見境もなく、魔力をまき散らすモノだ」

 それはヒカルにとってのファリア神父を担っている男を、この国に連れてきたとあるサーヴァントだった。
 このサーヴァントのクラスは弓兵(アーチャー)では無い。
 その為千里眼の様な遠見スキルの視力頼りでは無く、別の方法を使って視ているのだ。
 それはさて置き、このサーヴァントはその2人を見ている方法と同じやり方で葵紋病院に向かって来る1人と1体を感知した。

 「それ見た事か。魔力を感知したこの町の魔術師とサーヴァントが向かって来てるではないか」

 言いながら何もない宙でキーボード操作をするように手を動かす。

 「私の配慮が無ければどうなっていたか知れたモノでは無い」

 それまで淡々と作業をしていたが、最後には誰に聞かせるでもない愚痴を虚空に向けて呟いた。


 -Interlude-


 葵紋病院と言うよりも、川神市を目指して駆けて行く2人の聴覚に駆動音が聞こえてきた。

 「ん?」
 「下がれ!」

 2人揃って瞬時に後退すると、轟音と同時に元いた場所には鉄礫の雨が容赦なく降り注いだ。

 「何!?」
 「フッ!」

 事態に士郎よりついていけないシーマはそれを降り注いだ方を見ると、シーマにとって初めて見るガトリング(凶悪そうな機械)ごと士郎の投擲によって串刺しにされた人形の姿があった。
 士郎が瞬時に気付けたのは、聞きなれた音からガトリングだと直に判断できたからだ。

 「人形!?」
 「ぼーっとするな、シーマ!魔力をエネルギー源として動く魔導自動人形、オートマタ、だっ!」

 駆動音から背後から2体ほど迫って来てる事に気付いた士郎は、投影した二本の無銘の剣を振り向かないまま投擲して、最初のと同じくどちらもスクラップに変えた。
 シーマが遅れを取っているのは士郎よりもこの手の相手との戦闘経験の無さが原因だった。
 しかし驚くほど学習能力の速いシーマは、今のこの戦いだけでこの手の相手への対処の仕方を吸収してしまう。駆動音を微かにでも聞こえた瞬間、シーマは一気に加速して標的のオートマタ3体を横薙ぎに纏めて切り裂いた。更には瞬時に振り向くと同時にブーメランのように自分の剣を投擲して、他のオートマタたちの破壊中の士郎の背後から迫る飛び上がった4体の新手をまたしても切り裂く。
 その隙を狙っていたかのように、サイレントオートマタの1体がシーマの背後から彼の頭をたたき割るように迫っていたが、今度は士郎の投擲によってそれもスクラップに変えられた。

 「油断大敵。今みたいなサイレントは地面から伝わる僅かな振動か、目視じゃないと気が付かないぞ?」

 目視は兎も角地面から伝わる僅かな振動で敵の察知をするなど一握りの人間にしかできない芸当だが、士郎はシーマに当然できるだろと言う風に助言をした。信頼だけでは無く確信があるのだ。シーマの学習能力は百代の才能(それ)だって遥かに上回っていることに。

 「なるほど。その助言、感謝――――」

 またも一気に加速して士郎の真横を通過し、士郎の背後側にある路地から今まさに出てきたサイレントオートマタを唐竹割りで切り伏せた。

 「――――するぞっ!だがなマスター、信頼してくれるのは嬉しいが試すのは如何かと思うぞ?」
 「時と場合にもよるし、俺は確信があったからこそ背後から迫って来る敵を任せたん、だっ!」

 数が多くなってきたので、核部分だけを抉ってから爆発する前に集まってる所へと蹴り飛ばして巻き添えにする。
 しかしそれでも数は減るどころか増えている。
 町の一角にて起きた戦闘で、路地裏でもないのにオートマタの群れで2人を囲う様にわらわらと増えてきた。
 それに対して2人は、お互いに背中合わせに敵を見据える。

 「小細工はやめて、如何やら物量に切り換えた様だな」
 「余程我らを近づかせたくないのだろうが、電波を出す者或いは物と英霊召喚地(どちら)にだ?」
 「両方だろ。何方も放っておくわけにはいかないし、正直危険だが二手に分かれるしかないな」
 「ならばマスターはデンパを出す方に。余はそのデンパとやらはよく解らないしな」
 「了解した。あと、こんなタイミングで無いとも思うが、自分の真名を思い出せたら遠慮なく宝具を展開してくれていいぞ?」
 「分かったが、気を付けるのだぞマスター!」
 「シーマもな!」

 言い終わると同時に、お互いその場から加速してオートマタの群れに切り込んでいく。
 危険を承知で2人は別行動する事にした様だった。


 ーInterludeー


 士郎達を現在襲っているオートマタの軍勢は、川神市と冬木市の両地で半休眠状態でランダムにばら撒かれている。
 基本ステルスを掛けたままだが、魔術回路を有する者(・・・・・・・・・)や敵性サーヴァントが英霊召喚地に近づき次第、排除行動を起こさせる様に組まれている。
 にもかかわらず、何故か今まさに魔術回路を有していなかった者(・・・・・・)がオートマタに囲まれて襲われていた。

 「何だこいつ等っ!?」

 その人物は黒髪のロングヘアの自称絶世の超絶美少女の川神百代であった。
  
 

 
後書き
 とあるオリ鯖で登場させようとしていたのが、先日を期にオリ鯖では無くなった。嬉しいような悲しいような、複雑な気分です。 
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