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SAO~円卓の騎士達~

作者:エニグマ
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第七十二話 絶剣

~アーサー side~

新年が明け、冬休みも残すところ少しとなった頃。

新アインクラッド二十二層が解放され、アスナとキリトはかつて住んでいた湖側の家を購入した。

そして、その家で、現在冬休みの宿題を一掃すべく集まっていた。

シリカ「ね、眠いです。」
アスナ「ほら、頑張って宿題やっつけちゃおう?」
シリカ「はい。」
リズ「ねーねー、シンタロー。 ここどうすんの?」
シンタロー「ここは、えーと、あった。 この公式使えば出来る。」
リーファ「むぐぐぐぐぐ。」
コジロウ「だ、大丈夫ですか?」

宿題を驚異のペースで終わらせた男子陣と世紀の天才、シンタローの力を借りつつ宿題を進める。

アーサー「そーいえば、ユニークスキルって十個あったんだよな? 他のってどんな奴だったんだ?」
ランスロット「ふむ、今判明してるのが『龍爪剣』、『神聖剣』、『二刀流』、『二刃刀』、『大太刀』、『糸使い』だったね。 残りは四つ、弓を使う『射撃』スキル、武器を使わない『格闘王』スキル、俊敏値を上げる『神速剣』、そして剣と鞭を合わせた『蛇腹剣』だ。 そういえば、知ってるかもしれないがユニークスキルにのみ最上位スキルのさらに上、秘奥義ソードスキルを設置した。」
アーサー「あぁ、俺のは『天衣無縫』だったな。 結局、実戦で使うことなかったけど。」

と、雑談をする元アインクラッド攻略組ツートップ。

キリト「zzzzzz」

椅子に座りながらピナとユイと一緒に寝ているキリト。

リズ「そう言えば、知ってる? 『ゼッケン』って呼ばれてる超強豪。 あ、字は絶対の絶に剣ね。」
アーサー「『絶剣』か。 プレイヤー狩り(PKer)か? それともデュエル専門(PvPer)か?」
リズ「後者らしいわよ」

そこでリズが新たな話を持ち出し、俺は興味本位で聞く。
なんでも、そのプレイヤーはデュエルを専門とし、二十四層の主街区『パナレーゼ』の北部にある大きな樹木が生えた小島があり、その樹の根元に毎日午後三時になると現れ、立ち合い希望のプレイヤー一人ずつと対戦するらしい。

さらに新顔ということらしく、最初は『MMOトゥモロー』の掲示板に対戦者を募集する書き込みを入れ、それに「生意気だ」と感じた三十人ほどのプレイヤー達が挑んだのだが、見事に三十人全員が返り討ちに遭ったという。

さらにHPを三割削れた者は一人もいなかったそうだ、それだけでかなりの手練れだということがわかる。

サクラ「リズさんとリーファさんも、挑んだんだよ。」
アーサー「ほぉ。 で、勝敗は?」
「「うぐっ…」」

サクラが二人も挑んだことを明かし、どうなったのか聞いたが彼女らの反応で理解し、苦笑してしまう。

ランスロット「だが辻デュエルだと大会とは違い経験値の死亡(デス)ペナルティは相当なものだが、よく挑戦者が減らないね。 なにかレアアイテムでも賭けているのかね?」
シノン「あ~、それは必殺技級のOSS(オリジナル・ソードスキル)を賭けているのよ。」
シリカ「見たところ、片手剣系汎用の十一連撃なんですよ。」
アーサー「それはまた、」

代表してシノンが答えて続きをシリカが紡ぎ、さすがに俺も驚いた。

俺達以外で、まさか十連撃以上のスキルを編み出せる人間がいたとはな。

現在、俺達以外で最も多い連撃を繰り出すOSSを開発したのは、

サラマンダー領の将軍であるユージーンの八連撃スキル《ヴォルカニック・ブレイザー》であるが、それを超えたか。

アーサー「面白そうだな。」
リーファ「先輩、挑んでみたら?」
アーサー「そうだな。 明日辺りにでも、行ってみるか。」

そしてその翌日。
アインクラッド第二十四層主街区、『パナレーゼ』。
そこの小島にある大きな樹木の根元には俺達以外にも多くのプレイヤーが集まっていた。

俺の姿を確認すると、周囲のざわめきが大きくなった。

「『円卓の騎士団』だ!」、「『円卓の騎士王』のお出ましか」、「『絶剣』も終わりかもな」という声がちらほらと聞こえる。

そして午後三時、渦中の人物がやってきた、って。

アーサー「女の子、なのか。」

さすがに驚いた。 種族は闇妖精族(インプ)、瞳は赤紫色、肌は影部分に紫がかった乳白色、

髪は長く伸びたストレートで濡れ羽色ともいうべき艶のあるパープルブラック、

胸部分は黒曜石のアーマーで覆われ、その下にはチュニックを着用、ロングスカートは矢車草のような青紫、

腰には黒く細い鞘が据えられている。

絶剣「えっと、今日も集まってくれて、ありがとうございます! 早速ですが、対戦する人いませんか~? アレ?」

天真爛漫とも取れる彼女の言葉、しかし集まった者達からは手が上がらない。

というか皆さん、何故に俺の方を見ているのですか?

リーファ「多分だけど、みんな先輩が来てるから遠慮してるんだと思うよ?」
アーサー「お、おいおい、」

せめて一試合くらい見てからにしたかったんだが、仕方が無い。

アーサー「俺だ。」
絶剣「あ、はーい。 お兄さんが相手ね。」
アーサー「ルールはアリアリか?」
絶剣「そだよ! アイテムも魔法も何でもアリ! 僕はこれだけだけどね。」
アーサー「そうか。 なら俺もこれだけで良い。」
絶剣「そう? じゃあ、地上戦と空中戦、どっちが得意?」
アーサー「どっちもアリ、って言うのはどうだ?」
絶剣「うん、いいよー。」

そこで彼女を見据えていると、ギルドタグのアイコンがついており、左右に白い翼を伸ばしたピンク色のハートというデザインの印章(シギル)が表示されている、ギルド所属か。

少女が右手を振るってシステムウインドウを操作し、俺の前にデュエル申し込み窓が出現した。

―――[Yuuki is challenging you]

ユウキ、それが名前か。

アーサー「アーサーだ。 よろしくな。」

一応戦う前に握手をしようと手を差し出す。

ユウキ「僕はユウキ! よろしく!」

ユウキはそれに応じた。

『初撃決着モード』、『半減決着モード』、『全損決着モード』、3つのオプションから選ばれるのは全損である。

SAOの時とは変わったな、こんなあっさりと選べるなんて。

その考えを頭の奥に押し込め、OKボタンをタッチし、デュエル窓が消滅、10秒のカウントダウンが始まる。

龍爪剣に手をかけ、居合いの型を取る。
彼女、ユウキも左腰に据えていた黒曜石のような色合いである細めの片手用両刃直剣を抜き放ち、中段に構えた。

『DUEL』の文字が一瞬の閃光を放ったと同時に、彼女は約7mある距離を詰めるように駆け出した。

俺は動かない。

間合いに入るまで待つ。

ユウキ「やあぁぁぁ!!」

突きを放ってきたのを下にしゃがんで回避、そして一気に蹴り上げる。

ユウキ「か、はっ!」

ユウキはモロに受け、上空に飛ばされるが直ぐに羽を展開し、またこちらに来た。

ユウキ「はああぁぁぁぁ!」

超高速の剣劇が来るが、剣筋が真っ直ぐすぎて攻撃が読みやすい。

アーサー(反応速度は通常状態のキリトといい勝負、いや、それ以上か。 もったいないな。 ここまでのセンスを持つ奴は中々居ないのに。)

ユウキ「っ、お兄さん、やるね。」

一旦距離を取ったユウキが話し掛けてくる。

アーサー「まだ俺ここから一歩も動いてないんだが、」
ユウキ「えっ、あっ、ホントだ。 むー、絶対に動かしてやる。」

そう言ってまたこっちに突っ込んできた。
俺はそれに対して剣を横に振って対応しようとするが、ユウキはスライディングでそれを避け、ジャンプど同時に剣を振ってきた。

「あ、当たったか!?」

などと観客から聞こえた。
が、

アーサー「あぶねー。」

俺はそれを左手で剣を白羽取りして防いだ。

ユウキ「う、ウソでしょ!?」
アーサー「考えたな。 だが、まだまだだな。」
ユウキ「うー、ムカつくー!」
アーサー「そろそろこっちから行くぞ!」

距離を取ったユウキを追うように飛び出し、一気に間合いを詰める。

だが、ユウキは俺の怒濤の攻撃を全てパリィして見せた。

だが、今のは上級者レベルならギリギリ受けきれるレベルのもの。

ズガガガガガガガ!

時間にして一秒、その間に放った十四の攻撃全てをパリィされた。

おいおい今の割りと本気だったぞ。

勝つには『ゾーン』は絶対に必要か。

アーサー「っ!」

その一瞬で突きが飛んできた。
それをギリギリ避けるが僅かに掠り、ダメージが入る。

後ろに跳び距離をとる。

アーサー「ふぅ。 悪いな、絶剣、お前のこと見くびってた。 こっからは本気で行くぞ。」

そう言って『覇気』と『ゾーン』を解放する。

ユウキ「っ!? 遊びはおしまいって事で良いのかな?」

一瞬驚いた顔をしたが、軽口を言える分まだ余裕があるのだろう。

一気に距離を縮め、さっきまでとは比べ物にならないくらいの速度、連撃の攻撃を繰り出す。

少しずつ、ユウキのHPが削られ、その表情は焦りの色が濃い。

そこで俺はホンの一瞬だけ剣劇を止めた。

ユウキ「ここ、っだぁ!」

それを見逃さずにユウキの剣が青紫色の光を帯びた、ソードスキルの発動だ。

だが、この一瞬だけ動きを止めたのも俺のOSSを発動させるため。

龍爪剣を白い光が覆う。

俺のOSSは正八角形を描くように切った後、中心に五発の突きを放つ《ナイツ・オブ・ラウンズ》十三連撃、対するユウキは左肩から右斜め下へ向けての5連続突き、次いで左下腹部から右斜め上へ向けての5連続突き、最後にその斜め十字を形作った突きが交錯した部分に向けての強烈な突きを繰り出した。

これが噂の十一連撃OSSか。

だが、相手が悪かったな。

最後に互いに放ちあった突き、それによって少女の剣は音を立てながら弾かれて空中を舞った後、彼女の背後に突き刺さった。

対して俺の剣は健在。
最後の二発でスキルを止め、ユウキの首に突きつけている。

彼女のHPはまだ残っているが、残り10%を切っている。

少女は息を吐き、残念そうな表情をした。

ユウキ「あ~あ。 負けちゃったか。」
アーサー「いや、お前自身の戦闘センスは大したもんだ。 師匠が付いて、経験をもっと積めばもっと強くなれるぞ。」
ユウキ「そ、そう? 照れるな~。 ま、取り合えずリザイン。 で、お兄さん、ちょっと良い?」
アーサー「ん?」
ユウキ「僕、ずっとピピッと感じる人を探してたんだけど、ようやく見つけた! お兄さんはまだ時間大丈夫?」
アーサー「まぁ、問題ないけど、」
ユウキ「それじゃあ、ちょっと僕に付き合って!」

興奮冷めやらぬユウキの言葉に頷き、剣を収めた彼女の右手を同じく剣を収めてから握ると、翅を出現させたので、俺もすぐに翅を出現させる。

そして2人して体を浮かせると、ユウキは手を引いたままロケットのような速度を出して、

って、おい!?

サクラ「ちょっ、アーサー!?」
アーサー「悪い! 後で連絡するから!」

そのままアインクラッドの外周部から現在の最前線である、常闇に包まれた第二十七層の主街区『ロンバール』へとやってきた。

彼女に理由と行先を訊ねたけれど、まずは仲間を紹介すると言われ、一件の宿屋の中へと通された。

奥にある酒場兼レストランに足を踏み入れると、

???「ユウキ、おかえり! もしかして見つかったの!?」

一人の少年の声が俺達を迎えた。酒場のテーブルに六人のプレイヤーが居て、他に人影はない。
ユウキは六人のところに移動した。

ユウキ「紹介するね。 僕のギルド、『スリーピング・ナイツ』の仲間達だよ! それで、このお兄さんが」
アーサー「ど、ども、アーサーです。」
ジュン「僕はジュン! よろしく、アーサーさん!」

俺達を声で迎えた小柄な火妖精族(サラマンダー)の少年。
頭の後ろで小さく結んだオレンジ色の髪をしている。

テッチ「テッチって言います、どうぞよろしく。」

今度は大柄な土妖精族(ノーム)の男性がそう言った。

砂色のくせっ毛の下でにこにこと細められた両眼が愛嬌を添えている。

タルケン「ワ、ワタクシは、タ、タルケンって、名前です。 よろ、よろしくお願い、しま痛いっ!?」

鍛冶妖精族(レプラコーン)の男の人は黄銅色の髪をしていて、丸眼鏡を掛けている。

なんだか凄く緊張しているようで、顔も紅くなってる。 最後の悲鳴は彼の隣に座る女性プレイヤーに脛を蹴られたからだ。

ノリ「まったく、いい加減その上がり性を直しなよ、タル。 アタシはノリ、会えて嬉しいよ、アーサーさん。」

太陽のように広がった黒髪と浅黒い肌を持つ女性は影妖精族(スプリガン)。

シウネー「はじめまして、私はシウネーです。 来てくださって、ありがとう。」

次は水妖精族(ウンディーネ)の女性で、ほとんど白に近いアクアブルーの髪をしており、伏せた長い睫毛の下の瞳は穏やかな濃紺に輝いている。

ラン「私はランです。 この子の姉です。」

そう言ったのは猫妖精族(ケットシー)の女性。
茶色の髪と耳と尻尾でユウキよりは落ち着いているもの、どこか似ている感じがする。

ユウキ「そして、ボクがギルドリーダーのユウキです! アーサーさん、一緒に頑張ろう!」
アーサー「・・・なにを?」

すると彼女はキョトンとしたあとで、「あっ」と漏らしてからこう言った。

ユウキ「そういえば、まだなんにも説明してなかった!」
ラン「このおバカ!」
ユウキ「あたっ!?」

ユウキがランにデコピンされた。

ラン「本っ当にすみません! ウチのバカな妹がご迷惑をお掛けして!」
アーサー「いや、まぁ、大丈夫です。」

何が大丈夫なのかは自分でも分からない。

ラン「ユウキ、ほら、自分で説明しなさい。」
ユウキ「えっと、改めてお願いします。 僕達に手を貸してください!」
アーサー「いや、だから、何を?」

彼女達はこの層のボスモンスターそれも、フロアボスを倒したいということだった。
しかも他のボス攻略ギルドと共に倒すのではなく、自分達七人で倒したいというもの。
けれどこの新生アインクラッドのボスの実力はかなりのもので、SAO時代のものより遥かに強い。
現に、レイドパーティーの最大人数である四十九人構成で攻略を行う人達がボスに挑んだけれど、全滅するという結果が何回もあるそうだ。

俺達が参加したのは二十一層以降では二十三層と二十四層の攻略だけで、そのあとは参加していない。
因みに俺は一回だけ十四層のボスをソロで撃破した。
そんな中で、彼女達は二十五層と二十六層のボスに七人だけで戦いを挑み、敗北してしまったという。
どうして、そこまでしてフロアボスを単独で倒したいのかと聞いてみると、

ユウキ「うーん? ゲーマーとして?」
アーサー「あー、なるほど。」

よく分からないが、何となく理解は出来た。
正確には第一層の『始まりの街』にある『黒鉄宮』、そこの『剣士の碑』に名前を刻みたいのだ。
だが、複数のパーティーで成功すれば、各パーティーのリーダーのみが名前を刻まれる。 けれども一つのパーティーで行うとそのパーティー内のメンバー全員の名前が刻まれるのだ。
つまり、証を残す為にどうしても自分達でボスを倒したい。

アーサー「で? 俺に何を頼みたいわけ? パーティーは七人までで、変則的にNPCが入って八、九人パーティーになることはあるけど、プレイヤーだけで組む場合は七人が限度だぞ。」
ユウキ「うん、それは分かってるよ。 だから、僕達を鍛えて欲しいんだ。」
アーサー「・・・俺だけだと限度があるぞ。 ダメージディーラーとタンクなら教えられるけど、ヒーラーとか後方支援の方は無理。 ・・・あー、でもシンタローとかその辺に頼めば、、何とかなる、、か?」
ユウキ「お願いします!」

そう言って頭を下げてくるユウキ。
実にやりづらい。

アーサー「分かったから顔上げろ。 じゃあ、今日はもう遅いから、明日の午前十時、予定が空いてたらウチのギルドホームに来い。 場所はイグシティの東、世界樹からだいたい百メートルくらいの所にある。 目印はギルドの旗、十三本の武器が円状に並んだ絵が描いてある。 ギルド名は『円卓の騎士団』だ。」
タルケン「え、ええ、『円卓の騎士団』!? さ、最強ギルドじゃないですか!?」
ラン「でも良いんですか? ギルドホームを使って。」
アーサー「構わない。 俺がギルドマスターだからな。 で、予定は?」
シウネー「全員大丈夫です。」
アーサー「じゃあ、明日の十時、待ってるぞ。」

そう言って俺は酒場から出た。

しかし、二十七層とはな。
出来れば俺達『ビーター』九人で攻略したかったが、俺の認めたユウキとその仲間だ。

譲るか。

~side out~ 
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