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SAO~円卓の騎士達~

作者:エニグマ
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第六十八話 聖剣獲得目指して

~和人 side~

ある朝、スグより一足早く朝食を食べていると、

直葉「お、お兄ちゃんお兄ちゃん! これ見て!」
和人「朝から騒がしいな。 どうした?」

手渡されたのはタブレット端末、開かれていたのはALOの攻略ページだ。

そしてそこにはこう書かれていた。

『最強の剣、エクスキャリバー、遂に発見!』

和人「な、なにぃ!?」
直葉「まだ見つかっただけだけど、どうやったんだろう?」
和人「さ、さぁ? 俺達と同じ様に動物型邪神を助けた奴がいるってことか?」
直葉「やっぱり、それしか無いよね?」
和人「ま、細かいことは後だ。 さっさと食べて、ダイブして、取りに行こう。」
直葉「そだね。」

取りに行くこと前提なのは気にしないで貰いたい。

そして数十分後、

シリカ「クラインさんは、もうお正月休みですか?」
クライン「おう、昨日っからな。 働きたくても、この時期は荷が入ってこねーからよ。 社長のヤロー、年末年始に一週間も休みがあるから、ウチは超ホワイト企業だとか自慢しやがってさ!」

クラインは、これでも小規模な輸入商社に勤める歴とした会社員だ。
何時もブツクサ社長の悪口を言っているが、SAOに二年間囚われた彼の面倒をきちんと見、生還後も即座に仕事に復帰出来たのだから、実際はいい会社なのだろう。
壁際に寄り掛りそんなことを考えていたら、当のクラインがじろっと俺を見て言った。

クライン「キリの字よ、もし今日ウマいこと《エクスキャリバー》が取れたら、今度オレ様のために《霊刀カグツチ》取りに行くの手伝えよ。」
キリト「えぇー、あのダンジョンクソ暑いじゃん。」
クライン「それを言うなら、今日行くヨツンヘイムはクソ寒いだろうが!」

低レベルな言い合いをしていると、左隣からぼそっと一言。

シノン「あ、じゃあ私もアレ欲しい。 《光弓シェキナー》」

ウグッ、と言葉に詰まりつつそちらを見やる。
壁に背中を預け、腕組みをして立つのは、水色の短い髪からシャープな形の三角耳を生やしたケットシーの女性プレイヤー、シノンだ。

キリト「き、キャラ作って二週間で、もう伝説武器を御所望ですか。」

シノンは細長い尻尾をひゅんと動かして答えた。

シノン「リズが造ってくれた弓も素敵だけどさ、できればもう少し射程が、」

すると、工房奥の作業台で、まさにその弓の弦を張り替えていたリズベットが振り向き、苦笑いしながら言った。
因みにここはリズの店なのだが、奥の方ではギルドホームと繋がっている。

リズ「あのねぇ、この世界の弓ってのは、せいぜい槍以上、魔法以下の距離で使う武器なんだよ! モンスターを百メートル離れたところから狙おうなんて、普通しないの!」

それに対してシノンは肩を竦め、澄ました微笑を浮かべる。

シノン「欲を言えば、その倍の射程は欲しいとこね」
シンタロー「右に同じだな。 俺は《神弓キム・クイ》な。」
アーサー「じゃあ、俺は《神器アマノムラクモ》と《炎剣レーヴァテイン》。」
キリト「さらっと《エクスキャリバー》と同等以上の剣の名前が出てるのは気のせいだろうか? そっちは?」
サクマ「俺はいい。 使い慣れたこの二本が一番だ。」
コジロウ「俺もですね。 こんな長い刀、そうそう有りませんし。」

と話していると、俺の右にある工房の扉が勢いよく開いた。

ストレア「帰ったよー!」
アルゴ「お邪魔するヨ。」
アスナ「お待たせ!」
リーファ「たっだいまー!」

市場から此処まで、アイテムをアイテム欄に収納しないで運んで来たらしく、三人のバスケットから色とりどりの小瓶や木の実が部屋の中央のテーブルに積み上げられていく。

アスナの肩からぱたぱたと飛びたった小妖精、ナビゲーション・ピクシーのユイが、俺の頭の上にちょこんと座った。
俺の髪は長いことつんつん逆立てていたが、ユイの要請によって髪を下ろしている。
理由は、《座りにくい》、からだそうだ。
俺の頭上の上で、ユイは鈴の音のような声ではきはきと言った。

ユイ「買い物ついでにちょっと情報収集してきたんですが、まだあの空中ダンジョンまで到達出来たプレイヤー、またはパーティーは存在しないようです。 パパ。」
キリト「へぇ。 じゃあ、なんで《エクスキャリバー》のある場所が解ったんだろ。」
ユイ「それがどうやら、私たちが発見したトンキーさんのクエストとは別種のクエストが見つかったようなのです。 そのクエストの報酬としてNPCが提示したのがエクスキャリバーだった、ということらしいです。」

ポーション類を整理していたアスナが、青いロングヘアを揺らして振り向くと、小さく顔を顰しかめて頷いた。

アスナ「しかもどうやらソレ、あんま平和なクエじゃなさそうなの。 お使いや護衛系じゃなくて、スローター系。 おかげで今、ヨツンヘイムはPOPの取り合いで殺伐としてるって」
キリト「そりゃ、確かに穏やかじゃないな。」

スロータ系とはその名が示す通り、《○○というモンスターを○匹倒せ》とか《○○というモンスターが落とすアイテムを○個集めろ》とかいう類のクエストだ。
必然、指定された種類のモンスターを片端から狩りまくるので、同じクエストを受けているパーティーが狭いエリアで重なると、POP、つまりモンスターの再湧出を奪い合って場がギスギスしてしまうのだ。

アーサー「アルゴ、他に情報は?」
アルゴ「そのクエを依頼したNPCの名前くらいしか無いゾ。」
アーサー「そうか。 ならいい。」
キリト「で、パーティーは、この全員だな? 回廊結晶使えば良いだけだもんな。」
アーサー「あぁ。 じゃ、今回のリーダー。 意気込み。」
キリト「えーと、みんな、今日は急な呼び出しに応じてくれてありがとう! このお礼はいつか必ず! 精神的に! それじゃあ、《エクスキャリバー》獲得クエ、いっちょ、頑張ろう!」
「「「「「お――!」」」」」

俺はくるりと振り向き工房の扉を開けると、イグシティの真下、アルン市街から闇と氷の世界ヨツンヘイムに繋がる秘密トンネル目指して、大きく踏み出した。

~side out~ 
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