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SAO~円卓の騎士達~

作者:エニグマ
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第五十五話 GGOでの戦い方

~シンタロー side~

森独特の空気を吸い込み、標準を合わせる。
今回のBOB、参加者の中で本選出場しそうな奴のデータは全て事前に記憶済みだ。
これまで行われた二回のBOBの映像でめぼしいプレイヤーのほとんどの癖などは知っている。
さらにはこの予選フィールドで敵と自分の出現位置も大体把握している。

シンタロー「決勝まではつまらないな。」

そう呟き、俺の銃、《ダネルNTW-14.5》で千メートル近く遠くにいる敵を撃つ。
コンマ数秒遅れて敵の頭が吹っ飛ぶ。

シンタロー「うっし、絶好調。」

一回戦突破だ。

~side out~

~エネ side~

エネ「ったく、あいつは人を向かわせといて何も連絡してこないとか、バッカじゃないの!?」

両手に拳銃を持ちながら荒野を歩いてそう呟く。

エネ「いた。」

遮蔽物がほとんど無いこのフィールド、相手の武器はアサルトライフルだ。
普通なら不利なこの状況。
だが、こういう不利な状況ならでこそ、こう、燃える。

歩きから走りに移動手段を変える。
このゲームをプレイし始めてから、私はビルドを変えた。
超AGI型にしたのだ。

撃ってくる弾を回避し、ほぼゼロ距離まで縮める。

そして、ジャンプして相手を飛び越えながら、数発撃つ。

エネ「楽勝ね。」

一回戦くらいでは本気を出すどころか、準備運動にもならない。

~side out~

~コノハ side~

僕は遺跡の中を歩きながら敵を探している。

コノハ「遺跡ってトラップもあるんだよね。 面倒だなぁ。」

そう言いながらメインウェポンである《M4A1カービン》を握り直す。
これはアサルトライフルの中でも小型に分類され、室内戦でもその効果を発揮しやすい。

コノハ「っと、これは、トラップだけど、プレイヤーによって仕掛けられた奴だね。 ってことは、近くに居る、のかな?」

確かこの角を曲がった先は行き止まりのはず。
仕掛けてみようか。

腰にぶら下げられたプラズマグレネードを持ち、投げる。

「くそっ!」

それに反応して奥からプレイヤーが出てきた。

コノハ「残念だったね。」

そのプレイヤーを蜂の巣にし、倒した。

取り合えず一回戦は突破だ。

~side out~

~キリト side~

俺は遺跡の跡地のような場所に転移され、で、周りを確認してたら、

キリト「のわっ!」

俺の体を複数の弾道予測線が抜けていったので、慌てて近くの柱に隠れる。

そこで射撃が止んだが、俺が顔を出すとまたそこを狙ってくる。

キリト「どうすりゃ良いんだよ。 ・・・・そうだ。」

昔見た、とあるSF映画を思い出し、光剣を構える。
そして、気配を感じ、一気に飛び出す。
その途中で、六本の弾道予測線が俺の体に伸びてきた。
そこに光剣の刀身を当て、寸分の狂いもなく遮った。
光剣を閃光のように動かし、二弾、三弾と銃弾を全て弾いていく。
弾くと同時に、耳元でプラズマエネルギーによって弾かれる衝撃音がする。

「冗談だろ!?」

ここからなら、届く。
そう考え、腰のFNファイブセブンを取り、撃ちまくる。
その内の三発ほどが敵に当たり、僅かながら隙が出来る。

キリト「おおぉっ!」

そのまま光剣で《ヴォーパル・ストライク》を放ち、敵を倒した。

キリト「しっかし、銃弾を切るって疲れるな。」

慣れないこともあるだろうが、それ以上に集中力の消費が半端じゃない。

勝てたから良しとするか。

俺が待機エリアに戻ると、ちょうどサクマの試合も終わった所であった。
俺はサクマに歩み寄った。

キリト「勝ったか?」
サクマ「当たり前だろ。」

シノンはまだ戻って来ていない。
ということはまだバトル中だということだ。
シノンが映っている場所を探している、その時だった。
俺とサクマの後ろから声がしたのは、低く乾いた、それでいて金属質な響きのある声だ。

???「おまえたち、本物、か」
キリト、サクマ「「ッ!?」」

反射的に俺達は跳び退き、振り向く。
全身ボロボロに千切れかかったダークグレーのマント。
目深に被ったフードの中には漆黒で、その奥の眼だけが仄かに赤く光る。
俺は一瞬ゴーストと見間違えてしまった。
だが、この世界にゴーストが居るはずがない。
俺はこのプレイヤーの足元を確認した。
すり切れたマントの裾から、ほんの少しだけ爪先が覗いていた。
俺は大きく息を吐いた。
隣に居るサクマも同様だ。
俺達は、何時でも放剣出来る状態だ。

キリト「本物って、どういう意味だ? あんた誰だよ?」
サクマ「そうだ。 人の事を聞く前に自己紹介するのが礼儀だろ。」

不快で切れ切れの声が響く。

???「試合を、見た。 お前ら、剣を、使ったな。」
キリト「あ、ああ、別にルール違反じゃないだろ。」
サクマ「何でそんなことを聞くんだ。 お前は何者だ?」

ボロマントはCブロックと、Fブロックに載っている俺たちの名前を指し、

???「この、名前、あの、剣技。 お前たちは、本物、なのか。」
キリト「解らないな。 本物って何のことだ?」
サクマ「本物だとしたらどうするんだ?」

こいつはワザとグローブの隙間を覗かせた。
其処にはタトゥーが刻まれていた。
図柄は、カリカチュアライズされた西洋風の棺桶。
蓋にはニタニタ笑う不気味な顔が描かれている。
その蓋は少しだけずらされ、内部から白い骸骨の腕が伸びて、手招きをしている。
このエンブレムは、殺しを快楽とする集団《笑う棺桶》の図柄だ。
此処で導き出される答えは一つ。
このボロマントはSAO帰還者で、《笑う棺桶》に属していたという事だ。
ボロマントが低く囁いた。

???「本物、か、本物を、語った、偽物、だったら。 いつか、殺す。 本物、だったら、《軍師》にも、伝えて、おけ。」

この言葉は、ゲーム内のロールプレイだとは全く思えなかった。
ボロマントは音も無く遠ざかって行き、唐突に消滅した。
俺達は大きく息を吐いた。

サクマ「あいつか。 死銃は。」
キリト「あぁ。 まさかラフコフだったとは。」
サクマ「今回のバイト、飛んだことになったな。」
キリト「出来れば、アイツのキャラネームも知りたかったけど、」
サクマ「仕方が無い、な。」
キリト「あいつ、シンタローにも伝えとけって言ったよな。 予選が終わったら伝えるか。」
サクマ「あぁ。 ・・・おい、待てよ。 確か菊岡は死銃のそばには二人のプレイヤーがいるって言ってたよな。」
キリト「死銃が元ラフコフなら、そいつらも。」
サクマ「あぁ。 恐らくラフコフだろ。」

二、三回戦も順調に勝ち進んでいった。
俺の決勝の相手はシンタロー。
ユウキの決勝の相手はシノンだ。

キリト「負けんなよ。」
サクマ「人の心配してる暇があったら自分の心配しろ。 シンタローの奴、ここまで1ダメージたりとも受けてない。 それどころか、相手がシンタローを見付ける前に全部ヘッドショットだぞ。」
キリト「う、そうだった。」

その時、サクマが転移されていった。

~side out~

~サクマ side~

俺が転移された場所は、どこまでも一直線に伸びる高架道、その先で真っ赤な夕日。
《大陸間高速道路》らしい。

サクマ「うっわ、最悪。」

シノンの武器はスナイパーライフル。
一直線のこの道路で横から襲うことは出来ない。

サクマ「あー、どうするかな。 ・・・・待てよ、ここが高速道路なら、」

あることを思い付き、高速道路から身を乗り出して壁伝いに降りていく。

サクマ「ビンゴ。」

俺が探していたのは、高速道路にある点検用の通路だ。
大抵は高速道路の道路の真下にある。
ここを通ればシノンの背後に回れる。
流石にそこまでは予測出来ないだろ。

俺は点検用の通路に入り、前に進んでいく、途中、途切れている所もあったが、ジャンプして届く距離だったので問題は無かった。
そして、一番奥までついた。

そこからまたよじ登り、高速道路に戻る。
シノンの姿は見えない。
俺はすぐそこに停めてある二階建てバスに気付き、その中の気配を探る。

サクマ「いたな。 下手に入ると撃たれるから、」

グレネードを取り出し、横のまどに向かって投げる。
ガラスの割れる音がした。
次いでまたガラスの割れる音。
そして、爆発。

一回目の割れる音はグレネードが窓を突き破った音、二回目はシノンが脱出するために窓を割った音だ。

俺はシノンが立ち上がる前にシノンの背後に立ち、光剣を出し喉元で止める。
さらに左手でシノンの右手を抑える。

サクマ「俺の勝ち、だな。」
シノン「一つ、いえ、二つ教えて。 どうやって私に気付かれないように近づいたの?」
サクマ「高速道路にある点検用の通路さ。 それを使ったからだ。」
シノン「じゃあ、二つ目、、あなたは、どうやってその強さを身に付けたの。」
サクマ「強さ? 今回のバトルでそんなものは関係なかっただろ。 知識と閃きの差だ。」
シノン「とぼけないで。 ここまでのバトルであなたは弾を切っていた。」
サクマ「それか? それはただの技術さ。」
シノン「嘘よ。 嘘よそんなの。 テクニックだけで弾を斬れるはずがない。 あなたは知っているはずよ。 私にもその強さを教えて。 私は、それを知るために、」

一拍置いてから、言葉を発した。

サクマ「俺は強くなんてない、むしろ弱いさ。 ただ俺は、強くあろうと頑張っているだけさ。」
シノン「・・・何で、そんなこと。」
サクマ「・・・それは、、いや、何でも無い。 忘れてくれ。 ・・・さて、この勝負は俺の勝ちでいいかな?」
シノン「え、あ、その、ええと、」

どうやらシノンは、気持ちの切り替えが出来ていないようだ。
俺は顔を近づけて、

サクマ「降参してくれないか。 無抵抗の女の子を斬るのは趣味じゃないんだ。」

シノンは俺の言葉を聞き、現状を再確認したようだった。
この光景が待機ドーム、総督府ホール、グロッケン中に生中継されていることに。
シノンは顔を赤く染めて、

シノン「・・・あんたともう一度戦うからね。 明日の本戦、私と遭遇するまで絶対に生き残るのよ。」

それからぷいっと顔を背け、『リザイン!』と叫んだ。

俺に、その質問に答えられる資格は無いんだ。

~side out~

~和人 side~

次の日の朝。
朝食のテーブルで、向かいに座る直葉に、最大級の笑顔と共に呼びかけられていた。

直葉「お兄ちゃんっ。」

俺は思った。
『嫌な予感がする』と。
俺は箸を止め、

和人「と、突然何だよ、スグ?」

直葉が隣の椅子から取り上げた物を見て、俺の嫌な予感が的中した。
取り出した物は最大級のVRMMOゲームの情報サイト、《MMOトゥモロー》のニュースをコピーしたA4版のプリント用紙だ。
直葉はプリント用紙を突き出し、

直葉「あのね、あたし今朝、ネットでこんな記事見つけたんだけどね?」

プリント用紙の上部には、【ガンゲイル・オンラインの最強者決定バトルロイヤル。 第三回《バレッド・オブ・バレッツ》、本大会出場プレイヤー、三十人決まる】と書いてある。

下部に書かれていた大会出場者名の【Fブロック一位:sakuma(初)】、【Cブロック一位:sintaro(二回目)】、【Cブロック二位 : kirito(初)】の文字が、黄色のラインマーカーで印が付けられていた。

和人「へ、へえー、似たような名前が居るもんだなぁ。」

直葉は顔をニコニコ微笑ませて、

直葉「似たような、じゃなくて、全く同じ人だよね。」

俺は視線を逸らした。

和人「い、いや、そうじゃないかもしれないぞ。 ほ、ほら、キリト、なんて良くある名前だし。 そのキリトさんもリアルネームはき、き、霧ヶ峰、と、藤五郎さんとかかもしれないし。」

直葉はニコニコ笑っているが、内心では怒っているだろう。
俺たちが勝手にALOのアバターを、GGOの世界にコンバートしたことを。
いや、コンバートして正解だったかもしれない。
銃の世界には、因縁がある《笑う棺桶》のメンバーが存在しているのだ。
直葉はプリント用紙をテーブルに置き、

直葉「あのね、本当はキリト君とサクマさんが、ALOからGGOにコンバートしたことを知っていたの。」
和人「えっ」
直葉「だって、フレンドリストから二人の名前が消えているのに、あたしが気付かないわけがないでしょ。」

俺は首を縮めた。

直葉「あたし、昨日の夜に二人が消えていることに気付いて、すぐにログアウトしてお兄ちゃんたちの部屋に突撃しようとしたんだ。 でも、お兄ちゃんたちが私に何の連絡も無く、ALO居なくなるなんて有り得ないもん。 事情があるんだと思ったから、ALO内で、アスナさん、ユイちゃん、それとコジロウ君とアーサーさんに聞いたんだ。」

俺達はALOからGGOにコンバートすることを、事前に三人と愛娘であるユイには伝えてあったのだ。
直葉は、三人からALO内で話を聞いたんだろう。
直葉は囁いた。

直葉「ねぇ、二人とも何処にも行かないよね。 嫌だよ、二人が何処かに行っちゃうなんて、」
和人「ああ、大丈夫だ。 GGOの大会イベントが終わったら、必ず帰るよ。 ALOと、この家に。 約束する。」
直葉「・・・うん。」

直葉の声は弱かった。
再び椅子に座り直した直葉の顔は、何時もの笑みが戻っていた。

直葉「さぁ、冷めちゃうよ。 食べよう。」
和人「おう。」

~side out~ 
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