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SAO~円卓の騎士達~

作者:エニグマ
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第五十話 世界樹の上へ

~キリト side~

サクマ「全員揃ったから攻略の作戦を言う。 こっちは最悪、キリト、シンタロー、サクラをゴールさせれば良い。 だからこのメンバーで人の槍を作ることにした。」
キリト「人の槍?」
シンタロー「そうだ。 俺達三人を中心に先頭をサクマ、そして、俺達の周りを他の奴等が囲むようにして突撃する。」

つまりは捨て身で俺達三人だけを到達させようってことか。

キリト「分かった。」
サクマ「よし、んじゃ、行くぞ!」
リーファ「ほら、レコン! アンタも!」
レコン「えぇ!? 僕も!?」

そして、もう一度世界樹の入り口に立つ。

『未だ天の高みを知らぬ者よ、王の城へ致らんと欲するか』

皆が頷いてから、俺はイエスボタンに触れた。
それから、左の石像が大音声を発した。

『さればそなたが背の双翼の、天翔に足ることを示すがよい』

キリト「頼むぞ!」
サクマ「あぁ。 任せろ。」

先程言われた陣形を組み、上を目指して飛び上がる。
すぐにガーディアンが出現するが、俺達に間に合わない奴は無視し、前に出てきた、もしくは横から攻撃してくる奴だけを叩いていく。
そして、半分ほど昇ったところで、退路は無くなった。
さらに、前にはガーディアンで出来た壁がある。

サクマ「邪魔! だあぁ!!」

サクマが蹴散らして行くがそれも何時まで続くか分からない。

そして六割ほど昇ったところで止まってしまった。

サクマ「クソ! 何とかして脱出出来ないか!?」
リーファ「無理だよ! 壁が厚すぎる!」

ここまでか。
そう考えたとき。

レコン「僕が何とかして退路を作ります!」

レコンが叫んでそのままガーディアンの中に消えていった。

リーファ「レコン!?」

そして数秒後、大爆発が起こった。

見ると、ガーディアンの壁にぽっかりと大穴が空いている。
そして、その中心にはリメインライト。

シンタロー「自爆魔法!? デスペナが普通の比じゃないはず。」
サクマ「感心してる場合か! さっさと退くぞ!」

大穴が閉じない内に大穴を通り、ガーディアンの壁を抜ける。

そして、壁を抜けたとき、危ないので外に待機させてたメカクシ団が入ってきた。

シンタロー「な、何やってんだ! さっさと戻れ!」
セト「シンタローさん! 大丈夫っす!」
シンタロー「何が大丈夫なんだよ、ってそう言うことか。」

メカクシ団の後ろからシルフとケットシーが入ってきた。

サクヤ「すまない、遅くなったな。」
アリシャ「ごめんネー。 全ての装備を準備するのに、時間がかかっちゃったヨー。」

シルフ族の領主サクヤと、ケットシー領主のアリシャ・ルーだ。

レコン「ぶっはっ! し、死ぬかと思った。」

いつの間にか復活していたレコン。

キリト「実際、一回死んだろ。」
レコン「いや、まぁ、ゲーム的にはそういう事なんですけど、って後ろ!」

キリトが振り向く前に後ろに迫っていたガーディアンがポリゴンとなる。

コジロウ「お喋りも良いですけど戦いながらにしてくださいよ!」
キリト「悪い。」

軽く話してから戦闘に戻る。

アリシャ「ドラグーン隊! ブレス攻撃よーい!」

アリシャのよく響く声が聞こえたのでそちらを見ると、翼を大きく広げた飛竜が、長い首をS字にたわめ、牙の奥からオレンジ色の光を微かに洩らす。
次いで、シルフ領主、サクヤが朱塗りの扇子をさっと掲げた。

サクヤ「シルフ隊、エクストラアタック用意!」

密集方形陣に固まったシルフ部隊も、突進しつつ右手の長剣を頭上に翳す。
その刀身を、エメラルド色の電光が網目のように包み込む。

アリシャ「ファイアブレス、撃てーーッ!!」

直後、飛竜が、溜め込んで紅蓮の劫火を一斉に吐き出した。
眩い光が、ドーム内を照らした。
紅蓮の劫火を受けた騎士たちは、白い炎を引いて、燃えて尽きていく。

サクヤ「フェンリルストーム、放てッ!!」

シルフ部隊が一糸乱れぬ動作で長剣を鋭く突き出し、剣それぞれから眩いグリーンの電光が迸り、宙を切り裂いて白銀の騎士たちに深く貫通した。
騎士たちを粉々に吹き飛ばしていく。

アリシャ、サクヤ「「全軍、突撃ーー!!」」
サクマ「もう一度さっきの行くぞ!」
サクラ「分かった!」

サクラが指笛を鳴らす。
全員集合の合図だ。

もう一度陣形を組み、俺達が一つの閃光となって、肉壁の間隙に突進を開始した。

「「「「「うおぉぉぉおおお!!」」」」」

途中で襲って来た騎士たちは、俺達の超高速斬撃に巻き込まれ、紙くずのように引き千切られ、周囲に散った。
閃光は、光の尾を引き、ゲートに向かって飛翔していく。
そして、抜けた。
一瞬開いた隙間を、白銀の騎士たちが、幾重にも重なり埋め尽くした。
それを見届けたサクヤが、後方から叫んだ。

サクヤ「全員反転、撤退!!」

俺達は、脳神経が灼きつくかと思うほどの速度で、最後の距離を駆け抜けた。
眼前にある、巨大な円形のゲートに降り立つ。
白銀の騎士たちが、白い窓から生み出され、俺達に押し寄せてくる。

サクマ「俺達で時間を稼ぐ! さっさとゲート開けろ!」

サクマ達が防ぎに行く。
このゲートの向こうに、アーサー、アスナ、アヤノがいる。
が、

キリト「開かない!?」
サクラ「えッ!!??」

俺の言葉に、サクラが眼を丸くした。

閉ざされた十字の溝は、重く閉ざされている。
俺が剣を抜こうとした直前、ユイが俺の胸ポケットから姿を現し、小さな手でゲートの塞ぐ石盤を軽く撫でた。

ユイ「パパ。」

ユイは振り向き、早口で言った。

ユイ「この扉は、クエストフラグによってロックされているのではありません! 単なる、システム管理者権限によるものです!」
シンタロー「って言うことは、」
ユイ「はい! この扉は、プレイヤーには絶対開けられないということです!」
キリト「な、」

このグランドクエスト――世界樹の上の空中都市に達した者は、真の妖精《アルフ》に生まれ変われるというそれは、永遠に手の届かないニンジンだったということか?
俺はポケットから銀色のカードを取り出した。
このカードは《システムアクセスコード》だ。

キリト「ユイ、これを使え!!」

俺は銀色のカードを、ユイの眼前に差し伸べた。
ユイは大きく頷き、小さな手でカードの表面を撫でる。
光の筋が幾つか、カードからユイへと流れ込む。

ユイ「コードを転写します! 皆さん集まってください!」

一声叫ぶと、ガーディアンを牽制していたサクマ達が集まる。
それを確認するとユイは両の掌でゲートの表面を叩いた。
ユイの手の触れた個所から、放射状に青い閃光が走り、直後、ゲートそのものが発光を始めた。

ユイ「転送されます!! 皆さん。 掴まって!!」

ユイが伸ばした小さな右手を、俺の指先がしっかりと掴み、俺のもう片方の手をサクラが掴み、その反対の手をシンタローが掴む。
そのようにして、次々と皆が繋がっていく。
光のラインは、ユイの体を伝わり、俺達の中に流れ込んできた。
騎士たちが大剣を振り下ろす直前、俺たちの体が薄れ、白く輝くゲートに中へ突入した。

転送された先は、何も無い、真っ白い空間であった。
ユイはピクシー姿ではなく、白いワンピースを着た少女の姿だ。
サクラは、ユイに訊ねた。

サクラ「ユイちゃん、此処どこなの?」

ユイも困惑した顔で言った。

ユイ「判りません。 マップ情報が、この場所には無いようです。」
キリト「ユイ。 アスナとアヤノの場所、分かるか?」
ユイ「はい、パパ。 少し待ってくださいね。」

ユイは一瞬目を閉じ、すぐに大きく頷いた。

ユイ「はい、かなり――かなり近いです。 上のほう、こっちです。」

俺達は頷き、ユイを追って数分走ると、扉が見えてきた。

ユイ「ここの扉を出ると、頂上に到着します。」

俺達は、勢いよく扉を開け放った。
そこは、世界樹の幹がただ伸びていただけであった。
ALOのプレイヤーたちが夢見た頂きには、何もなかったのだ。

キリト「無いじゃないか、空中都市なんて、」

俺は呆然と呟いた。
全ては中身のないギフトボックスであったのだ。
包装紙やリボンで飾り立て、しかしその内側に広がるのは空疎な嘘。

キリト「許されないぞ。」

俺は思わず呟いていた。
この世界を動かしている、誰かに向かって。

サクマ「キリト。」

サクマの声で我に戻る。
ユイも、気遣わしそうな顔で見上げていた。

キリト「ああ、そうだな。 行こう。」

全ては、アスナとアヤノを救い出してからだ。
人工的な小刻みな道を、ユイの手を握り、走り始めた。
道の先には、夕陽の光に反射して、金色に光る何かがあった。
写真で見た鳥籠だ。
俺は直感で解った。
あの中には、アスナとアヤノが居る。
二人も感じているはずだ、あの中に居る人物を。
走る速度が増していく。

遂に、鳥籠の前に到着した。
テーブルの椅子には、二人の少女が座っている。
間違いない、アスナとアヤノだ。

キリト「アスナ、」
シンタロー「アヤノ。」

俺とシンタローは、優しく囁きかけた。
ユイも叫んだ。

ユイ「ママ!! アヤノさん!」

ユイは閉ざされた格子に手を当て、その手を青い輝きが包んだ。
直後、金属の格子が、吹き飛んで消滅した。
開け放たれた入口から、鳥籠内部に駆け込む。
そのまま、アスナの胸の中に飛び込んだ。

ユイ「ママーー!!」
アスナ「ユイちゃん、来てくれたのね。」

アスナは、ユイを抱きしめた。
俺の隣に立っていたシンタローも、アヤノの元に駆け寄った。

シンタロー「アヤノ、助けに来たぞ。」
アヤノ「もう、遅いよ。」

アヤノは黒髪を揺らしながら、椅子から勢いよく立ち上がり、大粒の涙を流しながらシンタローと抱き合った。

キリト「ごめんな、遅くなった。」

俺が呟くと、アスナが応えた。

アスナ「信じてたよ。 絶対に助けに来てくれるって。」
キリト「ああ、帰ろう。 現実世界へ。」
サクラ「ちょ、ちょっと待って! アーサーは!?」
アヤノ「えっ!? アーサーがここにいるの?」
サクラ「現実ではアーサーもまだ目覚めてないの! ここにいると思ったんだけど、、!!」

サクラの言葉が途中で途切れたのは、いきなり鳥籠の内部が水没したからだ。
鳥籠内部が深い暗闇に覆われていく。
呼吸は出来るが、空気が異常に重くなった。
ユイが声を上げた。

ユイ「パパ、ママ、皆さん、気を付けて! 何か、よくないモノが、!」
ストレア「私達は、一度、メモリーに、戻るから、心配しないで。」
「「「「「ユイ(ちゃん)、ストレア(ちゃん)!!!」」」」」

俺達は同時に叫んだ。
周りを見渡しても、ユイとストレアの姿は何処にもなかった。
凄まじい重力が襲った。
俺以外は倒れ込み、俺は片膝を突いた。
その時だった。
粘付くような笑いを含んだ、甲高い声が暗闇の中に響き渡った。

オベイロン「やぁ、どうかな、この魔法は? 次のアップデートで導入する予定なんだけどね、ちょっと効果が強すぎるかねぇ?」

それから須郷は、くっくっくと嘲笑った。
俺は唸り声で叫んだ。

キリト「須郷っ!!」
オベイロン「チッチッ、この世界でその名前はやめてくれるかなぁ。 君らの王に向かって呼び捨ても戴けないね。 妖精王、オベイロン陛下と、そう呼べっ!!」

頭を強く打ち付けられた。
須郷の片足が、俺の頭に載せられていた。
圧し掛かる重力に耐え切れず、俺は床に押し付けられた。

「「「「「キリト(君)!!」」」」」
オベイロン「おぉっと、君が英雄の一人、キリト君かぁ。 くっくっく、ならコイツと君達を戦わせるのは面白いかもねぇ。 システムコマンド、ペインアブソーバーをレベル4に。 おい!」

須郷が誰かを呼ぶ。
そうすると、須郷の後ろから誰かが近寄ってきた。
仮面を着けた一人のプレイヤー。
禍々しい黒と紫色の装備を着ている。
俺はその姿に見覚えがあった。
信じたくは無いが、

サクラ「アーサー、?」

~side out~ 
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