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剣士さんとドラクエⅧ 番外編集

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爆裂錬金釜

 錬金釜とは。名ばかりの自動アイテム生成装置のことだよね。何故って?錬金釜で金なんて錬金できないんだよ!錬金とはこれ如何にと思わないでもないけど口に出したら不敬だから言わない。そこら辺は私、臣下なので!

 もっぱら万能薬練成装置扱いのそれは今もぐつぐつ薬草をどうやってか赤い玉に変えている最中。化学も真っ青な魔法的な力って面白いね!

「これ、ちょっとぐらいなら別の使い方しても、いいよね……」

 万能薬は一応エルトにヤンガスに私が溢れんばかりに所持してるんだ。でもさ、流石はククール、仕事をきっちりこなすデキる男っていうのは容姿だけじゃなくてホントでさ、ちっとも使ってないし。予備がたくさん錬金釜の隣に山積みだし。

 よーし、怒られないよね。今日は陛下と姫は不思議な泉で過ごされるらしいから私すっごく暇なんだ。あそことっても安全な上に私、入れないからね。だからこれで遊ん……いろいろ試してもいいはず!

 使うものは私物ともう誰も使ってない装備、それから余ってる物。これなら誰の迷惑にもならないさ。最悪自分のお金で弁償するから許して欲しいな!じゃ、錬金キャンセルっと。

 カポっとごとごと揺れる釜の蓋を開ければポーンと飛び出してくる特薬草二個。新鮮とは言い難くて少ししなっとしてるような……?ま、錬金途中にいきなりやめて原型を留めてる方がびっくりなんだけどさ。それは今いいや。

 さってと。いつもお世話になってるククールに装備を作ってあげようかな?どうせなら回避率が上がるヤツとか良くない?それともヤンガスに斧?ゼシカに杖?エルトに兜でもいいし、トーポにチーズでもいいかも。それか、私の盾とか?

 いろいろ想像出来て楽しいな。魔法を使わなくても魔法を使ってるみたいで、しかも錬金ってすっごく楽しいからいいよねぇ。完成させたかったら釜を背負って山でも登ればいいしね!

・・・・
・・・
・・


 ここはどこかって?まぁいいだろそんなこと。キリキリ進む事もあれば丸一日休んだりする俺達のそこそこある休日が今日ってだけだ。そして朝イチから馬車の中で錬金に大変励んでいらっしゃる剣士さんに気を使って俺達は大惨事に備えているってわけだ。

「あれ、何やってるのかしら?」
「さぁ……錬金でいろいろやってるみたいだけど。爆発させないって約束したから大丈夫だと思うよ」
「それ大丈夫なの?」
「何のためにフル装備で待機してると思ってるのさ?」
「……なるほどね」

 別に誰も指示しちゃいねぇがなにか起こってからでは遅いというのがエルトの言葉で俺は心の底から同意したな。基本的に俺達は彼女を止めたりはしない。……止めることは出来ない。

 今までに止めたのは特にやましい気持ちで始めた訳では無いくだらない猥談に入ってきた時ぐらいか。エルトが撃沈していたが、何でも兵士としてトロデーンにいた時からトウカの父が恐ろしすぎてそういう話をシャットアウトしていたのにそれを無駄にしたら殺される、と。

 その時はまだ性別のことを知らなかったが、曰く乳はでかい方が好きだと。……ヤンガスの方を見ながら言っていたからおそらく大胸筋の話だろうと思う。箱入り娘はゼシカに怒られないようにねと爽やかに去っていったが、多分夢か希望を抱くだけ無駄なんだろうよ。

 だからこそ頼んだら爽やかにぱふぱふしてくれねーかな……。おいおいゼシカ、冗談に決まってるだろ。案外俺は太もももいけるってことを言っていなかったか?……挟まれたら首がもげるねと邪気たっぷりに言ったエルトを許しはしない。

「ライデインと正拳突きってどっちが痛いかなぁ。ライデインは内臓が生焼けになって正拳突きは内臓破裂なんだけどさ」
「両方食らわせておけば話は早いでがすよ!」
「あんたたち、やめなさいよ。だいたいその時になったらトウカが真っ先に挑むでしょうし」
「それもそうか」
「そうでがすね」

 強い人ってかっこいいよね!とトウカの幻覚が見えたが、そこはそれ、俺にはベホマがあるからそこそこ太刀打ちできると信じたい。だからお前らそんなに哀れんだ顔をするんじゃない。

「一つできたーっ!」

 一撃で倒されたら意味がないって言ったのはエルトだよな?あとで宿裏に来いよ。分かったな?

 エルトはともかく楽しそうなトウカの声が近づいてくるのが気になる。さっき見た時は到底錬金釜に入らないサイズのテンペラーソードと鋼の盾を押し込んでいたり、ステテコを五つもぶちこんだりしてたからな……一応警戒だけでもしておくか。

「あ、ククールちょうどいいところに!」

 鎧らしきものを掲げて走ってくるトウカがぴたっと俺の前で足を止める。今日も元気そうで……それは何よりだ。むしろ元気すぎだ。何よりなんだが。

「これ、素肌に着る鎧なんだけどさ!」
「……却下で」
「だよねー!ククールがこんなの着たら笑い止まらないもん。じゃ、次行ってみよっと」

 ぽーんとそこらに哀れにも放り投げられたのはダンジングメイルという鎧らしい。装備可能者は無慈悲にも俺だけ。なんとも下せないことにひらひらの布のついた部分が妙にマッチしている。

「これっ……回避率が上がる鎧だってっ……」
「笑いこらえながら言うな」

 エルトが木の棒で突っついている。エルトって……案外失礼なやつだよな。爆発軟化完成した鎧がするわけないだろう。あと俺がそれを着るわけもないだろう。ちらちら見るな。

 ひらひら似合うよとか言ってるが笑いたいだけだろお前。当事者じゃないからってヤンガスは地面を叩きながら笑ってやがるしゼシカは……目をそらさないでくれ。

「ほ、本人に着ろって言われなくて良かったわね……」
「まぁな……」

 それは本当に幸いだと思うぞ。

 歩数を稼ぐためかそこらを釜を持ったまま走り回っているトウカが今、いつも以上に恐ろしいのは仕方の無い事だろう……。贈り物だろうがこれは駄目だ。本当に駄目だ。

「ゼシカ!うさみみバンドあげるね!」

 ……この差はなんなのだろうな。ぴょこんと揺れるうさぎの耳はよくゼシカに似合っているしな……。

 ちなみに数時間後、似非爆弾岩が錬金されてトウカは誰かの監修の元でしか錬金できなくなるのだがそれまでに俺に差し出された装備は能力は全部優れているのにキワモノ揃いだったとここに書き残しておく。ありがたくそれらは荷物の肥やしとなった。 
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