| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

IS 輝き続ける光

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

終着と始発

女性にしか反応しない、世界最強の兵器「インフィニット・ストラトス」、通称「IS」
男女の社会的パワーバランスが一変し、女尊男卑が当たり前になってしまった時代

そんな時代に生きる一人の名は少年 織斑 一夏。どこにでも居るような少年。

その彼の姉は織斑 千冬。
IS世界大会(モンド・グロッソ)総合優勝および格闘部門優勝者である
そんな姉の存在が彼を苦しめていた。最高の姉のせいで彼は自分として 『織斑 一夏』という一人の人間として見られていなかった。

誰もが『織斑 千冬の弟』というフィルター越しでしか見てくれなかった。幾らテストで良い点を取っても当たり前と言われ、出来ない事が有れば出来損ない、恥曝しと言われてきた一夏。彼はそんな地獄に耐え続けた。それは一重に姉の為だった。両親も居ない、自分をここまで育ててくれた姉の事が一夏は好きだった。尊敬すべき対象、いや酷く依存していた。

だが物事にも限界という物があった。何かの為、我慢だと自分をだまし続けていても不平不満は溜まり、ストレスとなって彼を蝕み、そして彼の溜め込んだ不の感情は爆発する事になる。

第2回IS世界大会にて彼は誘拐された。前大会王者である千冬を優勝させまいと敵国の人間が一夏を誘拐、拉致した。誰もが彼女は大会など放り投げて助けに来ると思っていた、だが……彼女(千冬)は助けにこなかった、そして出場した。一夏はその事実を誘拐犯が驚き戸惑っている口から聞かされ知った。

「……そんな……千冬姉……俺、なんかより、地位や名誉の方が大事なのか……?」

千冬に失望し、何故このような目に遭わなければならないのかっと考えが渦巻いた。今まで散々姉の為に食い縛って生きてきた、朝早くに家を出て、なかなか帰ってこない姉を寂しさを堪えながら家の事をしながら暮らしてきた。それなのに……。

絶望に打ちひしがれ、次第に涙が溢れなき続けた。だが世界とは無情にも、彼を更なる絶望へと叩き落した。一夏を待っていたのは死だった。誘拐犯が彼を殺そうとしたのだ。死への恐怖も彼に更なる絶望を与えもう涙が止まらなくなっていた。銃が彼の頭部に突きつけられ、引き金に指が掛けらまさに引き金が引かれようとした時―――

「「「うぎゃぁあああ目がぁぁぁあああ!!!!」」」

誘拐の犯人達は一夏の背後で起きた強烈な光で目を焼かれしまい地面を転げ回った、スタングレネードとは比べ物にならない圧倒的な光。瞬時に誘拐犯の視神経は焼けた。

一夏は何が起きたが解らずただ呆然としていた。一夏は何も考えられずに泣き続けていた。もう何も見たくない、もう何もしたくないと言いたげに目を閉じて泣いていた。それ為に目に一切にダメージはなかったが目の前の状況を理解する事が出来なかった。次の瞬間、犯人達は一瞬で強い光に包まれ焼かれて苦しみ藻掻いてその内動かなくなった。鼻に肉が適度に焼きあがっているかのような臭いが突く。

「ふぅ……こんなもんか。まあ死んじゃいないだろう」

一夏は背後で声がしたので体を捩ってなんとかそちらを向くとそこには艶やかな長い黒の髪をゴムで縛ったスラッとした長身で瞳は美しい蒼い色をしている男がいた。一夏はそんな男が現れて何が起きたが解らなかった、一体何者なのかと思っても何も解らない、その男は指で一夏を縛っていたロープを撫でるとロープは撫でられた部分だけが燃えて一夏は開放された。一夏は自分を縛っていたロープが、いきなり発火したことに驚いた。

「大丈夫かい?」
「は、はい……」

一夏は少し驚きながらも己を助けてくれた男に心から感謝していた。殺されそうになっていた所を救ってくれたのだから。

「で?君は何でこんな事になったんだ?偶々俺が物音がしたから来たから良かったけど、コイツらの話を少し聞いたけど普通の拉致監禁っぽくはなかったけど」
「……それは……」

口を閉じた、言って良いのか解らなかった。言ったとしても如何なる?言っても意味がないと思ったが男は自分の方に優しく手を置いて、大丈夫だから言ってみろといってくれた。絶望しきっていた彼の優しげな言葉はゆっくりと一夏の心を溶かすように暖かいものだった。

一夏は自分が織斑 千冬の弟であり姉の出場辞退を目的にした誘拐された事、だが姉は自分を捨てて出場し地位や名声を選んだことを伝えた。それを聞いた男は驚きと怒りを示した。

「なんて事だ、悪いけど、君の姉、織斑 千冬は巫山戯ているな。自分の家族より地位や名声を選んだという訳か……で君はどうしたい?俺なら君を家に戻す事も出来るがどうする?」

一夏は自分の家には戻りたいとは思わなかった。戻ったとしてもどうせ今までの生活と変わる事は無いと思った。また何時も通りの毎日が始まる、学校で苛められ、馬鹿にされ、姉の面汚しといわれる。そして何より自分という家族よりにも、名声を選んだ姉と今までと同じように生活が送れるとは思えなかった。

「僕は……戻りたくない……自分が何をしているのか教えてくれない、相談しても私の弟だから大丈夫だっとしか言わないあんな奴の所なんか……」
「そっか……じゃあ俺の所に来るか」

その言葉は一夏にとって救済その物だった。一夏は男の顔を凝視した、変わらず男は笑顔のままだった。

「い、いいんですか……!?」
「ああ勿論だ、でも此所とはまったく違う世界だし危険な世界だぞ?」
「それでも良いんです!僕は……この世界が嫌なんです!」
「解ったじゃあ行こうかえ~っと……」

男は一夏の顔を見て硬直する、一夏は首を傾げて男の行動の意味に気づいた。

「あっ僕の名前は織斑 一夏って言います!」
「一夏か、俺は霧雨 闇夜だ」

一夏は闇夜と手を繋いで囚われていた場所を出た。家の為に忙しかった千冬と手を繋いだ事どころか出かけたことすら皆無に近かった彼によって手を繋いで歩くという事は酷く新鮮だった。常に人の体温を感じられるというこの行為に、感動し何時までも手を握っていたいと感じた。

闇夜が泊まっていたホテルへと行き、荷物を纏める。その際に荷物などに薬だと思われる粉などがビンに入っているので医者なのかと聞いてみると正に正解だった。そして荷物を纏めると再び手を繋ぎホテルをチェックアウト、人気の無い裏路地へと入っていった。

「さてと、時間だな」
「時間……?……ヒィ!!?」

そこでいきなり空間が割けて始め、たくさんの目が見えているなんとも奇妙な空間が発生したのだ。一夏はその目に恐怖して闇夜に抱きついた。普通ならば有り得ない光景に恐怖が感情を支配したが、闇夜はそんな一夏を抱き上げた。そしてそのまま裂け目に入っていった。

目玉が乱立する空間、標識や電車などと言った様々なものが浮遊している空間を一夏は闇夜に強く抱きつきながら眼を丸くしてみていた。裂け目を出るとそこは家の中ではふわふわとした金色の髪、赤い瞳に薄い紫と少し濃い目の紫のドレスを纏った日傘を持った美しい女性がバルコニーで椅子に座りのんびりしていた。

「あら、お帰り闇夜」
「今帰りましたよ。紫さん」
「あらっその子は?」

紫と呼ばれた女性は闇夜が現れると旦那の帰りを待っていた妻のように彼を出迎えたが直ぐに抱き上げている一夏に視線を移した

「この子は一夏君。俺が保護した子です」
「そうなの、結構可愛い子ね♪」

紫は椅子から降りて一夏に近づいていく。一夏はまだ怖がっているのか紫が近づいてくると体を震わせているが闇夜に大丈夫だと言われると口を開いた。

「こ、こんにちわ……い、一夏、です……お姉さん」
「まあ♪ありがとう一夏君、八雲 紫よ」

と震えながらも挨拶をした。紫はお姉さんと呼ばれたのが嬉しかったのか笑顔を浮かべながら紫は一夏の頭を撫でた。紫に撫でられた一夏は不思議な気持ちに囚われる、自分の中で渦巻いていた恐怖などの感情が一気に消滅し、代わりに安らぎににも強い眠気が湧いてきたのだ。一夏は感じた事の無い安らぎと眠気に勝つ事が出来ずに眠ってしまう。

「あらあら眠っちゃったわね」
「まあ誘拐されて唯一人の家族に見放されれば疲れますっていうか、紫さん。能力を使いましたね」
「あらバレた?」
「当たり前ですよ、伊達に人賢者って呼ばれてませんよ。それと一夏君は俺が引き取って育てますからね」
「ええ構わないわ。じゃあ私は帰って眠るとするから」

紫は先程、闇夜と一夏が通った空間を開いてその中に入って帰って行った。闇夜は腕の中で眠っている一夏をベットに寝かせて布団を掛けてやる。すやすやと眠っている彼の頭を撫でてやっていると闇夜にどことなく似ている少女、闇夜の妹である霧雨 魔理沙が部屋に入ってきて闇夜に飛びつくように抱きついた。

「兄ちゃんただいま~♪ってあれ、この子は?」

魔理沙はベットで眠っている一夏を不思議そうに覗き込んだ、基本的に様々な場所に出向く彼女だがこんな子供はみた事が無かったからだ。

「この子は一夏君。外の世界で俺が保護して俺が育てる事になったんだ。だから俺の弟のなるのかな」
「え!?じゃあ私の弟になるのか!!!」

声を上げて一夏の顔を見る、純粋無垢な寝顔に思わず笑顔を作っている魔理沙に兄はほっと胸をなでおろした。

「ああそうなるな。どうだ受け入れてくれるか魔理沙?」
「勿論だぜ、じゃあ名前考えようぜ!!」

魔理沙の発想と言葉に驚く、いきなり弟が出来る。それなのに名前を考えようとなるだろうか。

「名前ってお前ま……ペットじゃないんだぞ」
「解ってるって。だって家族になるんだったら新しい名前で気持ちを新たに過ごしてほしいぜ」
「まあ、起きた時に受けれてくれるか聞いて決めよう」

夕方に目覚めた一夏は、闇夜が兄になってくれる事に酷く喜び、自分に優しく接してくれる魔理沙が姉になってくれる事に感激した。そして二人から新しい名前を賜った。もう、あの元姉(千冬)と同じ性、そして今までの自分と決別したかったのだ。

霧雨 閃輝(せんき)、それが彼の新しい名前であった。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧