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立ち上がる猛牛

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第五話 主砲とストッパーその二

「あの守備は駄目だ」
 こう言ってだ、放出を主張したのだ。確かにマニエルは守備は悪いがそのバッティングを知っている多くの者が止めようとした。
 しかしだ、結局マニエルは放出することになりこの話を聞いた西本はすぐに動いた。
「マニエルがおればちゃう」
「はい、打線に厚みが出来ますね」
「栗橋や羽田も長打を安定して打てる様になりましたし」
「佐々木や平野も前よりパワーが出ました」
「キャッチャーの梨田や有田もパワーがありますけど」
「主砲となると」
「そや、あの男は主砲になるで」
 チームのというのだ。
「文句なしに四番を任せられる」
「そやからですか」
「マニエル獲得しますか」
「そうしますか」
「ああ、守備が悪くてもええ」
 何故こう言い切れるかはパリーグの事情からだった。
「指名打者があるからな」
「四番指名打者でいきますか」
「それやったら何も問題ありませんし」
「マニエルは四番指名打者」
「それでいきますか」
「ああ、そうなってもらうで」
 こう言ってだ、西本はマニエル獲得に動いた。広岡も最初からマニエルを放出するつもりであったしマニエルも自身が守備は苦手とわかっていたので願ったり叶ったりだった。
 それでマニエルの近鉄への移籍はすぐに決まった、マニエルは近鉄に入ってからすぐのキャンプで早速西本と打ち解けた。
 それでだ、記者達にこう言った。
「ミスターニシモトはメジャーでも通用する」
「そこまでの人ですか」
「西本さんは」
「そう思う、マインドがある」
 こう言うのだった。
「人間味が他の人と違う、俺はミスターニシモトの為にファイトをする」
 こう言ってだ、西本に心酔し打線の中核となった。マニエルはメジャー仕込みのバッティングを見せその人柄もありナイン達に慕われる様になり鈴木と共にチームの柱となり『マニエルおじさん』とまで呼ばれる様になった。
 キャンプの中で近鉄は昨年とは全く違う、長所をさらに伸ばし短所をカバーしているチームに変貌した。そして。
 シーズンを迎えると違った、四番のマニエルがとにかく打った。
 ホームランだけでなく安定した打率と勝負強さもありだった。ここぞという時に打ちチームを勝利に導いた。 
 しかもだった。
 マニエルが打つと他の者も打つ、打線は相乗効果を醸し出しこれまで今一つ芽が出ていないと言われていた若手達が一斉に成長したのだ。
 ここにいてまえ打線が誕生した、次から次に相手を打ち崩す長打を連続して叩き出す強力打線が姿を現した。
 投手陣も鈴木の他にだった。
 井本に村田辰美、柳田が成長して安定したものになっていた。土井を放出してまで獲得した柳田がここで完全に開花したのだ。
 今の近鉄に敵はないかと思われた、実際に近鉄は驚くまでの快進撃を続けた。前期は近鉄で決まりだと思われた。
 二位阪急に五ゲーム以上の差をつけたうえで前期マジックは一桁に迫ろうとしていた。三十四十二敗四引分という圧倒的なものだった。
 そのうえで六月九日に日生球場においてロッテとの試合を行っていた。この西本は一つの決断を下していた。
「スズをですか」
「そや、考えたけどな」
 そのうえでの判断だとだ、西本は言った。
「ちょっと治療に専念させてや」
「左腕が痺れてるんで」
「去年投げ過ぎたせいか」
 それではないかというのだ。
「利き腕に痺れがあるっていうからな、それにや」
「痛風もありますし、スズには」
「今は酒は白ワイン飲んでますけど」
「昔はビールを浴びる様に飲んでましたし」
 同じ左腕で関西の球団にいた江夏豊と親しいので二人でビールをしこたま飲んでいたのだ。ビールが痛風に悪いことは言うまでもない。 
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