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酒と雪女

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第三章

「それはまた」
「まあ雪女って怖いからな」
「本当にな、まあ実際にいたらな」
「一回見てみたいか」
「殺されなかったらな」
「そうだな、美人だっていうしな」
「見たいな、一回」
 喜多はまたこう言った。
「それも面白いな」
「そうだな」
 こうした話をしているとだ、急に。
 家のチャイムが鳴った、喜多はその音を聞いてまずは眉を顰めさせて言った。
「お客さんか?」
「誰だよ」
「俺達へのお客さんなんてな」
「大抵飲み仲間だよな」
「ああ、俺も兄貴もな」
「しかもだ」
 今度は喜一郎が言った、彼も眉を顰めさせている。
「こんな大雪の夜にか」
「飲みに誘う奴いるか?」
「いないな」
「ここに来るまでも苦労だしな」
「それも相当にな」
 大雪故にだ。
「まずないな」
「そうだろ、じゃあ宅配か?」
「この大雪の夜でか」
 またこの話になった。
「まずないだろ」
「そうだな」
「しかも俺何も注文してないぞ」
「俺もだよ」 
 二人共だった、このことは。
「それこそな」
「じゃあ誰だ」
 こんな話をしているとまたチャイムが鳴った。
 そのチャイムの音を聞いてだ、喜多は喜一郎にあらためて言った。
「まあとにかくな」
「出るか」
「そうしような」
「誰か気になるしな」
「変な奴かも知れないからな」
 ここでだ、喜多はこうも言った。
「一応扉のガラスから見ような」
「ああ、あの穴のな」
「そうした時のガラスだからな」
「そこで誰か見てだな」
「それから対応するか」
「そうするか」
 こうしたことも話してだ、そのうえでだった。
 二人でアパートの部屋の玄関の方まで行った、そのうえで。
 まずは喜一郎がガラスから扉の向こうにいる来訪者を見た、喜多はその彼にすぐにこう尋ねたのだった。
「美人さんだ」
「何だって?」
「だから美人さんがいるぞ」
「兄貴風俗の人呼んだか?」
「それは御前だろ」
 こう返した喜一郎だった。
「そうじゃないのか?」
「兄貴がいるのにか?」
「それは言ったら俺もだろ、そもそもここは田舎だろ」
 先程コタツの中で飲みながら話した通りだ。
「そんな店もないぞ」
「仙台まで行かないとな」
「しかもこういうのは一人の時に呼ぶものだろ」
「それもそうだな」
「違うぞ」
 風俗嬢では、というのだ。 
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